或る衝撃。
私はこの衝撃を的確に言い表せることばを知らない世の中の事象が無限であるのに対して名前を持っているのはほんの一握りだけだだから私は拙いことばを紡いでこの衝撃を語っていきたい実を言うと以前から薄々感づいてはいたのだろうただ私はその現実から目を反らしていたのかもしれないその現実が私に衝撃をもたらすことは明らかだったから彼の育った家庭では出された物は何でも全て食べるようにという教育がなされていただから彼は味の良し悪しに関わらず何でも食べる最初はにんじんのグラッセだった超ど近眼の私はカロチンを摂取するために毎食にんじんを食べようとある日思い立ったしかしにんじんを使った料理のレパートリーはあまりないレパートリーを増やすためにこれまで作ったことのないグラッセに挑戦したレシピ通り砂糖や水を入れて煮込むできあがった試食してみる・・・これまでの私の料理人生の中で確実に一番不味いものが出来た瞬間だったとてもでないが食卓には出せない処分に困りながらキッチンをうろうろしていたそこに彼が来て美味しそうなにんじんのグラッセと言ってつまみぐいしたそして美味しい美味しいと言いながら全部食べてしまった私の作った物だから本当は美味しくないのに無理して美味しいと言っているのだろう当時私はそう思っていたある日、彼に紅茶を持たせた職場で飲むようにいつもコーヒーやお茶ばかりではつまらないだろうから50コ298円のティーバッグよりは高い10コ248円くらいの某メーカーの紅茶を持たせた彼はとても喜んで職場にそれを持って行った数日後、まだ紅茶はあるのかと訊ねたまだあるよと彼じゃあまだ新しいのは持って行かなくていいねと私そして彼は言ったあのレモンティーおいしいね・・・・・・・・・レモンティー?私は訊ね返すレモンティーって持って行った紅茶のこと?彼は答えるうん、あのパッケージが黄色いレモンティーあれ、レモンティーじゃないよ?と私ええっ!?だってパッケージ黄色いもん!・・・・・・・・・パッケージが黄色い紅茶=レモンティーチーン等式成立さて問題ですパッケージが黄色い紅茶=レモンティーならばスーパーにおける紅茶の陳列棚では何割がレモンティーになるでしょうかそもそも彼の専門は数学であるなにやら難しい式をこねまわしていろいろな答えを得ている私の苦手なサイクロイドなんかもちょちょいのちょいで計算してしまうなのになぜパッケージが黄色い紅茶=レモンティーなのだ君の専門は数学的思考を標榜する数学だよねと小一時間(ryああわかった高等学校の学習指導要領に、数学科の目標として「数学的活動を通して創造性の基盤を培う」という文があるからあなたはそれを実行しているのね彼は想像力豊かなのだそして私は心に誓ったんだ・・・次に紅茶を渡すときは50コ298円のもので十分だと先日、彼と街に買い物に出かけたタウン誌に紹介されていた、美味しいと評判のたこ焼き屋さんに行ったソースたこ焼き8個入りしょうゆたこ焼き8個入りを一パックずつ買った彼は猫舌なので私が先に食べた焼きたてでとても熱く美味しかった何種類かのものを混ぜているであろう甘いソースも美味しかったが薄味が好きな私はしょうゆ味の方を特に気に入ったあまりにもしょうゆが美味しい美味しいと食べる私に猫舌の彼は自分も食べたいと催促を始める彼は運転中なので私が食べさせるまずはソース味から美味しい!!と彼しばらく味わって飲み込んでから今のがしょうゆ味?と言った私は少し驚いてううん違うよ、今のはソース味と言ったふぅん、と彼次にしょうゆ味を彼の口へと運ぶこれがしょうゆ味だよね?と確認する彼そうだよと私再び美味しいを連呼する彼ソース味の方はソースがかかっているけどしょうゆ味の方は何もかかっていないから食感が違うよねヒントを出す私うん、うん!そうだよね!と彼心配になってついホントにわかってるの?なんて訊ねてしまった彼は失礼な!と怒りながらじゃあ今度はソースかしょうゆか言わないで食べさせて当てるから!!と言ったそして私は一つのたこ焼きを彼の口へと運ぶゆっくりと一口一口噛みしめるように咀嚼する彼ごくりと飲み込んだそしておもむろに口を開き今のはしょうゆだよね?お・・・あ・・・あああああー_| ̄|○ 私の頭のなかの長さんがだめだコリャァと呟くこんなこんな衝撃を受けたのはアレ以来であるそうアレとはアニメ「北斗の拳」オープニング「愛を取り戻せ」(クリスタルキング)の出だしが「You Are Shock」ではなく「You は Shock」だと知った時以来であるそして私は悟ったんだ・・・食べられさえすれば今度から彼には何を出してもいいと彼の言う美味しいは信用してはならないということを・・・