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カテゴリ:文化
植物の持つ〝悩み〟 甲南大学特別客員大学 田中 修
紫外線で活性酸素が発生 ▼ 抗酸化物質作り体を守る
「植物たちのいのちは、私たち人間に比べると、取るに足らぬ小さなものに思われがちです。しかし、植物たちも同じ生き物です。だから、私たちと同じしくみで生き、同じ悩みを持ち、その悩みを克服するために日々頑張っているのです」と語ることがあります。 すると、「私たち人間と植物との〝同じ悩み〟とは何ですか」と聞かれます。〝同じ悩み〟はいろいろありますが、その一つを紹介します。 植物たちは、太陽の強い日差しが降りそそぐ中で、大量の紫外線にさらされて暮らしています。そのような中で、植物たちは、日焼けもせずに、すくすく成長し、美しくきれいな花を咲かせ、過日やタネ(子孫)をつくります。 一方、私たち人間は、紫外線が有害であり、シミやシワ、白内障の原因になり、もっとひどい場合には、皮膚ガンをひきおこすことを知っています。そのため、帽子をかぶったり、日傘をさしたり、サングラスをかけたりして、紫外線を避けます。 紫外線は、身体に当たると、「活性酸素」という物質を発生させるのです。この物質は、植物たちにもきわめて有害です。ということは、植物たちは、自然の中で、紫外線にあたりながら生きていくために、身体の中で発生する「活性酸素」を消去する術を身につけていなければなりません。そこで、植物たちは、「抗酸化物質」とよばれる物質をつくりだすのです。抗酸化物質の代表は、ビタミンCとビタミンEです。また、アントンシアニン、カテキンやタンニンなどのポリフェノールや、カロテン、リコベン、クリキトキサンチンなどのカテノイドとよばれる物質も抗酸化物質です。 私たち人間では、紫外線が当たるだけでなく、激しい呼吸やストレスでも活性酸素が身体の中で発生します。活性酸素は、「老化を急速に進める」とか「生活習慣病、老化、ガンの引き金になる』などといわれ、私たちの老化を促し、多くの病気の原因となる、きわめて有毒な物質なのです。ですから、私たちと植物たちは、活性酸素という物質に対して、〝同じ悩み〟をもって生きているのです。
大切さを認識し摂取する人間
私たちは、ビタミンCやビタミンE、ポリフェノーやルカロテノイドなどの抗酸化物質が植物たちの身体に含まれていることをよく認識しており、食べ物としてそれらを摂取することの大切さ理解しています。そのため、私たちは、「どのような野菜や果物が、抗酸化物質を多くもっているか」を知っており、それらの野菜や果物を積極的に食べます。 しかし、「なぜ、それらの野菜や果物が抗酸化物質をつくっているのか」という発想は、ともすれば忘れがちです。植物たちは、自分の身体を活性酸素から守るために、これらの物質をつくって身につけているのです。 植物たちがつくってくれる抗酸化物質が、私たち人間の健康を支えるのに役立つのです。このことから、「私たちと植物たちが、同じしくみで生き、〝同じ悩み〟をもっている」ということがよく分かります。
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Last updated
August 21, 2024 05:38:51 AM
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