『若者が希望を持てる社会を』
近年、若者の間にフリーターが増え続けている。内閣府によると、この10年で倍増し、2001年には417万人にまで達した。その上で見逃せないのが、フリーターとも、失業者とも違う、働く意欲のない「ニート」と呼ばれる若者無業者、約85万人の存在である。 ニートがなぜ就職活動をしないのか。一番多い理由は、「人づきあいなど会社生活をうまくやっていける自信がないから」という。増え続ける若年無業者 東京大学の玄田有史助教授は『ニート』(幻冬舎)で、努力すればなんとかなるという実感を自分で勝ちとる大切さを強調している。その意味で、1998年に兵庫県で始まった「地域に学ぶトライやる・ウィーク」は示唆に富む。 すべての公立中学校で、中学2年生が5日間の職場体験を行っている。学校、家庭、地域社会が連携して推進してきた。評価検証委員会の報告には生徒の声が紹介されている。「人の役に立つことでうれしさやよろこびを感じ、自分自身が大きくなった」「人のために苦労したり、みんなで一緒に汗を流す体験を通して、人に喜んでもらえるうれしさを知った」 不登校だった生徒の半数が5日間すべて参加し、そのうち3人に1人が以前より登校日が増えたという。この取り組みが、一定の成果を上げている理由について、玄田助教授は「大人が子どもたちに向かい合うことに『本気』になっていることだ」と語っている。 牧口常三郎初代会長が100年前に提唱した、”地域社会や生活環境が子どもや若い人々の学習のための活動場所になる”という教育論が現実のものとなりつつある。 深刻化する若年者雇用を改善するため、政府は昨年度から若者と仕事の出会いを演出する事情をスタートさせた。就職支援のためのサービスを提供するジョブカフェや企業が若者を最大3カ月試行的に雇い、両者の要望が合致すれば本採用となるトライアル雇用制度の効果が現れ始めている。周囲の協力関係が不可欠 今年度は「若者自立塾」や、兵庫県の取り組みを全国に広げる「キャリア・スタート・ウィーク」が実施される。 アメリカ・インタナショナル大学のデイル・ベゼル教授は語る。「牧口が示したような、家庭、共同体、学校の三者間の教育的な協力関係を構築する方法を発想し、追求していくことである」就業支援にとどまらず、若者をはぐくむ協力の輪を広げる中で、社会全体が希望に満ちていくに違いない。人気blogランキング参加中