●●●ナニワ金融道6
世の中にはちゃ~んと、働かんでも金に困らん職業がある。いわゆる、マルチ商法の胴元という奴。最初だけちーとばかり辛抱してガンバって、組織を大きくしていけば、何もせんでもお金が入ってくるらしい。今回の『ナニワ金融道6』は、灰原達之くん、そこに自分の金融道を見出すが。これまでの『ナニワ金融道』金子高利社長の「帝国金融」に金を借りることになるいろんな客が主役と言ってもよかった。金借りてカタにはめられたり、ニッチモサッチもいかんようになった客に金って奴は・・と人生を観る。語り手は中居正広演じる、灰原達之、彼もまた手形の裏書きしたり、保証人になったり、スレスレのところをわたって街金の金融マン6年目。もともとは焼肉屋のバイトくん、人のイイ彼は、勿論、売り上げナンバー1の金ぴか背広の桑田澄男たちのようには悟りきれない。何がなんでも金を借りさせ、取り立てるクワタはん。小林薫、毎度のことで絶好調である。彼の目は、泥沼に入ってでも金を借りる人間が選別できるようである。今回は竹下樹理、高岡早紀演じるパチンコ狂の主婦。案の定、250万借りて、カタにはめられる。ダンナに黙って身体売って稼いだお金持ってパチンコへ。なんか、幸せそうである。灰原くんにも彼女が出来る。市村朱美、ネイティブ関西弁の池脇千鶴が演じる。実は恋愛商法のプロ、そして、脚本は、彼女に「金(カネ)」というもんのいっちゃんイタイとこを語らせている。カネをとったら人間関係は断ち切られてゆく。間違いなく。だからこそ、今回の大ネタはマルチ商法。働かんでも金に困らんようになるのはステキやけど、マルチはまず、親兄弟、友達の勧誘からはじまる。お互いに好きおうた灰原と朱美だが、二人はドップリ、「カネ」に漬かっている。『クロサギ』という詐欺を扱った漫画があって、4巻目に扱われているのが共済組合の詐欺。ホンマ、おおざっぱな説明で申し訳ないけど、保険会社に比べれば、無認可でも組織しやすいのが共済。対象を限定すれば、助け合いとして保障を商品化できる。掛け捨てで月掛金は2,000円くらいから。払いやすい金額だから紹介もしやすい。保険なんで、もちろん毎月振り込まれてくる。振り込まれる度に発生するのはリベートである。紹介した人がまた人に紹介すれば、その一部もリベートとしてフトコロに入る。実は、共済の月掛金は、運営費やプールを差し引いても三分の一くらいが残るんで、災害のあったところへ寄付したり、「割戻金」として加入者に戻されたりするのがホント。そのお金をマルチの胴元はフトコロに入れている。規制は国会とかでも討議されてるけど、マルチと「全うな」無認可共済のボーダーは微妙で難しいらしい。さて、そのマルチこそ、灰原くんの金融道、有能なマルチ商法の営業レディ、古井富士子に融資を画策する彼。マルチに参加させる客の資金を「帝国金融」でご用意する。けれども、一部の刑事をマルチ絡みで敵に回してたから、ホンマ、ムッチャンクッチャンになる。警察は古井富士子も、「帝国金融」も潰そうとしていた。ハッキリ言って、時代の流れである。おそらく緒方拳の金子社長とクワタはんがいなければ、街金「帝国金融」も潰れていた。キャッシング、そんな横文字で、気軽に「カネ」を借りられるようになった世の中。時代は笑顔の女性と無人ATM。クワタはんが営業してカネ貸さなくてもカネを借りられるシステムは身近にある。警察権力はもう、マルチでも街金でもなくソッチへ行ってるみたいである。無店舗「090金融」はケータイで連絡。こちらもクワタはんが営業せんでも客は来る。今回は何度も灰原くんが言っていた。「借りた金は返してください!」ウルフルズの主題歌じゃないけれど、情け容赦なく灰原くんは取り立てを行っている。彼の「借りた金は返してください!」は厳しい。優しい青年は自分の心を隠してまで言う。「借りた金」というのはそういうものなのだと、肝に銘じなきゃならない。プロデューサーの山口雅俊氏が緒方拳が「もう街金の時代じゃないだろう」と話していたというネタを紹介してくれている。正月そうそう、『ナニワ金融道6』はシビアである。クワタはんがいなけりゃ、笑いも少なかった。だが今まで以上に「カネ」ってもんと真正面からぶつかった作品に仕上がっている。