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[思い出話] カテゴリの記事

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  平安京エイリアン

  クレイジークライマーは、それまでのシューティング系ゲームと異なりバーを両手で操作し、しかも横ではなく縦に交互にガチャ、ガチャと動かすようになっていた。多くのクレイジークライマーのゲーム台はインベーダー・ゲームの台を改造したものであった。インベーダー・ゲームをはじめとするシューティング系のゲームはもともと横方向にしかスリットしか空いていないので、それをヤスリか何かで削って無理ヤリ縦方向にスリットを空けていたのである。ｶﾞﾝﾊﾞﾚ この縦のスリットとバーの間によく指の関節が挟まって出血した。何せヤスリで開けたスリットの断面は尖っているので、白熱してバーに力が入るとスリットに人差し指の関節の肉が挟まりちぎれて血みどろになったものだ。オイラはクレイジークライマーは苦手だった。度胸がないので捨て身な移動ができないのだ。みんなが何10分もゲームを続けて高得点を出しているのに、オイラはものの数分でゲームオーバーになった。度胸のないオイラが得意なのは「逃げ」系のゲームであった。いちばん得意だったのは何といっても平安京エイリアンである。上の画像をクリックして無料ダウンロード当時は「東大生の作ったゲーム」として有名になった。平安京に侵入したエイリアンを、プレイヤー操る検非違使が落とし穴を掘って埋め殺し、殲滅させるゲームであった。「平安京」だの「検非違使」だのいう日本史必修用語が東大生らしいよなあ。「荒川掘り」だの「隠居掘り」などいろんな堀り方があったなあ。一定時間が経過しエイリアンが増殖し始めると、検非違使１人では殲滅不可能となり自動的にゲームオーバーになる。オイラの自慢は、タイムオーバーで増殖し始めたエイリアンを平安京の路地を逃げ回りながら辛抱強く１匹ずつ埋め殺し、ゲームオーバーを回避してついに殲滅した経験があることである。ちなみに何を隠そうオイラが視力を落としたのは、高校時代に部活の帰りに当時30円に値下げされていたこのゲームをやりすぎたせいである。あとは「逃げ」系のゲームというと、ラリーXだなあ。これは平安京エイリアンほどではないが、人並みよりは得意だった。あれもレッドカーから逃げるのがドキドキだったなあ。いくらバーに力を入れたってマイカーのスピードが上がるわけでもないのに、バーに思い切り力を入れて逃げる方向に体を傾けてたっけなあ。「♪タラララ・ラッター、たららら・らったー、タラララらららら・たーﾗﾗﾗﾗﾗﾗﾗ、ﾀﾗﾗﾗ…」というあの電子音楽は今でも容易に耳に蘇る。同じ逃げ系のゲームでもパックマンは得意じゃなかった。みんなオイラより断然上手なんだもん。平安京のエイリアンも、ラリーXのレッドカーも怖くないのだが、パックマンに出てくるニョロニョロみたいなオバケはいつまで経っても怖かったなあ。それにしても、パックマンを見るたびに、当時NHK教育の幼児向け番組に登場した、単純な形と原色の図形を使ったセリフのない短編アニメを思い出したのはオイラだけか？10,000点で１匹追加

  2006.10.02

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• 蒸し暑い夏の昼寝

  あまりに蒸し暑くて屋外に出る気もせず、むさ苦しい四畳半の下宿で半分ふてくされた気分でまだ明るいうちからウツラウツラと眠り呆けていたのだが、ふと目を覚ますと枕元に置いた扇風機の前に見覚えのある男がアグラをかいて座っている。寝呆けた頭を急回転させ、横になったままこの男が誰だったか思い出そうとしていたら、男はオイラが目を覚ましたことに気づいた様子である。彼がオイラに何か話し掛けようとしたとき、オイラはこいつが大学時代下宿の隣部屋に住んでいたスギモトという当時の高校生であるという確信を持った。スギモトは父親がどっかの田舎で小さな会社を経営している次男坊で、親の方針で高校生のうちから親元を離れた学校に通わされ、この賄い付きの下宿で寝起きしていた。下宿住まいというのは高校生にとって貴重であるからして、彼の部屋は不良の同級生どもの溜まり場になっていた。彼とオイラの部屋の間は襖で仕切られているだけだったので、彼とその友人たちが日々酒を飲みタバコを吸いながら悪い相談をしているのは筒抜けだったし、スギモトはスギモトで日夜隣の部屋から聞こえてくるパンクロックの絶叫やノイズミュージックの金切り音を気味悪く思っていた。オイラは大学3年次にこの賄い付きの下宿を出、彼はそのまま大学に進学して下宿を移って以来、まったく交流はなかったが、それから数年後オイラが大学を卒業しコンビニの夜勤のバイトをしていた時、彼の当時の不良仲間がたまたまコンビニのレジのオイラに気づき、スギモトが大学を休学してオーストラリアに留学したことを教えてくれた。オイラは扇風機の前の男は、当時の人懐っこい笑顔を失い暗い影こそあるものの、20年前のスギモトがそのままオッサンになったような風貌をしていた。オイラは少し遠慮がちに「…あの…スギモトさんですよね？」と声を掛けてみた。すると男は一瞬「あの時はどうも」と言った表情をしたかと思うと、次は「何も言うな」というようなしぐさをして「迷惑は掛けませんから、少し（自分をここに）置いておいてください」というようなことを言った。スギモトは当時不良仲間との付き合いがあったものの、田舎から出てきたオイラに比べると大人びていて、高校生の頃から大学生みたいなセリフを口にし、２つ年上のオイラなんかよりよほど落ち着き払ったところがあった。大学にも無事に進学し、おまけに留学なんぞした末には、将来ビジネスで成功してもおかしくないと思っていた。でも、目の前のスギモトは「年を取って売れなくなった田舎のホスト」といった風体のヤクザな格好をしていて、あれから20年近くの間“闇の世界”を渡り歩いてきたらしいことを示していた。オイラは彼が組織か警察に追われているのだろうと察し、何も問わずにそのまま放っておくことにした。オイラは、築40年は経っていそうな日が当たらない木造の下宿の暗い天井板を眺めながら、こんな年になってお互いにウダツの上がらない立場でこんなむさ苦しい部屋の中で再会するなんて因果な話だなどと思いながら、自分の過去と将来を想い陰鬱な気分であった。そろそろ起きて何か食おうか…と思って目を開けると、オイラは薄暗い白い無菌的な壁に囲まれた6畳くらいありそうな部屋のベッドの上で寝ていた。…そうか、オイラは今は北米の32階建てマンションの15階にある１BRに住んでいて、あの京都の日当たりの悪い賄い付き下宿の一室からは100万光年くらい離れた生活をしているのだった…ということをようやく思い出し、妙な安堵を感じた。額には垂れんばかりの薄ら汗を掻いていた。この蒸し暑さが昼寝をしていたオイラに学生時代のあの下宿の記憶を蘇えらせたらしい。あのスギモトが住んでいた隣の部屋の壁にはお札が貼ってあって、その昔学生がその部屋で自殺をしたとか言ってたよな…などということをふと思い出した。スギモトは元気にしているだろうか。下宿を賄っていた老姉妹はまだ生きているだろうか。

  2006.07.29

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  ンホンホ みどり先生

  （昨日のつづき）「できるかな」はたしかに欠かさず見てたと思うけど、決してオイラの一番のお気に入りというわけではなかった。オトナになってから知った「テレタビーズ」を別にすると、オイラが異常なまでに執着して見ていた子供番組はというと、何はさておき、いのうえみどり先生時代の「ロンパールーム」だな。「ロンパールーム」というと、先生の名前がみんな「みどり」なんだけど、それはたまたま初代の先生の名前が「みどり」だったから、それ以降の先生がみんな「みどり」を踏襲したんだよね。いちばん有名なのは、ケロンパの「うつみミドリ」か。…で、いのうえみどり先生時代の頃、オイラはもう小学校高学年だったのだが、何んせ、いのうえみどり先生が大好きで、休みの日はほんとに欠かさず見てたんだよね。例の「おやつの時間」ってあるじゃん。あの時間になるとジュースとか用意してきて、テレビのガキどもと一緒に飲んだりしてさ、最後の『鏡よ鏡よ鏡さん、みんなに会わせてくださいな』のときも、オイラの名前が呼ばれないかワクワクしてたよ、いい年こいて。当時は子供番組というと「ママとあそぼう！ピンポンパン」が酒井ゆきえお姉さんだった頃でさ、ビッグマンモスとかが小学校高学年の女の子のファンを獲得したりして、全盛期だったんだよね。オイラは学校では“ピンポンパン派”の連中と対立していたっけなあ。たしかに酒井ゆきえお姉さんのおでこはチャーミングだったし、工作の時間にセロテープを爪でしごく音はセクシーだったが、でも、オイラはあくまで「いのうえみどり先生」だったんだなあ。関係ないけどさ、酒井ゆきえお姉さんって、ついさいきんまですごいヘビースモーカーだったらしいよね。↑ヘビースモーカー（笑）しんぺいちゃん↑　いのうえみどり先生の後は「やまみどり」とかいう、先生らしくないやや派手なネーちゃんに交替になって、ガッカリしたっけなあ。ディスコ全盛期の当時はロンパールームのテーマ曲もディスコ調になっちゃって、子供たちをテーマ曲に合わせてムリヤリ踊らせてたよな、「♪ロンパランポン、ゴキゲン！」とか歌わせてさ(笑)。…で、ロンパールームはやまみどりを最後に“打ち切り”になっちゃって、その後は「なんじゃもんじゃドン！」とかいうくだらない番組に代わったっけなあ。くだらないも何も、オイラはその頃もう中学生だったんだけどさ(笑)。ロンパールームは｢ニコちゃん（とコマッタちゃん）」が主人公キャラだったけど、「なんじゃもんじゃドン！」は｢ナンジャーマン｣とかいう名前のモグラが主人公キャラだったよな。きっと何も考えてねーよな、このキャラを考えたヤツ(笑)。それはそうと、ロンパールームが打ち切りになる最後の週にさ、歴代のみどり先生が勢揃いするとかいう話があって、「…え、じゃあ、いのうえみどり先生に再会できるの!?」とか思ったんだけど、その頃はオイラももう中学生だったんだけどさ、ロンパールーム見るために学校サボろうかどうか本気で迷ったものさ。…で、最終回の日は登校してからもずっとソワソワしててさ、3時限目が終わった時点でふと「今、速攻で家に帰ったらロンパールームに間に合うな…」とか思って、2階の教室から雨どいをつたって自転車置き場に降りたら下で教師が待っててさ。さすがに「学校を抜け出そうとしたのはロンパールームを見るためです」とは言わなかったけどさ、殴られたよ、教師に。でもさ、オトナになってから、当時ロンパールームの最終回を見たっていう人に聞いたんだけどさ、歴代のみどり先生の中でもいのうえみどり先生だけは出演しなかったらしいんだよね、最後の週に。殴られ損だったよな(笑)。もう顔も思い出せないんだけど、どうしてあんなに好きだったのかなあ、いのうえみどり先生。いのうえみどり先生発見！　

  2006.07.12

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• ンホンホ ノッポさん

  おお、asahi.comのインタビュー記事にノッポさんが出とるやないけ。知っとるけ、「できるかな」のノッポさんって、昭和ひとケタ生まれの70代のジイさんやねんで。オイラのパパやママなんかよりずっと年上やねんで。あのチューリップ帽子かぶっとったら、30代のニイちゃんにしか見えへんやろ。ノッポさんといえば、「できるかな」に出演していた25年の間、最終回の最後のあいさつを除けば一度も番組中に喋ったことがなくて、ノッポさんを「聾唖者」だと思っていた視聴者はオイラを含め全国に30万人はいたらしいで。…でもオイラはもう９歳くらいから、ノッポさんが喋れることに気づいていたもんね。なぜかと言うと、ノッポさんが日テレの『オズの魔法使い』に「カカシ」の役で出ていたからだもんね。カカシの格好をしていればガキどもはこれがノッポさんだと気づかないと思ってたんだろうけど、オイラはちゃんと気づいてたもんね。それにしても、ドロシーの役をしていたシェリーってハーフの女優、どうしてるんかね。…しかし、ノッポさんが自分のパパよりもずっと年上のジイさんだとはまったく気づかなかったよ。でもさ、最終回のあいさつのときトレードマークのチューリップ帽を脱いだら意外にもハゲだったんで、「エ、この人、実はこんな年だったの？」とショックを受けた記憶はある。そうそう、｢ノッポさんの帽子の下はハゲ｣というのも、「昭和ひとケタ生まれ」に次ぐヒミツだよな。…でもさすがに誰も昭和ひとケタ生まれだとは思わなんだろう。あとさ、ノッポさんって京都生まれやねんで。太秦の貧乏芸人の息子だったらしい。「チャーリー高見」とかいってチャップリンのマネを芸にして喰ってた人だそうだけど、ノッポさんもパパにガキの頃から寄席に連れてってもらうとかして英才教育を受けていたらしいで。夏休みとか休みの間は、「できるかな」は欠かさず見てたよなあ。ゴンタ君も実にいいキャラだった。ポンキッキのムックなんかよりずっと味があった。4-5年ごとにぬいぐるみを交換してたからだろうけど、茶色味が微妙に違ってたよな。ンホンホ。

  2006.07.11

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  【10万ヒット記念】“翻訳可能性”とは何か

  10万ヒット記念インタビュー　「心斎橋ワタル（仮名）さんに聞く“翻訳可能性”とは何か」聞き手　心斎橋さん、はじめまして。心斎橋　はい、どもども。聞き手　本日はお忙しい中、旧友の急な依頼に応えていただきありがとうございます。心斎橋　いえいえ。…ま、ワタシの10万ヒットのときはどんなに忙しくても彼に出てもらうということで…(笑)。聞き手　昨日の予告日記では、トイモイさんと対談されるとか鰻坂さんの手記を載せるとか書いていたようですが、結局は“真打ち”にご登場願うということで、郡山本人からご指名がありまして…。心斎橋　…いや、断られたらしいですよ、どちらからも(笑)。本人たちが言ってたんだけど。『あの人の日記に登場したらイメージダウンだ』って(笑)。聞き手　（心斎橋氏のコメントを無視して）…さて、本日は郡山ハルジのウェブサイト10万ヒット記念にかこつけて“翻訳可能性”についてお話を伺うということになっていますが、まずは10万ヒット記念についてコメントをいただけますか。心斎橋　そうですねぇ。なんだか最近不調だとか言ってますけど、このところまたマメに更新し始めたみたいで…2ヶ月前に池袋で会ったときも待ち合わせの時間まで雨の中サンシャイン60ビルの周りを１時間くらい走り回っていて、至って元気そうだったし、まあ、これからもテキトウに元気で続けて欲しいですねぇ。聞き手　学生時代からのお知り合いだそうですが、初めて同氏に会ったときのことを覚えてらっしゃいますか？心斎橋　…ああ、たしかあれは美術サークルの展覧会場だった京都の画廊でしたかねえ。黒のタンクトップに黒のタイトジーンズ。年中そんなカッコでしたけど。誰かの差し入れのケーキに付いてたドライアイスを喰って煙を吹いてましたね。聞き手　先日の日記だと自分の排泄物を口にするような人だそうですから、ドライアイスなんて序の口ですね。心斎橋　そうそう、排泄物といえば、その年のインド旅行の後半は彼とずっと一緒だったんですけど、インドに行く前に「予行練習だ」とか言ってクソを手で拭いて自慢してましたねぇ。聞き手　…ははぁ、「排泄物」に「インド」ですか。同氏を語る上でのキィワードですね(笑)。心斎橋　彼のサイトにも記事が載ってますけど、彼とはインドで死に掛けた仲で。ワタシはバッド（トリップ）はなくって、せいぜい自分の前世に会ってきた程度ですが(笑)、彼は「オレを、殺してくれェーッ！」って絶叫してましたねぇ。聞き手　排泄物にインドに「死」ですか。またしても同氏のキィワードですね(笑)。…でも、郡山さんって、ホントに日記で読むような、あんな方なんですか。心斎橋　…そう。まだ美化してるくらいじゃないですか日記では(笑)。聞き手　心斎橋さんは一見して常識をわきまえた業界人という感じで、クソとインドと死がキィワードの人とこうしていまだに付き合いがあるというのはちょっと、というかかなり、違和感がありますが…(笑)。心斎橋　でしょ、でしょ？まあ、それくらいの度量のある人でないと、広告業界みたいなところでは勤まらない、というのはありますがね(笑)。聞き手　…話の軌道をちょっと修正しますが、しかし、「クソ・インド・死」の人の本業が「翻訳・通訳」というこの不可解な結びつきを、永年にわたる友人である心斎橋さんに少し解説いただけないでしょうか。心斎橋　まあ、クソ・インド・死の３拍子が揃った人間でもなにか取り得があるもので、彼の場合それはたまたま「言語能力」だった、というだけじゃないですか。聞き手　(笑)心斎橋　…あと言えるのは、彼は東北ナマリのコンプレックスがあって、相手の喋り方に合わせようという強迫観念がありますね。英語も海外生活する中で強迫的に身につけたのではないかと。聞き手　「クソ」「インド」「死」の次は「田舎者」ですか。これでついにキィワードが出揃いました(笑)。心斎橋　…そういえば、彼が言うには、大学に進学して関西に来たばかりの頃、周りに迎合しようとして見よう見マネの“関西弁”を喋ってたらしいんですけど、地元の連中にそれをバカにされて以来、意地でも標準語で通すようになったとか言ってましたね(笑)。聞き手　ははあ。それで思い出しましたが、今日のテーマである『翻訳者の使命』を著したベンヤミンもドイツの田舎の出身で、自身にも仏独の翻訳作品がありますね。心斎橋　そうですね...。聞き手　そんな彼の思想はドイツ浪漫主義並びにナチスドイツの台頭と大きな関連があると思われますが、手始めにその辺についての心斎橋さんのご意見をお伺いしたい。心斎橋　あ、もうこんな時間かぁ。すいません、すぐ次のアポがあるんで…。いやあ残念だなあ、ベンジャミンについての持論を開陳できなくて。じゃっ。（さっと席を立って出口に急ぐ）

  2006.06.15

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  鬼畜からアナーキーへ

  誰から要望があったワケでもないが、たんに気分的なもので鬼畜シリーズと銘打って４日連続鬼畜なテーマまたはコンテンツで日記を続けたが、３日目の「ドイモイさんの日記ベスト10」ではドイモイさん本人を別とすると鬼畜日記常連の糞尿パピエ史子さん以外誰からもレスがつかず、昨日の「SAW」を観た感想日記に至っては誰からもレスがなかった。私自身、鬼畜シリーズ４日目の結論ではついに日本の犯罪史上最悪かもしれない「女子高生コンクリート詰め殺人事件」にまで話が及び、視覚的＆心理的両面から強烈に効くSAWのボディ･ブローを食らってただでさえ弱っていたところにあんな世界一悲惨かも知れないいたたまれない事件のことを思い出し、さすがに鬼畜ネタの食傷状態になってしまった。自分で気持ち悪くなるくらいだから、訪問者がレスする気にならないのは当然と言えよう。さて、きょうは別に鬼畜な話をするつもりはないのだが、記す前に考えてみるとやはりまたしても良識を逸する世界のことであることに気づかざるを得ない。私はまた会社の命で今週末欧州に出張せねばならないのだが、その出張先がコペンハーゲンなのである。私は15年前、アメリカの大学で美術専攻のヒッピー学生をしていたときにコペンハーゲンに来たことがある。当時何しにコペンハーゲンに来ていたかというと、当時ノルウェーのオスロに夏休みのあいだ短期留学していた大学のガールフレンドを訪問しようとふと思い立ち、しかしカネがなかったので、ノースキャロライナからオスロまで、アメリカから欧州に渡る空路以外のすべての行程をヒッチハイクで半月かけて踏破したのであったが、コペンハーゲンにはその行程で滞在したのであった。...滞在といっても、物価がバカ高かったのでコペンハーゲンにはその時２泊しかしていない。市内のチボリ公園とかダウンタウンをブラブラした程度の記憶しかないのである。...で、それから何日か後、見事にオスロに到達してガールフレンドと再会したの私(当時25歳)は彼女(当時19歳)からある話を聞いて、カネをケチって公園をブラブラした程度でコペンハーゲンを素通りしたことを後悔した。その話というのは、Christiania(クリスチャニア)のことである。クリスチャニアというのは、デンマークの首都のど真ん中にありながら、“自治区”としてデンマーク政府の管轄の外にある「ヒッピーたちの作った独立国家」である。彼女は私が素通りするその１ヶ月くらい前に友人たちとコペンハーゲンを訪問していて、その時この「ヒッピー自治区」を観光したらしいのだが、彼女の話によるとクリスチャニアにはちょっとした“お約束”があるだけで法律がなく、ドラッグ解禁、ヌーディストもＯＫ、しかし自動車は立入禁止で道はほとんど舗装されていなくて、主な交通機関は自転車という、ゲージュツ家やアナーキストどもによる一種の実験国家なのである。グランジでオルタナティブでヒッピーがかったパンク野郎だった当時の私はそんな「何でもあり」の世界の話を彼女から聞いて、そんなヒッピーのメッカを表敬訪問しなかったことを悔いた。そして、いつかガールフレンドとともにクリスチャニアを訪れよう...などと思っているうちに月日は流れ、そのガールフレンドはとっくに結婚し(いまでは34歳かあ)、私はといえばふと気がつくとネクタイを締めた独身のサラリーマンになっていたのであった。...で、今回のコペンハーゲン出張は単独ではなく日本人の上司も一緒なのだが、仕事の合間を縫ってビジネススーツ姿でクリスチャニアを表敬訪問すべきか、ヒッピーコミュニティの空気を吸って当時を思い出し仕事を放棄してしまいたくならないよう、おとなしく上司と一緒に美術館でも訪問する程度でガマンしておくか、思案中なわけである。(終)

  2006.02.21

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  年賀状の思い出

  ふと気づいたのだが、今年はついにクリスマスカードや年賀状を1通も出さなかったし、誰からももらわなかった。39年間生きてきて、これはたぶん初めてのことだと思われる。これまでは、日本の知人に年賀状を出さなくともアメリカの友人にクリスマスカードを出したとか、こちらからは年賀状もクリスマスカードも出さなくとも誰か彼かからカードや賀状が届いたものだ。近年は“Ｅカード”“電子年賀状”といったサービスを利用し、出来合いの同じような電子カードを複数の友人に同時に送信していたが、今年は年末に例の「北極圏旅行」の準備に追われて電子カードさえ出さなかったところ、ついに電子媒体・紙媒体どちらの年賀状も届かなかった。そういえば、ふと思い出したのだが、日本の大学生時代、美術サークルの同級生から「今年は僕らのために死んでくれ。」と書かれた年賀状をもらったっけなあ。しかも丁寧に「これは決して冗談ではない。」との説明書きまであった(笑)。実に丁寧に描き込まれた酔っ払った浮浪者のオッサンのイラストまで付いていた。この男がどうしてオイラに「冗談でなしに、本当に死んで欲しい」と思ったのかはよく解からない。仲のいい友人だったし。前の年にその美術サークルの合宿で同級生が水死したのを目の当たりにして以来オイラが死という観念に取り付かれていたのを見て、「次はオマエの出番だ。俺たちにまたあの衝撃を与えてくれ」と言いたかったのかも知れない。いずれにしても、オイラがこの年賀状をもらった後も彼とはそれまでどおりの交友を続けたし、むしろ親交を深めたと思う。 そういえば、これも思い出したが、オイラがこの「死んでくれ」の年賀状をもらった年に学友や美術サークルの仲間に出した年賀状は、フランス世紀末画派の巨匠デルビルの描いた"スチュワート・メリル夫人の肖像"（上掲）のコピーを年賀ハガキに貼り付けたものであったっけなあ。オイラには当時まだ人並みの付き合いや社交というものが存在したので社交辞令として仲の良い学友やサークルの仲間に年賀状を出したのだったが、一部の人たちからは「こんな不吉な年賀状、年始から縁起が悪い！」といった不評を買ったものである。あれから20年弱、もう年始にいきなり「死んでくれ」と頼まれることもないし、オイラ自身も他人を不快にすることもなくなったわけだ。まさにオイラの人生の選択を象徴しているよなあ。それにしてもあの「死んでくれ」の同級生（コイツは合宿中の同級生の水死の話で「ノンシャランなヤツ」として登場する男なのだが）は元気かなあ。

  2006.01.18

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• フリーマン VS サラリーマン

  たった１回しか会ったないけど、ここ2年来の(鬼畜系)楽天仲間である Pinkoysterさんの日記を見に行ったら、ついさいきん会社辞めて、もうすぐフィリピンに移住しちゃうんだって。今日の日記では、クールで硬派で鬼畜な紅牡蠣さんがめずらしくも、所属をなくして“フリーマン”になった不安な現在の心境を吐露していました。あんまり自慢になりませんが、ぼくは日本の大学を卒業してから就職せずに渡米し、アメリカの大学を卒業してから現地就職したクチなので、「労働ビザ」のスポンサーになってくれる会社をジプシーのように転々とした過去があり、結果としてここ10年やそこらの社会人生活で4回も仕事を変わっています。言い換えると、ぼくは少なくとも成人してから4回は“どこにも所属していない状態”をケーケンしています。大学4年生のときに一切就職活動をせず、卒業してからもそのまま学生時代からのつづきのコンビニのバイトだけというフリーター生活に入ったときは、たしかにちょっぴりドキドキしました(笑)。だって当時は「フリーター」なんて言葉さえなかったし、まだバブルの最中だったから仮に四流大学の学生であっても「卒業して就職先がない」なんてことはまずなかったのです。卒業生謝恩会の会場で複数の教授が長髪のオイラをつかまえて「この先どうするの」と心配そうに聞いてきたのを覚えています。…まあ、当時は地道にバイトをして、カネが貯まったら渡米して大学に入ってあっちで学位を取って就職しよう…なんて程度のビジョンしかなかったんですけど。でも、「フリーマンの不安」と「サラリーマンの苦痛」を比較したら、当時の選択は明らかに前者だった。あっちで大学を卒業した後、引越先のNYでずーっと就職先が見つからなかったあの頃は、かなりハラハラしました。なんせバブルの頃は運が良ければあっちの大学を卒業していなくてさえ「労働ビザ」のスポンサーになってくれるような日系企業が多数日本人労働者を探していたので、渡米した頃は「アメリカの大学の学位を持ってれば、もう現地就職なんて楽勝」とナメていたのでした。ところがぼくがアメリカの大学を卒業した頃はバブルは崩壊して、日系企業がアメリカから撤退している最中でした(笑)。短期・長期のバイトで喰いつないだ末になんとかアメリカの会社に「たんなる一アジア人」として薄給で雇ってもらったのは学生ビザが切れる数週間前で、貯金の残高も1万円を切ってましたよそう言えば。あの「身寄りのない異国での“フリー”の日々」の後では、どんなに薄給でも「NYでサラリーマンができる！」という日々は本当に幸せでした。30歳を過ぎて6年ぶりに帰国してから就職先を見つけるまでの半年間は、不思議とハラハラしなかったし不安もあんまりなかった。「30過ぎたら再就職はタイヘン」とかみんなに言われましたが、昼間は実家で2歳の姪の子守をして夜は週3-4回倉庫の荷積みのバイトをする「フリーマン生活」にあんまり不安を感じてませんでした。おもえばあれは、もはや外国みたいになってしまった母国で「ワーキングホリデー」をしている感覚だったんだなあと思います(笑)。まあ、単身海外でサバイバル生活を経験したおかげで、怖いものがなくなっていたのもある。むしろ不安だったのは、その後東京で就職してサラリーマンをしていた頃です。会社からは、日本でもアメリカでも使えて、(客の前に出す仕事以外なら)任された仕事は何でもある程度こなせるのを重宝されいつも甘やかされていたのですが、組織に属してはいても、いい年こいて何ら専門性が身についていない自分が不安になり出したのでした。元パンク野郎の分際でアフター５に通訳学校に通い始めたのは「組織を出たら何も残らない」自分がイヤになったからなんだと思います。その後、その会社を辞めて“フリーランス通訳・翻訳”の生活にワクワクしていたのは、せいぜい最初の3ヶ月くらいだったでしょうか(笑)。学生時代に試験の前の晩以外に自宅で勉強したことのない、自律のできない意志の弱い人間には“フリーランス通訳・翻訳”生活など維持できないことに気づくのは時間の問題でした。自分でスケジュールを管理し資料を整理し、通訳や翻訳の仕事を割り当て納期をこなしていくなんて、不精モノのぼくには所詮ムリだったのです。言い換えれば、あんな散らかったワンルームマンションの一室で、週明けの通訳仕事の準備や来週が納期の翻訳仕事をコツコツとこなすなんてムリな話だったのです。フリーで生きていける前提、それは「自律」だったのでした。…で、けっきょく現在サラリーマンとして「社内翻訳・通訳者」をしている自分は、フリーマンとサラリーマンの葛藤の末にうまい着地点を見つけたもんだなあ、と思わざるを得ません。...ただ、今の会社に入って5年以上が経過し「サラリーマン」と「翻訳・通訳者」としての比重が次第に前者に傾いてきた結果、さいきんはまた「組織を出たら何も残らないツブシの利かない“サラリーマン”」になりつつあるような気がします。またちょっとしたキッカケでいつ（望む・望まないにかかわらず）“フリー”な状況になるか分からない昨今ですから、そんなときに途方に暮れないよう、組織に依存せずに「自律」と「専門性」を維持・向上しなきゃダメだなあ、とおもいました。それにしても、この年でフィリピンに移住なんて度胸はぼくにはないなあ。いつか遊びにいくまでガンバってね紅牡蠣さん。

  2005.11.23

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• ブス軍団の思い出

  北朝鮮「美女軍団」、韓国男性を魅了　アジア陸上http://www.asahi.com/sports/update/0904/002.htmlasahi.comを見ていたら、アジア陸上選手権に将軍様の命により送り込まれた北朝鮮の「美女軍団」の記事が写真つきで掲載されていました。なんで「軍団」なのかよく分かりませんが(笑)、たしかに軍隊みたいにみんな同じ格好で、髪型や背格好までそっくりですね。なんだか、さいきん北朝鮮では、「軍団」のみならず本当の「軍隊」でも美女を集めているそうですね。ぼくは、将軍様の命で美女ばかりが連れ去られたあとに残った北朝鮮じゅうの村や町にブスばかりが残ってしまい、村の独身男性たちが不満を抱いていないのかと余計な心配をしています。いちど「美女軍団」にスカウトされ、村では考えられないような待遇を受けてしまえば、彼女たちも二度と村や町に帰って貧しい農民の独身男性なんかと結婚しようとなんて思わないと思います。ところで、いつも「美女軍団」の記事を目にするたび、ぼくは中学時代に学校にいた「ブス軍団」のことを思い出してしまいます。ぼくの学年には、容姿が顕著に劣り、しかも性格も暗くて学業成績も運動もパッとせず、同性にさえ相手にされないような女の子たちがクラスの壁の越えて連帯し、5-6人でいつも群れていました。この女の子たちが、みんなから「ブス軍団」と呼ばれていたのでした。ぼくの通っていた学校は宮城県仙台市にありましたが、皆さんもご存知のとおり、仙台というのは名古屋と水戸とともに「日本三大ブス」として知られているブスの名産地です。これは、同じ東北でも岩手とか山形から来た人たちさえが「仙台は本当にブスですね」と口を揃えて言うくらい顕著なものがあります。何が言いたいのかというと、すでに“標準”がブスである仙台市の中で、その標準のブスと比較しても明白なくらいこの「ブス軍団」の人たちがスゴいブスだった、ということです。三島由紀夫の「豊饒の海」の最終巻の脇役に、「目が潰れているわけでも、痣があるわけでも、火傷の引きつりがあるわけでもないのに、誰もが例外なく振り返ってマジマジと見入っててしまうくらい醜い、醜さの最大公約数のような娘」が登場するが、ぼくがこの小説を読んだときに頭に思い描いた女性像は、この「ブス軍団」の面々でした。ぼくはあれから25年近くを経たいまでも軍団メンバーの数名の顔を鮮やかに想起することができますが、あれは今こうして振り返ってもスゴかったなあと思います。ぼくがこのブス軍団のことで今でも忘れられないのは、3年次にぼくのクラスメートだったブス軍団のNo.3と目されていた人のことです。ある日の昼休み時間、このNo.3が女子便所の前の廊下で、いろいろなクラスの女子たちから袋叩きにされていました。ブス軍団の女の子たちは、同学年の男子たちから中傷されたり虐げられることは日常茶飯事ではありましたが、女子たちからは無視こそされれど、暴力をふるわれるようなことはなかったので、ぼくは少しだけ同情するとともに、この現象にとても興味を持ちました。あとでほかの女の子たちに聞いてみたら、彼女たちは興奮した口調でこう言いました。「あの子、“ブス軍団”の分際で、Sクンにラブレターなんて出しやがったんだよ」。ぼくはその話を聞いて、苦笑せざるを得ませんでした。Sくんというのはバスケ部のレギュラーで、背が高くて甘いマスクながら女の子たちに決して甘い顔をせず、男子の仲間ばかりとつるんでいるようなカッコいい少年でした。要するに、No.3がボコボコにされていたのは、女子の誰もが憧れていながら「自分なんてどうせ…」と思い告白するのをじっと忍んでいたSクンに、自分よりも明らかなドブスが抜け駆けしたことに、女子の誰もがガマンならなかったのです(笑)。ぼくは思いました。ブスだって、夢を見たり憧れたりする権利がある。仮に99.9%可能性のない一方的な恋慕であったとしても、自分の気持ちを伝えるくらいのことはどんなブスにも許可してやってほしい。そもそもＳクンくらいの美少年の高みから見れば、“仙台市の標準レベル”のブスも“ブス軍団”のブスも「目クソVS.鼻クソ」の差異にほかならないかも知れない。No.3の恋慕が成就する可能性はたしかに0.1%かも知れないが、“一般女子”の場合だって可能性は0.5%程度に過ぎなかったのではないか。ぼくはこの事件によって「女はこわいんだなあ」と思うとともに、No.3の根性に少しだけ敬意を抱いたのでした。それにしても、日本も北朝鮮に対抗して日本中のブスを募って「ブス軍団」を結成し、サマワに送って自衛隊の人たちを応援させたり、あんまりルックス的にパッとしない「サッカー」とか「柔道」とか「ソフトボール」とかいった女子スポーツの応援に起用したら、（実際の応援の効果は保証の限りではありませんが、）きっと世界中のメディアが取り上げてくれる...ような気もします。（そういえば20年以上も昔、「笑っていいとも」でタケシが毎週ブスのコンテストのコーナーをやってて、「♪ブースブスブスブス、オマエはホントにブス、どーしようもないブス」とかいうテーマ曲を歌ってませんでしたっけ？）

  2005.09.03

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  ボブ、チャールズ＆イーキンス

  8月3日の日記でご紹介した39歳会社員の会議中のラクガキについで、8月13日の日記で26歳プータロー直前の暇つぶしのラクガキをご紹介したついでに、学生時代のほかのラクガキを紹介する予定でした。その後、リクエストが誰からもありませんでしたが(笑)、さいきん日記のネタがないので、学生時代の(もう少し時間をかけた)ほかのラクガキで、訪問者の方によろこんでいただくことにします。私が勝手に作った「ボブ」というキャラクターが、見晴らしのいい丘の上で十字架に掛けられ、それを犬が下から見守っているという絵ですね。何かの宿題で描いた絵です。ボブはなんだかうれしそうです。“夢の部屋”という題の宿題で描いた絵ですね。誰かヒマでカネのあるヒトに実現してもらえないでしょうか。ちなみに左手の壁に掛けられた絵とその下の犬の置物は、(私が作った)実物が存在します。これは8月13日のノートに描かれていたヒマつぶしのラクガキのひとつですね。「ダイアナ」というキャラクターが、「チャールズ」というパートナーに「こっちにいらっしゃい」と呼んでいる絵です。その隣で、「トマス・イーキンス」というキャラクターが、動物の性器のようなものをあらわにしている絵ですね。トマス・イーキンス(注．19世紀のアメリカの画家)が露出狂だったという記事を読んで描いた絵だったと思います。今日はこれだけです。少しはよろこんでいただけましたか。ヒマなヒトは、ラクガキでない真面目な作品もあるので、見てください。

  2005.08.31

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  落書き帳より(大学時代の)

  アメリカでアートの勉強をしていたころの落書き帳が出てきた。そろそろ大学を卒業して就職先を探し始めるという頃に描いた落書き。社会人のファッションをもっと面白くできないだろうか、と真剣に考えた成果である。おむつがキュートである。「Good morning.」とあいさつしている。礼儀正しい。カバンの中に花を挿しているのが愛らしい。ちょっと下げて履いたズボンのハートマークがオシャレだ。1992年の12月17日に何があったのか。卒業を前にした不安な心理の産物であろうか。なぜと言われてもなあ。13年後の落書きにつながる白痴的な美意識がある。我ながらすてきだ。（つづく）

  2005.08.13

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• ぼくのお父さんの思いで

  父の日に、楽天広場の仲間たちが、父の思い出を日記に書いているのみたいなので、ぼくも、日記に書くことにしました。ぼくの父の思い出は、ぼくが小学２年生のときに、お父さんに捨てられそうになったことです。ぼくは、幼稚園に入るか入らない頃から、お父さんの読んでいるオトナ向けの週刊誌を見つけてきては、グラビアの金粉ヌードの写真を見て、世紀を大きくしていました。幼稚園に入る頃には、自分の容姿に不満を持ち、母親に自分の容姿の責任を問うなどしてしていました。こんな風に、あまり子供らしくことから、ぼくのことをよく知るオトナからは、あまり愛されなかったことは、誰でも容易に想像できると思います。小学校２年生のときも、容姿のことはさておき、我が家の経済状態やら、両親の厳格なしつけや、休日の家族サービスがほとんど皆無だったことなど、いろいろと我が家に不満があって、ある日何らかの口論か叱責をきっかけに、両親に対して「ぼくは、こんな家に生まれてきたくありませんでした。もっと裕福で楽しい家に生まれてきたかったのです」と主張しました。ぼくが親に対して、「こんな家に生まれてきたことはほんとうに残念です」といったことを主張したのはこのときがはじめてではありませんでした。だいたいぼくがそんなことを言うたび、ぼくの親は、「じゃあ、明日になったらどこかに捨ててきてやるから」…などと言うのですが、そんなセリフの応酬はえてして一時的な感情に突き動かされたものであって、朝になると双方ともゆうべは何もなかった顔をして朝ごはんを食べたものでした。しかし、このときだけは違いました。こ憎たらしい小学２年生だったぼくは、その時も親が「じゃあ、明日になったらどこかもっといい家にもらってもらえるよう、捨てに行く」などという常套句を返したのですが、それに対し、「そんなことを言うけど、どうせ明日になったら忘れたフリをして何事もなかったような顔をするのではありませんか。こんどはそうならないように、この紙に『明日になったらぼくを捨てに行くこと』と書いておきます。忘れずに実行してください」…などと言って、そのときの親の発言をメモ帳に書き、それを枕元に置いて寝たのでした。翌朝、ぼくは親に、そのメモ書きのことを親に念押ししてから登校しました。その晩、いつも帰宅の遅かったお父さんが、ちゃんと夕食に間に合うように帰宅しました。ぼくは夕食の食卓にそのメモ書きを置いていました。お父さんは、「じゃあ、ご飯を食べ終わったら、捨てに行くから」と言いました。その晩、どのような気分で夕食を食べたのかは、あいにくよく覚えていません。たぶん８時過ぎか８時半くらいだったと思います。お父さんは、ぼくに家を出る準備をするように促しました。ぼくは、自分が言い出したことなのだから、いまさら「やっぱり止めにします」とも言えず(笑)、お父さんに促されて玄関を出ました。もしかすると、ぼくの祖母や母親が、父とぼくを止めるようなことを言ったかも知れません。でも、父はそれを振り切って、ぼくの手を引いて家を出ました。お父さんは、家を出るとまず国道に出て、ほとんど無言のままぼくの手を引いて、仙台の市街地の方面に向かって国道沿いに歩き続けました。2キロくらい歩くと、陸前高砂駅を通り過ぎて、七北田側に掛かっている橋に来ました。小学２年だったぼくの行動半径は、だいたいこの橋がリミットでした。なぜなら、橋の向こうは、別の小学校の学区になるからです。さらに１キロくらい歩くと、梅田川に掛かっている橋まで到達しました。もうこの辺になると、小学２年のぼくがぜんぜん来たことのない場所でした。それに、ここから先の橋の向こうは、工業団地みたいになっていて、住宅や人の往来がなくなるのです。ぼくは、ついに見慣れた風景がなくなり、また道を歩く人も居なくなって、いよいよ心細くなってきました。人の往来のない国道沿いの歩道を、お父さんに手を引かれたまま、たた無言で進んでいきました。心の中では、「もうこのような意地の張り合いはやめませんか、お父さん」という妥協の気持ちと、「自分が言い出したことなんだから、腹を決めて、せめて今晩くらいは外で過ごす覚悟をしなければ」という相反する気持ちがありました。率直に言うと、ぼくは、お父さんが、ぼくを本気で捨てるつもりはないだろう、という気がしていました。生意気なことを言うぼくを、実際に手を引いて外に連れて行くことで、こらしめてやろうと思ったのだと思います。でも、心の片隅では、「…でも、お父さんも意地になったら、“売り言葉に買い言葉”で、ぼくをその辺に放置する程度のことはするだろう」とは思っていました。そんなとき、たまたま交番を通り過ぎたのか、あるいは巡回中のお巡りさんだったのか忘れましたが、お巡りさんに呼び止められました。無理もありません。深夜に、住宅地からだいぶ離れた産業道路のあたりを、オトナが子供の手を引いて無言で歩いているのですから。お父さんが警察官にどのように事情を説明したのかは覚えていませんが、ぼくらが親子だというのを確認すると、それ以上事情を追及せずに去って行きました。お巡りさんが去ってしばらくして、お父さんが、「どうする。このままもっと遠くまで行くか。今日のところは家に帰るか。」といった旨のことを言ってきました。ぼくは、「家に帰るか」のセリフのところで、コクンとうなづきました。妥協です。ほんのちょっと先には自衛隊の駐屯地が見えていたので、自宅を出てから6-7キロくらいは離れていたと思います。お父さんは、国道を東に走るタクシーを止めて、ぼくの手を引いてタクシーに乗り込みました。ぼくとお父さんは、無言のまま、タクシーで自宅に向かいました。家に着くと、もう10時半くらいになっていたと思います。あとのことはよく覚えていません。ただ、歩き疲れて、すぐに眠りについただろうことは間違いありません。そして、翌朝は、やっぱりゆうべ何もなかった顔をして、朝ごはんを食べたに違いありません。

  2005.06.19

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• ピアノ中年 傷心の記憶

  何年ぶりかで人前でピアノを弾いた。上司の新居にお招きに預かっただが、「仕事」という明確な目的を離れ、プライベートで職場の同僚や上司に会っても共通の話題がなくて気詰まりだったので、「リビングにある素敵なピアノ」を口実にして席を立ったのだ。昔バンドをやっていた事実は皆に公言していることなので、オイラが「ピアノを弾く」と言い出しても誰もそれほど驚かなかったが、弾き出した曲がサティとかだったのは「東北出身の元・応援団幹部」のイメージにはちょっと合わなかったようである。いかにも「お坊ちゃま」らしい男がピアノを弾き出してもそんな野暮なことは訊かないのだろうが、オイラがピアノを弾くとしばしば尋ねられるのは、「どこで習った？」という質問である。『ジムノペディI』はフリーター時代に心斎橋ワタルに運指を教えてもらったものだが、ピアノ自体は独学である。しかも、レパートリーのほとんどはアメリカに留学してから大学の空き教室のピアノで夜中に練習して覚えたものばかりである。…しかし、厳密に言うと、鍵盤を弾くのはまったく独学だったわけではない。それはオイラの生まれて初めてのザセツの記憶と結びついているため普段は記憶の奥底に眠っているが、オイラは幼い頃、一時オルガンを習っていたことがあった。オイラを妊娠中、胎教の目的でクラシックを聴かせてオイラの母親が、ある日子宮の中のオイラが音楽に合わせて「指を動かし」ているのを知り、「この子にはピアニストの才能がある」と確信したのがコトの始まりであった。母親は、オイラが幼稚園に入ると同時に、ホントはピアノを習わせたかったがまだカネに余裕がなかったので、代わりにオルガンを買って「カワイのオルガン教室」に入学させた。なにぶん昭和40年代の田舎のことであるため、オルガンなど習わせられているのはみな女の子ばかりで、しかも多くはどちらかと言えば“教養のある”家庭の子女であった。その教室に在籍している男の子はオイラを含めたった2人であった。オイラは母親の確信を証明するために、週3回のオルガン教室にサボらずに通い続けたが、1年も経たずにオイラ以外唯一の男の子は脱落し、オイラが唯一の少年になってしまった。オイラはなんとか女の子のクラスメートたちに遅れを取らぬよう、難度の高い楽曲にもついていったが、我知らずある段階から無理（＝ズル）をするようになっていた。つまり、楽譜を読解するのを断念し、耳に頼って楽曲を頭に入れ、“指さぐり”で適切な音を出す鍵盤を覚えて演奏するようになっていたのである。クラスの最中は楽譜を見ているフリをするよう努力していたが、実際には鍵盤を目で追って演奏いたのであった。しかしこの無理(＝ズル)も長くは続かなかった。楽曲がやがて「右手のみ」から「両手」へ、さらには左手が「単純な和音」から「右手とリズムの異なる単音」へと発展していくに連れ、重なる音を耳で峻別して両手の適切な鍵盤を瞬時に見つけ出すやりかたではとてもついていけなくなってきた。結局、楽譜を読めないオイラがみんなについていけたのは「左手が和音」の楽曲を演奏する小学校1年生までで、2年生に上がる頃には完全に落ちこぼれ、母親に泣きを入れてオルガン教室を止めさせてもらうに至った。「将来はピアニスト」を信じていた母親が、凡才の息子の口から「辞めたい」という言葉を聞いて発した言葉は、8歳児にとってはかなりキツイものだった。「せっかくこれまで高い月謝を払ったのに！」といういかにも貧乏たらしい立腹の叱責に始まり、「お腹の中にいた頃はほんとに天才だと思ったのに…」といった落胆まじりの回顧が続き、しまいには「しょせんカエルの子はカエルなのね」といった自嘲の形をとった侮蔑で終わるであった。…などという痛ましい体験を、「どこで習ったの？」という質問を受けるたびに思い出してはつい「遠い目」をしてしまういまや40手前のオイラである。しかし、オイラが再びピアノを弾くようになったのが日本を離れたタイミングと一致しているのは、意味のあることだったんだなあ...とコレを書きながらちょっと思った。（終）

  2005.06.09

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• 人生行路の錯綜(3)

  日本の大学時代のサークル仲間Ｍと15年ぶりに電話で話したエピソードに関連して、内輪以外には面白くもない思い出話をおとといの日記からツレヅレなるままに延々と書いている。当時の友人とこんなに久々に話したのに、ぜんぜん違和感なく長々とつもる話ができたのは、まるでタイムマシンに乗って15年前に戻ったような感覚だ。しかも妙な感慨がある。…ま、もし彼が大学卒業後、オイラにはまったく縁のないカイシャに入社して、オイラの知らない人と結婚して家庭を持ち、当時の彼からは想像もできないような世帯じみた中年サラリーマンになっていたなら、きっと電話なんかで話すこともなければ、無理に話したところで「15年」という埋めようのない年月の長さを思い知らされただけに留まったに違いない。すると、この「感慨」というのは、要するに自分が「10年1日のごとし」の人生を送っているので、「当時と変わらない友人」を発見して安堵しているだけなのかも知れない(笑)。「15年」と「10年1日のごとし」で思い出したが、オイラのちょっとした特殊能力に、やたらと昔のことを詳細に覚えている、というのがある。たとえばオイラは、幼稚園の時の集合写真を見たら、全クラスメートの苗字と名前を正確に言えるし、それぞれのクラスメートについての何らかのエピソードを話せる。こんなことがあった。大学に進学した後、冬に実家に帰省して市内の商店街を歩いていたとき、幼稚園のクラスメートで、年長クラスの途中で転校(“転園”というべきか)していった「タカハシ・マ○ヒロ君」らしき青年がアーケードの向こう側から歩いてきた。ほんの数メートルまで接近した時点で、あの面影は彼に間違いない、とオイラは確信した。実に15年ぶりである。懐かしさのあまり彼に声を掛けた。「タカハシ・マ○ヒロ君ですよね…？」立ち止まりかけた彼は、ちょっと驚いた表情で私の顔を見ながら、「誰だっけ、コイツ…？」という顔をしているので、オイラは説明を加えた。「ほら、中○幼稚園の、ゾウ組の、○○○○(本名)…」そこまで言いかけて、彼はちょっと照れた顔をしながら「いい加減にしてくれや…」といった表情＆ジェスチャーでその場を立ち去った。あれは確かにタカハシ君であったが、「幼稚園の同級生」とか言われても彼にとっては「前世の記憶」と同様で今の自分には関係のない記憶であり、当時のことを思い出させようと声を掛ける“同級生”は「メーワクな変人」にほかならなかったのであろう(笑)。「けんみんの森」への遠足でサンドイッチとおにぎりを交換した記憶は、彼の脳内では不要物となってとっくの昔に焼却済みだったわけである。逆に言えば、オイラのこの「特殊能力」というのは「記憶力」がどうのというよりも、いつになっても過去を生きていることの証左なのかも知れない。過去を「不要物」として廃棄して「先に進む」ことができず、どうでもいいコトやモノをいつまでもポケットの中にいっぱい入れたまま年をとっているということか。「肛門期固着」というヤツですね、フロイト先生。...話を戻すと、Ｍやその夫人となった○○○さんと過ごしたあの頃というのは、親友が自殺し、そのすぐ後に訪れたインドで“インド病”に侵されて帰国し、まだバンド活動を始める前のかなりヤケクソになっていた時期だ。一歩間違ったら「還らぬヒト」になっていたかも知れないその頃に、○○○さんをはじめとする極めて心の広い先輩たちと知り合うことができたのは、ある意味とても幸運なめぐり合わせだったと思っている。そんな「明日なきパンク野郎」だったオイラしか知らない当時の知人にしてみれば、スーツを着てサラリーマンをしている今のオイラなんて「サギ」のようなものである。デカダン極まりない生活をして「三十前にどっかの外国で野垂れ死」ぬ予定だったヤツが、40歳近くまで生き長らえ、マラソンして仕事に励んでるんだもんなあ。…でも、ゾウ組の同級生たちにしてみれば、無遅刻無欠席の天真爛漫な健康優良児だったオイラが「明日なきパンク野郎」だなんて言っていたことこそが「サギ」のようなものだったのか(笑)。（…なんだかちっとも話がまとまらないなあ。とりあえずおわり。）

  2004.12.19

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• 人生行路の錯綜(2)

  （昨日の日記のつづき）...さて、15年ぶりに電話で会話した同級生の話であった。内輪以外にはあんまり面白くない話だろうが、オイラにとっては個人的に感慨深い話なのでこのままズルズルと続けることにする。この男は同じ美術サークルの仲間ではあったが、オイラの日記にしばしば登場する「アブナイ仲間」ではなく、さいきんチマタでいうところの“スカシ系”のカッコいい青年であった。法学を専攻し洋楽を聴き抽象画を描きバイクに乗り難解な現代思想の本を読み花を部屋に飾っている…そんなヤツである(笑)。…そんな、ちょっとした「雲の上」タイプのオトコだったのだが、なぜかオイラたち「アブナイ連中」を忌避することもなく、つねに微妙な接点を持っていた。オイラたちのバカな遊びにも、(さすがに絶叫とか万引とか自傷とかには理解を示さなかったが)彼のスタイルを崩さない範囲でテキトーに付き合ってくれたりしたものだ。...いま考えて見ると、オイラ(たち)だって彼と同じように「洋楽を聴き抽象画を描き現代思想関係の本を読」んでいたはずである。でも彼とオイラ(たち)が根本的な違ったのは、聴いている「洋楽」には極端な偏向があり、描いている抽象画は周囲にマジメに扱ってもらえず、現代思想はついつい非建設的な結論に導かれがちで、仮にバイクに乗っても花を飾っても似合わない外見の持ち主だった点であろうか(笑)。...さて、そんな彼と昨日電話で話して判明したのは、’90年春に卒業後某大手出版社に就職した彼は、2000年に会社のカネで短期MBAコースを修了してニューヨーク支店駐在となり、2001年には9/11の世界貿易センタービル崩壊を目の当たりにし、その後シリコンバレー支店に転勤になって今に至っているということであった。一方オイラはというと卒業後そのまま「アルバイト生活」に入り、貯めたカネで’91年初頭に渡米してあちらの大学に編入。2年半後に卒業してニューヨークに引越し現地のデザイン会社に就職、その後転職してオハイオの日系運輸会社勤務を経て、’96年末に日本に帰国している。カッコいい元優等生の彼とダサい元パンク野郎のオイラには、接点がまったくなさそうで微妙に(すれ違いつつ)あるのである。それに、オイラは99年に日本で勤めていた会社を辞めてフリーランスの翻訳・通訳の仕事を始めたものの、生来の怠けグセが祟ってフリーランス稼業を維持できず、2000年初頭に社内通訳翻訳者を募集している企業に何社か応募していたが、そのうちの1社がたまたま彼の勤めている会社であった。オイラはその会社の筆記試験と翻訳試験に合格し、ついに漕ぎつけた面接の席では翻訳テストの成績を褒められ、これはもう高収入の職場への就職は決まったものと半分確信していた。しかし意外にも後日不採用の通知を受け、結局、別の応募先であった現在の会社(の東京支店)に就職したのであった。（ところでオイラはこの「不採用」の決定が、「元パンク野郎」のオイラが自分の会社に応募していることをたまたま知った彼が、オイラの学生時代の素行を採用担当者にご注進したせいではないのかという妄想を心の片隅で抱いていたのだが、それは今回の電話で無碍に否定された。）ところで今回の電話で、オイラはもうひとつの彼との“なさそうで、ある”微妙な接点を知らされた。なんと彼は、オイラの憧れの先輩と結婚していたのである。彼が所属していた(オイラも一時顔を出していた)美術サークルに、フツウの人なら顔をしかめるようなオイラの異様な風采も奇行や問題発言もまったく意に介さず、大学では「異常者」のレッテルさえ貼られていたオイラにつねにニュートラルに接して下さる病的なまでに心の広い美人の先輩がいた。オイラはいい気になってこの先輩に付きまとい、一時期は彼女と「交換日記」をしていたことさえあった(笑)。また彼女は何回かオイラの作った夕食を下宿で一緒に食べてくれたこともあったっけなあ。あれは鍋だったっけ、それともカレーだったかなあ。...この先輩は卒業後東京だか大阪のメーカーに就職し、それきり音信が絶えてしまっていたのであったが、15年の月日を経て、「彼の妻」という立場でオイラの記憶の底から「現実の世界」に蘇ったのであった。なんでも彼は卒業から10年も経つ1999年頃に彼女と結婚したらしいが、詳細はいずれゆっくりと聞かせてもらうことになっている。(…いつまで経ってもなかなか結論に至らないが、たぶん後日につづく)

  2004.12.18

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  人生行路の錯綜(1)

  1989年。時はバブル経済が盛りを過ぎ、その勢いはやや下り気味の頃。…とはいえまだまだ景気はよかった。たとえば学生の就職戦線は売り手市場。誰もが内定を3つも4つももらって、どの会社が一番待遇がいいか値踏みをしていた。無名大学の学生でも有名企業から内定がもらえ二流大学の学生がマスコミや大手広告代理店に就職できた、今の学生にとっては夢のような時代。…オイラはその年、大学４年生であった。同級生はみんな3年次の終わり頃から就職活動をし、講義にリクルート・スーツ姿で出席するヤツが増えてきていた。いわゆる“青田刈り”で5月や6月に内々定をもらっているヤツもいた。…その頃、オイラはこんな格好をしていた。「殿様の生活」というバンドでドラムを叩いていたのである。4年生に進級し卒業が迫れば自然に「いよいよ社会人」という現実感が芽生えるかというと、オイラには一向にそんな様子はなかった。自分がこれから髪を切り、半ズボンをスーツに着替えて就職活動を始めるような意思はこれっぽっちもなければ、大学院に進学して大学生活をこれ以上続けるというのも想像しただけでゲッソリする選択肢であった。結果的に、オイラは後輩たちとつるんでばかりいる「半ズボンをはいた髪の長い4年生」になっていた。…言っておくが、オイラは決してもともとボンクラ学生だったワケではない。地方の進学校から学究意欲に燃えて上洛してきた10代のオイラは、(今日まですっかりそんなことは忘れていたのだが、)じつはこれからの人生を「学問の世界」に賭けるつもりで大学に来ていた。…しかしあいにくオイラの進学した大学はまあ典型的な私立のボンボン学校で、学究意欲に燃えるオイラのようなオトコは基本的に「アホ」扱いされる環境であった。入学当事、大学に行けばオイラみたいに学問に意欲を燃やす若者たちが日本中から集まっていて、教授たちと日々アカデミックな議論を交わしているような幻想を抱いていた(笑)オイラにとって、出席を取るだけの目的で講義には出てくるが教室で後ろの方に座り講義の最中はずっと寝ている体育会系の連中や、「訳本」を購入して教科書にカタカナでフリガナを振り語学教師に指名されるとフリガナを読み上げる学内高校からのエスカレーター進学の連中や、講義にきちんと出席しマジメに板書もしているが、講義以外の場でアカデミックな話を持ちかけたりすると眉をひそめる女学生連中たちに囲まれた大学生活は、ひたすら孤独であった(笑)。やがて同じ学部の仲間と付き合うのが億劫になって勉学が疎かになる一方、美術サークルのちょっとアブナイ連中とつるんでばかりいるようになり、そんな連中と日々ノラ犬や虫のように過ごしているうちに「学究意欲に燃えた地方出身の青年」は「社会に背を向けた明日なきパンク野郎」になっていたのであった。さてその年の夏、「殿様の生活」の狂気の絶叫ボーカリストであった鰻坂ヒカルも夏頃にはついに“バンドごっこ”にも見切りをつけたかスーツを着て会社訪問を始め、ついに一部上場のゼネコンに就職が内定した。美術サークルのほかの同級生たちも次々に有名企業に就職が決まって、春には大学を卒業して行った。…オイラはといえば相変わらずの長髪＆半ズボンのままで大学を卒業し、そのまま「コンビニの夜勤アルバイト」という身分になった。当時でこそそんなコトバは存在しなかったが、今で言う「フリーター」のはしりである(笑)。…なーんてことを思い出したのは、そんな有名企業に就職した同じ美術サークルの同級生の一人がアメリカに駐在していることを鰻坂の日記を読んで知り、きょうその彼と電話で15年ぶりに話をしたからである。あの年マトモに就職した優秀な学友と、「フリーター」になったパンク野郎が、15年の時を経てアメリカでつながるというのも、妙な感動があった。(長くなりそうなので、後日つづく)

  2004.12.17

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• 公共の電波と絶叫

  日本の大学時代の友人の声が、さいきん公共の電波に乗って全世界に発信されていることは話には聞いていた。今年度からN○Kの某語学講座の講師に欧州人のその妻とともに抜擢されたのだ。オイラはかねがね日本に出張したら公共の電波に乗るアノ彼の声がいったいどんなふうに聞こえるのか、ぜひとも聞いてみたいと思っていた。大学時代の恩師で「NHK放送大学」の教授をしていた人はいるし、友人や知人で出世してその名がメディアに登場するまでに至ったヤツというのも、何人かいることはいる。…しかし、学生時代にいっしょにバカなことをやって世間から冷たい目を向けられていた仲間で、その声が「公共の電波」に乗るまでに至ったのは今のところこのこの男しかいない。ハッキリいって、学生時代にはともにキワドイ日々を送ってきたオイラのアブナイ仲間の中でも、この男は突出していた。たとえば、夜に大学の周辺とかを徘徊して絶叫するのをエンジョイしていた頃、オイラやその他の仲間はただ「ギャーッ！！」とか「ママーっ！！」とか他愛の無いことを叫んで笑っていたのであったが、コイツは墓場のそばを通り過ぎるとき、身悶えしながら「悪霊よォー、オレにとり憑けェーッｯ！！」とか絶叫しているのであった。仲間うちで刃物で自傷するのが流行った頃、オイラや後輩の一部はカミソリで腕の皮膚を数センチくらいスーッと裂いて血を滴らせて見せては、良識ある周囲の人々の嫌悪と反感を買っていたが、コイツときたらナイフを二の腕の内側に突き立てて20センチくらいギーッと裂いて血をあふれさせてしまうのであった。これもやはり仲間うちで万引きが流行った頃、ほかの連中が「レモン」とか「マジックペン」とか意味も無いものを万引きしてきて悦んでいるのに、コイツは大学の生協とかから「CD2枚組み1万数千円」とかを万引きしてきて見せびらかしているのだった。ある時は、大学のサークル棟の6階の窓から今にも落ちそうな姿勢で身を乗り出して、下にいる連中に向かってわけのわからないことを叫んでいた。大学3年次には、敬愛していたらしい手塚治虫が死んだのにショックを受けたのか天啓を受けたのか分からないが突然赤いベレー帽をかぶり始め、やはりワケの分からないことをブツブツわめきながら舞踏のようなジェスチャーで車道を歩いている赤ベレー姿の彼とすれ違ったこともあった。オイラは見ていないが、素っ裸の上にコートを羽おり、女性が電話中の電話BOXに向かって何かを叫びながらコートの前をはだけて見せた、とかいう話もあった。...ほかにもちょっと楽天日記で公表するのをはばかられるような彼にまつわるエピソードは多々あるのだが（注.上記はほんの序の口である）、何んせ、彼といってまず思い起こすのは、「絶叫」なのであった。彼はバブルの終わり頃、男子新入社員はたった数名しか採用しないというその年に、その難関をかいくぐって晴れて某一流化粧品会社に就職したのだが、入社して1-2年目のある日、「とつぜん席を立ち上がると、絶叫して失神した」（本人談）という。それ以来会社からは閑職を与えられ（おまけに会社の金でビョーインに通わされ）るようになった彼は、会社を辞めて大学院に進むことを決心して勉強を始め、ついには京大と東京外大の大学院に合格、会社を円満退職して京大の大学院に進学したのであった。学生時代、仲間うちでは「将来、刑務所に入るかビョーイン(施設)に入る」確率がいちばん高いと目されていた彼であったが、大学院に進学してまもなく日本に留学していた今の妻と出会い、その後は国費で欧州の某国に留学、やがては大学の教員の職を手にして某NHKの語学講座の講師をするまでに至ったのであった。まったく人間万事サイオーが馬である。昨日の晩、ベッドの中でふと彼の語学講座の再放送が夜の11時20分だかから始まることを思い出し、ラジオのスイッチを入れると、その彼とその貞淑な欧州人の妻が本名を名乗って登場した。「さあ、今日もがんばっていきましょうね。」などと当たり障りのないセリフを喋っているが、やや受け口気味の甘いアクセントは、紛れもなくあの“絶叫”の彼の声であった。その国の演劇を専門に研究しているだけあって、教材はその国の戯曲か何かであるらしい。取り上げる場面もなかなか劇的だ。「どうして彼女が死んだことを私に隠したのだ」と詰め寄る男。「あの時、彼女が死んだことを告げたら、あなたは何を仕出かしたか分からない」と説明する女。その後、日本語にするとちょっと大袈裟に聞こえる人生観や世界観に関するセリフの応酬が続く。…うーん、彼らしい教材の選択である。後半のコーナーでは、その国のある戯曲家に関する“ミニ知識”を、他国の反応や他国の文化や国民性との比較などを織り交ぜながら紹介し、ヨーロッパの他国の文学や戯曲に関する知識をもさりげなくひけらかす彼。学生時代に美術サークルの部室で鰻坂ヒカル とともにドフトエフスキーだのゴーリキーの文学について語っていた彼の姿を思い出した。…うーん、これも彼らしい教材の選択である。実際にこの番組を聴く前は、「もしかして公共の電波を使って不謹慎なことを語ったり奇矯な声を上げたりするのではないか」とひそかに期待していたオイラであったが、今では2児の父でもある彼はさすがに絶叫もしなければ問題発言もすることはなかった。考えてみれば、「絶叫」だの「反社会的行為」だのいったことは、オイラみたいなアホな先輩との付き合いで見せた彼の一面に過ぎず、ドフトエフスキーだのゴーリキーだのいう世界こそが彼の人格のコアに当たる部分だったものを、アホなオイラが見逃していただけに過ぎないのだと今さらながらに再認識した(笑)。…その夜はなぜか知らないが、よく眠れた。彼の講座を聴き続けたら、その言語がマスターできそうな気さえした。日本にいるあと2週間やそこらの間に何回聴講できるか分からないが、彼のラジオ講座を聴いて「絶叫」の彼の別の一面を再考してみようと思ったオイラであった。

  2004.10.22

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• 19日の修羅場と失禁

  2週間ほど前にようやく修羅場を切り抜けたかと思ったら、今週になってコレに輪をかけたような全社的なドデカい修羅場がまたやってきた。今回のはホントにスゴイ。全支店のあらゆる部署がテンパっている。難題に次ぐ難題。通常業務でさえ手が回らない状態だったところに、その倍以上の手間を要する緊急業務が複数、同時に押し寄せてきている。オイラを含む管理職は、毎晩ＴＶ会議で米国とつないで、これらの難題を解決するために夜中まで本社スタッフと喧々諤々の論争を続ける。だいたいは堂々巡りで、気がつくと両者とも同じ主張を延々と繰り返している。長ーい平行線。特に睡眠不足の日本のスタッフは、深夜0時を過ぎると次第に英語で論争する元気がなくなり、回らぬロレツで意味不明な英語を繰り出しては、テレビの向こう側でアメリカ人スタッフが首を傾げているのを見てコミュニケーションギャップに対する絶望感を深める(笑)。先週土曜は休日出勤して終電で帰宅し、日曜は不足していた睡眠を何とか補給したが、月曜（実際は火曜）は午前2時過ぎ、火曜（実際は水曜）は0時半、昨日は午前3時に仕事を切り上げてオフィスを出た。今週の睡眠時間、計13時間半。毎晩夜中にオリンピック見てるヤツだってオイラよりは寝てるに違いないゾ。...関係ないけど、昨日深夜にオフィスで慌てて文書を作成しながら、15年前の卒論でほぼ２晩徹夜した末に提出期限の時刻ギリギリで論文を提出したのをふと思い出した。オイラは提出期限が12時と聞いていたのでてっきり日付の変わる深夜0時のことだと思い、かなりテンパっていたにも関わらず最後の晩も「…まだ20時間以上あるな…」なんて若干のヨユウをかましていた。しかし、研究室で同じく論文を作成していた旧友にたまたまその「20時間以上」のことを話したら、「...オマエ、何ゆうとんねん。あと10時間切っとるやないかい。」と言われ、はじめて期限の時刻が「正午」であることに気づいた瞬間、パンツの中に「ジュッ」と15ccくらいオシッコをチビッってしまった。小便をチビるくらい焦ったのは、小学時代に、まだ半分しか終わってないのに先生から音楽の試験問題を回収されそうになったとき、たった一度だけパンツの中でちょっぴり「ジュッ」となってしまったのを除くと、今のところあの大学の卒論が最後である。…オイラの神経も多少は太くなったんだろう。小便をチビるどころかオフィスでひとり屁をこきながらキーを打ってます。

  2004.08.19

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• 「我慢好き」の世界

  「ガマン」が好きだ。いつ頃からそうだったのか分からない。ガキの頃、妹と一緒に母親に連れられてデパートなんかに買い物に行くと、妹は売り場で「アレが欲しい、コレが欲しい、アレ買って、あーん」などと泣きわめくのが常であった。母親によると、子供の頃にオイラが「アレが欲しい」などとダダをこねたり泣き叫んだことは一度たりともなかったそうだ。母親はこれがオイラの自己抑制であると理解していたらしい。小学3、4年くらいの頃、何がきっかけだったか、オイラがガマン強いことを父親に対して主張するために、手をツネられても平気だ、と主張した。「…どうれ。」と言って父はオイラの手の甲をつねってオイラの顔を見た。オイラは平気な顔をした。「…これでどうだ。」父親がつねる手に力を加えた。「まだまだ平気です」とオイラが応え続けたところ、父親はやがて「指」から「爪」にスイッチしてオイラの手の甲をつねり続けた。最後には、オイラの手の甲の肉が切れ、血が出てきた。父親は表情を変えようとしないオイラを見て多少の焦りを感じたのであろうか、「…ケッケッケ。」と引きつった笑いを発していた。そのような経験から自分が「ガマン強い人間」であると信じていたのは、高校時代になって心理学の本などを読むようになるまでのことであった。ある日、性格類型に関する本を読んでいて、自分が子供の頃から「アレが欲しい！」と泣きわめくこともなければ、肉が切れるまで手の甲を抓らせることができたのは、「ガマン強いから」なんかではなく、自分が「分裂気質」の性格の持ち主だったからであることに気づき、愕然とした。分裂気質といのは、保健の時間や大学の一般教養で習ったかもしれないが、クレッチマーという心理学者による人間の3つの類型のひとつで、情緒とか感情といったものに鈍感なところと、ヘンなところに過敏なところが同居していて、どちらかというと内向的で非社交的な人間のタイプである。オイラがデパートで泣きわめかなかったのは、ガキの頃から自分が何が欲しいのかよくわからなかったからであり、手の甲をツネり切られるまで表情を変えなかったは、自分の肉体の現実感が乏しかったからにほかならない。そんなタイプの人間は、「過激」に走りがちだ。バーモントカレーを食ってもカレーを食った気がしないので、Leeの20倍辛の激辛レトルトカレーを買ってきて食ったり、歌謡曲やフツウのロックを聴いていてもピンとこないので、ハードコア・パンクとかゴシック系の音楽を聴くようになったり、自分の肉体の実在感が乏しく感じて、ベロだの乳首だのにピアスを開けたりタトゥーをしてみたり、サーフィンや登山では物足りなくて、スカイダイビングやバンジージャンプにはまったり、ハワイやグァム島では物足りなくて、インドやアフリカにはまったり、ふつうの“コメディ番組”を見ていてもぜんぜん笑えないので、本来マジメな番組であるはずの水曜スペシャル「川口浩の探検隊」(←20代以下のヤツは知らんか)を見て大笑いしたり、…というのはみな分裂気質の典型だ。ちなみにオイラは今、6日後のマラソン大会に備えて“カーボローディング”をする前段階として、「炭水化物絶ち」をしている。パン類とかスナック類とかライスとかを一切絶ち、毎日野菜・果物とかチーズとかツナ缶とかばっかり食っている。この、ガマンしているという感覚が大好きだ。自分をここまで追いつめると、「あ、ポテトチップが食べたい」とか「バターをたっぷり塗ったベーグルが食べたい」とか切実に感じる。この“切実感”が堪らないのだ。「激辛カレー」の辛さと一緒で。マラソンにハマったのも、ツライのをガマンして、自分を限界まで追い詰めて走っている時の切実感がイイのかもなあ。…あ、楽天広場のマラソン仲間であるアート鈴木氏が、先週完走した100キロマラソンの完走記をついにHPにアップしたぞ。ガマン好きの世界にキョーミのある人は一読して欲しい。「オマエと同類に扱うな」とか怒られたりして(笑)。→ http://plaza.rakuten.co.jp/artsuzuki/3003

  2004.07.05

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• 自画像音楽(ちょっぴり鰻坂風)

  過去の日記に何度か書いたが、オイラの母校は旧制高校の流れを汲むバリバリ硬派な男子校で、通学の手段が自転車しかないような俗世間から隔離された山のてっぺんにあったため、卒業時の童貞率が実に進学率と同じ98.5％(推定)というようなムサい環境であった。オイラはその高校で応援団幹事長をしていたが、後輩に暴力を振るったりしている傍らで後輩には内緒で少女マンガを購読していたり、2人の副団長も外見はイカツくて蛮カラだが、ひとりは格闘技マニアである一方趣味でセル画を描いたりしているアニメオタクで、もうひとりはYMOなどに影響されて(まだ80年代前半だったが)コンピュータを使っていわゆる打ち込みで作曲をしているような一面を持ち合わせていた。この副団長Mの作る曲は、その学ランにゲタ履きの外見からは想像し難いことであったが、プロからスカウトが来るような実に洗練されたレベルのものであった。…で、彼はしばしばご愛嬌で、応援団の仲間の「テーマ曲」を作ってテープを学校に持参した。これらの曲は歌詞のないインスツルメンタルばかりなのだが、実にそれらの個人のイメージを絶妙に表現しており、みんなに大ウケしていた（ちなみに彼はその後プロへの誘いを断固と拒否し、音楽とは一切関係のない地道な仕事をしながらも趣味で(たまに実益も兼ねて)作曲をしている[参考]）。それから数年後、オイラは大学で美術サークルに入り、楽器のできるサークル仲間とバンドを始めた。この時にもやはりたまに話題に上ったのが「サークルの仲間のテーマ曲」の話であった。あいにく、内輪ウケの曲をライブハウスで演奏しても仕方がないので、このときは「○○のテーマ」はバンドの曲としては１曲も実現しなかったが、一部の歌詞はオイラの記憶or記録に残っている。例えば、五反田太郎のハンドルネームでこのHPをしばしば訪問してくれている男は現在こそ妻子持ちで大学の教員などをしているが、当時サークルの仲間内ではダントツでイッちまっていたヤツで、こいつのテーマはパンクのビート＆ノイズに乗せて「♪オレを、殺してくれェーーーーっ！」と絶叫する、という曲になる予定であった。当時、いつか曲をつけようと思って作詞した『郡山ハルジ(仮名)のテーマ』を記したノートを先日発見した。以下はその全文である。『○○○○(本名)のテーマ』（1番）　オレは○○○○(本名)　悪の化身　他人の心を踏みにじり　ニヤリと微笑むぜ　オレは○○○○(本名)　邪心の僕(しもべ)　愛や正義や道徳なんて　クズも同然さ　オレの希望はキミの絶望　オレの希望はキミの絶望　今夜もキミの街に　不吉な笑いがこだまするよ（２番）　オレは○○○○(本名)　地獄の使い　他人を陥れる手口は　悪魔も絶句するよ　オレは○○○○(本名)　歪んだ魂　どんな弱者のイジメにも　全力を尽くすよ　キミの不幸はオレの幸福　キミの不幸はオレの幸福　明日もキミの街で　邪悪な空気が渦を巻くよ...キミの不幸がオイラの幸福で、どんな弱い者をイジメるのにも全力を尽くすってか(笑)。念のため断っておくが、オイラはたしかにそんな傾向を持ってはいるかも知れない(笑)が、この歌詞にあるような信条の持ち主ではない。これは、オイラが当時サークルの仲間から“霊視”や“お祓い”をされるなどして薄気味悪がられていた当時に、そんなみんなのオイラに対するイメージを歌詞にしてみたものである。ところで昨夜またケンカをする夢を見た。相手は大学時代の心理学専攻の同級生で、当時オイラのことを「何かアブナイ宗教に入っとるんちゃうんか」と言っていた、学内高校からエスカレーター進学してきたボンクラである。同窓会か何かのような食事＆酒の席で、たまたま向かいの席に座ったこの男に失礼なことを言って傷つけてしまい、あとで真剣に謝る…というのが夢の内容であった。彼とは卒業後はもちろん、大学在学中もほとんど接触のない疎遠な仲であったが、卒業して15年も経った今でも夢に登場するということは、当時の彼のセリフがオイラにとってたしかにトラウマになっているものと思われる。しかし、こうして当時の自分のテーマ曲を読んでみると、彼のそのセリフは実に妥当なものであったと言うほかない。オイラはあいにく作曲の才能に乏しいのだが、「音楽で自画像を描く」ということに以前から興味を惹かれていた。オイラはサークルでは人物画を主に描いていたが、生まれて初めて描いてみた油絵は自画像だったし、その後もとくに何も題材が見当たらないが創作意欲だけが昂進しているときも自画像は格好のモチーフであった。音楽でも、とくにイメージが浮かばない状態で作曲してみるのであれば、セルフポートレートから始めてみたいものだとかねがね思っていた。虚飾のない…と言わないまでも、自分自身に誠実な音楽自画像を、そのうちに作曲してみたいと思っている。オイラの知人でヒマな人は、ぜひ歌詞やテーマやキーワードを投稿して欲しい。

  2004.06.23

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• めっきり○○しなくなった

  楽天日記を始めて知り合ったpinkoysterさんと、「交換音楽」をすることにした。「こんな名曲があるんだけど、聴いたことある～？」という曲をMDとかに編集して、交換し合うという趣向だ。学生時代にバンド仲間だった心斎橋ワタル氏とは過去15年に渡ってテープやMDを交換し合っている仲だが、見ず知らずの女性と“交換音楽”をするのは初めてだと思う。さいきんでは心斎橋氏も公私ともに忙しくなり、オイラはオイラで年齢とともに次第に音楽への興味が薄れ新たな音源を仕入れるようなこともなくなったため、ここ数年誰かに聴いてもらうためにテープやMDを編集することはめっきりなくなってしまっていた。しかし今回は、いい加減オッサンになってから出会った比較的シュミの近そうな人に「どうでスか、こんないいネタがあるんですよ、奥さん。」…と自分の偏った音楽の傾向を押し売りできる機会を得て、ちょっとひとりいい気になっている。あんまりいい気になり過ぎて、ここ1年くらい滅多に触ることのなくなっていたベースを久々に手に取り、ネタとなる曲に合わせて弾き語りしてしまった。…しかし、しばらく弾いてなかったもんで、指がまるでかじかんだみたいに動かない上、歌詞もぜんぜん思い出せずにガッカリした。しょせん、30代後半のオッサンがアパートの一室で、下着姿でひとり寂しくロックに合わせてシャウトしたって、傍目には暑苦しいだけで、誰にも感心してもらえない。やはりオッサンにはロックもシャウトにも似合わないのだなあ。まだタイツをはいてひとりでマラソンしてる方がオッサンらしいよな。ちなみにオイラが学生時代にバンドで演っていたのはドラムであった。当時オイラは体重57キロのスレンダーなボディに黒のタイトなジーンズをはき、花柄のTシャツに片桐ハイリによく似たデカイ頭を乗せ、肩甲骨まで伸びたストレートの長髪を風になびかせ、一部の学友からは「ボディコン・ワンレン」と呼ばれていた。ステージの上でスポットライトを浴びて、このワンレンを獅子舞のように振り回しながらドラムを叩くのである。しかも顔は片桐ハイリだ(笑)。ベーシストだった心斎橋氏とボーカルの鰻坂ヒカル氏、そして今は東大の博士課程でドイツ思想を研究しているＭとスタジオに練習に向かうために4人でタクシーに乗れば、運ちゃんに「お客さん、あれでしょ、TMネットワークでしょ？」などと言われ得意になっていたものだ。それまでは単なる「不適応な変わり者」に過ぎなかった連中が、バンドを始めてステージに立つようになると妙に自信が出てきて(笑)、容姿なんかにも気を遣うようになったりする。女性モノのヘアトリートメントを使ったりしてた時期もあったな、そう言えば(笑)。30を過ぎてからというもの、ヒゲを剃る時以外に鏡を見ることさえ滅多になくなった。床屋で髪を切ってもらう時も毎回テキトウ。服だって、大学時代から10年以上も同じモンを着てるんだよな、そう言えば(笑)。それでもまだ35歳くらいまでは、週末なんかに自分の好きな曲に合わせてベースを弾き語りする時には、バンドを演ってた当時に還って“自己陶酔”できたんだよなあ。あんなに愛していた自分が、ここ2-3年であっと言う間にどうでも良くなったような気がする。単なる加齢に伴うリビドーの枯渇のせいか(笑)。pinkoysterさんに聴いてもらうために掘り返した「あの頃」を想い出させる曲を聴きながら、記憶の彼方に埋没しかけていた若きし頃のナルシシズムがちょっとだけ胸に蘇る週末のひとときであった。

  2004.06.18

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• 「パンクでポン！」な青春

  マイケル・ムーアの「ボーリング・フォー・コロンバイン”Bowling For Columbine”」をDVDでようやく見た。地元のHMVで安売りしとってん。「コロンバイン」ってのは、知ってると思うが、1999年にアメリカのコロラド州で起きた男子高校生2名による高校を舞台にした13人銃殺(プラス犯人2名の自殺)事件の舞台となった高校の名前である。このビデオを見るまで知らなかったが、この犯人となった高校生は、この事件を起こす日の朝、ボーリング場でボーリングに興じていたらしい。このドキュメンタリーの圧巻なのは、その高校の防犯カメラに収められていた、実際にこの2人が銃を手に図書館や食堂に押し入り犯行に及ぶシーンだ（ただし白黒だが）。あまりに残虐なシーンはカットされているだろうが、生徒たちが逃げ惑うシーンや、テーブルや机の下に慌てて身を隠すシーンは、極めて生々しい。ちょっとだけ告白すると、オイラは本来なら眉をひそめるべきこの「防犯カメラの現場映像」を見ながら、自分の心中にワクワク感がウズウズと湧き上がるのを否定できなかった。自分が何にワクワクしたのか自らに問うてみて気づいたのだが、トレードマークだった黒のトレンチコートに軍靴を履き銃を手にした犯人に対し、生徒の大群が怖れおののいて逃げ惑うシーンを見て、犯人の側に感情移入してカタルシスを感じていたらしい。アメフト部員やチア・リーダーに代表されるキャピキャピのクラスメートたちに馴染めず、「負け犬」「落ちこぼれ」「異端者」呼ばわりされている彼ら。黒づくめのゴシックな衣服を着て破壊的な音楽を聴き、虚無的な書物を読みつつごく少数の仲間でこじんまりと固まっている。…そう、彼らは、アメリカに限らずヨーロッパでも日本でも、どこの学校にも必ず何人かいそうなアウトサイダーを決め込んだ連中だった。「中心にいる多数派のヤツら」の論理や価値観はケーハク短小で薄っぺらで、脳天気でモノを深く考えないキャピキャピしたバカどもにしか思えないのだが、容姿もパッとせず異性にもモテない自分らとしてはそんな考えを堂々と主張できず、鬱屈せざるを得ない。…オイラ自身は、旧制高校の流れを汲むバリバリ硬派な男子高校に通っていたため、高校時代にそんな経験をしたことはない。しかし、田舎から大学に出て来る段階になって、彼らに極めて近い状況に置かれたことを思い出す。高校時代ベンキョーをせずに応援団の仲間たちと遊び呆けてばかりいたので、大学に入ったら自分の選んだ学問をバリバリ追求しようと思い、鼻息も荒く田舎から出てきたオイラ。…ところが大学には、学問になんてコレっぽっちも興味なくて、あくまで学歴のために受験勉強して大学に入学し、就職するまでの4年間を遊びまくってやろう、というメディアで喧伝されているような学生が、現実に多数派を占めていたのであった。たとえばオイラは心理学専攻だったのだが、学友たちに無意識がどうとか行動主義がどうとかいった話をしようとすると、“アブナイ人”扱いされた上に、「アイツはなんかヤバイ宗教に入っとるんちゃうか。」とか陰でウワサされたりするのであった(笑)。出席を取るだけの目的で講義には出てくるが、教室で後ろの方に座り講義の最中はずっと寝ていて、講義が終わると野郎どもや女の子と喫茶店へ…といった体育会系の連中。「訳本」を購入して教科書にカタカナでフリガナを振り、語学教師に指名されるとカタカナのフリガナを読み上げる学内高校からのエスカレーター進学の連中。毎日ブランド物の服を着て講義にきちんと出席しマジメに板書もしているが、オイラがニンゲンの心理がどうとか言った話をすると眉をひそめる女学生連中。オイラはこんな学友たちを憎んでいた(笑)。やがてオイラは、コロンバイン高校の2人のように暗ーいコートを身に纏い、暗ーい音楽を聴き、学友たちが象徴する「世の中」一般に背を向けるようになっていた。“大学デビュー”のパンク/ゴシック野郎である(笑)。筋肉少女帯の曲で、「聞けェー!!オマエらワーッ！バカだバカだバカだバカだバカだ！無知モーマイの大バカモン野郎とはァ、オマエらのことダーっ！オマエらはロックの何たるか、人生の何たるかを分かっているのかぁーっ！オマエ、文学読んでるかブンガクを、コラっ！」…などと延々と絶叫する「パンクでポン！」というタイトルの曲(？)がある。銃を乱射するのに比べたらカワイイもんだが、当時のオイラはまさにそんな気分であった(笑)。いい加減分別のある大学年齢になっていたから犯罪に走らずに済んだものの、あと3-4歳若かったり、音楽とかアートといったはけ口を見出していなかったら、オイラもいずれ取り返しのつかない行動に出ていなかったとは言い切れない。オイラがこの高校生2名に対して単純に眉をひそめることが出来ないもうひとつの理由は、彼らがサカキバラ少年や佐世保の女児と違って、最初から自殺するハラを決めていたことである。たんに“憎い相手をこの世から消し去る”のではなく、自殺の道連れとすることで「中心にいる連中」を(異端である)自分たちの側に引き込んだ上で共倒れしたところに、彼らが最期につかんだ命がけの小さな「勝利」(あるいは“引き分け”)を見出してしまうのである。言わば、彼らの行為は単純な殺人ではなく自分の(破滅的な)世界観の雄弁な主張とオルグであり、その世界観への殉教なのだ。うーん、何歳になっても「多数派に挑むハズレ者」という単純なテーマに(それが犯罪者であっても)ついロマンを見てしまう自分って、なんだかなあ…。いまだに「パンクでポン！」のメンタリティを卒業してないだけだな。

  2004.06.12

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• 喧嘩とｾｯｸｽは似ている(出だしだけちょっぴりドイモイ風)

  何を隠そう、今朝は寝坊して、日課の早朝ジョギングができなかった。寝坊した理由は、夜中にケンカの夢を見て目を覚ましてしまったら、外が白み始めるまで眠れなかったからだ。夢の中で、ぜんぜん面識のないある男が何か的外れなことを言っていたかカッコをつけたことをしていた（どちらだったか忘れた）。それを見ていたオイラは、それをからかうような素振りを見せた。するとその男は怒り、文句を言いながらオイラに殴り掛かってきた。はじめオイラはどう見てもオイラよりケンカの弱そうなソイツの振るうコブシを軽くかわしながら、相変わらずニヤニヤしてコバカにした態度をとっていた。しかしソイツが声を震わせながら「ストレートだぞ。オイラのストレートが怖くないのか！」とか言って拳を見せながら必死に威圧しようと頑張っているのを見たら鬱陶しくなって、それまでのニヤニヤした表情を突然変え、ソイツを力任せに押さえ込んでボコボコにしようとした ―ところで、ビクン、…とベッドの中で身体が動いて目が覚めたのであった。念のために言っておくが、オイラは決して暴力は好きではないし、ケンカは20歳の時にしたのが最後である。過去17年間、人さまに拳を振るったことはない。ただ、オイラがコバカにした態度をとった相手が怒って殴りかかってくる、というパターンは、オイラがそれまでにしたケンカの70％を占めていたかも知れない(笑)。劣等感の強そうヤツとかが虚栄心を丸出しにした言動や行動をしているのを見ると、笑いが抑えられなくなる。そして、それがあるラインを超えると、ついバカにしたことを言ってソイツを挑発したくなってしまう。悪いクセだ。ちなみにフロイトによると、ケンカの夢は性衝動の発現だとかなんだとかいっていた記憶があるが(フロイトに言わせれば何でも大抵はそんなような解釈になるのだが(笑))、ゆうべのケンカの夢で目を覚ました時も半分ボッキしていたかも知れない。フロイトはさておき、オイラはかねがねケンカとセックスはとっても似ていると思っていた。20歳の時に最後にケンカした相手は、オイラと性格的傾向が似ているところがあった。マジメな場の雰囲気を乱したり、イヤミなことを言って他人をからかうのをこよなく愛するヤツだった。その日は大学のある会合の席でソイツと同席したのだが、ソイツは相変わらず場をかき回すような発言を繰り返し、参加者の発言に片っ端から横から口をはさみからかっていた。…で、ソイツがオイラに対してやはりオイラの揚げ足をとるような発言をした際、オイラはすかさず、ソイツの言ったことがまさにソイツ自身に当てはまることではないか、という意見を冷静に述べた。…するとソイツは、「誰に向かって口をきいとんじゃ、コラァ！」と叫んで席を立ち、テーブルの上に置いてあったオイラのバイクのヘルメットを振り上げると、オイラの頭頂に叩きつけた。ヘルメットがデカイ音を立てて、リノリウムの床に落ちて弾んだ。部屋がシーンとした。…半分遠のく意識の中で、オイラはなぜこんなことで自分がこんなヒドイ目に遭わなければいけないのか納得がいかない！…と思っていた。で、仕方がないのでオイラも席を立ち上がって、ソイツを殴ることにした。オイラはソイツの顔面や上体に拳を力任せに打ち込みながら、自分が性的な快感にも似たものを感じている事実に内心驚いていた。事実、オイラは男性参加者たちによる羽交い絞めを振りほどきソイツを殴り続けながら、笑っていた(笑)。通常、人と人との物理的な距離は心理的な距離に比例するものであり、腕の届く距離に居て気にならないのが知人、肩と肩が触れ合う距離でも気にならないのが仲の良い友人、これが恋人同士などになれば、二人の間の距離は舌やチンポの長さに応じてマイナス何センチにさえ達する。ケンカはまさにこの「心理的距離」を破壊するもので、パンチが相手の身体に食い込めば、その距離はマイナス数センチになる。「腕が届くか届かない距離」だった知人が、一挙に「マイナス数センチ」の関係になるのだ。ケンカをした相手と、ケンカをする前よりもかえって仲良くなったりする理由には、実はこんな理由があるのかも知れない。…ただオイラの場合、この「マイナス数センチ」の相手はオイラのパンチの当たり所が悪くて“病院送り”になってしまい、その後決して二人の仲がケンカ前より良くなるということはなかった(笑)。…考えてみると、ケンカに限らず、その後「マイナス10数センチ」(←注．謙遜)の関係を持った相手とも行為の後でかえって仲が悪くなったことがあった。どうやら相手との物理的距離さえ縮まれば自動的に関係が緊密になるというわけではなく、やはり“手加減”というものが大事であるに違いない。自分が相手を「力任せにボコボコ」にしそうになったときは、昨夜のようにハッと目を覚まして手加減せよ！…ということだな、今日の夢の教訓は。

  2004.06.09

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• チ○ポと検閲

  ガーン。楽天広場のアクセス数では毎度トップ3に入っていた「ボッキー米谷」さんのHPがまるごと削除されていた。読む人に元気を与えるその日記は、たまにお茶目な下ネタもあったけど、決して公衆の良俗を乱すような内容ではなかったハズなのだが、何がマズかったのであろう？オイラはというと、おとといの日記で自分のウンコが臭いとか体臭がセクシーとされることもあるという話を書いたところ、オイラの数少ない理解者だと信じていた心斎橋ワタル氏から「この調子で行くと、楽天当局に削除されるのも目前ですねー♪」という書き込みをいただいた。たしかにその数日前にもひさびさに夢精したことを日記を書いたが、この日記は読んでもらえばエロな要素は微塵もないのは明らかである。とは言え、オイラの友人ではおそらく最も常識のある心斎橋氏の言うことだ、彼の意見はオイラなんかよりはよっぽど「楽天当局」の感覚に近いと考えておいて間違いない。…そう考えると、ボッキーHPに降りかかった災難はもはや他人ごとではなく、オイラも「削除」の可能性を本気で考えた方がよいというこのなのか。いやだなあ、マジメに一生懸命作ってきたHPなのにィ。カタブツとして知られるオイラは文章を書くとつい堅苦しい文になりがちなので、たしかにいつも多少「筆を滑らせ」て面白おかしい話にしているのは事実だ。しかし、仮にオイラの日記の内容が一見すると“下ネタ”にしか読めない人がいたとしても、オイラが書いていることは大学の研究者たちがクソ真面目に調査したり統計をとったりしている真面目なテーマばかりである。「下衆の勘ぐり」という言葉があるように、何かをエッチだとか下品だとか感じるのは、それを見る人の心の中にあるエッチや下品が投影されたものであっても、その対象自体がエッチだったり下品だったりするとは限らない。チンポの臭さであれ異生物との性行為であれ、“下ネタ”扱いせずに真剣に考える人が増えて欲しいものだ。...ホントは別にいいけどさ、そんなこと真剣に考えなくとも(笑)。そういえば、アメリカ南部の大学で絵の勉強をしていた10年ちょっと前、地元メディアを大騒ぎさせた芸術学部内のある事件のことを思い出した。ある既婚の女子学生が、勃起した夫の性器を白黒写真に撮り、それを「キリスト」に見立てて十字架にハリツケにした絵を卒業展覧会に出品した。…言っておくが、これは俗に「バイブル・ベルト」とよばれるアメリカ南部の話である。その絵を見た学生の一部や外部の人間が「ヒワイだ」「主キリストに対する冒助Kだ」と騒ぎたて始め、やがてそれを聞きつけた新聞社やテレビ局までが取材に詰めかけた。結局その作品は一部モザイク処理されてアメリカ南部一体に放送されるまでに至った。…翌日、怖れをなした学部長は、その学生に何の断りもなしにその作品を撤去した。これを知った学生の一部は、展示されていた自分たちの作品を布で蔽った上「検閲により隠蔽されました」などという張り紙を貼ってこれに抗議した。この女学生の言い分によると、彼女は「性がタブーとして抑圧され、まるでキリストのように犠牲者となっている」という現実をこの作品で表現したかったらしい。…しかし、亀頭に棘のかんむりを載せて血を滴らせている絵は、滑稽またはグロにこそ見え、作者の言いたいことを表現するにはイマイチ効果が低かったことは否めない。それにしても、「チンポの写真＝ヒワイ」または「＝冒助K」という発想は、やっぱり多くの見る者の心の貧しさを物語っていることは明らかだった。実をいうと、オイラはその事件が起きる前年「勃起した自画像 (Self-portrait with Erection)」という作品を発表し、物議をかもしていた。オイラには別に「皆に訴えたい高尚なテーマ」があったわけではない。でも、この絵はまさに自分のあっけらかんとしたオープンさや当時の行きどころのないフラストレーションだとか空虚さや痛みを十全に表現していたと思っている。さすがにメディアの取材こそ受けなかったが、結果的として友人の一部を失うと同時に(笑)、一方でそれを上回る数の心の豊かな友人たちを得た。「ボッキ」だとかいった表層でしかこの絵を見れないヤツらは単に呆れてオイラから離れていったかも知れないけれど、その表層に拘泥せずに本質を見てくれる多くの友人を引きつけることができたという点で、オイラはこんなバカな絵を描いたことをホコリに思っている。…ま、しょせんいい年こいて日記でウンコやチンコの話をしている哀しい中年オトコの言い訳なんだけどさ(笑)。それよか、そろそろ削除に備えて、コンテンツの保存でも始めるとするか。

  2004.06.04

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• 1日の稼ぎはチップだけ

  朝、風邪が多少よくなったかと思い、出勤前に軽くジョギングに出て帰ってきたら、動悸がおさまらず身体を起こしていられない。とても仕事ができる状態ではないので、会社に電話を入れて午前中はおとなしくベッドに横になっていた。海外で一人暮らししていて病気になると、「仕事がある」ということがホントウにありがたく思える。ほんの10年前まで福利も厚生も保険もないアルバイト生活をアメリカでしていたオイラにとって、仕事が多かろうが少なかろうが病気で欠勤しようが毎月きまったサラリーが銀行に振り込まれるなんて、夢のようなハナシだ。若きし頃世界を放浪して歩いたドイモイ氏の楽天日記に、「１日の稼ぎはチップだけのウエイトレスでえ～す。」というフィリピンの人の話が載っていたが、10年前27歳だったオイラは、アメリカの大学を卒業して職を求めニューヨークに引っ越したものの仕事が見つからず、仕方なくジャパニーズ・レストランで違法滞在者にまぎれてまさに「１日の稼ぎはチップだけ」という生活をしていた。週休1日。午後4時～午前1時くらいまで。収入は、アルバイト連中で毎日山分けするチップのみ。土日は客の入りのよい時には１人あたり8-90ドル近いチップが稼げるが、平日はせいぜい50ドル。客の入りの少ないときなんて、山分けしたら30ドルくらいにしかならないこともあった。この月1000数百ドルの収入のうち、半分近い600ドルがアパートの間借り賃に消えた。ニューヨークでは狭いワンベッドルームのアパートでも1000ドルくらいはするので、ひとつのアパートを「リビングルーム」と「ベッドルーム」に住み分けて2人でシェアするのが一般的であった。バイト先の店長は気性が激しかったので、気に入らないヤツは即日でクビになった。オイラの場合はアメリカの大学を出て期間限定の労働許可証を持っていたが、もともと違法でアルバイトしているほかの連中は従業員として登録されていないので「労働者としての権利」なんて存在しないし、ちょっとしたミスでもその場で解雇された。まさにサバイバル。オイラはそのレストランで「歴代2位」の期間となる6ヶ月間弱働いたが、6ヶ月目に常連のアメリカ人客と口論したためにクビになった。その後オイラは、画家のアシスタントとか、日系の新聞の電話勧誘とかのアルバイトをしながら、労働ビザのスポンサーになってくれるまともな就職先を探した。バイトの契約期限が切れて何も職がない時期がいちばんツラかった。求人に片っ端から応募するがナシのツブテ。たまに書類選考に通って面接にこぎつけても「不合格」が続いた。違法労働者の群れに混じってレストランのバイトをするのはもうイヤだったので、ほかの比較的まともなバイトを探すも滅多に求人はない。貯金はついに100ドル(1万円)を切り、労働許可証の有効期限も迫ってくる。そんな時に限って体調を崩す。カネを節約するために、牛乳とシリアルとか安売りの果物とか野菜ばっかり食っていたので、ちょっとしたことで風邪を引いたりした。動けない。カネもない。まともに食うモノもない。職を得る見通しもない。大学時代と違って助けてくれる人も周りにいない。空笑いしながら、異国のベッドの上で熱と悪寒と空腹に耐え忍ぶ。…などという生活を一度経験すると、その後就いた仕事で多少厳しい労働条件を提示されたりしても、何のギモンも湧いてこなくなるものだ。「休日出勤…」「やります。」、「残業代出ないけど…」「いままでもらったこともありません。」、「あさってから海外出張…」「問題ありません。」他人からは「奴隷根性」とか言われるかも知れないが、「荒野を飢えてさまよう一匹狼」に比べれば、毎日十分なエサを与えられる奴隷なんてよっぽどラクな身分に思えてしまう。窓から昼の日光の差し入るベッドの中で、10年前を思い起こしながら「午後からは多少シンドくとも仕事に出よう」と思うオイラであった。

  2004.05.04

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• 散髪屋のゴッド・セイヴ・ザ・クィーン

  昨晩ひとり残業していたところ、工事の人が2人ほどやってきていきなり天井に穴を開け始めた。オフィスの天井に「スピーカーを設置する」工事だそうだ。…庶務のＳ氏に内線電話で事情を尋ねたところ、米国の“トップマネジメント”の決断で、「有線放送」を社内で流すことにしたそうである。アメリカの『月刊 経営者』(…などという雑誌があるかどうか知らんが…)で「“仕事の効率化”のためにBGMが効果的」なんて記事でもあったのだろうか。「有線」と聞くとつい「演歌」や「歌謡曲」をイメージしてしまいがちだが、実際に流れるのは「たぶんクラシック」だそうだ。ビバルディ聞きながら仕事か。なんだかなあ…。そういえば、オフィスではどうか知らないが、日本ではよくいろんなお店で有線放送を流してるよな。先週、歯医者に行ったら「洋楽」の有線局と契約しているらしく、待合室で支払いの順番を待っていたら、あのヘロイン中毒(正確にはオーバードーズだが…)で死んだ元Sex Pistolsのベーシスト、シド・ビシャスがピストルズ解散後に歌った「マイ・ウェイ」が流れてきて、一瞬頭の中がふっと“明日なきパンク野郎”だった当時にトリップしてしまった。受付の看護婦に診察料を払いながら、「歯医者の待合室で“マイウェイ”を聴き、ひとりほくそ笑む元パンクの中年会社員」という自分のイメージに、人知れず照れてしまった。翌日、今度は床屋に行ったら、そこではラジオだったか有線だったのか知らないが、英語なまりのあるＤＪが洋楽・邦楽のポップな曲を流していた。散髪がほぼ終わり、バキュームをかけてもらっていた (そこは「洗髪なし1000円」の床屋だった) ところ、なんと今度はSex Pistolsの「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン」が流れ始めた。…ピストルズをご存知の人ならお分かりかもしれないが、この曲は英国国歌『ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン（女王陛下万歳）』を皮肉った曲で、失業率20％以上のどん底の不況のさなかにあった70年代後半のイギリスで、シングル・ヒットチャート1位に輝いたいわくつきの曲である。職も希望もなくブラブラしながらドラッグにおぼれていたイギリスの若者の中から「パンクス」が登場しロンドンの街を闊歩し始めた当時、ピストルズはこの曲で「女王は人間なんかじゃない」「英国王室ってのはファシスト体制さ」「イギリスに未来なんかない」と歌い、英国中の放送局から「放送禁止」の処分を受けた上、さらには雑誌や新聞などの印刷媒体までが、この曲名を印刷・記載することを禁じたのであった。つまり、当時の音楽雑誌などのヒットチャートのランキング1位には、伏せ字で「『××××・××××・××××』 by Sex Pistols」と記載されていたのである。　中年のオイラはこの有線の曲を聴きながら、体がリズムをとり始めるのを抑えられなかった。オイラは手足の先で小刻みに架空の“ドラム”を叩きながら、頭の中でジョン・ライドンと合唱していた。「出張先の“1000円床屋”で有線のピストルズを聴きながら、小声で『ノー・フューチャー・フォーユー！』を口ずさむ会社員の中年」の自分を想い、また照れてしまった。間違っても、会社で“考課表”だの“計画書”なんかに記入している最中に、有線で「ピストルズ」だの「ジョイ・ディビジョン」なんて流すのはやめて欲しいと思う。つい筆がすべって、「正直、未来なんてどうでもいいと思う」だの「端的に言って、社長は人間ではないのではないか」だの書いてしまったりしかねない。

  2004.03.03

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• オイラを、泣かしてくれ！

  昨晩、申込みを検討しているあるマラソン大会についてインターネットで調べているうちに、ふとある市民ランナーの「完走記」にハマってしまった。この40代の市民ランナーは2度3度とフルマラソンに挑戦するも満足のいく結果が出せず、「次の大会こそ雪辱を晴らすゾ」とばかりに日々の練習を重ね、ケガや故障を克服してようやく臨んだ大会でついに一度も歩くことなく制限時間の4時間以内の完走を果たすのだが、制限時間内の完走が確実となったゴール数キロ前からすでに涙があふれてきて、ゴールするなり声を上げて男泣きに泣くところは、読んでいて「うらやまシイッ！」と感じてしまった。中年にもなると、「感涙」なんて経験はなかなかできるものではない。“念願の何かを達成して涙を流す”なんて、中高時代ならまだしも、社会人になってから経験したことがあるか？実は、オイラは生まれてこのかた「うれし泣き」も「感動の涙」も経験したことがない。きっと、「うれしい/感動した」→「泣く」という回路が故障しているのだろう。そもそも、悲しかったり悔しかったりして泣いた経験だって、高校2年生の時を最後に過去20年以上経験していない。よくよく考えてみると、「泣いた」ことじたい、幼稚園時代から数えても10回くらいしかないんじゃないか。そういえば小学校１-2年の頃、学校でケガをした時に痛みに堪えきれずうずくまって泣いていたら、同級生が「郡山 (仮名) が泣いてるゾ！」とふれ回って、ほかのクラスからみんなが見物に集まったっけなあ(笑)。オイラは単に「泣かない」だけでなく、人が泣くような場面でひとりで笑ったり、何が悲しいのか理解できずについ不可解な表情をしてしまったりするので、ちょっと困ることがある。今の米国の勤務先で仕事を始めて間もない頃、とある日本人の同僚が退社する日、一部の若い女性社員が感極まって泣いていた。オイラは何が悲しいのかじつに不可解で、泣いている社員の姿があまりにも不思議だったので珍しいものを見るように傍で冷静な顔でジーッと観察していたら、あなたは一緒に働いてきた同僚と別れるのが悲しくないのか！と本気で詰られた。アメリカに向かう飛行機の機内上映で「タイタニック」を見ていた時も、映画の最後の方で沈没する船の乗客がパニックを起こしたり海に落ちていったりするシーンを見ていて、なんとなく可笑しくってゲラゲラ笑っていたのだが、周りの乗客を見たら誰も笑っていなかった。…こんな話ばかり並べると、オイラは単に“情操欠乏”の異常人格者だという印象を与えてしまうかも知れないが(…まあ、たしかにそういう傾向はあるが(笑))、そんなオイラも「悲しくて泣きそう」になったことはちゃんと、何度かある。5-6年前に、祖母の脳血栓が破裂して「9割5分助からない」と診断されたのを集中治療室に見舞いに行ったところ、意識を半分くらい取り戻していた祖母は、巡回に来た看護婦さんのそで口をつかむと、ベッドの傍らに立つオイラを指差し、尋ねられてもいないのに、かすれた声で「これが自分の育てたマゴだ。生まれた頃から頭がこーんなに大きいのを、『お婆ちゃんの頭より大きいね！』とみんなに言われるをおぶって歩いて、育てたんだ。」ということを、回らぬロレツで懸命に主張していた。祖母にしてみたら、それが自分の人生における自慢のようなものだったのだろう。オイラはその晩、実家の布団の中でその場面を思い出し、泣きそうになった（…がいつものとおり泣けなかった。祖母はさいわい健在である）。親友が自殺した時も泣かなかったし、葬式でも平然とした顔で弔辞を読んだものだが、ただ彼が自殺する数週間前にいちど自殺を試みて毒物を摂取し、もうろうとした状態で、しかしヘラヘラ笑いながらオイラの下宿に電話をかけてきた時には、心底悲しくなって泣きそうになった(あんなに悲しかったことはちょっと思いつかない)。そういえば15年くらい前、“泣かせる映画”の禁じ手あるいは最終兵器として名高い『火垂(ホタル)の墓』を後輩と映画館に見に行ったことがある。さすがのオイラもあんなに悲惨な映画を見ながら笑わなかったが(笑)、映画が終わって暗い劇場から外に出ると、後輩をも含め観客の誰もが涙で顔をグシャグシャにして目を赤くしている中、オイラだけがひとり乾いた顔をしていた。オイラはその後、何かのきっかけでこの後輩と口論した際に「あなたには人間らしい心というものがあるのですか！」と抗議された(笑)のを覚えている。ただ、この後でオイラが気づいたのは、この後輩をも含むほかの観客は「泣いてスッキリ」した後はいつもの“明るい日常”へと還っている一方で、オイラはといえば、事実に基づいたその戦争映画のあまりにも悲惨なストーリーがいつまでも脳裏から離れず、それから数ヶ月の間鬱状態に陥ったのであった。要は、オイラが「泣かない」のは“人間らしい心”がないからではなく、「泣いてスッキリ」という人間心理のカタルシスの機能に強烈なブレーキがかかっている、ということではないかと思うのだ。フロイト的に言えば「肛門期への固着」というヤツか(笑)。…単に自分は「フン詰まり野郎」である、という結論を導くために、またしてもクダラぬ日記を長々と書いてしまった。反省。

  2004.01.29

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• 10年前と10年後の日記

  先日の日記にも書いたが、カナダに引っ越した時に持ってきたノートに、7～10年くらい前の間に散発的かつ断片的に記した“日記のようなもの”が書きなぐってある。以下は、そのうち内容的に当たり障りのないもので、かつバカバカしいもののひとつである。この“日記”にはこんなタイトルがついている。　「ぼくの未来」まるで小学生の作文のタイトルだ。あいにく日付が書かれていないが、ノートのページから察して30歳かそこらの時のものだ。　ぼくは、正直に言うと、未来のことを考えるのがあまり好きではありません。なぜならば、ぼくの性格のひとつに「計画性がない」「思いつきで行動する」というのがありますが、これはそもそもぼくが未来があることを確信していないことや、「ひらめき」や偶発的な要因に価値を置いていることが反映された結果です。　「明日死んでも悔いはない」ような太く短い姿勢での生き方。　だからぼくの辞書には「安定」とか「子孫の繁栄」といった言葉はありません。とても30歳になる社会人の考えていることとは思えない。この年齢の時にはすでに子供が2人いた両親が読んだら、涙を流しそうだなあ。　それから、ぼくは身軽でいたいので、家や土地を所有したり、足かせになってしまうような勤務先への“入れ込み”も避けたい。　なぜ身軽でいたいか。　それは、ぼくは「広く浅く」を信条のひとつとしているので、ひとつの場所にとどまらずにあちこちを歩き回り、いろいろなことをカジってみたいからです。どうやらこの日記は、オイラが「通訳・翻訳」を勉強して、それを職業にして食っていこうという決心に到達する前のことで、しかもまだ結婚するつもりでいた頃の話のようである。　結婚はしたいけれども、「家庭」を持たないことに決めているので、配偶者になる人は「家庭人」ではなく「キャリアウーマン」でないとダメだと思います。仕事にコミットメントを持つ気もなければ、家や土地を持つつもりもなく、オマケに相手が「キャリアウーマンでないとダメだ」とか勝手なことを言っているヤツに、相手が見つかるとでも思っていたらしい。バカだ。たしかにその後の数年間、オイラはアメリカの労働ビザをサポートしてくれる会社で「あちこち」にある支店に散発的に投入され、まったく一貫性のないいろんな仕事を「広く浅く」カジることになるのだが、配偶者どころかガールフレンドさえ見つからず、キャリアの方も中途半端な状態であることにやがて嫌気が差してくるのだ。バカめ。いやあ、オイラがもしあと7-8年遅く生まれていて、この時期に楽天広場でこんな日記を公開していたら、ホントに虫のいいことばかり言ってるただの“海外バカ”だな。でも、バカなりに似たような境遇のヤツを見つけては、いい年こいて「オレたちの辞書に『安定』なんて文字はないのさ」とか、「やっぱり相手は“キャリアウーマン”じゃなきゃネ」なんて言って、掲示板で意気投合してたりしたんだろうな、きっと(笑)。...ま、オイラがいまこうして毎日書いてる楽天日記だって、10年後に40代半ばになったオイラがたまたま読んで、「ナニが『柵を越える黒いヒツジ』だ、バカめ。」とか言ってるのかも知れないけど(笑)。

  2004.01.16

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• 【10000 HIT記念】NHK北京特派員 極寒のモンゴルに没す -KTに捧ぐ

  NHK北京特派員の加藤高広が、記録的な極寒に苦しむモンゴルの奥地へ取材に向かう途中、ヘリコプター事故で死んだのは3年前の今週のことだ。NHKの朝のニュースとかで、いつも眠そうな顔をしてメガネをかけた、鴻上尚史と「伝染るんです」のかっぱ君を足して2で割ったような顔の男のことは、その名前を知らなくとも、映像を見れば顔を覚えている人もきっと多いと思うぞ。加藤は、オイラの高校3年時のクラスメートだ。クラスメートはみんな、仙台なまりで「タガヒロ」(“ガ”にアクセント)と呼んでいたがな。優秀なヤツだったが、決して天才秀才タイプというわけではない。どちらかといえばコツコツ型の真面目な努力家タイプだった。高校時代は将棋部に所属し、一見すると気弱そうな文化系のガリ勉坊主なのだが、実際には死ぬほど鼻っ柱の強いヤツだった。たとえば、コイツと議論になったらもう止まらない。教師に対してさえひるまないのだ。秋ごろだったか、試験休みだかの1週間を使って社会科や国語科教師などの教師の有志が団体で中国旅行に行ってきた。倫理社会の授業中に、参加した教師のひとりが中国のみやげ話を聞かせてくれた。ひととおり教師の話が終わった後で、加藤は挙手して質問した。「先生、中国滞在中、性欲の処理はどうしたんですか。」彼は、中国で女を買ったんだろ、と教師に面と向かって言っているのである。決して冗談で尋ねているのではない。彼は倫理社会の教師に“倫理の実践”について議論を挑んでいるのであった。そんな一見ハスッパな質問をする加藤であったが、オイラは知っている。コイツは20歳を過ぎてドーテイだった。そもそもオイラたちの通っていた旧制高校の流れを汲む東北の男子校は、例年の進学率が99％くらいだったが、卒業時の童貞率もだいたい同じ数値であった。これはもちろん正確な統計をとったわけではないが(笑)、当時の東北の男子進学校というのがどれくらいウブだったかというと、たとえば高校卒業前に中学の同窓会に行ってきたヤツが翌日教室で「昨日、帰りに中学の同級生を家まで送って行った時、手を握った。」とかうれしそうに自慢している、そういう世界なのだ、ホントに(笑)。卒業後東京外大に進学した加藤は、大学2年の夏休みに京都のオイラの下宿に遊びに来た。どうやら、彼が所属する軟式野球部のマネージャーをしている女の子が奈良の実家に帰省しているので、思い切って会いに行くらしい(笑)。加藤は朝早くオイラの下宿を出て奈良の彼女に会いに行き、その日のうちに京都に帰ってきた。何だか知らないが、オイラの下宿に戻るなり、憤慨している。「オマエが朝食に作ったオニオン･サラダのせいでだな、彼女に『口が臭い』と言われたぞ。」本気で怒っている。こりゃ、彼女とはまだキスにも成功していないな(笑)。その後あいにく加藤とは音信がなかった。オイラは卒業後渡米し、加藤がどこに就職したのかさえ知らなかった。ヤツと“再会”したのは、忘れもしない、6年ぶりに日本に帰国して母を見舞に行った病院で見た朝のNHKニュースのTV画面だ。どこかで見た顔の特派員だなあ、と思ったら字幕に「加藤高広」とある。タガヒロじゃねーか(笑)。それから数年後、オイラは翻訳･通訳のアルバイトとして渋谷のNHKに出入りするようになった。いつかそのうち、日本に帰国した加藤をNHKの廊下で驚かせてやろうと思っていた。…しかし、そんな矢先の1月15日、やはり同じく朝のNHKニュースで彼の訃報に遭遇したのであった。彼が死んだその年の春に、今の会社でアメリカ本社への転属の誘いを受けたオイラは、それまでは日本に腰を落ち着けてマジメに社会人をやろうと思っていたのであったが、いろいろ考えた末また渡米することにしたのであった。…加藤とはもしあの世で会えたら、いろいろと想い出話をしたいと思っている。奈良のマネージャーとはその後どこまで行ったのかとか、中国赴任中の性欲の処理はどうしたのか、とかサ…。-------------------------いつも訪問いただいてる皆さん、毎度おおきに。今後ともよろしゅうに。

  2004.01.11

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• 杜の都　野郎だけの園

  いやさ、なんか昨日の晩から気管支がヒリヒリするんだよな。まるでガラム煙草を吸い過ぎた時のような感じ。なんでか考えてみたら、やっぱり昨日おとといと氷点下10～15℃の中を1時間も走ったもんで、たぶん気管支が軽い凍傷に近い状態になってたと思うんだよな。ちょっと頭痛もするしさ。今日いちにち寝てたらだいぶ調子よくなったよ。いい年こいてバカだよな、オイラも。いい加減「身の危険」を察知できるようにならないといけないよな。ぜんぜん関係ないけど、昨日の晩インターネットでいろいろ調べごとをしてて我が母校のHPを覗いたんだが、旧制高校の流れを汲むバリバリの男子校だったのを「男女共学」にしようという動きがあるらしい。...これは聞き捨てならん。オイラが生まれ育った宮城県は、実は東京都に次いで「共学率」が低い自治体として知られている。オイラの在学当事はたぶん50％を切ってたと思うぞ。ほら、東京は私立高校の多くが男女別学だから共学率が低いのは分かるが、宮城のばあい、仙台をはじめとして、戦後にアメリカのGHQの指導で男女共学が推進されたときに断固として別学を維持したらしいんだなあ。さすが反骨精神の都市、我が故郷 仙台。オイラの体験としては、「保健室と食堂のおばちゃんをのぞけば、先生も生徒もみんな男」という毎日は、人生でいちばん気楽で自由な3年間だったけどなあ。我が母校の場合とくに「山の上」にあったもんでまるで修道院の状態。主な通学手段は自転車で、通学の際に住宅地の主婦とか小中学生を見掛けるのを別として、家族以外の女と接触した記憶がないんだよな。“共学推進派”の意見の中には、多感な時期に男女を分けた教育をするのは人格形成上好ましくない、つまりは偏った“異性観”をはぐくむ可能性がある、というのがあるらしい。たしかになあ、女子学生が6割を占める大学の某学科にオイラが進学した時、若い女が大量にいるのを見てホントに驚いたっけなあ(笑)。食堂のおばちゃん以外の女と口をきいたことのない3年間は、世の中の半分を女が占めていることを忘れさせる効果があったのはたしかだ。…でも、地方の男子高校出身の硬派なヤツらというのはそれなりの魅力があるもんだし、母校の同級生たちは大学に進学してちゃんとガールフレンドとステディな関係を持っていたぞ。だいたいやね、共学がまともな人格形成を育むかといったらゼンゼンそんなことはなくて、勉学にせよスポーツにせよ、異性の目(＝モテたい)をモチベーションにしてしまうという、“偏った”意識を“多感な”若者に植え付けるだけだぞ。別学のいいところは、異性に対する「虚栄心」から開放されて、自分が本当にやりたいことを自由に追求できるところだ。勉学やスポーツに限らず、雨に濡れたらズボンが乾くまでパンツ一丁で授業を受けたりとか、教室でも廊下でもトイレでも裸足で過ごしたりとかいう自由をだな、共学高校出身のヤツは経験したことないだろ。...そんなの経験しなくていいってか(笑)。

  2004.01.10

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• そうだよ。大晦日も通常勤務。

  アメリカではだいたいどこの会社もそうだろうが、年末の「仕事納め」なんてない。12月31日は「ふつうの日」だ。言うとくが、「正月」だってない。辛うじて「元旦」が祝日になるだけで、1月2日はもう「通常勤務」だ。毎年のことなので別に違和感はないはずなのだが、今年は楽天広場の日記などでやれ「大掃除」だ「仕事納め」だ「大晦日の除夜の鐘」だ「初詣」だといった書き込みを見ていると、年末年始に通常勤務している自分がバカバカしく感じてきたぞ、オイ。…ま、日本が休みに入れば日本から急かされるような仕事もなくなるんで、この1週間は仕事は多少ラクになるけどな。去年と一昨年は平日となんら変わらん大晦日＆正月を過ごしたオイラだが、1999年と2000年はそれぞれエジプトとオキナワで過ごしたのであった。オイラは10年以上前から、「1999年の大晦日をエジプトのピラミッドのふもとで過ごす」と決めていた。1989年の『Time』誌の特集記事で、ミレニアム・イブをイギリスの「ストーンヘンジ」だとか中国の「万里の長城」だとかいった歴史上の遺跡で過ごそうという動きがヒッピーたちの間で早くも画策されていることを知ったオイラは、「よし、じゃあオイラは10年後の大晦日は何があってもピラミッドで過ごすぞ」と決めたのだった。…はたして10年後、オイラは当時たまたま会社を辞めて一時アルバイト生活をしていたため、容易にこの計画を実行に移すことができた。ただ、唯一計画外だったのは「ミレニアム･イブをいっしょに過ごす配偶者や恋人」が居ないということだったが…。…で、1999年の年末、オイラは格安航空券でひとりイスタンブールに飛んでラマダンの真っ最中のクリスマスを過ごした後、カイロ入りした。ミレニアム・イブの下見のつもりで数日前にさっそくピラミッドを訪れて気づいたのは、どうやらミレニアム･イブをここで過ごそうと計画している連中はヒッピーに限らず、世界中およびエジプト国内の金持ち旅行者も相当数いるらしいことだった。ピラミッドの周りは厳重な警戒が敷かれ、ピラミッドから数百メートル離れたところにステージやテントが設けられているのだった。どうやら、エジプトの観光局か何かがこれを「ヒッピーどもの密かな集まり」にとどめず、国をあげての一大イベントに仕立て上げようとしている様子であった。実際、当日のイベントのための「チケット」が販売されていた。ピラミッド周辺の敷地は12月30日から閉鎖された。12月31日当日のイベントに参加するためには、指定されたホテルから貸し切りバスに乗って敷地に入らねばならなかった。指定のホテルに入ると、ロビーは欧米の旅行者を中心に、ヒッピーというよりはフツウの外見の旅行者たちでごった返していた。オイラはその夜にホテルを出発した1番最初のバスに乗り、ピラミッドから数百メートル離れた「会場」で降ろされると、入り口に立ち並ぶ銃を持った兵士のひとりから「身体検査」を受け、会場に一番乗りした。会場といっても、単に砂漠の砂地に柵を設けて平らにならし、ステージを設けただけの場所だ。広さは野球のスタジアムくらいか。ステージの両側には馬鹿デカいスピーカー。柵のすぐ外には何十ものトイレや屋台の列。ステージの反対側にはPAのテントとか、砂地から何メートルか持ち上げて組まれた「特別客用の来賓席」があった。やがてバスは次から次へと会場に到着し、やがて万単位と思われる数の人たちが会場を埋め尽くした。オイラはPAのテントのそばの砂の上に自分の居場所を確保した。オイラのそばに陣取ったのは、スロベニアから訪れている20歳くらいのパンクっぽいヒッピーの連中と、クウェートだかの中東の国で英語を教えているアメリカ人の家族。そばに居たエジプト人やヒッピーによると、どうやらこのイベントのメインは「有名なフランス人のニューエイジのミュージシャンのライブ演奏」だということだった。前座の演奏だかパフォーマンスがあった後、午後9時か10時くらいからその演奏は始まった。この演奏の見所は、演奏の途中から「映像」を組み合わせる趣向が用意されていることで、しかもこの映像はなんと数百メートル離れたピラミッドの側面に投影(！)されるのだった。ニューエイジ音楽の印象はあんまり残っていないのだが、この映像のことはぼんやりと記憶に残っている。よくまあ、エジプトもこんな人類の遺産をプロジェクター(のスクリーン)代わりに利用することを許可したもんだなあ、とオイラは思っていた。西暦元年にはすでに建築後3000年近くが経過していたというピラミッド。2000年前にキリストが生まれた頃には、このピラミッドはすでに西暦の2000年間プラス1000年を経過していたのだよな。感慨深い千年紀の最後の晩は更けていく。...やがて12時直前になるといったん演奏は中断し、彼方のピラミッドにはカウントダウンの数字が投影された。そして、その数字が「0」になった瞬間、ピラミッドの上方に花火が上がった。…ハッピー・ニュー・ミレニアム。周りのアメリカ人家族やスロベニアのネーちゃんたちと次々と抱き合う。エジプト人の紳士から手製の吸い差しのタバコが回ってくる。…ムム、これはタバコじゃない。マリファナやんけ。…ま、そんなことだろうとは思っていたが(笑)。砂漠のミレニアム・パーティーは、こうして夜明けまで続くのであった。

  2003.12.31

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• ハタ日は、パンク野郎の出番

  クリスマス前後のアメリカの会社というのは、お盆の時期の日本の会社のようなものだ。この時期はどうせ顧客も下請も不在のケースが多いもんで、重役も下っ端の社員もこぞって有給休暇を取る。おかげでオフィスは外国人社員をだけがほぼフルで出社している以外、ガランとしている。テレビのニュースを見ると、レギュラーのニュースキャスターも軒並み休暇をとっているらしく、見慣れない顔の代理のキャスターが、あちこちで詰まったりしながら、ちょっとキンチョーした面持ちでニュースを読んでいる。レギュラーの連中がハッピーホリデーを楽しんでいる最中に、日頃はブラウン管に顔を出すこともなく、こういう機会にだけ定番でいかにも「穴埋めです」といった感じで登場するパッとしないこんなヤツらに、オイラはちょっとした親近感を感じてしまう。思えば、オイラが学生時代にコンビニで夜勤の店員のバイトをしていた頃、クリスマス＆イブとか大晦日＆元旦になると、バイト仲間がなぜか「バイトに入れなく」なったものだ。どういうわけかそういう日にはみんな「予定が入っている」らしい。おかげで、いつもこの時期に「時給数百円増し」で起用されるのは、クリスマスも正月も関係ない「この世に属してなさそう」なオイラなのだった。あとになって知ってちょっと驚いたのだが、クリスマス＆イブとかにみんなが「バイトに入れな」くなるのは、「それらの日バイトに入れる」というのがすなわち、それらの日をいっしょに過ごすボーイフレンドやガールフレンドがいないということを公言するようなものなので、虚栄心で「入れな」くなってしまうらしいということだった。…だもんで、それらの日にバイトに入るのはいつも、ロー○ン名物の“長髪夜勤野郎”のオイラと、同じバイト先の女の子にフラれた自称パンクのAくんのコンビになるのであった…。…そういえば思い出したが、10年前の冬、NYでサラリーマンをしていた頃、オイラが通勤に利用している地下鉄路線で爆発事件があった。結局、何日も後になってから、それはある男が自殺だか復讐の目的で作って所持していた爆弾が車内で誤爆したものだと判明したのだが、なんせその数年前に貿易センタービルで爆弾テロがあったばかりだったもんで、しばらくの間NYはその事件に騒然としていた。その事件があった翌朝、その地下鉄線は通常どおり運行していたが、電車に乗ってオイラは驚いた。いつもは満員の電車がガラ空きだったのだ。…そうか、爆発事件にビビった通勤者たちのほとんどは、違う路線や交通手段を使って出勤していたのだ。…ガラガラの車内にポツンと座っていた若めの男性サラリーマンは、オイラとたまたま目が合った瞬間、お互いに訳知り顔でちょっぴりさみしそうな微笑を交わすのであった(笑)。…こうして考えてみると、オイラは盆も正月も彼岸もクリスマスも、この世の年中行事にほとんど関係なしに例年を過ごしているだけでなく、「大多数の人がしていること」に無関心でマイペースな生活をしていることを痛感してしまうんだな。…これってある意味、ちょっとスゴくて、ちょっと寂しいことかも…(笑)。

  2003.12.25

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• 「お祓い」仲間

  昨晩、楽天広場サーフィンしてたら、元「殿様の生活」ボーカルでイギリス在住の友人のYから電話が来た（参照→http://plaza.rakuten.co.jp/kameika/diaryold/20031204/ ）。ロンドンはもう深夜の0時過ぎやがな。先日、元「殿様の生活」ベーシストであった心斎橋ワタル(仮名)氏から、やはり「この前Y氏から会社に電話が来た」という情報をもらっていたので、Yからのとつぜんの電話にはそれほど驚かなかった。彼と電話で話すのは1年ぶりくらいか。彼と直接会って話したのは、彼が二人めのイギリス人女性のパートナーと日本を訪れた4-5年前だな。話は飛ぶが、この男は10年ちょっと前にイギリス人女性(その１)と結婚してイギリスに移住した後、やがて離婚し、その後イギリス人女性(その２)と同棲を始めたがやがて別れ、今はイギリス人女性(その３)と「交際」しているらしい。オイラはひそかに、交際したイギリス人女性の数では、もしかすると彼が日本新記録を保持しているのではないかと思っている。Yはどうやら年末年始に日本に一時帰国するらしい。心斎橋氏とか、同じく学生時代のサークル仲間でイタリア人の妻を持つKとかと会う予定だそうな。ちなみに、オイラも日本に長期出張した時には、やはり同じく「心斎橋氏とK」の二人と会うのが定番になっている。--というか、オイラやYのように、自宅に招く場合にちょっと何を話し出すか分からないようなリスクを伴う海外在住の(＝日本の常識が通用しなさそうな)旧友と気軽に会ってくれる心の広い人物は、もはや心斎橋氏とKくらいしかいない、と言ったほうが正確であろう(笑)。...トホホ。オイラとYは、大学時代に同じ美術サークルやバンドの仲間だったのみならず、ある稀有な経験を共有している。それは、自分たちの知らないところで「お祓(はら)い」をされてしまった、という経験である。当時、Yが大学3年生、オイラが大学の4年次を休学してイギリスに滞在していた頃のこと。オイラたちの所属する美術サークルで、部員たちがたて続けに盗難に遭う、ケガをする…といった不運・不幸が相次いだ。偶然で片付けるにはあまりにも不運が続き過ぎるのではないか、と考えた部員たちの一部は、「Yとオイラがサークルに“呪い”をかけたのではないか」という結論に達したらしい(笑)。…まったくテレビの見過ぎじゃないかと思うのだが、まあ、無理もなかったんだろうな。当時オイラたちはバンド「殿様の生活」のメンバーとして、健全な人間には理解できないような不気味な音楽を演奏していた上、その奇異な言動や行動や風貌は一部の健常な部員たちに気味悪がられていたに違いないのだ。…で、そんなことを言い出した部員のひとりは、Yとオイラの写真を持って知り合いの霊能者を訪れ「霊視」と「お祓い」を依頼したらしい。結局、Yとオイラがかけたという「呪い」の嫌疑は、その「霊視」によって晴れたらしいのだが。ちなみに、元「殿様の生活」のギタリスト(「インドで死にかけた話(1987)」に登場するM)はというと、あいにく過去10年近く音信がないのだが、その後会社を辞めて日本の最高学府であるT大学を受験して再入学(！)し、今は学者としてドイツで研究生活しているそうな。これはやはり、オイラたちはいずれ日本から「お祓い」される運命にあったのだと言わざるを得ないか。追記：「新着日記」を見てたら、タイトルに『愛とセックス』とあり、「友人はイギリスの大学の博士課程に在籍中なのだけど、」...と続くので「もしや...」と思いクリックしてみたら、これってYのHPやんけ。→　こちら昨晩の電話でYにこのHPの話をしたばかりなのだが、まさか彼もここにHPを立ち上げるとは...。しかもハンドルネームが「鰻坂ヒカル」って...オイ(笑)。

  2003.12.19

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• 五島サンすいません、もう5年も過ぎるんですけど…

  あと2週間やそこらでなんと2004年だぞ。正直に言おう。オイラは20歳になってもまだ、「ノストラダムスの大予言」を半分信じていた男だ。本来2004年なんて「あってはいけなかった年」だぞ。2000年代が年を重ねていくのを見るにつけ、実にシュールな感じがしてるのは、オイラだけか？今でも覚えている。まだ12-3歳のイタイケな少年だったオイラは、月2000円やそこらの小遣いの中から500円くらい出してNONブックスの五島勉著『ノストラダムスの大予言II』を買って友達と回し読みし、「1999年に終わる世の中」について語り合ったものさ。「アンゴルモアの大王」が地に降り立ち、オイラたちは30をちょっと過ぎる年で死を迎えることになっていたのだ。思春期の少年にとってはこのノストラダムスの予言は強烈過ぎるインパクトを持っていたはずだ。とくに、東北で生まれ育った純朴なオイラの周りの連中は、みな本気でこの予言を信じてたんだぞ。今でも覚えているが、同級生のアッちゃんからもらった年賀状にも、ヘタクソな犬のイラストの横に筆ペンで、まるで特攻隊の青年の遺書みたいな字で「人類の絶滅まであと19年…」とか書かれていたぞ、そう言えば。本人は今は地元でしがない銀行員をしてるがな(笑)。ついでに言うと、1987年の9月にも、どっかの(的中率99％とかいう)霊能師が「東京、大震災で壊滅」を予言してなかったか？当時かなりヤケクソ気味だったオイラは、「ええい、どうせ9月がくれば日本もメチャクチャになるのさ。みんな終わってしまえ！」と思いながら、日々ハードコアパンクだのゴシック音楽だのに酔いしれていた記憶があるぞ。オイラはその年の夏、インドにひと月ほど滞在して8月末に帰国したのだが、その頃にはすっかり頭の中がインド病で壊滅状態になっており、「東京大震災」の予言のことなど半分忘れていたのだったが…(笑)。ところでオイラはじつは「昭和一ケタ世代」にちょっとした興味を抱いているのだが、それは彼らの世代が軍国教育を受け「天皇は神様」だと信じて育ち、戦況が不利になると「神風」が吹いて日本に有利な戦況に傾くなどと教え込まれてそれを本気で信じ、いよいよ本土決戦にならんという時に「神風」を今か今かと待ちこがれているうちに「原爆」が落とされ、日本はあっさり降伏して、その瞬間に天皇も「ただの人」になり、学校でも軍国主義については「ああ、アレは間違いでした！正しいのは民主主義です！」などと「正反対」のこと教え込まれたという、まさに世紀の「ダマされ」世代だからである。もちろん昭和一ケタ様には及ばないが、幼くして「ノストラダムス」を刷り込まれたオイラ(の世代)は、「オッサンになる前にデッカイ何かが起こるんだ！」という暗い期待を胸に抱いて成長したところが、その「何か」は毎度カラ振りに終わり(注．阪神圏在住の人たちには実際「大震災」があったのだろうが)、気がつくと何もないまま30代も後半になっているという点で、なんとなく「…ダマされた」という感じを抱えて年を重ねてざるを得ないのである。もう「オッサン」になった今となっては、「デッカイ何か」なんてもう来なくていいから、あとは静かに余生をおくらせて欲しいものだと思っているけどさ...。

  2003.12.15

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• 期限とインド病

  ヤバイぜ。週末のうちに片付けにゃならん仕事があったのに、サダム・フセイン拘束のニュースをTVで見ているうちに一日が終わっちまったゼ。いや、正確にいうと、フセイン拘束のニュースで、フセインをアメリカ人医師が診察する同んなじ映像がTVで繰り返されているのをソファに横になって見ているうちに、寝てしまったんだがな、ホントは(笑)。ソファから起きて、2週間ぶりに掃除をしたり、キッチンを片付けていたりしたらもう夜だよ。夜になったらいつもの ”Law & Order”という刑事＆検察モノのドラマを見ているうちに9時過ぎ。慌ててジムへ移動してトレッドミルで1時間くらいジョギングしてシャワーを浴びたら11時半だ。こりゃ今晩は徹夜だな。楽天日記を書いているどころじゃないか(笑)。期限の厳守に関しては同僚や上司の信頼の篤いはずのオイラなのに、困ったことだ。高校時代に先生の期待を裏切って月並みなテストの点を取ってしまった時の感じに似てるなあ。期限といえば、日本の大学時代にインドから帰国した3年生の夏休みを境に、期限に対する緊張感がなくなってしまい、それからしばらくの間、社会生活を営むのに苦労したものだ。それまでは、前日に徹夜してでもレポートとかを完成させて期限までに提出していたものだが、インドから帰ってきたら、明日が期限なのに何の準備もしてなくても、「別にいいかあ。」になっちゃうんだよな。ほら、インドって、列車が平気で24時間も遅れたりする国で、しかもそれを駅員とかに抗議したところで「マイ・フレンド、ノー・プロブレム！」で済んでしまう世界なので、帰国して日本の秒刻みの正確さの世界に再適応するのにとっても時間が掛かるんだよな。実際、インドに旅したオイラと美術サークルの後輩3名(左メニュー“Travel”の「インドで死にかけた話（1987）参照」のあの年の取得単位数は、20単位そこそこだったっけなあ。さすがに会社の上司に対して「マイ・フレンド、ノー・プロブレム！」というわけにもいかないんで、そろそろ観念して仕事にかかるかなあ。日本の夜までに提出すれば、なんとか言い訳が立つだろ…。

  2003.12.14

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• ドイモイ ゲストハウスへのトリップ

  オイラは楽天広場仲間のドイモイ氏のHP日記のファンで、ヒマがあるとつい彼の日記一覧から過去の日記のうち面白そうなものをテキトウにピックしては読んでいる。→こちらがドイモイ氏のサイト　http://plaza.rakuten.co.jp/?user_id=4589088 このお方はお若い頃に海外数十カ国を探検され、稀有な体験を重ねておられる。彼の日記は、彼が日常に体験したことや日頃考えていることに、これらの海外での体験の記憶がシンクロし、しばしばそれらの記憶と日常が日記の文（あるいは同氏の頭）の中で渾然一体となり、絶妙な世界をかもし出している。彼の日記のこの「渾然一体」の感覚、時空を軽々と超越してしまう感覚は、はっきり言って「通好み」のものであり、あまり一般の方々に無責任にお奨めするような世界ではあるまい(笑)。オイラが想像するに、この微妙な感覚というのは、同氏が稀有な体験の積み重ねの結果として、不可避的にたどり着いてしまった世界なのではないだろうか。彼の日記を読んでいると、オイラは元バンド仲間だった「殿様の生活」のボーカルの友人Yのことを思い出す。Yは、10年くらい前にイギリス人女性と結婚してイギリスに移住して、今ではロンドンに会社を興して自営業をしている（Yについては、オイラのHPの「ヒッチハイクで北欧へ(1992)その2」や「殿様の生活」デビューまで 編を参照）。ドイモイ氏の「渾然一体」「時空の超越」が「こちらの世界」と「あちらの世界」をフラフラと行ったり来たりしながら、微妙にこちら側にとどまっている感じだとすると、Yの感覚は、自分がこちらの世界にとどまっていると誤認しつつ、我知らず思いっきりあちら側に踏み外している感じとでも言おうか(笑)。彼は一緒にバンドをやっていた当時、過半数の曲の歌詞を（ほぼ即興で）書いていたが、その歌詞というのが、「♪ひまわりの歌が　カニを捕らえたら、ひまわりの歌が、カニを捕らえたら、カニの緑とひまわりの青が、混ざってしまう。イヤだ。句、チャック、結句」とか、「♪無数の虫と歌い、背骨が曲がった。重すぎる空気に、僕は昏睡。あまりの幸福に、僕は間違った。魚の犯罪、輪は広がる」とか、「♪サルは、いつも、僕と居るんだ。サルは僕のこと、何でも知ってる。だから僕は、ノートに　すべてのことを　くまなくつける。サルよ、サルよ、僕に電波で指令を出しておくれ。サルサルサルサルみんな去る、僕から去っていく」---といった調子だった。日常の会話でも、やはりこの歌詞みたいなセリフがしばしば登場し、話し相手を困惑させたものだ。今でも、たまーに彼から突然Eメールが届いたりするが、しばしばメッセージが途中から常人にとって意味不明の世界に突入し、それがある一点で「切れる」と、「ぐがががががーーーー。ぐぎぐぎぎぎぎーーーー。おばおばおばおばあさんが、おばあさんが、おばあさんおばあさんんんんが生理ですよぉーーーなんですよーーー。ぐがぐが。」---みたいな文になってしまう。何か、彼の中に表現し切れないで鬱屈しているものが、そのままほとばしり出るような感じ、とでも言おうか。そう言えば、今でも思い出すのは、Yとオイラが所属していた大学の美術サークルの後輩が結婚した時、サークルのメンバーで結婚式への招待状が来なかったのはオイラとYだけだったという話があったなあ(笑)。あ、こんなこと書いたらなんだかオイラの人格が疑われちゃうかな。いまさら遅いか(笑)。

  2003.12.04

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• 16歳、家出

  連休に入る前に終わらせておかねばならない仕事のために、自宅で深夜まで日本とやりとりしてたら午前３時。それから「山ごもり」のための荷物をまとめたり、インターネットで行き先の自然公園の調べごとをしていたら午前５時。それから少しでも眠ろうと思ってベッドに入るも、目をつぶって考え事をしてるうちに窓の外は白んできた。…この時の感覚が、何か遠い記憶に結びつく気がしたので、いろいろ考えていたら、思い出したよ。20年前に「家出」した時のことを。高校１年の前期末試験が終わり、翌日から４日間の秋休みに入る前の晩、オイラは両親に「まだ見たことのない日本海が見たいのです。４日間の自転車旅行を許可してください。」と必死にお願いするも、頑なに拒否されていた。その晩オイラは自室にこもり、オイラの真摯なお願いに理解を示してくれない両親に憤りを感じるとともに、見たことのない土地に対する欲求を抑え切れずにいた。そして、深夜ベッドの中でオイラは決意した。両親に書置きを残し、夜中にこっそり家を出よう。オイラはなるべく音を立てないように自室で荷造りし、家族が寝静まったのを確認した後、両親宛てに「父上、母上。私はこの日を希望にハードな期末試験を乗り切ってきたのでございます。決してお二人のおっしゃるように、自分の快楽のためにわがままを通そうというわけではございません。この旅は私にとって修行のようなものなのでございます。無事に帰って参りますので、どうぞ息子の若気をお許し下さい。」...といった旨の書置きを残し、外が白々と明けてくる最中に通学用の自転車に乗ると、家を後にしたのであった。１日目は奥羽山脈を越えて、暗くなる頃にたどり着いた尾花沢の小学校舎の裏の林でテントを張り、見慣れぬ旅人を見つけた親切な小学生たちから食べ物の差し入れをもらった。翌日はちょうど日暮れ頃についに酒田付近の海辺にたどり着いた。日本海に沈む夕日を生まれて初めて目にし、10代のオイラはとても感動した。その晩はどこで野宿したかは記憶にない。翌朝、オイラは山形市内に入り、その晩は山形駅構内で寝ようと思ったが、構内にはとても乗客とは思えない怖い人たちがウロウロしていたため、何かの本で読んだとおり駅前の交番を訪れ、宿直室に一晩寝かせてもらえないか交渉した。しかしオイラは逆に巡査たちから「事情聴取」を受けてしまい、親に連絡されてしまった。あいにく巡査たちはオイラを宿直室には寝かせてくれず、「数時間ごとに巡回に行くから」とか言って、オイラに駅で寝るように指示するのだった。翌日オイラは奥羽山脈を越えて一路仙台の自宅に向かったが、帰宅前にかけた電話に出た祖母は、父がオイラをゼッタイに家に入れないと息巻いていることを教えてくれた。…などということをベッドの中で思い出しているうちに空腹を感じ、ベッドを出てふと窓の外を見ると、みぞれ混じりの雨が降っている。…家を出て山に入る決心が鈍ってしまう、20年後のオイラであった。

  2003.11.27

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• 脳内麻薬物質と猫の思い出

  しばしば仕事中に、特に、緊急性や重要度が低くかつ自分自身関心がない仕事をPCに向かって事務的に淡々と処理続けている最中などに、心が硬化し乾いてくるような感覚が生じる。ひと言でいえば、まあ集中が途切れて飽きてきたということなのだが(笑)、結果的に作業効率が落ちてしまう。そういう時、オイラはしばしば楽天の猫好きな人たちのHPを覗き、「猫の画像」を見る。そうすると、硬化して乾いていた心がたちまち潤いを取り戻し、軟らかくなるような感じがする。これを脳内現象に還元/換言すると、感動したり感激したり感心したり何かに関心を持ったりする時に脳内に発生するある化学物質が枯渇していたところに、ある特定の刺激を見せられた途端、オイラの脳内には反射的にその物質が発生してくる、ということにほかならない。猫画像を見るオイラは、ベルの音を聞かされてヨダレを垂らすパブロフの犬だ。不思議なことに、オイラの脳内にこの化学物質を発生させるには、猫の画像でないとダメだ。子犬や赤ちゃんの画像を見てカワイイと思うことはもちろんあるが、決して猫画像を見たときの「心が潤い、軟らかくなる」ような感覚は起こらない。まあ、単にオイラが「猫好き」だということなんだろうけど(笑)、ただ、同じ猫画像でもシャム猫だのチンチラだのでは効かない。和猫の、しかも雑種でないと、この反応は起こらないのだな。本やTV番組や人と話をしていて「いい話」を聞かされた時にも同様の感覚が生じるが、「猫画像」に比較するとその頻度や確実性・効率性ははるかに低くなってしまう。なんだか、手っ取り早い麻薬のようなもんだよな、オイラにとっての猫画像は。なかでも効果がテキメンな猫画像は、・両前足を揃えてお座りして、上目遣いに頭を微妙に傾げている猫・前足の「手」の部分を内側に折り曲げて腹の下にしまい込み、丸くなって座りこんで、目を細めている猫・まるっちい子猫の無邪気な画像一般・複数の猫が仲良くしている画像一般滅多にないが、一番感動するのは、犬と猫(あるいはその他の動物)が仲良くしている画像や映像かなあ。猫のお母さんが、母にはぐれた子犬にお乳を飲ませている姿なんて、涙がこぼれそうになるくらいだ。いったい、オイラはどういう「条件付け」を受けて、こんなに猫に反応するようになったのか、いろいろと考えてみた。1）初代チャコの思い出母が第一子であったオイラを妊娠していた時、オイラの家にはチャコという三毛のメス猫が住んでいた。野良だったのが、エサをやるうちになついたらしい。いよいよ母が私を出産するという時に、オイラの祖母と父は、生まれてくるオイラの健康を考えた末、チャコを捨てることにした。依頼された叔父は、チャコを車に乗せ、10キロくらい離れた川の土手にチャコを捨ててきた。チャコは約1週間後に家に帰ってきた。少し驚いたオイラの親たちだったが、それでもまたチャコを車に乗せ、今度は20キロ近く離れた土地に捨ててきた。「ここまで離れていればまさか帰ってこないだろう」と誰もが思っていたらしいが、皆が忘れかけようとしていた約半月後にチャコは家に帰ってきた。この一件により、オイラの親は、全員一致でチャコを家に置いておくことにした。乳幼児のオイラはこの猫にずいぶんと遊んでもらったらしい。チャコは、ある日、親戚が釣ってきた釣り針を外す前の魚に喰らいついてしまい、喉に釣り針を引っ掛けて死んでしまったそうだ（もちろん誰も死体は確認しなかったようだが）。2）見知らぬメス猫の思い出オイラが3-4歳くらいの頃、外で遊んでいたら、隣の薬局の前を通り掛かろうとしていた猫に、猫嫌いらしい薬局のおばちゃんがバケツの水を掛けた。その猫をかわいそうに思ったオイラはその濡れた猫を抱き上げ、自宅に連れて行った。その時家には誰もいなかったが、オイラは眠かったのだろうか、布団を敷いて猫を中に入れて一緒に寝た（不思議なことに、その見知らぬはずの猫は逃げようともしなかった）。夕方、祖母や母が帰宅し、その騒々しい様子で目が覚めた。なんだか布団の足もとの方が湿っぽい。オネショでもしてしまったのかと思って布団をめくると、驚いたことに血がついている。しかも猫はいない。オイラが目が覚ましたのに気づいて、祖母がやってきた。祖母の話によると、オイラが寝ている間に、その猫は布団の中で出産したらしい。その後の記憶はあまりないのだが、勝手にヨソ猫を家に引っ張り込んで、布団を汚したことを叱られたような漠然とした記憶がある。その後、たぶん子猫は捨てられ、母猫は家を出ていったと思う。3）「ネコ」という名の猫の思い出アパートで一人暮らしをしていた学生時代、後輩でバンド仲間のMから、自分の家のオスの飼い猫に野良のメス猫が惚れ込み、家の周りに居つくようになった末にその飼い猫のコドモを妊娠し、家の物置あたりで勝手に出産したという話を聞かされた。まるで人間の話みたいだな(笑)。決して猫好きではないMの父は、その母猫や子猫たちを家に上げることを許さなかったため、結局その子猫たちは近所の空き地に捨てられたが、博愛心に富むMの母がその空き地に通ってエサを与え続けた。母に似て生きとし活ける者に対する愛情深いMは、大学の知人たちに話してその半分野生化した4匹の子猫の飼い主になってもらえる人を探し始めた。オイラは、アパートがとくに「ペット禁止」になっていなかったことと、一人暮らしで寂しかったこともあり、4匹の子猫のうちの1匹をもらうことにした。オイラがある日Mに連れられ、Mの母に借りた猫バスケットを持ってその空き地に行くと、その半分野生化した4匹の子猫たちは、柵に立て掛けられたトタン板の下で休んでいた。しかし、半野生化した彼らは全然人間になついておらず(Mの母だけは例外だったらしい)、オイラたちが捕まえようと手を伸ばすと走って逃げ出したのであった。オイラたちはその子猫たちを走って追った。オイラは、密かに真っ黒な猫を狙っていたが、彼は捕まえようとするオイラの手に噛み付いたり引っかいたりして全力で抵抗し、とてもオイラの手には負えなかった。…しかし、1匹だけ、逃げようとはするがそれほど必死の抵抗を見せない猫が居た。4匹中唯一のメスの、ブチ猫だった。彼女はオイラが手を伸ばすと、ほぼおとなしくオイラの手中に収まった。ただ、ミャーミャーと鳴き叫んではいた。…すると、その鳴き声に反応し、彼女の前を走って逃げていた3匹の兄弟は走るのを止めて振り返り、心配そうにオイラの手中の妹or姉を数メートル先から見つめ、やはり呼び掛けるように盛んにミャーミャーと鳴き始めた。窮地に陥った兄妹の安否を気遣っているのである！オイラはそれを見て感動した。彼らに「お前らの姉or妹は、オイラがちゃんと面倒を見てあげるんだから、安心しなさい」といったことを訴え掛けてみたが、まあ、通じなかっただろう(笑)。オイラはその猫には名前をつけず、いつも「ネコ」と呼んだ。独身野郎が飼い猫に勝手な名前をつけて、ネコナデ声で呼んでいる構図を想像して気持ちが悪かったからである。加えて、この猫は美猫ではなかったが、気持ち悪いくらい頭が良かった。そんなわけで、オイラはこの子猫を決して溺愛せずに、ある意味意地悪なくらい、ちょっと距離を置いた関係を保っていた。さて、オイラはある日、死にそうなくらいたいそう精神的に落ち込んで、アパートの部屋でカーペットに腹ばいに突っ伏し、泣くにも涙も出ず、ただ盛んにため息をつきながら、重力に身を任せるまま微動だにもせず、打ちひしがれていた。…すると、まだ10センチやそこらのこの幼い子猫が、カーペットに横たわるオイラの頭の脇にそっと歩いてきて、オイラの頬をやさしく舐めだした。明らかに、打ちひしがれるオイラを察して、子猫に対する母猫のように慰めているのであった。オイラは感動し、この子猫に感謝した。オイラはこの日以来、この賢すぎる猫に冷たくするのをやめた。4）Hの葬式の子猫オイラの学生時代の一番の親友が、20歳の時に自殺した。厭世自殺である。オイラはその葬式で弔辞を読み、棺桶には彼の好きだったバンドのカセットテープを入れてやった。霊柩車に乗せるために彼の棺桶を動かして、誰もが驚いた。棺桶の乗せていた台の陰に、どこから迷い込んだとも知れない1匹の子猫が、まるで彼の遺体を見守るかのように、葬式の間じゅう、じっと身を潜めていたのである。後でHの両親に聞いたが、見覚えのない猫だったという。その後、その子猫がどこに行ったかは不明であった。---こうして考えてみると、あんまり「条件付け」なんてのは関係なさそうだな(笑)。ただ、やっぱり猫って、タダ者ではないんだよなあー。

  2003.11.09

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