ゆーゆーと夫婦別姓
一ヶ月ぶりの検診だ。ドクターと体調のことや気になる質問などをちょっと話した後「あなたは全て順調ね!」と取り合えず問題なし、ということを告げられた。前回の超音波の写真はどうやら公開されることは無いらしく、写真を調査した検査官からのレポートに全て順調と書かれているのみであった。レポートには病院の診察よりも少々ベイビーが発育していたので5日ほど予定日が早まるのではないか、とメモがされていた。素晴らしい!私の父親はお盆に来たとしても孫の顔を見れずに帰国してしまうのではないか、と言われていたのだがこれでぶよぶよのベイビーのままでも少しでも顔が見れるかもしれない、という可能性がでてきた。さすが私のベイビー、完全におじいさんおばあさん孝行の良い子ちゃんである。今日もまた心音を聞かせてくれた。心拍153。ぱっぱか、ぱっぱか、と(AUNちゃんが前言ってたけれども)馬が走るような音と共に、なんだか「ばこっ!もそっ!ばこ!ばこ!」と言う音が頻繁に入る。なんですか?この音?と、看護婦に聞くと「そうとう暴れてるみたいね・・・元気がいいわっ。くくくく…」と笑って言う。まだ男か女か分からないけれども、ベイビーは相当元気がいいらしい。私もこみ上げる笑いが止まらない。これから、おなかのベイビーを「ゆーゆー」とここでは呼ぶことにしようと思う。先週、木曜日だけオフィスに働きに来ているジョセフとお昼ご飯を一緒に食べた。とても仲の良かったケニア人のシンシアがボストンに去ってから1年間、私はあんまりオフィスに仲の良い人がおらず、あの意地の悪いトゥルーディーに悩まされたりして、つまらない日々を送っていた。そこで現れたのがジョセフだ。ジョセフはうちの古株のおばあさん研究者、パールミュッター先生のアシスタントとして週一回バイトで入っている。国連の短期派遣でエジプトに行き、任期終了後そのままエジプトのNGOで5年働いていたという。オフィスで私と同じく「隠れデモクラット(民主主義者・ここでは党の意味は含んでない)」なので同士として私達はいろいろな情報を交換する。そのジョセフとおなかのベイビーについていろいろ話していたとき、「アジア人の名前ってあの、音の流れがとってもきれいだと思うんだよ!とってもかわいいと思うなぁ。」とぽそ、っと言った。私はその時まで何か外国人に発音し易い短い日本の名前、とかいろいろ頭にめぐっていたのだがジョセフのそのセリフを聞いてあぁ、なるほど、と、私の創作意欲が湧きに湧いた。(よく分からない表現だが)最初から日本っぽい名前をベイビーに付けるつもりだったが、音の流れがきれいな名前をつけよう、とその時決めた。そこで湧きに湧きまくったアイデアを漢字にして、画数を調べて、何個か候補を作って仕事が終わって夜遅く帰ってきたノリノリに相談してみた。ノリノリは「コイヤ」と言う映画を見て、その「コイヤ」のような素晴らしい人になる為にその名前を付けたいを付けたいとかなんとか言っていたがまぁ、まぁ、ノリノリ、聞いて、聞いて!こんなの考えてみたんだけど…。と漢字と画数と響きの説明と共に幾つかアイデアを話した。すると、二つ目の「ゆ」が付く名前に、「あ!それいいね。」とすっかり気に入った様子。あんまりあっさり気に入ったので私は不安になって「いや、でもこんなのもあるしー、これもあるしー、」と説明する。でもノリノリは、「いや!もう絶対それ、それがいい!決まりね、決まり!」確かに一番いい名前だと思っていたけれども、あんまりあっさり認められると焦ってしまう。妹に画数調査を頼んだが、まぁ、それなりに悪くない様子。やはり、決まりは決まりだろうな。そう思うとうれしくてうれしくて、その日から男の子でも女の子でも関係なくベイビーはYと呼ばれることになった。ノリノリも私もすっかりY!!!といって話し掛けている。そんなわけで、私も日記ではゆーゆーとベイビーを呼ぶことにする。名前が決まったゆーゆーには重大な使命が既に課されている…なんていったら大げさだが、ゆーゆーは両親のもつ苗字を二つとも持って生まれる事になる。将来好きなほうをゆーゆーが選ぶ為だ。どういうことかというと、ゆーゆーはアメリカ名にノリノリの苗字を取って生まれる事になる。私の苗字がミドルネームに入る。そしてゆーゆーは日本では私の戸籍に入ることになっている。ノリノリは認知届を出す準備を既にしているので戸籍上では血縁関係が証明される。それで終わり。ここまで書けばわかるだろうが、私達はアメリカで婚姻届を出しているが日本では戸籍を移動させて姓を統一させなければならない為、婚姻届を出していない、いわゆる事実婚である。ノリノリは私の戸籍に入っても良い、と言っているがノリノリのお母さんはこれに激怒した。私は彼女の気持ちがわからないわけではないので、なら、別姓でいこうよ、何にも怖いこと無いよ、とノリノリもうちの家族も説得した。私がノリノリの戸籍に入らない理由は、多分、ノリノリのお母さんがノリノリを私の姓に入って欲しくない、という理由と全く同じであると思う。嫌な物は嫌、それだけではないだろうか。そこに長男だからとかいろんな(余計な)理由が付くだろうが結局嫌なものは嫌、それだけなのである。別にノリノリの苗字が嫌いなのではなくて、私は変えたくないだけでノリノリが変えたいと言ってくれるならそれでよい。そしてお母さんが変えて欲しくないのなら、別にそれはそれで私は構わない。人が名前を変える変えないはその人個人の問題である。私は変えたい人は変えればいいと思う。男の人、女の人、どちらが変えるかは別にして統一したい人は統一すべきだと思う。それでいい。でも、変えたくない人は変えなくたっていいだろう、とそんな気持ちだ。家族のつながりが、とか、苗字が違ったら子供がかわいそう、とか訳のわからないことを言う人がいるがはっきり言ってそんな事は関係ない。アメリカで夫婦別姓の親で育った友達もいるけれど、それを苦にした、なんて言ってる人とは会ったことない。そうやって生まれればそれで子供は受け入れていくのである。問題はそんな事ではなく、日本ではそうやって姓の統一を強制するわけであるから、そのシステムに反した場合、差別や不当な扱いを受けるのがその子供である、ということである。それが子供がかわいそう、な理由である。システム上では遺産の話、それだけであるように見える。(今日のニュース見出しでゆーゆーが生まれる辺りまでに戸籍記載は撤廃される方向らしいが)遺産の話もなぜ?であるが、それが原因で就職時に差別などなんで起こるのかそっちの方はなおさらさっぱり理解できない。妾とかそんな人を誰かさんたちが一杯作っていた時代に、そういう形式上で子供を差別する為に作ったシステムではないのだろうか?いや、今だって不倫だのなんだので隠し子なんて作ってる人が日本国内でも、いやフィリピンとかあっちの方でもそれなりにいるに違いない。(ネット検索中やたらアジア諸国の人々との間に子供が出来た時の記述が多かった)生まれた命は平等であるはずなのに、システムで無理に差別を強いているのである。でも子供は親を選べない。一体それで誰が得をしているのだろう。別姓に反対する理由はいろいろあるだろうが、問題は配偶者よりも何よりも子供の問題である。反対されても別に戸籍上夫婦別姓を認められなくても構わないけれども、姓を統一していない夫婦に(システムに適ってない個人に)生まれた子供に最初から差別を与えてもよい、と言う考え方にはならないはずだ。子供無しで別姓にしたければノリノリと私のように日本に籍を入れなければ良いだけの話なのだから、別姓に反対する人にいちいち文句を言われたくないものだ。私はゆーゆーの為にこの件に関しては体を張ってきちんとシステムにアプローチする。ゆーゆーが大きくなる頃にはそんなくだらない差別は絶対無くなっているはずだ。ね!ゆーゆーっ!そんな日本のシステムをジョセフに説明して「私ね、そんなの気にしないで真っ向から戦ってるの。」と言った時、「さすがM!やっぱ自分の意志はしっかり貫かないとね。応援してるよっ!」とはっぱを掛けてくれた。そういえば彼によるとエジプトではイスラム社会なのでもちろん「女性はXXできない…」などといろいろあるのだが名前に関しては自由に自分の名前をキープできると言う。先祖からの何十、いや、何百もある姓が全部くっついてその人の名前になるのでそこから好きなものを選んでつけるとか。あんまり想像がつかないがそれも面白いやり方である。→→→→またはUS Life Indexへ行ってみる→→