原油問題ABC19-いったい石油いつまでもつの?その2
石油がいつまでもつのだろうかという大変シリアスな問いに対してあまりに気軽にコメントしてはいけないのだろう。世界中の専門家が懸命にその真実に迫ろうと一生懸命努力していることを考えると申し訳ないような気になる。 しかし、本当にその真実に迫るのは並大抵のことではない。この件については世界中に良質な報告書、統計もあるが、いずれも完璧ということはない。それは、前に書いた通り、究極的には穴の中を覗き、正確に測ることが不可能だからだ。それに、資源国有化の波で、油田に近づくことも容易ではなくなった。それは独裁政権下ではトップシークレットだ。生産量だってそうだったが、これはやがて市場に出るのでそこで推定は出来る。埋蔵量は闇の中だ。 とはいえ、埋蔵量については幾つかの良く使われている統計などがある。一つは、OGJ誌という石油天然ガス専門の週刊誌だ。毎年年末号にその年の末の確認埋蔵量(正確には翌年1月1日時点)を推定している。これはその歴史的長さからしても最も権威を持っていると言ってよい。ただ、なんのことはない世界各国から提出されるデータを紹介しているだけだが、それはそれで一つの見識だろう。その信憑性は提出元にかかっている。そんなものだ。だから、それを見る方でその限界、定義を把握しておく必要がある。無料でいつでも気楽に覗ける資料としては、あのスーパーメジャーの一つBP統計、それに米エネルギー省エネルギー情報局の資料がお勧めだ。これらの資料には齟齬というか差異がある。例えば、OGJ誌がカナダ政府の提出に従い、超重質原油を埋蔵量に加えた時にBPではそれを加えなかった。これは相当な量であるから大問題となった。その後、原油価格の高騰もあり、カナダの資源量を上方修正する方向にある。まあそんなものだ。 OGJ誌では2007年末時点での世界の原油確認埋蔵量を1兆3316.98億バレルと紹介している。これに対しBP統計では年末時点を1兆2379億バレルと紹介している。因みに上記で問題にしたカナダについてはOGJ誌が1785.92億バレル、BP統計が277億バレルと紹介しており相変わらずその差が大きい。米エネルギー省エネルギー情報局は1兆3316.98億バレルとOGJ誌と同じだ。カナダも1785.92億バレルとOGJ誌と同じになっている。 BP統計によれば、2001年1兆1330億バレル、2002年1兆1800億バレル、2003年1兆2063億バレル、2004年1兆2113億バレル、2005年1兆2204億バレル、2006年1兆2395億バレルとなっている。米エネルギー省エネルギー情報局によれば、2001年1兆319.54億バレル、2002年1兆2131.12億バレル、2003年1兆2650.26億バレル、2004年1兆2772.28億バレル、2005年1兆2929.36億バレル、2006年1兆3166.62億バレルだ。2002年に急増しているのはカナダが超重質油を加えたからだ。それにしてもこうならべてみると、毎年300億バレル程度の石油を消費しているにも係わらず、同じような水準を維持出来ているものだと感心する。 世界では、この原油確認埋蔵量の変化に注目している。なお、この原油確認埋蔵量というのは油田の中にある原油全体ではなく、そのうち地上に取り出せるものを意味している。可採埋蔵量だ。従って、原油価格が高くなれば、それまで採算に合わずに取り出せないと思っていたものも埋蔵量として追加されることになる。今のところ、地上に取り出せるものの比率は3割程度とされている。これが4割、5割になれば一挙に確認埋蔵量が増えることになるが、それはかなり困難な作業のようだ。 そういえば、9月18日に面白いニュースが流れた。ベネズエラがその確認埋蔵量に新たに74.3億バレル追加して合計1423.1億バレルとしたというのだ。8月初めには55.5億バレルの追加で合計1350億バレルとしたばかりであり、矢継ぎ早である。なお、上記を計算する人のために念のために申し添えれば、8月発表時と今回発表時の差と今回発表の追加分との間には、1.2億バレルの差がある。両者の時点の差が明確ではないのでなんともいえないが、仮に日量200万バレルの生産で1ヶ月とすれば数字は合わない。日量250万バレルで45日間生産したとすればほぼ数字が合うことになる。いずれにしてもその辺りの説明はない。数字は間違えたわけではない。あるいはニュースソースの誤りかもしれないが大した問題ではない。今後も更に1726.1億バレルの追加があるとされており、その意気軒昂ぶりには驚かされるが,これも超重質油でいずれカナダ同様の論議を呼ぶことになろう。 今回もこの辺りで話を止めておこう。それでは、また。