カテゴリ:プレバト俳句を添削ごと査定?!
初冬のラグかの愛犬の尨毛あり 手入れして畳むセーター弛む歌 コロコロする寒夜ルンバ充電中 重ね着でコロコロ使う孫の顔 家族集うセーターから取る犬のぬくもり 着膨れた背中猫の毛あちこちに コロコロのミシン目ずれている四温
11月23日のプレバト俳句。 お題は、掃除具の「コロコロ」。 もともとは商品名ですが、 いまや一般名詞として使われている単語です。 ◇ 竹財輝之助。 コロコロする寒夜 ルンバ充電中 コロコロする絨毯 ルンバ充電中(添削後) 原句は9+9=18音、 添削句は10+9=19音の句またがり。 今週のお題を選んだ時点で、 もし「コロコロ」という単語を使えば、 それが《掃除具》なのか《擬態語》なのか区別がつかない、 …という問題が生じるのは容易に想像できる。 まして、 動詞で「コロコロする」と書いたら、 ほとんどの読み手は擬態語と誤解するはずです。 原句の「コロコロする寒夜」は、 《何かを撫で転がしてる》とも読めるし、 《寝転んでじゃれている》とも読めるし、 《患部が腫れて違和感がある》とも読めるし、 《何かが木枯らしに吹かれて鳴っている》とも読める。 添削句の「コロコロする絨毯」は、 《丸まって転がってしまう》とも読めるし、 《毛玉が固まって凹凸が気になる》とも読めます。 かろうじて誤読を回避するなら、 7+10 の句またがりで、 ルンバ充電 絨毯にコロコロを とでもするしかないかと思います。 ◇ 辰巳琢郎。 重ね着でコロコロ使う孫の顔 コロコロを巧みに重ね着の孫よ(添削後) 原句も原句ですが、 やはり添削句も添削句で、 兼題を知らなければ、 字面だけで「コロコロを巧みに」は理解しがたいし、 語順的にも「巧みに重ね着する」との誤読を誘います。 かろうじて誤読を回避するなら、 重ね着の孫のお掃除コロコロと とでもするしかないと思う。 ◇ 清水アナ。 ローラーにマフラーのひだ張り付いて 擬態語の「コロコロ」に誤読されるのを避けて、 あえて「ローラー」という語にしたのでしょうが、 これはこれで意味が分かりにくいですね…。 上五から中七で、 「ローラー=重機 or 工具」 「マフラー=自動車の消音器」 と解釈したら、まったく意味不明だし、 かりに衣類のマフラーと解釈しても、 「美顔ローラー or 粘着ローラー」 などの読みの迷いが生じなくはない。 さらにいうと「マフラーのひだ」も、 《フリンジ/房飾り》なのか、 《ニット面の繊維のひだ》なのか、 《巻いたときのドレープ/たるみ》なのか、 ちょっと判断がつきません。 … 内容的にも、 さして詩情のある場面とは思えませんが、 接続助詞の「て」で終わらせた後は、 何の動詞が省略されてるんでしょうか? マフラーが絡まった滑稽味を詠んだのなら、 マフラーの房コロコロに貼りつきぬ と終止形にすればよいと思います。
◇ アインシュタイン河井。 初冬はつふゆのラグ かの愛犬の尨毛むくげあり 7・7・5の字余りなので、 「かの」or「あり」の省略も検討できるし、 さもなくば、 ラグに亡き犬の尨毛や 冬支度 のような形に直すことも可能ではある。 ところで、 ラグは年間をとおして使う人もいるので、 その場合は「初冬のラグ」でも問題ありませんが、 この句では1年前の犬の毛を目にしたのだから、 あきらかに冬物としてのラグを扱ってるわけで、 単語の記載が歳時記にないとしても、 それは冬の季語「カーペット」と同義であり、 実質的には季重なりというべきです。 そう考えると、 たとえば6・7・5で、 去年のラグ かの愛犬の尨毛あり のように直すことも出来ます。 ※ちなみに去年を「こぞ」と読むことも出来ますが、 それだと新年の季語になってしまいます。 4音の「昨年」などを使って「あり」を省略する手もある。 ◇ YOU。 手入れして畳むセーター 弛たゆむ歌 手入れしてたたむセーター 弛む歌(添削後) おおむね俳句の形は出来ていて、 「te・te・ta・ta・ta・ta・ta」の韻も面白いけど、 描いてる場面は、どちらかといえば凡庸です。 さらに、 上五の「手入れ」が具体性に乏しいし、 「~して~する」というのは経緯の説明です。 手入れをしたのは、すでに過去であって現在ではない。 そこにかんしては、 手入れしたセーターたたみ弛む歌 と名詞の修飾部にすることで、おおむね解決しますが。 ◇ 山之内すず。 家族集う セーターから取る犬のぬくもり コロコロで犬の毛を取るお元日(添削後) 6・8・7の字余りですが、 上六の動詞は連体形か終止形かを読み迷うし、 毛を意味する「ぬくもり」の直喩は誤読を招きます。 さらに、 助詞の「から」があれば動詞の「取る」は不要だし、 逆に動詞の「取る」があれば助詞の「から」は不要です。 つまり、 技術的にムダが多いための字余り。 なお、 添削では道具の情報を優先してますが、 原句に沿って、 セーターの犬の毛を取るお元日 でもいいんじゃないでしょうか。 追記:スミマセン。これだと季重なりでした… ◇ 皆藤愛子。 着膨れた背中 猫の毛あちこちに 外出時の場面らしいけど、 字面からはそのことが読み取れないし、 下五の「あちこちに」も蛇足に思えるし、 内容的には、 切れを入れず一句一章にすべきなので、 着膨れて急ぐ少女の背に猫毛 としてみました。 ◇ 梅沢富美男。 コロコロのミシン目ずれている四温。 前回の句《鼈甲のフレームにある小春》を見たとき、 それが許されるなら、 「階段にある小春」でも「鉛筆にある小春」でも、 テキトーに言ったもん勝ちじゃないの?と思ったのだけど、 今回の句についても、 たとえば「埃の舞っている四温」とか、 たとえば「ラジオの鳴っている四温」とか、 テキトーに言ったもん勝ちって気がしなくはないし、 そのまま「小春」に置き換えても成立する句です。 …とはいえ、 三寒のあとの四温という弛んだ日柄と、 室内で掃除具の細部を観察してる気分は、 それなりに響き合ってるし、 季語の選択に説得力があるぶんだけ、 前回よりはマシかなと思います。 …それはそうと、 前回といい、今回といい、 半径30㎝のちまちました世界を詠んでて、 いつのまにか作風が村上みたくなってますねw お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024.01.27 19:15:31
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