13デイズ
ポニーキャニオン 13デイズ~コレクターズエディション(2枚組)~核戦争が発生し人類が滅亡する時までの時間を比喩的に表現する「核時計」、それが最も「午前零時」に近づいたのが1962年10月14日から始まる「13DAYS」であったといわれる。 キューバを偵察中のアメリカU2機(ロックバンドではない)がソ連製の核弾頭ミサイルを発見したとの報告が大統領公邸に入った。発射されればワシントンD.C.を北限とするアメリカ南東部一円が、5分以内に壊滅する脅威が生まれたのだ。まさにいきなり咽元に突きつけられた匕首であった。それがオペレーショナル(制御可能)な状態に整備されるまで、あとわずか・・。こうした状況下におかれた時の大統領は、JOHN F KENEDY(BRUCE GREENWOOD)。 この映画は、ギリギリまで「国民の安全にとって最良の判断は何か」を見出そうと苦闘する大統領と、弟のRBERT KENEDY(STEVEN CULP)、そして親友にして特別補佐官のKENNY O'DONNEL(KEVIN COSTNER)のドラマである。 各省トップを召集しての会議では、軍部がこのときとばかりに、空爆についでのキューバ侵攻こそベスト・オプションであると力説する。 しかし事態はそうシンプルではない。東西間にはもうひとつの火薬庫が存在した。ベルリンである。 アメリカがキューバを叩けば、ベルリンで東西陣営が直接衝突し、核戦争へと進まざるを得なくなる。 ソ連の書記長、フルシショフも、決して戦争開始を望んでいるわけではなかった。 彼の目的はあくまで攻撃、侵攻に対する報復措置の確保。 キューバへの侵攻を阻止したという名目さえ立てば、国内政治的に問題がなければ、ミサイル撤去というカードは当然準備されていたのだった。 しかしアメリカの軍部は大統領からの委任の範囲で、ソ連への挑発を繰り返すのであった。 こういうときに最も重要なのは、「お互いの思惑に対する推測の正確さ」なのだ。 ひとつ間違えば、核戦争、人類滅亡。この局面では、むしろそちらに転がる可能性のほうがはるかに高かった。お互いに、相手の政治的立場や思考回路のクセまでをも読みながらの緻密なネゴシエーションが展開される・・。 ケネディだろうがオドネルだろうがマクナマラだろうが自分がもしこういう立場に立たされたら、絶対ダメ。倒れるかキレるか・・(笑)。 この映画のテーマは、「平和維持ということはきれいごとではない」ということ、「権力の座のハードさ」あたりだろうか。アメリカ人のメンタリティにも少し切り込んでいる感じもある。ところどころに出てくる「weak(弱い)」という言葉。これが一番言われたくない言葉のようだ。 脚本も、画面の迫力も演技も映画トーシロの私には申し分なく写ったのだが、マニアの方からみるとまた違うのだろうか。私はDVDをレンタルした後、コレクターズエディションを買ってしまった。 このエディションにはメイキングのみならず当事の政治・軍事情勢がわかるよう貴重なインタビューが紹介されている。 今、こうしてフツーに生活していることが奇跡のようなことなのかもしれない、と誰もが実感するだろう。<要チェックのセリフ>□ケネディ、空爆を肉薄する軍部と・・空軍エアフォース・チーフがケネディに詰め寄る。 You're in a pretty bad fix. あなたは窮地に立っているのですケネディはゆっくりと微笑みながら切り返す。 Maybe you haven't noticed you're in it with me. きみも一緒だが気がつかないようだね 私はこの場面ぞくっとした。こういう究極の場面でゆったりこう切り返せる大統領の頭脳と胆力に。□緊急事態を全米国民に訴えかける数分前。ケネディ: When I woke up,I just somehow I'd forgotten that all this had happened,you know? then of course I remembered,and,I just wished for a second somebody else was President. 目が覚めたとき、このことを忘れていた。もちろんすぐ思い出したが、そのときほんの一瞬、大統領が私でなかったら、と思ってしまったよ・・。 大事な場面を前に恐ろしくテンパっている大統領をみてオドネル補佐官はこりゃいかん!と察知したのだろう。別室にムリに引き入れ、大統領が自らを奮いたたせるようリードしていくのだ。 そこはDVDでチェックしましょう。□海上封鎖のニラメッコ局面で米海軍が挑発を始めた局面で、マクナマラのキレ様が凄い。おそらくこの映画でのハイライト。余談だがマクナマラ役のDYlan Bakerが終始、アメリカのトップエリートのスマート(頭がキレること)を体現していて、魅力たっぷりだ。 さてここでの名言。This isn't a block kade!This is a language-a new vocabulary which the world has never seen.This is President Kennedy communicating-with Secretary Khurushchev!何も分かってないなこれは「封鎖」ではない!「言語」なんだ!世界がこれまでに知らない語彙なんだ!これは大統領がフルシショフと会話しているんだよ!・・ああ痺れますね。□これもハイライトのひとつ。ロバート・ケネディが対戦開始前夜、一縷の望みをかけて中米大使に最後の交渉に挑む。ここでもロバート、かなりテンパっている。オドネル、またもや彼を元気づける言葉を。ロバート:I hate being called the brilliant one. the ruthuless one.The guy everybody's afraid of.I'm not so smart,you know? I'm not so ruthless.みんな僕のことを「頭のいいヤツ」と呼ぶ。「非情」ともね。みんな僕を恐れている。オドネル:Well,you're right about the smart part.There's nobody else I'd rather have going in the there than you.Nobody else I'd trust Hellen and the kids lives to.確かに頭はよくないな。しかし俺の家族の命を預けられるのはお前しかいないんだよ。この殺し文句・・。オドネル特別補佐官は、カウンセリングの名手でもあったに違いない。