愛をさがして フランソワーズサガン
サガンに目覚めたのは17歳の時。サガンが「悲しみよこんにちは」で18歳で衝撃的と言われる文壇デビューを果たした事を考えると、私はそう早熟な少女だとは思えないけど、日本の…しかも九州で17にしてサガンに目覚めた自分は、やはり多少は凄いヤツだと今日改めて思った。「愛をさがして」はサガンが14年前に59歳で書いた小説。癌を宣告された日の男の1日を描いたもので、話自体はとりたててものすごいストーリーではないのだ。私は日本の作家では、サガンの影響を受けていると思われる山田詠美が好きなのだけど、詠美さんも話自体は取り立ててすごいストーリーを書くわけではない。ちなみに詠美さんもこの「愛をさがして」のオマージュとも思える作品を書いている(晩年の子供)では何が凄いのか…心の描写が凄いのだ。凄いなんて書くととても陳腐で落ち込んでしまう。でも私を落ち込ませる作家は、詠美さんを除いては日本にはいないのでそれもまた心地よく思う。ここ2,3年ふとしたきっかけでシナリオを勉強し、少しは「書ける」レベルにはなってきたと思うのだけど、書ける様になればなるほど、ラビリンスに迷い込む。人が望むシナリオを書けば書くほど、自分の目指す方向とは大きくかけ離れて行く。それがもどかしくいらだたしい…でも久々に、産まれて初めて衝撃と言える感情を受けた作家の小説を読んで、自分の求めている方向が見えた気がした。やはり迷った時は原点に戻るべきだと思った。サガンや詠美さんのように、明らかに「天才」と呼ぶにふさわしい文章を紡ぎ出す作家を目指すには、私は庶民過ぎるけど(笑)でもとりあえず、向かいたい方向が見えてよかった。夏の終わりから秋にかけてはサガンを読むにはふさわしい季節だ