ジオポリティックス4ーパイプライン爆破
BTCパイプラインの爆破事件については、その対策の一つとしての備蓄増強の他にもいくつか書いておいた方が良いのではないかと思われることがある。 まず、その安全対策である。パイプラインは、日本では規制が厳しくその存在を目にすることは殆ど無いが、当然のことながら、世界的には一部の例外を除き、目に見えるところを走っている。一部の例外というのは、例えば、サウジの東部油田地帯と紅海岸の工業地帯を結ぶ東西パイプラインである。これは、セキュリティを考慮して地中に埋設されているのである。ちょっとやそっとでの爆撃では損傷を与えることは出来ない。ただし、この1100キロメートルを超えるパイプラインにも弱点はある。その長いパイプラインの途中に11ヵ所程度のポンプステーションがあり、それは地上に設置させざるを得ないのである。今回BTCパイプラインでもポンプステーションが爆破されたようだが、通常、これは心臓部である。サウジの場合には、この11ヵ所は厳戒態勢にある。ヘリポートも設けられ機動力のある部隊が守りを固めている。もっとも、石油大国サウジの場合には、石油施設に対する厳戒態勢はパイプラインに限らない。全土が厳戒態勢にあると言ってよい。これまで何度もテロの対象になったが、大きな被害が出ていないのは、そのためである。決してアルカイダの主導者にサウジ出身者が多いから手を抜いているというわけではない。ただ、石油施設は思ったより爆破などには強い。タンクなども丈夫に出来ていて、爆弾が付近で炸裂しても直に被害が出るわけではないようだ。その意味では、狙う側も大変だ。用意周到、弱点に対する十分な勉強、万全の準備が必要となる。 と思うと、意外に弱い面もあったりするから困る。例えば、ナイジェリアのケースだが、パイプラインの一部に住民が穴を開け、中の石油を盗むことが流行ったことがある。ところが、その内の数件で、当然のことであるが、盗んだ石油の取り扱いに失敗して炎上し盗んだ人々に被害が出るケースがあった。そんなことで盗む方も命がけなのである。 ジオポリティックス要因の中でも、石油輸送上重要なパイプライン、海峡などが入る場合には、直に供給に影響を与えることから、特に注意が必要である。また、そのような拠点については、その安全対策について世界的な議論が必要になるが、それは、着実に行なわれていると見て良さそうだ。