神々のあけぼの(3)~それでは法律ではどないなってますか?(大阪弁で)
さて、いよいよアマテラスオオミカミ(天照大御神)・ツクヨミノミコト(月読命)・スサノオノミコト(須佐之男命)のスーパー三兄弟の登場ですが、生まれ方にはさまざまなバリエーションがあります。『古事記』では、黄泉国から逃げてきたパパ・イザナキが禊(水で身の汚れをすすぎ清めること)をしたときに、生まれたということになってますが(だからママ・イザナミの出番なし)、『日本書紀』ではふたりの子どもとされ、その他異伝では、こんな感じになってます。(1)古事記と同じでイザナキ単独で子どもをなし、それを助けるのが白銅鏡というアイテム。光り輝く子どもたち=鏡の反射のイメージが浮かびますね。(2)日と月の神は早い段階から生まれており(ふたりの子どもかどうかは不明)、しばらくしてスサノオが生まれています。そのあと、イザナミは火の神のために死亡しており、順番が逆転しているのが特徴的。いずれにせよ、華々しくデビューした三人でありましたが、ソッコー影が薄くなってしまった神様がいます。ツクヨミ様です。ツクヨミ様に関しては、ひとつ面白い話があります。姉(アマテラス)に命じられてウケモチノカミ(保食神)のもとへ行ったツクヨミが、ウケモチノカミのもてなしに腹を立てて殺害し(口から食べ物を吐き出すので、まあ気持ちも分からんわけではないんですが、すぐカーッと頭に血がのぼるのは親父さん譲りか?!)、お姉さんのもとに帰って報告したら、アマテラスはたいへん怒って「もう会わなくていい」と宣言します。そのため一日と一夜とを、ふたりはへだてて住んでいるのだとか。途中はともかく、おちはロマンティック。それにしてもどうして『古事記』でも『日本書紀』でも月の神が消えてしまったんでしょうか?まあ存在が謎めいたままというのも、月の神秘的な雰囲気がよく出ていて、いいんじゃないかという気もしますが。ではツクヨミ様はさよ~なら~ということで、今日はアマテラスとスサノオの争いへ話をすすめます。(日本書紀バージョンでお送りします)「それでは法律ではどないなってますか?」NHKの土曜の某お昼番組をパロってみました。さまざまな問題をもちこむ相談者に、レギュラー相談員や弁護士さんが答えるという番組です(某E・Kさんがほんと傑作なのでご存知ない方はぜひ。でも最近出演されてないのかな?)。それでは番組スタート!今日の相談人は、日の女神のアマテラスさんと、その弟のスサノオさんです。それではど~ぞ~!スサノオ(以下ス)「聞いてくれよ、姉貴ってほんと血の気が多くてさー」アマテラス(以下ア)「いきなり何をぬかす…い、いえ、申すのでしょう、わが弟は」ス「実はおれたち三人兄弟なんだけどさ、姉貴は天上界を、影のうすい兄貴のツクヨミノミコトは夜の世界を、おれは海の世界を割り当てられていたんだな。でも、おれたちのお袋、早くして亡くなっちゃってさ……(ここでスサノオ、涙ぐむ)、会いたくてしかたなかったんだ。で、オヤジにそう言ったら、あのインケンオヤジまたキレちまってよー。そのまま勘当されちまって。(スサノオ、ボリボリと頭をかく)ま、それはいいんだけど、じゃあお袋のいる根の国に行こうかと思って、姉貴にちょっくら別れのあいさつをしに行ったら、姉貴ってばなんか男みてえにおっかない格好してさ、敵意丸だしで待ちうけているんだよな。わたしの領土を奪うつもりか、とかすっかり誤解してよオ」ア「(笑顔が少しひきつっている)そなたの普段の行いにも問題がありましょうぞ。それに身の潔白を証明する機会を与えてやったではありませぬか」ス「そうそう、それが問題で今日こうしてやってきたワケなんだ。ようく聞いてくれよ」以下、スサノオの話を要約すると……。よこしまな心のないこと、つまりスサノオが清い心であることを証明するために、姉弟はともに誓い(うけい)をする。この誓いの手段は子を生むことである。生まれた子が女なら濁った心が、男なら清い心があるというわけだ。まずはアマテラスがスサノオの長剣を求め、「三つに折って、天の真名井(あめのまない)ですすぎ、がりがりと噛みに噛んで、ふうーっと吹き棄てた息吹の霧の中から生まれた神は」三人の女の子だった。ついでスサノオが、姉が身につけていた、大きな玉をたくさんつらねた飾りをもらいうけ、「天の真名井ですすぎ(以下省略)」五男をなした。ス「……というわけなんだけど、これはどう見てもおれの勝ちだろう?男の子を生んだんだしさ。ところが姉貴のやつ、決着にはまるで触れないでさ、何をいうかと思ったら子どもたちのもとをたどれば私の所有物であるから、とかごまかしちゃって自分の養子にしてしまったんだぜ。なんかとってもずるいと思わねー?おれの努力は水の泡だ」ア「どこも間違ってはおりませぬぞ。男の子はすべてわたくしの玉飾りから生じたもの。わたくしが引き取るのが当然ではありませぬか」ス「じゃ、百歩譲ってそうだとしても、やっぱりおかしいんだよな。誓いはいったいどこにいっちゃったのさ。ど~考えても姉貴がお茶をにごしたとしか思えねえぜ」ア「ま、まあッ、失礼な!この愚弟は!」司会者「(あきれた風に)で、あんたら、なに相談しにきたんや」ア「(あわててにっこり微笑んで)そ、相談事なんてなにも……」ス「生まれた子どもはそれぞれどちらの所有物かハッキリさせたいな~。よろしく頼むよ」司会者「はい、ようく分かりました。ではあちらでお休み下さい。……ではK相談員は今の件をどう思われますか?」K相談員の壮大なホラ話……もとい、うらやましいほどのリッチぶりがえんえんと語られていくわけですが、紙面(?)の都合により割愛させていただきます。あしからず。確かにどうもすっきりしないこのエピソード。『古事記』の場合は、一応スサノオの勝ちになっていていいんですけど…(もっとも、性別のよしあしが逆転している点が興味深かったりします)。何よりアマテラスさま、言い逃れがうますぎる。まるで不祥事を起こした企業のトップのように巧みだ。だれだれの独断でわが社は一切関与してませんと言えばすむものな~。個人的には、ブツはアマテラス姉さんのものでも、何らかのアクションをして、生み出したのはスサノオなのだから、どうみてもスサノオが男の子を生んだとしか思えないのですが、この対決、皆さんならどっちに軍配を上げますか?ぜひご意見お待ちしてます~!二回に分けて紹介しようと思っていたのですが、どこで切るか迷い結局長くなってしまいました。すみません。日本の神話はここでいったん筆をおきますが(まだネタをまとめていないため^ ^;)、折を見て続きをお話したいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。次回からは本筋に戻って、古墳時代に入ります。