カテゴリ:万葉恋々
額田王(ぬかたのおおきみ) 君待つと我が恋ひをれば わが屋戸の簾動かし秋の風吹く 万葉集 488 あなたさまをお待ちしていますと わたくしがひとり恋しさをつのらせていると わが家の簾を動かして秋の風が吹いた。 註 君待つと:「あなたさまをお待ち申し上げております」と。 「君待ちて」ではなく、「君待つと」という言い方になっているのが昔から疑問だったが、おそらくこういった直接話法的なニュアンスか(筆者解釈)。現代文なら「 」内に入る言い回し。 おそらく、「秋」と「飽き」を掛けている。侘しく寂しい和歌的修辞である。 「君」は天智天皇。 当時は妻問婚(通い婚)、招婿婚(庶民も、いわゆる「夜這い婚」)で、恋愛関係は自然消滅することも多く、夫婦・恋愛関係はゆるく不安定だった。女性は待つばかりということも少なくなかった。 (ただし、母系制社会で、家屋敷・財産などの相続権は女性側にあり、政治的発言力などもかなりあって、立場は決して弱くなかった。) この民族的な感覚は、後世、花柳界・水商売の女性と男性客との関係性などにも影響を及ぼしたと思われる。 貴人が乗って来る牛車の(塩分を好む)牛をおびき寄せる「盛り塩」の風習などはよく知られており、現代にも及んでいる。 恋ひ:古語動詞「恋ふ」の連用形。このまま「恋」の語源となった。恋いわびる。恋い焦がれる。恋しさをつのらせる。現代語より切迫したニュアンスだったと思われる。もとは「乞う、請う」などと同語源または同一語だったという見方もある。 屋戸:家。万葉集に頻出する。「宿」とは別語。 国宝 源氏物語絵巻 宿木 (歌と画像に直接の関係はありません) ウィキメディア・コモンズ パブリック・ドメイン *画像クリックで拡大。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2024年09月02日 06時58分54秒
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