アイシェ歓喜する
日本からやってきたのは、今年の春先、初夏にそれぞれキリム織り研修にやってきた日本人女性3名である。帰国して間もないのに、再度トルコへやってくることになった理由はそれぞれであるが、今回を逃すと就職で今後長期休暇が取れなくなるというので年内の再訪になった。アンタルヤでは3人を連れて、アイシェを訪ねた。3人ともアイシェの元で絨毯織りを習い、うち2人は1か月~2か月間をアイシェの家で過ごした経緯があり、涙の再会になることは必至であった。アイシェには3人のうち、2人が来ることは告げてあった。クルマで村のアイシェ宅に着き、玄関から2人を連れて中に入った。アイシェはもちろん大喜び。抱き合ってお互いの健康を確認しあう。台所ではアイシェが彼女たちのために作っていた料理の鍋が火にかかっていた。私は台所のカギを開け、外に待たせていた、もう一人の日本人Yちゃんを呼びいれる。そして鍋の前で後ろ姿で待たせた。「アイシェ~!鍋がこげているみたいだよ! ちょっと見てくれるかなあ」とアイシェを台所へ向かわせた。30秒後にアイシェの叫ぶ声が聞こえた。驚きのあまり、心臓麻痺でも起こしはしないか、それだけが心配だったけど・・・。Yちゃんはアイシェにとって、娘同様の存在で、でももうトルコに来ることはないだろうとあきらめていた。今回もYちゃんが来ることは内緒で、アイシェに何度聞かれても「どうだろうね」としか答えていなかった。娘のブルジュが大学に行き、寂しがっていたアイシェを喜ばせるための計画であったが、これほどうまく行くとは思っていなかった。いっそのこと、3人の再訪を秘密にしておけばよかったのだけど、ミフリの社長は我慢ができないタイプで楽しいことや喜ばしいことはすぐに口にしてしまう。今回も2人が来ることを知ったときに、アイシェの喜ぶ顔が見たくて、すぐに伝えてしまった。その後、Yちゃんのトルコ行きが決まり、それも言ってしまいそうになりながら、秘密にした。この日はアイシェの手料理で満腹になり、そのまま村に残ることになったYちゃんを置いて、アンタルヤへ戻った。3人の懐かしい顔を見て、アイシェの心が元気になったこと。アイシェの喜ぶ顔を見て、私も元気になったこと。また3年後、5年後、こんな再訪と再会があることを祈りつつ・・・ミフリ社長のトルコ滞在は続くのであった。