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January 25, 2024
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カテゴリ:文化

自然は面白い

東京学芸大学名誉教授  小泉 武栄

 

場所ごとに異なる景観

日本では、さまざまな景観を見ることができます。特に、ジオパークなどでは、特徴的な自然を目の当たりにすることができます。北から南まで、どこに行っても、面白い自然景観ばかりです。アメリカやカナダなど海外にも雄大な自然があるじゃないかという人もいるでしょう。カナダであればきれいな氷河と湖、森があります。しかし、同じような景色が広がっているばかりで、日本のように、どこも違うというのは珍しいことだと思います。

先日、北海道の積丹半島に行きました。そこで、バリバリと割れている、変わった岩石を見つけました。噴火で出てきた岩石が、冷たい水に触れて一気に冷やされたため、このような形になるのです。神威岬や積丹岬などは、そんな岩でできています。

何も知らないとただの崖。でも、よく見ると、噴火でできた模様が見られて、非常に興味深いのです。同じ自然観察をするのなら、昆虫や植物などの名前を覚えるだけでなく、「どうして、このような地形になったんだろう」「どうしてここに、この植物が生えているんだろう」などの謎ときを楽しんでみてはいかがでしょうか。

近著『日本の自然風景ワンダーランド』(ベレ出版)では全国各地53カ所を選び、そこにはどのような不思議があり、どのようにしてできたのか、について解説。皆さんの知的好奇心を満たす、頭を使った観光旅行のやり方を紹介します。ぜひ本を片手に、現地を訪ねてもらえたらと思っています。

 

 

違いには理由がある

皆さんはカルスト地形をご存じでしょうか。石灰岩の溶食によってできる地形で、山口・秋吉台、福岡・平尾台が、有名なカルストとして知られています。

ぉちらは、古生代(約3億年前)に堆積した石灰岩です。しかし、秋吉台では石塔の先端が尖っているのに対し、平尾台の方は頭が丸まっていてタコのような形をしています。々石灰岩を起源とするのに、どうしてこのような違いが生じるのでしょうか。

実は平尾台の方は、現在の場所に落ち着いてからの後の、約1億年前に地下にマグマが入り込んできたのです。その結果、高温で焼かれた石灰岩は、大理石に変化しました。しかも、そこにシアノバクテリアが入り込み、中から酸化して石灰石を溶かしたため、頭が丸いタコのような形になったのです。

千葉県の清澄山付近では、ヒメコマツの「垂直分布の寸づまり現象」が知られています。ここは、砂岩と泥岩が重なり合っていますが、砂岩がもろいため、崩れて日が差し込むようになり、そこにヒメコマツが生えています。

つまり、崖の先端部が崩壊して新しい場所がひらけます。そこにミメコマツが芽生え、成長していくのです。200年から300年ぐらいすると、成長したマツの重さで、再びがけが崩れるのですが、そこにまたヒメコマツが芽生えるという仕組み。

こんな周期で育成しているため、小さな個体が芽生えて早く成長できるヒメコマツが存続できたのではないかと思われます。

通常とは異なる様子や風景を目にしたときに、どのように考えるか。そこで、どうしてなんだろうと、疑問をもつことが大切なのです。

 

 

地質・地形も植生に影響

島根・隠岐島は豪壮な地形と特異な植生で知られています。波の浸食によってでき高さ100㍍を超す海食崖。知夫の赤壁は、噴火で堆積した赤い岩の僧が露出しており、マグマの通り道の跡まではっきりと見ることができます。世界で唯一といえるでしょう。

一方、植生は、一見するとめちゃくちゃな分布。実は斜面の向きによって、森林の種類が異なっていくのです。

隠岐島には、ブナのように極相の森林を作る強い植物が存在しなかったため、結果的に群雄割拠のような現在の森林ができたと考えられます。

氷河期の頃、隠岐島と島根は陸続きで半島のようになっていました。しかし、乾燥に弱いブナは隠岐島で生き残ることはできませんでした。その後、氷河期が終わってブナが北上しますが、島根まで到達した時には、海面上昇によって隠岐島は離島化し、移住はできなかったのです。

このように、一見すると見過ごしてしまいそうな不思議な光景が、日本にはたくさんあります。でも、何も知らないと、そこにある真実は見えません。ちょっと調べてみたり、現地の人に話を聞いても面白い。実際に現場に出かけて、見て、触れて、感じてもらえたらいいと思います。                                =談

 

 

【文化Culture】聖教新聞2022.9.8






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Last updated  January 25, 2024 07:40:03 PM
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