|
カテゴリ:読書
「一瞬の風になれ」佐藤多佳子
「好きな作家は?」ときかれると、「佐藤多佳子」とこたえてきた。 そう答えてもなかなか反応はなく、 「どんなの書いてるひと?」「しゃべれどもしゃべれども、とか」 「どんな話?」「落語家ががんばる話」 聞いてるほうも話してるほうも、ふーん以外の何物でもない会話なのだが、まぁそんな感じ。 でも、これからは変わるんだろう。 「どんなの書いてるひと?」「一瞬の風になれ、とか」 「あー、あの陸上の、」と。 もしかしたら、さらに、 「あー、あの映画になったアレ」 「あー、いまドラマやってるやつね」 「あー、あれ読んだよ」 っていうような反応が返ってくるようになるのでしょう。 ついにとったよ、本屋大賞。 「しゃべれども しゃべれども」から10年、やっと佐藤多佳子が世間に届くときがきた。 この作家はいいよー、と言い続けて10年、うれしいかぎりです。 まことにもって、おめでとうございます。 まだ読んでいない人は、ぜひ読んでみてください。 何を書かせてもうまい佐藤多佳子の作品の中でも、この「一瞬の風になれ」のストーリーの躍動感ったらない。 高校の陸上部を舞台にしたさわやかな青春小説で、楽しい気持ちとか悔しい気持ちとか、いっぱい詰まった素晴らしい小説。にぎやかでさわやかな青春小説です。 春野台高校陸上部。さして強くもない公立高校に入部してきた期待のふたり。 中学のころか注目されながらも練習嫌いでおまけにブランクのある天才スプリンター連と、中学まではサッカー少年でありながら限界を感じ、陸上に何かを見出そうとする幼馴染の新二。サボり癖のある連をやきもきしながら見守るチームメイトたち。 やる気のない天才と、努力してる主人公。 そんなありふれた構図で、しかも陸上競技のスプリントなんていう小細工のきかない設定で、 でも読み出したら面白さ。 たまらない面白さなのである。 新二が走る、連が走る、物語が疾走する。 佐藤多佳子の描く最高の物語を、ぜひ味わって欲しい。 スポーツ小説の王道ど真ん中を突っ走って、文句なしのストライク。 奇をてらった設定はなく、すいすい読めて、ぐんぐん引き込まれる。 おそるべし佐藤多佳子。 これはもう、今年のベストは確実なんですが、オールタイムベストにも入る大傑作ですよ。 本好きなら、何が何でも読め。 現在の日本の作家で、最高の物語作家だと私は思っている。 マンガ界に、映画界に、ゲーム界に、「どうだ、文学には佐藤多佳子がいる」と誇れる作家なのだ。 本屋大賞2006を獲ったことも、当たり前。 2006年のベストにして、この10年のベストかもしれないのですよ。 一瞬の風になれ 第一部 --イチニツイテ-- 作者: 佐藤多佳子 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2006/08/26 一瞬の風になれ 第二部 --ヨウイ-- 作者: 佐藤多佳子 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2006/09 一瞬の風になれ 第三部 -ドン- 作者: 佐藤多佳子 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2006/10/25 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[読書] カテゴリの最新記事
|