買い物
海岸通のスーパーへ、例によって買い物です。ついでに港の水辺まで立ち寄りました。グレーの鷺が埠頭に立っていて、かなたの紅葉を背にしています。どんより思い空を反映して、波立つ海面はシルバーと言う感じです。釣り人一人、見守る人一人、こちらも絵になります。買い物を済ませて、出口に近づいた時、前を行くお姉さんと言うには歳が少しばかり、微妙な年恰好、その女性が、敷物(つまりマットです)ハイヒールサンダルのかかとで引っ掛け、持ち上がったまま二つ折りになりました。茶髪で黒タイツに短パンと言ういでたちのじょせい、立ち居振る舞いによっては優雅にも???残念賞でした。再び、今度は意識的にマットを足蹴にし、しかも元に完全に戻らない状態で立ち去りました。手で元に復帰させる?と言う期待は、二重に裏切られました。折角、一番この店で対応のいいお姉さん(こちらも年齢的には?ですが、何時も対応がいいからお姉さんです、しかも母の旧姓と同じですから・・・)と言葉を交わした直後なのに~~~!そういうことで、忘れていた事を思い出しました。スーパーへ行く前に、郵便局へ立ち寄りました。はがきを投函したいけれど、切手がないので、買うためです。局員は3名、夫々立て込んでいて、といってもどう見ても対応で手一杯と言う客の数ではないのですが、切手販売窓口に長く立たされっぱなし、ようやく気付いた一人は不運でした。ミヒャエルに「対応が遅すぎる、せめて声をかけて待たせてくれ!」と言われるはめに、皆一生懸命に遣っているんでしょうけどね。それで、ついでに思い出しました。昨晩、カラオケ店へ行ったのです。夫婦で交代制を取っているようなのですが、その時間たまたま、高齢のマスターが担当でした。女性客一人だけで、その客はマスターと歌をうたうべくステージに上がっておりました。どうやら、デュエット曲で覚えたい物があって、それを教えられている風でした。ちらりとこちらに視線を送ったまま何も言わぬマスター、最初は客二人が歌っていると思ったほどです。そのまま無言で女性客と付き合っています、曲が終わってステージを降りたマスター、黙ってミヒャエルの前を通り過ぎました。その後注文を取りに来ましたが、結局「いらっしゃいませ!」の一言はありませんでした。公務員出身の朴訥なおじさんだと分かりました。多くの場合、長く馴染んだ職業の殻をその侭背負い込んで、転職したのに言動が変身できないままと言う人が居る者です。歌も、何を歌っても同じ、そういう人のあり勝ちなパターンです。ミヒャエルはと言えば、つまりは、カメレオンのような奴なもので、場を大切にもし、直ぐに場に馴染みます。そんな者の側から見ると、とても奇妙なのですが、不器用な人は意外に多いものです。そんなんだったら接客業など遣らねばよかろうものを!と思うのは、ミヒャエルだけかもしれません。シルビアにポロリとその話をしますと、よくもまあ、そんな店へ出入りするものですねえ!と返されました。いや全くその通り。自分が客商売に従事していた時は、お客第一だったのにねえ、とも。ミヒャエルだってそうでした。通常なら、そんな態度に出会って、チケットまで改めて買い求めるなど絶対しない、そして二度と行かない、何ですが、まあどこの店も、どんぐりの背比べでもあり、このマスターの朴訥さを買うわけです。客が去って、一人になったミヒャエルに、頼みもしないのに、人に話さないような、内輪の話を、マスターが長い時間掛けて語ったのは、その直後でした。客一人では証明の費用だって馬鹿にならない、疲れるのに対応させるのもかわいそう、自分の経験がそうさせるのですが、ストレスで遣られたらしいと言う左顔面麻痺を抱えてのマスター、なんだか同情的になっているミヒャエルでした。客商売をしている当時、ミヒャエルもシルビアも、そんな話をして大丈夫なの?と言う重要な個人情報に関わる話を、よく客からされた物でした。立場に逆になって、仕事を終えた後は、どうも見せ側からそんなアポローチの絶えない私たち二人の周辺なので、驚きもしませんが、よほど話したくなってしまう人間どものようです。