平泉の旅
今年、実家の父が古希を迎えました。患っていた病気が快癒したこともあり、色々なお祝いを兼ねて(抱き合わせにしてごめんなさい、という話もありますが・汗)、岩手県の平泉へ一緒に出かけてきました。東北新幹線の中からきれいに見えた富士山。幸先いいスタート!6月に世界遺産に指定されて、注目を集めている平泉。一関から夫にレンタカーを運転してもらい、まずは中尊寺を目指しました。 木立の中に佇む金色堂。源義経が非業の最期を遂げた地でもある、平泉。説明書を読みつつ、あぁここでタッキーが…ここで高橋英樹が…と、大河ドラマのレベルでしか日本史を把握していない私に、日本史好きの夫は呆れ顔でした…(来年の大河ドラマは、「ちりとてちん」の藤本有紀さんの脚本に期待!)。土曜日の夜は、皆既月食を観察された方も多かったと思います。事前にそんなことはまったく想定していなかったのですが、偶然のめぐり合わせで、なんと旅館の露天風呂から天体ショーを見上げる、という最高の経験をしました。宿は「奥州平泉温泉 しづか亭」。「クマ出没」の看板がある山道をカーナビを頼りに向かった時は、映画「ステキな金縛り」の落ち武者の宿を思い出してしまったのですが(迷って泣きながら電話をしてきたお客さまもいたとか)、温泉もお料理もおもてなしも大満足でした。じわじわと欠けていき、やがてぼんやりと赤く浮かび上がるお月様は、忘れられない思い出です。そんな風に夜空は晴れていたのに、一夜明けたら窓の外は白い雪!宿を出る頃には晴れ間がさしていましたが、びっくりしました。奥州藤原氏の遺したもう一つの名所、毛越寺へ。 平泉は、世界遺産のリストに「平泉 - 仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」という名称で登録されています。この浄土式庭園は平安期のスタイルをそのまま残しているそうで、春にはこの場所で「曲水の宴」が再現されるのだそうです。 「作庭記」という、日本最古の庭園書を基に作られたとか。ガーデニングのマニュアルがあったのね…私は、庭園の一角で出会った、この大きなお地蔵さまに強く心惹かれました。木漏れ日を受けて、柔和に微笑むその表情の温かさ。なんて素敵な表情でしょう。 「大丈夫だよ。」と励ます声を、心で聴いた気がしました。この日、12月11日で、あの震災から9ケ月目の節目を迎えたことになります。毎月14時46分には、鎮魂の鐘が鳴り響いているそうです。今回訪れた場所は、津波に襲われた沿岸部に比べれば、目に見える震災の傷跡は少ない地域。それでも5日間は電気が来なかったこと、4月の大余震でも大きな被害があったこと…断片ではありますが、お話を色々伺いました。あの日はねぇ、本当に寒かったの。お寺の売店で、剥いていた胡桃を「ちょっとつまみなさい」と食べさせてくれた店番のおばさんが、しみじみとつぶやいた言葉の響きが、帰りの車中でもずっと残っていました。 【おまけ】最後のお昼はこちら!一つひとつのお塗りの椀がきれいでした。