座して眺める港が最高/気仙沼ホテル望洋
急に港町が恋しくなって気仙沼に一泊することにしました。 気分は、どうしても石巻ではなく、気仙沼なのでした。 宿は、ホテル望洋。 気仙沼を最後に訪れたのはいつだったか記憶にありませんが、こんなに大きな街だったかと、ちょっと驚きました。 クルマは海の市、風待ちの港などの見所を通り過ぎ、そろそろか・・と思った瞬間、ホテルの看板が交差点の正面に目に入りました。 信号を渡ってから鋭く右カーブをする狭い坂道。 一瞬進入するのをためらいました。どうやら一方通行になっている模様で立ち往生はしないで済みました。 ほどなく宿に着き、「歓迎」の札には同窓会の集まりが何件か入っていましたが、午後3時のこと、宿はひっそり静まり返っています。 築30年といったところか、ちとくたびれたコンクリートの塊といった佇まいです。 しかし通された部屋は一人で広すぎるくらいで、またそこからは「望洋」の名にふさわしく、気仙沼湾を一望できるすばらしい眺めがありました。 港が深く入り組んだ、その最奥に近いところに立地しているので、大海原ではなく「湾景」です。 広々とした海の風景が私たちの心の鬱屈をさーっと吹き飛ばしてくれるとすれば、こちらは造船所や観光汽船の曳航などの海の生活風景が、心の中に新しい心象や物語をじわじわと形成して、やがていつしか日頃のウサを押しのけている、そんな違いがあるだろうと思いました。 さっそく気仙沼の街にくり出します(というほど歩き回ったわけでもないですが)。 気仙沼市内湾には、「風待ち通り」というステキな名前を持つ通りがあり、昭和4年の大火以後に一斉に建てられた昭和初期の建物が数多く残っています。 この名前は、明治期までの帆船時代、北西風を待ち、出帆していた事によりますが、この名前の素晴らしさに着目して広めてきた人々のセンスにも敬意を表したいもの。 この不思議な建物が建ち並ぶ光景とあわせて、造船所のクレーンや魚加工工場がひしめき合う対岸、停泊する漁船の群れ、美しく輝くさざ波などを代わる代わる眺めながら歩くのは本当に楽しいものです。 さらに気をつけて歩けば、この町の変形敷地に建つ変形な建物という特異さに注目した歩き方もできたのですが、このことはまた、次の機会に追究したいと思います。「建物は菱形の平面を持ち、瓦も斜めに葺かれ、桁にかかるセガイ、垂木も斜めで且つ、菱垂木、柱の断面形状も菱形と特異性が見られる。菱型変形、扇型辺形、末広がり変型など。」(風待ち研究会のHPより引用。http://www.aitaii.com/kazamachi/torikumi07-6-8.pdf) 気仙沼という街がすっかり気に入ってしまいました。 さまざまな船が行きかう元気な浜の街の香りと、昭和初期の風情。 そこそこ都会的。 当然、サカナは新鮮、種類が豊富です。