ジェンギズハンの結婚(1)
ミフリのスタッフの一人、ジェンギズハン、27歳。昨年の夏からつきあいはじめたアルマンという同じ年のお嬢さんと、今年の6月に婚約をした。婚約から半年~1年ぐらいで結婚をすることになるのであるが、これがまたなかなか話が進まない。本人たちも話のすすまなさに、イライラしているので、いったいどうなっているの? と話を聞くことになった。二人の結婚は、いまどきの若者らしく、自由恋愛でみつけた相手。家族も公認でつきあい、時期を見て、両家間で婚約を交わした。婚約といっても具体的なプランはなく、当人同士に力もお金もないので、この地方の慣習にもとづいて、両家の父親が式の日取り、方法などを決めるのだという。ところがどこの世界も同じであるが、男に任せていては、用事はすすまない。入籍だけは一日も早くすませたい二人であるが、トルコでは入籍も日本のように用紙を届ければ済むというものではなく、市役所または県庁の職員立会のもと、日取りを決めて、儀式的な入籍のサインをしなければならない。その以前に血液検査だ、なんだと書類を提出する必要もある。その日取りを決めるのに、本来は本人たちの意志に任せるべきであるが、ここでも父親が「オレに任せておけ」といい、何も進展がないまま日が過ぎていくのである。目上の人に意見することもできず、待つだけの日々。「結婚するのはあなたたちなんだから、自分たちで日を決めて、親には報告すればいいいじゃない。そうじゃなくてもいつがいいか親と話をして、その日に入籍できるように頼むとか・・・・」普通の感覚ではそう思うのだけど、家も家具も結婚式も親に頼らなければならない立場のため、何も言えないようである。とりあえず家はジェンギズハンの父親の持ちマンションのひとつをもらえることになった。家具は寝室とキッチンは女性側の両親が用意し、応接室は男性側の両親が買うことになるらしい。アルマンの買い物リストをみると、新婚家庭にこんなものいるの? という細かいものまですべてリストアップされている。これを揃えてから結婚するのであれば、ずいぶん先の話になるのだと思う。若い二人だけの新婚家庭なんだから、家されあれば、カーテンとベットと寝具があれば、あとはお給料から少しずつ買い足していけば済むのに・・・・・と、日本人的には思ってしまう。結婚までは親がかり・・・という風習では、親のお金の都合もあるし、両家お互いへの、また世間への見栄もあるから、時間がかかるのであろう。式場も決まっていない。当然、クナゲジェシ(結婚前夜祭)や披露宴の両家の負担も決めていない。お金がからむことだから、親同士、これでまた話が落ち着かなくて、日がのびるのだろう。普通だったら、結婚に向けて、二人でドレスの準備や、結婚式や新婚旅行のプランをたてたり、楽しい時期のはずなのに、この二人の日々は両家の父親の決定待ち。全くの受身である。27歳同士の結婚にも親がかり。しかもお金だけだしてくれるわけではなく、口も出しまくり。当人たちに決定権はなにもないのである。このままでは生活費も、子供を作ることも、すべて親に管理され、親の決定に左右されることになるんじゃないか・・・・と他人ごとながら心配するミフリ社長であった・・・・・。それでも家から家具から家電から全て、親に揃えられる力があるのだからそれもラッキーなのか・・・・と思ったりもするけど。