追いつめるもの 追いつめられるもの - 御船千鶴子 -
超能力者 御船千鶴子は、追いつめられていました。1910年、千里眼の能力者という彼女は、透視の公開実験に挑みます。対するは、東京帝国大学総長の山川健次郎。透視するのは、はんだ付けされた鉛管につめられた紙の文字。しかし結果は失敗。それどころか、彼女が透視したのは、前日彼女に練習用に渡された、鉛管の中の文字。鉛管の中を盗み見た疑いが、彼女にかけられます。そしてその4ヵ月後、彼女は重クロム酸を飲み、自殺します。まだ25歳の若さでした。もともと彼女の予言は、些細なことでした。母親の“へそくり”のありかを当てました。軍服のバンドが切れるのを当てました。馬が暴れるのを当てました。本来の彼女は、少し勘の良い女性にすぎませんでした。しかしある日、有明海の炭鉱のありかを当て、謝礼をもらいます。その金額は、当時の価値で2,000万円。ひとりの女性の人生を狂わせるのに、十分な金額でした。この時から、「よく当たる」ではなく、「必ず当たる」予言が彼女に求められ始めます。そして、彼女は追いつめられてゆきます。しかし追いつめた山川健次郎も、それが本意ではありませんでした。そのことは、のちの彼の言葉から分かります。「世の中の人が、すべて目が見えないとする。人々は触覚で物の形を判断する。そのとき、ひとり目が見える人がいて、手で触れないで、卵は丸いと言ったとする。すると、皆、その人を嘘つきと呼ぶだろう。超能力とは、その様なものかもしれない。」超能力、超常現象、幽霊、妖怪、UFO、UMAなど。これらが、今も論じられる理由。それは、それらが必ずそこにあるからではなく、それらを、わたしたちが求めるからに、違いありません。【過去の日記】 超能力 公開実験 ― リングの世界 ―