「サイボーグ009(1966)~42年ぶりの再会」
「サイボーグ009」のDVDをレンタルビデオ店で見つけました。 アニメ「サイボーグ009」は、実写版「大忍術映画ワタリ」と2本立てで1966年の夏休みに公開されました。なんと、初めて女の子と映画を見に行ったのです。小学生にして、映画でデート?いえいえ、残念ながら保護者同伴でした。映画が終わってから、スパゲティを食べたっけ。その子は、もう記憶にないでしょう。こちらは、それだけ映画、それもヒーローもの、特撮関係にこだわりがあるので、覚えているのです。 「サイボーグ009」とは40年以上の時を経ての再会です。もし、見つけたのがDVDではなく、10年以上前に販売されたビデオテープだったら、見なかったでしょう。画像の荒さが気になってしまうので。その点、DVDはいいです。古い作品でもきれいな画像で、当時の印象を損ないません。あの女の子に今会ったとしたら……、会わない方がいいでしょう。 「サイボーグ009」は石森章太郎(1985年「石ノ森」に改名)の原作です。同じく石森の仮面ライダーより前の作品ですが、似通った設定が見られます。カーレーサー島村ジョーは、レース中に大事故に会い、救急車に乗せられます。運ばれていった先が悪の組織ブラックゴースト団の秘密基地。そこで島村ジョーは、手術によりサイボーグ戦士にされてしまいます。一方の仮面ライダーでは、オートレーサー(で優秀な科学者)の本郷猛が悪の組織ショッカーに拉致され、改造人間にされてしまいます。ね、似ているでしょ。 ふたつは、同じ石森であることと同時に、「サイボーグ009」は東映動画、「仮面ライダー」は東映製作の特撮ヒーロー番組です。同じ会社なわけ。 「サイボーグ009」の原作マンガでは、少年鑑別所を脱走した島村ジョーが、ブラックゴースト団に捕まり、サイボーグにされてしまいます。原作とアニメ映画は、島村ジョーの設定が異なるのです。これは、夏休みの子供向けアニメということで、脱走犯というダークなイメージから、花形カーレーサーに変えられたのです。 同じ原作者、同じ映画会社ということで、「サイボーグ009」における原作からアニメへの設定の変更は、「仮面ライダー」をつくる際に、流用(?)されたのではないでしょうか。 また、今回見ていて気付いたのは、ヘヤースタイルです。マンガ原作の方は、片目が隠れるような髪型をしています。それに比べて、アニメ版はすっきり額や両目を出しています。もう一つ、マンガ原作の方では、確かジョーの髪の色について「あなたは、島村という日本名ながら、髪が栗色ね」と003(だった思うけど、ちがうかもしれない)が指摘しています。ジョーはハーフなのです。これら原作マンガの設定は、009=ジョーを影のあるキャラクターにしています。石森章太郎は、他のマンガでも、影のあるヒーローを描いていました。その点、アニメ版では、009のコスチュームも純白にして、明るさが際立たせてありました。 子供の頃は、映画を見て、そんな009の違いには気が付きませんでした。 けれど、ブラックゴースト団が死の商人と呼ばれ、戦争で利益を上げていることに大きなショックを受けました。世界征服を企むより、戦争を儲けの手段にするなんて、最悪の唾棄すべき悪党です。さらに、ブラックゴースト団の首領が、なんと電子頭脳であったとの展開も震度7以上の衝撃でした。人間でないものが悪の組織を牛耳っていたこと、しかし、人間の欲望によって電子頭脳が動いていたこと、これには打ち震えました。子供の視点から見ると、大スクリーンに映る人工頭脳は、圧倒的な迫力がありました。 ちなみに009は“ゼロゼロナイン”と発音します。ダブルオーナインではないんです。昔本家の007も“ゼロゼロセブン”と呼ばれていましたが、今じゃ“ダブルオーセブン”です。 サイボーグ戦士の方は、“ゼロゼロワン”から“ゼロゼロナイン”までいます。ところが、映画の中で、“ゼロゼロセブン”が見得を切る場面で、自分のことを“ダブルオーセブン”と言っているのです。これには驚きました、単純なことですが。 さて、21世紀の現在、「サイボーグ009」は、アメリカでいえば「X-メン(2000)」や「ファンタスティック・フォー[超能力ユニット](2005)」にあたると思います。その二つも、「サイボーグ009」も、様々な特殊能力をもった者が集まって、チームで悪と闘います。 「X-メン」「F4」ともに、シリーズ化されています。その第1作目は、なんだかかったるい展開でした。アメコミからの映画化は、たいていいかにして特殊能力を得て、それに馴染み、使いこなすようにんってスーパーヒーローとして活躍するまでを紹介します。あるいはどうやってチームが作られたか、新メンバーが加入されたかなどが描かれます。その過程が、まどろっこしいのです。 しかし、「サイボーグ009」は、40年以上前のアニメなのに、とてもスピーディでした。島村ジョーは、改造手術を受けて、目が覚めるやいなや、すぐに「テストだ」と、戦闘機が襲ってきたのです。そして、島村ジョーは、自分の未知なる力を使いこなして戦闘機を撃破します。また、サイボーグ戦隊をつくったギルモア博士が「009は、みんなのリーダーだ」で、彼の役割は即座に決定しました。 リアルといえばアメリカ映画の方がリアルでしょう。マンガ的といえば「サイボーグ009」の方がご都合主義です。けれど、昔のアニメである「サイボーグ009」の方がテンポがいいように感じました。これは、好みの問題でしょうか。 ひとつに「サイボーグ009」の上映時間は、64分です。その短い時間の中で、話を進めなければならない。とすると、本来説明が必要な部分は、子供向けアニメということで、省略してしまったのでしょう。サイボーグ戦士になったばかりの009が、いつのまにか秘密兵器をもっている場面もありました。 それから、サイボーグ戦士が9人もいると、64分の中では、うまく活躍させられなかったようです。後半、ブラックゴースト団の秘密基地へ乗り込むのは4人の戦士です。あとは、とりあえずお留守番でした。でも、さすがにラストでは残った5人とギルモア博士が助けに現れましたが。 劇場版「サイボーグ009」には、正式な続編として「サイボーグ009怪獣戦争(1967)」があります。そして、後に「サイボーグ009超銀河伝説(1980)」もつくられました。この2本については未見ですなのですが、レンタルビデオ店の同じ棚に並んでいました。この機会に見たいと思います。 最後に実写版「サイボーグ009」、これはテレビにも映画にも存在しません。今の映像技術なら、きっとすばらしい実写版「サイボーグ009」ができると思います。是非、実写版「サイボーグ009」が見たい。生きているうちに。人気blogランキングに参加中。クリックしてね。ご協力、よろしくお願いします。