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2007年04月17日
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カテゴリ:ことば
小さい頃に家の中にあった物、毎日目にしていた物というのは、
その人間の美意識とか価値観の基となって、ある意味、一生を
決めるものだと思います。

玄関に飾ってあった七宝焼きの壷とか・・・客間に掛けてあった
写実的な海の絵とか・・・床の間に掛けたまま一年中同じだった
掛け軸(笑)とか・・・

ときには「美しいもの」の基準となって身体に染みこみ(七宝焼きが
好きなのは、たぶんあの壷のせい)、ときには反対に「嫌いなもの」の
代表になり(海の絵は苦手・・・)、気が付くと、好き嫌いに関係なく、
良く似た字を書いていたりする、なんてことはありませんか?

もうひとつ、一生ついてまわるのは、親の本棚にあった本。

小学生になる前に、難しそうな父の本を引っ張り出して遊んでいたのは、
「学問の匂い」みたいなものにドキドキしていたのでしょうか。

中でも好きだったのは、父の本棚にあった英語の辞書でした。

コンパクトな英英辞典で、ところどころ日本語訳が書いてありました。
外には、緑色の布がパッチワークのように何枚か貼ってあり、表と裏の
表紙裏の角には、補強のために三角の和紙が貼り付けてありました。
裏表紙の内側には父のサインがあって、なんと書いてあるのか判らない
のが「かっこいい」と思っていました。

独りのとき、その英英辞典をこっそり持ち出しては、読めもしないのに
(日本語の部分も難しい漢字ばかりで読めなかった)、
「おべんきょう・・・おべんきょう・・・」とつぶやきながら、
ぱらぱらめくっていたのを思い出します。

中1になる前に初めて自分の英和辞典を買ったとき、布と紙でていねいに
補強したのは、辞書というのはそうやって使うものと思っていたからです。
もちろん、裏表紙の内側にわけのわからないサインをしました(笑)

英語の辞書というのは、英語ばっかりで「解らないもの」だと信じて
いた私は、この英和辞典を開いたとき、

「なにこれ?日本語で全部書いてあるんだ~!
先生に聞かなくても、自分で調べられるんだっ、
なぁんだ、英語の勉強なんてチョロイじゃん」

と、他愛も無く喜んだのでした。

チョロイというのは誤解だったにせよ、とにかく辞書が大好きな中学生は
このようにして誕生したのです。

きのうの日記の百科事典の広告を見たとき、もしあれが父の本棚にあったら、
一文字も読めなくても、きっと毎日見ていただろうな、と思ったのです。

子供に何かを与えるというのは、何もプレゼントとして渡してあげるだけじゃ
ないと思うのです。





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最終更新日  2007年04月18日 19時27分56秒
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