『アイズ・ワイド・シャット』
Baby, did bad bad thing …で始まる楽曲が非常に印象的な作品。キューブリック監督の遺作として知られるが、だからどうだと言うのか。『2001年宇宙の旅』も『時計じかけのオレンジ』も観たことがない私にとっては彼の名前はブランドたりえない。間接照明に徹底的にこだわり、トム・クルーズとニコール・キッドマンが主演だから画面自体は常に美しい。それは見事なものだと思う。しかし、観ていて引っ掛かるものが何もない。ただ美しい映像と音楽を味わうだけの映画だったような気がする。映画にメッセージ性を強要するつもりは毛頭ないし、その訴求が強過ぎる映画はむしろ嫌いだ。当時、難解とか、意味不明といった評価を映画雑誌等で読んだ気がするが、ひょっとしたらこの映画は、まったくメッセージ性なんかなくて、純粋に映像と音楽を楽しむための映画かもしれない。そうなると、そもそも存在しないメッセージはいくら読み取ろうとしても読み取れないわけで、結果として難解、意味不明といった評価が下されるのも当然だ。あくまで可能性の話だが、快適な音楽と映像に身を任せ、何度も何度も観ていて初めてキューブリックの意図が感じられるようになるのかもしれない。もしもそうだったらなんともトリッキー。冒頭に述べたBaby…を歌うクリス・アイザックは★★★★★