水俣の甘夏 「加害者にはならない」という決意を支えるもの
柑橘類、特にその皮が大好きな私にとって、今はちょっと忙しい季節・・・。市販のマーマレードの皮の量に不満がいっぱいなので、マーマレード作りに励んでいます。自分で作ると、もはや「ジャム」というよりは「皮の甘露煮」状態(笑)こちら←はオレンジピール(というか甘夏ピール)。このままつまんだり、刻んでお菓子やシリアルに入れたり・・・。使うのは生活クラブ(私の利用している生協)で手に入れる、水俣産の甘夏。作っている生産者グループ「きばる」の方々の多くは、元漁師さんです。水俣病の原因にもなったメチル水銀を含む工業廃水によって漁場を汚染され、漁業を続けることができなくなった漁師の方々が新たな生活の糧として見出したのが甘夏の栽培なのだそうです。水俣病によって肉親、知人を亡くした方も多く、甘夏生産にあたっての「きばる」の決意は「自分達は加害者になりたくない」というもの。食べる人にも育てる人にも安心な甘夏作りをめざして、今では全ての甘夏の農薬散布量を、一般的な農法の1/2~1/3に減らすことができたそうです。農薬を使わないだけで簡単においしい甘夏がなる訳もなく、そこに至るまでにはもちろん多くの困難、失敗があったそうで、「生活クラブ」という支え、販路があってこその取り組みだったと思います。7月以降は一切農薬をまかず、防腐剤も使わず、木で完熟させた甘夏。見栄えは良いとは言えず、今年は長梅雨の影響で黒点病も発生してしまいましたが、食味には影響なしとのこと。生活クラブではその状況を詳しく伝えたうえで、「これも減農薬の証。利用を集めて応援しましょう」と利用を呼びかけています。病気を防ぐために農薬を散布したきれいな甘夏と、安心して皮まで食べられる黒い斑点のある甘夏。十分な説明があれば後者を選ぶ人も多いと思いますが、そのまま店頭に並べられていたらほとんどの人はきれいなほうを選ぶでしょう。普通の販売ルートにのらないような外観でも、供給側の十分な説明と消費者の理解をもって流通させられるのが『生協』というシステムの良いところだと思います。最近では普通のスーパーと変わりないような商業的な生協もあるなか、生活クラブは「生協とは生産者と消費者をつなぐもの」というポリシーが強く感じられる生協です。■生活クラブ http://www.seikatsu-club.jp/現代的な消費社会において消費者は至上の存在で、消費者のニーズをどこまでも満たすことが生産・販売側に求められます。けれども、「食べ物の生産と消費」において、そのような消費者至上主義は本当はそぐわないように私は思います。「食の安全」という言葉はあちらこちらできかれますが、「安全で、環境にやさしくて、きれいで、安くて、お手軽で・・・」なんていう商品は存在しない。「安全なものを」と言ってはみたものの、いざ手間をかけた商品が店頭に並んでみたら「高かったから、きれいにみえなかったから、やっぱり買わなかった」ということでは安心な食品なんて増えていかない。消費者はお金を出せばなんでも買える、と思うのではなく、自分では作らないものを代わって作ってくれている生産者を支える、という視点も必要なのだと思います。また、ものには当然需給バランスがありますが、食べ物を作る場合、消費者が欲しいものだけを欲しいだけ、という訳にはいきません。その年、その季節によってとれるもの、収量は変わるし、ある一つの部位だけをたくさん生産することもできません。生活クラブの宅配カタログで野菜を注文していても、天候などの事由により収量が予想より少なかった場合は、1点当たりの量が減ったり、欠品したりします。需要が落ち込み、供給が過剰な場合がは、具体的な状況説明とともに、利用拡大のPRが入ります。これ←は在庫過剰のPRに応じて購入したレモンで作ったマーマレード。レモンマーマレードは初めて作りましたが、かなりおいしくて嬉しい♪肉は飼育計画から提携した生産者から『一頭買い』をします。1頭の生き物に備わるべき器官は定まっていて、人気のある部位がたくさん生産できたりすることはありません。なので「豚 肩・バラ」を注文すると、どちらが届くかは当日届くまでわからなかったりするものもあります。「そんなのはいい加減だ」「それをなんとかするのが企業努力だ」と思う人もいるでしょう。(生協は企業ではありませんが・・・。)けれども、現代の消費者はそれくらいの我慢をしてもよいのでは・・・と思います。これは生活クラブの言葉です。「ロースだけの豚はいません。」こちらは実家の庭でとった金柑。かなりすっぱいので甘露煮に・・・。柑橘三昧です♪マーマレード、ピール、甘露煮のレシピは、ベターホームの『かんたん手づくり食品』を参照。かなり愛用している本です。おすすめ!■関連日記 『かんたん手づくり食品』*ベターホーム出版局 http://plaza.rakuten.co.jp/peace4earth/diary/200603290000/