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カテゴリ:映画
消えゆくガガーリン団地で僕が見つけた、思い出と光 フランス、パリ郊外に実在するガガーリン公営住宅を舞台に描いた青春映画。 パリ東郊に位置する赤レンガの大規模公営住宅ガガーリン。 宇宙飛行士ガガーリンに由来する名を持つこの団地で育った16歳のユーリは、自らも宇宙飛行士を夢見る一方で、かつて自分を置いていった母の帰りを待ち続けていた。 ところがある日、老朽化と2024年パリ五輪のため、ガガーリン団地の取り壊し計画が持ち上がる。 住人たちの退去が進む中、ユーリは母との大切な思い出が詰まった団地を守るため、親友フサームや思いを寄せるディアナとともに、取り壊しを阻止するべく立ち上がる。 監督は、これが長編デビュー作となるファニー・リアタール&ジェレミー・トルイユ。 映画初出演のアルセニ・バティリが主演を務め、「パピチャ 未来へのランウェイ」のリナ・クードリ、レオス・カラックス監督作の常連俳優ドニ・ラバンが共演。2020年・第73回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション作品。 パリ郊外の老朽化した団地が、あたかも「2001年宇宙の旅」のような様相を呈する。 これほど独創的な低予算映画を、いったい誰が想像できただろう。 本作は社会派映画でもSF映画でもない。 だがその両方の要素を含みつつ、そこに若者の夢と詩情をまぶし、かつて観たこともないような作品に仕立てている。 題名のガガーリンは、宇宙飛行士ユーリ・ガガーリンの名前に由来し、実際にパリに存在した低所得者用集合住宅を指す。 1961年、パリ郊外にこの団地が建てられたとき、ガガーリン本人が訪れたことでも知られる。 当時は画期的な現代的設備を備えたコンクリートの団地はしかし、長い年月のなかでの老朽化と、アスベストなど建設基準の問題から解体が決まり、2019年に取り壊された。 本作はそんな「消えゆくランドマーク」にオマージュを捧げた作品でもあるのだ。 新しい恋人に夢中の母親に見捨てられ、団地にひとり住む16歳のユーリは、なんとか隣人や友だちに助けられながら日々の生活を送るのが精一杯で、とても将来を考えるどころではない。 そんな彼にとっては、想像のなかで憧れの宇宙飛行士になることが、唯一の慰めだった。 だが、ある日団地の取り壊しが決定し、友人たちもどんどんと立ち退いていく。 ひとり取り残されたユーリは徐々に、自分だけの幻想の世界に身を置くようになる。 団地の内部を宇宙船のように改造し、植物を育てながら籠城する彼は、冷静に考えれば「シャイニング」の主人公のようなものだが、ファニー・リアタールとジェレミー・トルイユ監督はあくまでユーリの視点から、ファンタジーに満ちた空想の宇宙を描く。 階段の踊り場を下から上へ、ふわふわとユーリが浮遊する様、冴えないコンクリートの団地がまるで空に向かってそびえたつNASAの基地のように見えるショットなど、何気ない風景に魔術を施す彼らの感覚にはっとさせられる。 またユーリが思いを寄せるノマドの少女(「パピチャ」「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」のリナ・クードリ)との絆に、初々しい青春の芳香が漂い、淡い恋物語の輝きを添えている。 今から11年前、パリに行った時に、、旧バスティーユ支線沿線跡を利用した■緑の散歩道■を見に行ったことがあった。 高架下や切り通しを通って、大きな団地に出た。 そこで、気が付いたことがあった。 それは、私たちがいつも見ているパリは、観光地で、パリの人達は、日本と一緒で、ルーブル美術館も、カフェも関係ない、こういう普通の団地に住んでいるということ。 映画の舞台はパリでも、この映画の中には、モンマルトルの丘も、地下鉄もルーブル美術館も、カフェも描かれていない。 今回の、大規模団地、ガガーリンは、1961年に建てられたというから60年以上が経過している。 団地に住む人々は大きく3つに分かれる。 ●すぐ出て行きたい人。 出て行きたい人は、再出発が出来やすい、お金があって健康で若い人。 ●ここに残りたい人。 長く住んでいて、ここで顔見知りと暮らしたいという老人たち。 ●出ていけない人。 次に住む場所がない人。 16歳の少年ユーリは、母親に捨てられて行くところがない。 少年ひとりでは次のアパートを借りるのは不可能だろう。 そんなパリの住宅事情も描かれていた。 大都市パリには、多くの民族が押し掛ける。 ロマの暮らす風景や差別も描かれていた。 この映画で一番興味深かったのは、宇宙飛行へのオマージュと思われる数々のシーン。 これって元を知っていないと、分からないので、私も見逃したところがあったかもしれないが、分かったところだけメモしておく。 ★宇宙飛行士、ユーリ・ガガーリン。 団地の名前が、「ガガーリン」、主人公の名前が「ユーリ」。 ★英雄ガガーリンが団地に来て、植樹をするニュース映画から始まる。 ★人のいなくなった団地にいる犬はライカと呼ばれていた。 ライカは、宇宙船 スプートニク2号に乗せられたメスの犬の名前。 地球軌道を周回した最初の動物となった。 ★終わりの方で少年ユーリの着ている服。 寒さを防ぐために、銀色のアルミっぽいシートを体に巻きつけけ、その上にオレンジ色のつなぎを着て、ヘルメットをかぶる。 その姿は、宇宙服にしか見えなかった。 ★■映画オデッセイ■を思い出した。 映画「オデッセイ」:水も空気も通信手段もない火星でたったひとり取り残されたマークは、残された物資とわずかな食料をかき集めて、知恵と強い意思をもって生き延びようとする。 火星にたったひとり取り残されてしまった男のサバイバル劇と、彼を救いだそうと心をひとつにして奔走する仲間たちのドラマを描いた壮大な感動ドラマ。 ガガーリン団地にたった一人籠城するユーリ少年。 彼もあちこちから資材をかき集め、 自力で発電をし、照明をあてて、植物を育てる。 その植物は、食料となり、植物の出す酸素が彼の吸う空気となる。 ●ネグレクト(育児放棄)●移民問題、民族問題 ●住宅問題 など社会問題を描きながらファンタスティックテイストの映画だった。 にほんブログ村 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022.03.22 00:02:26
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