実際にあった怖い話 第3話「彷徨える足音」(夏休み特別企画)
これは、いつもの小説「poincare ~ポアンカレ~」本編とは別の物語です。 怖いと感じていただけるかどうか分かりませんが、一応 怖い話 のつもりで書いてますので、 その手の話が苦手な方はご覧にならないでください。 ※ いつもの小説「poincare ~ポアンカレ~」本編の最新記事・第36話はこちらから。 最初から、または途中の回からの続きを読まれる方は、こちらからどうぞ。 ※ 申し訳ありませんが、リンク先は携帯では表示されません。m(__)m ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○夏休み特別企画・実際にあった怖い話 第3話「彷徨える足音」「こんなにいい天気なのに、土曜出勤なんて・・・」ミナミは今の会社に勤めて三年目。ある程度責任のある仕事も任せてもらえる立場になっていました。そのかわりやらなければならない仕事も増え、今週は土曜日も休日返上で出勤になってしまいました。なるべく早く仕事を終わらせようと思っていたミナミは、前日に会社のカギを借り、午前九時にはもうデスクについていました。ミナミの他には誰も出勤してはいませんでした。「あ、コーヒー買うの忘れた」会社が入っているビルの入口に、自販機がいくつか並んでいました。ミナミはここで缶コーヒーを買うつもりだったのです。ところが入口に着くとすぐにエレベータが来ていたので、コーヒーを買うのも忘れて慌ててエレベータに乗ってしまったのです。今から下に買いに行けばすぐでしたが、何んとなくその気になれませんでした。「仕方ない、お湯くらい沸かそうかな。電気ポットに水入れるだけでいいんだしね」平日ならお茶当番がコーヒーを淹れたり、お湯を沸かしたりするのですが、土曜日は出勤した者がそれぞれでやらなければなりません。会社のドアを開けると、エレベータ前に少し広いスペースがあり、右側が非常階段へと続くドア、左側がトイレと給湯室になっていました。給湯室に行くと、シンクには昨日誰かが使ったコーヒーカップや茶碗がそのまま山積みになっています。「何なのよ、これ。使いっ放しで置いてっちゃって」ミナミは電気ポットに水を入れ、電源を入れると、自分のコーヒーカップにインスタントコーヒーの粉を入れようとしました。ところがスプーンも、シンクの汚れ物の中に埋まっているのです。「は~、洗いますか」どうせお湯が沸くまで少し時間がかかるし、シンクを片付けてしまった方が、スッキリと気分良く仕事に取り掛かれる、そんな気持ちでミナミは片付け始めました。スポンジに洗剤を染み込ませて、ギュ、ギュッと握ると、きめ細かな泡がたち、ほんのりと柑橘系の香りが漂いました。 フリー写真素材 [Photolibrary]その時、エレベータが開き、誰かの足音が聞こえました。会社のドアが開く音がして、その足音も聞こえなくなったので、てっきりミナミは自分の他にも、誰か出勤してきたのだと思いました。「誰だろう?営業の人かな?そういや、筒井さんたちも今日来るって言ってたし」食器を洗い終える頃、ちょうどお湯も沸いたので、ミナミはお湯を注いだコーヒーカップを片手に、会社のドアを開けて、元気よくこう言ったのです。「お早うございま~す。コーヒーはドリップしてませんが、お湯は沸かしましたよ~」ところが会社の中はしんと静まり返り、誰の返事もありません。会社の中はミナミ一人で、他に誰の姿もないのです。「あっ!」この時になってようやく、ミナミは思い出しました。1ヶ月程前、同じ部署のアキが体験した不思議な話を。「この前、土曜出勤したときなんだけどね、まだ誰も来てなくて私一人だった時に、給湯室でお茶入れてて、エレベータが開いて誰か来たと思ったの、でも会社には誰もいなくて・・・。でもね、絶対空耳とかじゃないって、足音なんか、かなりハッキリ聞こえたもの」もしエレベータから降りた人が、非常階段の方へ行ったとしたら、足音はもっと短時間で消えるはずです。それに非常階段の入口の扉と会社のドアでは、開閉時には全く違う音がします。間違いなく足音は、会社のドアの中に消えていったのです。「アキの言ってたことは本当だったんだ・・・。あの話を聞いた時は、怖~い!とか言って、冗談半分に聞いてたのに・・・」ミナミはぞっとして鳥肌が立ちました。「どうしよう・・・」怖くなって自分のデスクにも戻れなくなっていたその時、営業の筒井さんが出勤してきました。ミナミが今あった話をすると、筒井さんは、以前ミナミがアキの話を聞いた時と同じように、「怖~」と言って、あまり本気にしていない様子でした。その日、ミナミは何とか仕事を終わらせました。そして帰宅後、すぐにアキに電話して今日の出来事を報告しました。「人の気配までリアルに感じたでしょ? 私も同じだったよ。そうそう、男の人の皮靴みたいな足音だった~」ミナミとアキは全く同じ体験をしたのです。その後、この不思議な現象が、再び起こることはもうありませんでした。ただ気になることが一つあります。後日、一人の占い師の女性がこの会社を訪れました。そして会社のドアの横の辺りを見つめて、こう言ったのです。「ごめんなさい、私は専門じゃないので何ともしようがないのですが、霊感が多少あって・・・。言い難いのですが、あそこに男性が一人立っていて、ずーっとこちらを見ているんです。ちょっと気になる感じなんですが・・・以前この辺りで亡くなられた方かな・・・」ミナミやアキが耳にしたあの足音は、この世を彷徨い続けている、その男性のものだったのでしょうか?(夏休み特別企画・実際にあった怖い話 第3話「彷徨える足音」おわり) この物語は実際にあったことをベースに書き起こした、 限りなくノンフィクションに近いフィクションです。 登場人物や団体名等、実際のものとは一切関係ありません。 無断転載・無断転用は頼まれたってしたくないやい!と思われますが念のため、 無断転載・無断転用はご遠慮ください。 ○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○.。.:・°○ いかがでしたか? 怖っ!と感じてくださった方も、 そんなでもないかな~と思った方も、念のため(?!) ぽちっと3つのバナーを、クリックしてお清めください?! お盆休み疲れで、どうにも気が抜けちゃっている私です。コメントのお返事や応援のお礼、さらには更新のお知らせも遅れてしまって、申し訳ございません。m(__)m順次、皆さまのところにもお邪魔させていただきますので、どうぞ首を長くせずにお待ちください。あ、行燈の油なんかも舐めないでお待ちくださいね。くれぐれも。(^_^;)ちなみに今回の物語の中に出てきたビル、今もそのまま存在しています~。Googleマップのストリートビューでも、見ることができます。でも実際の場所については秘密にさせておいてくださいね。それにしても「poincare」では「私は~」「僕は~」の一人称で書いているので、今回、三人称の文章を書くのはとても新鮮でした。というか、どうやって書けばいいのか、最初かなり戸惑っちゃいましたよ。笑とりあず怖い話は今回で(完)ということで。もう一つ、オマケの“実際にあった不気味(?)な話”を次にUPして週末には「poincare」に戻りたいと思います。今日もありがとうございました ブログ管理人・ぽあんかれ