人のいい門番
医者の資格が疑われるやつが言った。「こいつは異常だ。隔離せよ」年のころなら、死んだ父と同じぐらいの人が入ってくる。「どこに入れましょう」「トイレだ」「そんな・・」「あいている病室などない。病院は、それで儲かる。 俺にたてつくやつは、みなきちがいだ」薬でおとなしくされた私は、従順にその人に従った。別室に入った。後ろで診察室の扉が閉まる。世間から隔離された世界が、これからの私のすみか。「戻れるのだろうか、新しい寝床は寝心地いいのかな」などと、まどろんだ頭でのんきに考えていた。「ここがこれからのお前の寝る場所だ」見ると二つ並んだトイレ。しかも鉄格子がはまっている。外から丸見えだ。それを見たわたしは言った。「何でこんな扱いを受けるのだ。俺は人間だ。戦場の兵士でもトイレでは寝ない!」「理屈を言うな!とりあえずここで寝ておけ!」トイレに閉じ込められた私は、周りを見る。きれいに掃除がされていたものの、ここは間違いなくトイレだ。今の日本に、トイレで寝かせる病院があるというのが信じられなかった。叫んでも空しく、誰も助けに来ない。また孤独になった。何で俺が親しくなった人は去っていくのだろう。死んだり・俺の前から消えてしまってなどと考えていた。変なにおいがするのを感じた。アンモニアの臭いかと思った。でも違った、強烈なクレゾールの臭いだった。ああここはやっぱり便所なのだ。世界で一番惨めな、ねどころだと思った。鉄越しのはまった、窓から空を見た。きれいな星が出ている。またちっぽけな、俺を感じた。