shibaの編集剣士ッ!

[映画＋亜細亜電影倶楽部] カテゴリの記事

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• ソフィーの選択　に涙・・

  弱くてもろくて、誰にも知られずにひとりで痛みを抱えている女性がいた。がりがりにやせたソフィー。彼女が図書館で恋人となるネイサンと初めて出会うシーンが美しい。映画『ソフィーの選択』の中で、この図書館での出会いシーンが一番好きだ。ソフィーのなかの人間らしいあったかさが再び浮かびあがってくる一瞬を、繊細に描いていて、好きなのだ。この映画を初めてみたのはたしか、高校生の時・・だったように覚えている。劇場で見たのではなく、テレビかビデオで見た。当時はみても全然理解できなかった。どういう映画、という要約さえできないほど。そしてずっと見る機会がなかった。＜それからはや20年近く・・。おっそろしい＞忘れていた映画だった。が、ここのところＣＳで何度もかかるのでいきおい眺めるようにみていた。偶然だった。胸をつかれ、泣きに泣いた。一度みてえっ！？と思い、それから続いて２回みた。要約すると、ソフィー(メリル・ストリープ。この作品の演技でアカデミー主演女優賞を受賞）というおそらく30代くらいの女性がブルックリンのアパートに製薬会社で働く研究者ネイサン(ケビン・クライン）と住んでいた。そのアパートに南部出身の若者スティンゴ（あの「アリー」の弁護士事務所の経営者ジョン!ピーター・マクニコル。カレは『ビーン』でも良かった!!）が越してくる。 スティンゴは南部の裕福な家の出身だが、小説家になりたくてニューヨークに出てきた。そしてなぜかブルックリンのこの下宿に住み始めたのだ。スティンゴは、激しい喧嘩をした後、愛し合うソフィーとネイサンのカップルに興味を持ち、三人は仲良くなる。スティンゴはソフィーに好意を持っているが、ソフィーは「ザ・ＤＶ男」のネイサンにひきつけられている。スティンゴはやがて、ソフィーがポーランドからの移民で、アウシュビッツの生き残り。ネイサンは統合失調症で、製薬会社で働いているが本人が言っているような研究員ではないということを知る。ネイサンのソフィーへの妄想と暴力が激しくなるなか、スティンゴとソフィーはある日命のキケンを感じて、ふたりで逃亡する。その逃亡先で、ソフィーとスティンゴは結ばれる。彼はソフィーに結婚をせまるが、ソフィーはこばんむ。その理由は・・なぜ彼女がアウシュビッツで生き残ることができたのかということと絡んでいて、クライマックスで語られる。ソフィーはネイサンのもとに帰る。そして二人は心中。スティンゴは、ブルックリンをあとにする・・。時代は1947年。人々が戦争後の新しい世界を生き抜こうとしている時。生き疲れて命を落とした人たち、敗れた人たちの物語だ。ソフィーの行動は、なんというか、追い詰められた生き物がもがきころび苦しみながらうごめく姿を思わせる。彼女はとても不器用な人だ。自分にうそがつけない。弱くて美しいごく普通の感性を持った女性だ。もし彼女がナチスドイツの支配下にあったポーランドに生まれなかったら流転の人生を歩まずに済んだのだろうか。・・私は戦争という暴力に翻弄されて、ずたずたに傷つけられたソフィーの人生を思って泣いた。生きる価値がない、と何度も何度も自分を責めたソフィーの夜を思って、胸が張り裂けそうになった。そんな狂いに狂った時の果てで生きながらえながらソフィーは、病をかかえたネイサンをすがりつくように愛し、その孤独に寄り添っていた。そのことが哀しくて。でも人間ってどんなに傷つけられても、踏みにじられても、きっかけがあれば人によりそい愛することができるんだね・・と、ソフィー、最後の最後で悪かったようでよかったね、と語りかけたくなった。ソフィーは、もう私の中の「忘れられないヒロイン」だ。原作も読んでみたい。じっくり一日少しずつ読んでみたい。

  2006.03.08

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  静かな週末

  1月の終わりの静かな週末。朝から、韓国映画「スカーレット・レター」を見ていたら、イ・ウンジュがあまりに美しくて、可哀想で、堪らなくなった。この週末には、今週やり残した仕事がたくさんあり、片付けていくつもりなのだけれど、実は金曜日の夜から調子がでなくて、「やる気」がでるまでのんびり過ごすことに・・。やれやれ。結局「スカーレット・レター」をそのまま２度見てしまった。なぜ2度もみてしまったかというと、ひとつにはイ・ウンジュの演技の一貫性を確認していた。彼女はまさにこの役を生き切った、としかいいようのない役になりきり。観客にとっておかしな、演技に迷いのあるような表情はいっさいなく、こわいくらいに的確に役柄の感情を表現・・。イ・ウンジュが出演した「パンジージャンプする」「永遠の片想い」を最近みた。イ・ウンジュは、確かにきれいで魅力的ではかなげですばらしいのだけれど、「スカーレット・・」での役に憑かれたような表現ではなかったように思う。なぜ、この作品でこんなレベルにまでいきなり到達してしまったのか、不思議でならず・・・。もうひとつは、この映画の展開の中にある「女性同士の関係」についてドラマ的になぜそのかせが必要なのかを、考えていた。みているうちに、昨年11月に訪れた韓国の街の風景が浮かんできた。97年から99年、私は韓国によく旅行に行き、そしていろんな街を訪ねた。そこでよくみかけたのは、女子学生の腕組。女の子たちはいつも二人組。腕をくみあい、身体を密着してあるいている。そして私が覚えているかぎり制服をきていたような・・。2005年、女子学生の腕組みは激減。さらにカジュアルな私服をまとい、今度は同じ年頃(か少し上)の男の子の腕にぶらさがっている。そして二人ではなく、三人から四人のグループ行動。日本の女の子たちのように。女の子たちになんの変化があったのでしょ? また、これは私の思い過ごしかもしれず・・。ただ、街の光景が明らかに変わってみえたことは確かで。日本人的感覚では、なぜに女同士?の関係をここで持ち出す、という突っ込みがあると思う。ただ、韓国の光景を思い返すと、そりゃあ、思春期にあんなに密着して特定の女子だけでつるんでいて・・、基本的に上昇志向の強い国民性があり、教育熱も高く・・キリスト教信者が多い、男子はある年齢で兵役・・とという条件が加われば、いろいろあるかも、と妙に納得してしまうのです。あまりに気持ちが乗り移って、ただでさえ疲れている気持ちがさらに沈んでしまった。。気分をかえるために今度は「ロング・エンゲージメント」を。映画の美術、フランス語の台詞、そしてハリウッド大物女優のからだをはった突然の出演・・。映画好きにとっては、映画好きの好みのおもちゃばかり入った箱をひっくりかえしたような、素敵な映画。切ない映画なのだけれど、心が少しだけあたたかくなった。

  2006.01.28

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  誰も知らない　と　羽田空港

  東京に戻って、仕事始めの一日は、あっという間に夜になった。やることは一杯あるけど、とにかく休もう。くたくた～。不思議だけれど、北海道の一日は長く、東京での一日は短く感じられる。今日もあっというまに日が暮れた。やりたいことはたくさんあるのに、身体がまだ元の生活のリズムになじんでない。今日はビデオで「ロスト・イン・トランスレーション」と「誰も知らない」を見た。「ロスト・イン・トランスレーション」はなにか感慨があって選んだわけではなく、なんとなく眺めていた。「誰も知らない」を観てからというもの、羽田空港への行き・帰りに、この映画、物語を思い出さないことがない。それで、観た。羽田空港を行き来しながら、この映画について思っていたことはこんなことだ。「羽田空港」は明(「誰も知らない」で俳優・柳楽くんが演じた役柄)にとって、「唯一父を感じる場所だった」。・お父さんは羽田で働いていた（と母親）。一度ふたりで父親に会いに羽田に行ったらしい（明は覚えていないと否定）・いつかモノレールに乗って羽田に行こう（明が母親を待ち続ける妹に語りかける）・そしてふたたび羽田へ羽田は東京の「異界」への入り口であり、国際空港なので、国境でもある。明がその場所に父の姿をもとめ、心のどこかに「羽田空港」を置いていたのだろう、と思うと切ない。ほとんどの人にとって、羽田空港は通過地点にすぎない。そこに止まるなんてまず考えない。しかし、明にとって、そこは特別な港だったのだ。どこにも行くことのできない明は、父親と、小さなアパートや街からの旅立ちを夢見て、「羽田へ行こう」をよりどころにしていたような気がする。映画のラストで。聞こえるはずがない飛行機の飛び立つ音に、明は立ちつくす。妹・ゆきちゃんの事件とともに終わったのは、「家族」のあこがれや将来への淡い希望。見上げた弟のまなざしは、今目の前にある「水をくみにいかなければいけない現実」。明のような悲劇を、二度と生んではいけない、と思う。どんな子供で、どんな境遇であっても、生きようとする姿を、制止し、さまたげ阻害することは基本的に悪。彼らの不幸は、両親のせいだけではない。狭くて、優柔不断で、優しいから冷たい、私たちが生きるこの場所が生んだのだ・・・胸が痛かった。

  2006.01.07

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  香港映画で、雑念を吹っ飛ばす

  今週は緊張を伴うワークシーンが多く〈でも喜びも結構あった〉、また夜も長々と働きづくめ。そんなこんなで、気分が暗い方向に落ちかけていたので、今夜はアジアのノリノリの映画を見ようと、新宿にでかけました。偶然にたまたま入った映画館で、私にとっては懐かしい顔ぶれのケリー・チャンが主演している香港映画をみました。「ブレイキング・ニュース」。http://www.breakingnews.jp/上映ぎりぎりで入ったので、久々に一番前の席でした。見上げながら見るスクリーンからは、激しい銃撃の音やアクションや・・。めまぐるしい展開にびびりまくりでした。内容は、香港警察×強盗殺人犯の捕物帖。見終わった頃には頭の中は真っ白にクリーニング完了、まさに緊迫の展開にボー然という感じでした。さすが、香港アクション映画。演出力はすさまじかった。限定された舞台、内容で１時間半ひきつけるっていうのは、すごい。いいなあ、と思ったショットは、数知れず。特にくいいるように見たのは、●犯人が立てこもった一室でつくる中華料理の調理シーン。●ケリーのどアップが美しい、犯人と警察司令部とのチャットシーン。ひとこと、辛口の感想をつけるなら、ケリー・チャンの演じた司令官の役柄がいまいち。その人となりが芝居から感じられず、女優があまりにも不釣り合いに美しいこともあってお飾り人形みたいに見えてしまったこと。・・え?そもそもそういう役柄・・??映画を見終わった後、外に出ると、新宿駅までの道は、忘年会らしき人の群れでごった返していて。かなり酒臭いが、私にとっては、「ああ、東京の年末なのね」、というなんだか奇妙に懐かしく、暖かい光景にも感じたり。今年もあと残すところ２２日というわけか、と。名残惜しいような、嬉しいような。微妙な気持ちを抱えて、ぼんやりと雑踏の中を歩いてました。関連作:世界の涯てにケリー・チャンの名前を覚えたのは、この作品がきっかけ。しかし内容はほとんど忘れてしまった。覚えているのは、やたら画面が美しかったこと。ケリーさんと金城くんはかなり絵になる、華やかな組み合わせであったこと。

  2005.12.09

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  韓国映画と静かな東京の休日

  ここのところ、週末は福岡、北海道、ソウル、富士・・と旅烏でした。久しぶりの東京の週末を静かに過ごしています。今日はコリアンシネマデーと決めこみ、日比谷で「親切なクムジャさん」、そこから移動して「私の頭の中の消しゴム」を鑑賞しました。至福の時間でした。「親切なクムジャさん」、最高でした。「オールド・ボーイ」がまた見たくなりました。ちなみに昨年のナンバー１映画はダントツ、「誰も知らない」でしたが、今年は・・、難しいです。「スカーレット・レター」も良かったけど、この「親切なクムジャさん」の自由奔放なストーリーテーリング、画面使い、端正な展開。まさに魅了されました。女優イ・ヨンエの演技がまたうまいですね。本当に、クムジャさんが実在するように思えました。「オールド・ボーイ」のユ・ジテ、すばらしい特別友情出演でした。大好きなチェ・ミンシクもなんていうか、怪演でした。あんなに人間味たっぷりの味のある顔の俳優が、あんな嫌な不気味な役を淡々とやりとげるのが「役者だのうー」というひたすら感心しました。「私の頭の中の消しゴム」では、後半かなり泣かされました。２０代のまだ若い人なのに、頭の中が痴呆症の老人と同様になってしまう〈つまり行動も・・〉って、老人のそれより哀しく・・。前半は安っぽいトレンディドラマそのもので、それはそれでみていて別の意味で辛かったのですが、後半の悲しみを思うと、前半はあれだけ脳天気でも仕方ないか・・と。帰り道、夜風に吹かれてゆっくりゆっくり歩いていると、ふいに、背中が軽くなって、今自分、幸せなんだなあ、と実感がわいてきました。その幸せをまっすぐに受け止めて、他の誰とも比べない、このまま自分らしい生き方をさりげなく貫いていけばいいんだ、そんなことを思ってました。

  2005.12.03

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  理想の恋人.com　※ちょいネタばれ気味ご注意※

  毎朝のようにきいているJ-WAVEの番組「BOOMTOWN」。番組で募集していた映画試写会の招待状が届き、大好きなBDちゃんと、一緒に「理想の恋人.com」を鑑賞した。http://wwws.warnerbros.co.jp/mustlovedogs/上映前、ナビゲーターのクリス智子さんがMCで登場。以前に「奥様は魔女」の試写会のクリス智子さんのMCやそのファッションにかわいい&かっこいい&さわやかだなあーとひたすら感心したものだが、今回もなかなか素敵な組み合わせのファッションでおでまし。しかも試写会は16倍の当選確率だったとか! さて、映画は、バツイチの幼稚園の先生が、家族におせっかいをやかれながら次なるパートナーを「ネットで」探す・・というお話。出だしはなかなか好調。主演のダイアン・レインも素敵。ダイアン・レイン・・・なつかしき「リトル・ロマンス」(私はこの映画を劇場で見たのが自慢です)の頃からずっと見続けてきた女優さん。少女の頃から大人顔で、声がよく響く低い声で、スタイルも(一時期は)迫力満点でアネゴちっくな女優さんだった。「アウトサイダー」「ランブルフィッシュ」の紅一点ぶり。「ストリート・オブ・ファイヤー」のロック・クィーン。「愛は危険な香り」でのストーカーに狙われるファッショナブルなウィンドウ・ドレッサー。どれもこれもかっこいい役だった。それ以降10年間は、アネゴ・ダイアンを期待する私のようなちょいファンにとっては、「失われた10年」とよぶに相応しい出演作が続いたが(それでもわりかしコンスタントに出演し続けていた)、エイドリアン・ライン監督の「運命の女」で完全復活。昔の「ツッパリ」や「爆弾」をどこかに秘めつつも、「今はもう卒業したの。落ち着いた大人の女よ・・」を演じる十分な風格をもった女優さんとなっていた。おっと、ダイアン話で横にそれた・・。「パートナー候補者に出会うまで」のところは軽快で明るくて楽しかった。しかし、「候補を絞ってみた」ところから話の展開が、軽妙ではなくなった。中盤から終盤にかけての「絞った男ふたり」の動きがどうもにぶいし、肝心の主演・ダイアンの役の「言動」がなんだかちぐはぐでヘンだった。出だしは典型的なラブコメで、途中から深刻&観客がついていけない主役の感情が暴走&涙って感じでストーリーの語り口のリズムがかわり、そのうえ鈍重になっている。最後は「明るく」しめてたけど・・・。またこのラストスパートぶりがわざとらしい。「この映画、結局なんだったの?」ってことになる。映画って全体をとおすリズム感もなかなか大事だと思う。映画の長さを1時間半強におさめた理由はなんだったのかが知りたい。もともとの脚本になかったのか、それとも編集でカットしたのか・・などなど。前半と同じくらい中盤をもっとていねいにステップを積み重ねることで、観客の共感をもっと得られたのではないだろうか。アネゴ・ダイアンが素敵なだけに、おっしいなあ・・・。映画の終了後、BDちゃんのお宅を訪問。素敵なおうちだった!!

  2005.09.28

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  黒水仙を２本ほど・・

  韓国映画の「黒水仙」を、例によってスカパー！で録画してその後、鑑賞しました。ラストシーン近く、アン・ソンギさんが「まー、なんて格好いいんでしょう」！そう来るとは思っていませんでした。いつかそうなるかとは思っていましたが。何度も何度も巻き戻しして、楽しんでしまいました。あの声、迫力は、アン・ソンギさん、独特のものですなあ。いえ、途中もなかなか素敵な役柄でしたけどね・・。ＤＶＤのジャケットはいかついけど、中身は結構、純愛ドラマとみた！！関連作品：そのままじゃねーか、という声も聞こえてきますが、こっちも「黒水仙」緊迫したドラマ。韓国の黒水仙のように、女性大活躍です。映像がテクニカラーですごくきれい。それがまた怖い・・。しかし、主演のデボラ・カー・・この映画のように山奥とか「王様と私」のように、西洋とは違う文明に行く役を結構やっているのですね・・あんまり雰囲気が「立派」すぎて、異文化交流というより征服って感じが漂い・似合うような気が・・あ！辛口。。

  2005.09.07

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  「いやー、映画って本当にいいものですね!」～映画が呼び込んだ8年越しの偶然～

  さて、土曜日の夜の話を引き続き。亜細亜電影倶楽部で「南極日誌」を見終わり、席を立とうとした私。すると、後ろの席に座っていたスタイリッシュな女性から、突然呼び掛けられた。な～んと!その人は大分で働いていた頃の、とある雑誌の編集部の同僚だった！８年ぶりの再会・・。なんて偶然～。この映画「南極日誌」を同じ時間に、同じ映画館で、前後の席でみるとは！思えば大分時代、あの狭い町で一度だって、映画館で偶然に出くわすことはなかった。私も彼女も頻繁に通っていたあの「シネマ5」でも一度も顔を会わせなかったのに・・。彼女が映画好き(注※人のことはいろいろ言えないけどちょっと変わった感じの映画がお好み…)であったのは知ってたけど!東京に出てきたのは知らなかった!・・というわけで、映画の後、しばし「大分の話題」に花が咲いた。場所を移動して、当時同じ編集部にいた人たちの「その後」をきいた。それはあまりにも非凡な物語の数々・・。はー、私ってつくづくユニークな方々とお付き合いさせていただいていたのねえ、と腹がよじれるほど笑ったり、げげっと眉をひそめたり・・。また、一人だけ近況がつかめない謎の人物「私たちの教官」兼副編集長Nさんの話題でもりあがった。近況がわからない・・というだけで、想像力たくましい私たちの話のえじき、いえ思い出話の中心となってしまった彼・・。さて、今どこでなにをしてるやら…、あの夜はくしゃみが止まらなかったのではなかろうか。それはそうと、出会った頃は駆け出し編集者だった私たち、彼女はその後、広告の方で一貫して8年のキャリアを積んでいた。なんだか堂々とした業界人っぷり?一方、私の遍歴を話すと「やだ、会社クラッシャーなんじゃないの！?」「本が書けるわね」と軽く笑い飛ばしてくれる。その笑顔がちょいニクイ。普通こういうシツレイなことはなかなかいえないと思うがそういうところが同じ会社で危機や修羅場をいろいろと潜り抜けた昔の仲間なればこそ。決して神妙にならないそのワライッぷり…。その昔、「ああどうしよう、また遅くなった。締め切りに間に合わないよ～教官に怒られる」とうじうじワープロに向かっている私の隣席で、涼しい顔してしゃかしゃかとなんだかアヤシイ?原稿を書き上げていた彼女の横顔に重なった。ふと帰り道、「そのネタで本が書けるよ」と言うせりふは、彼女にとって、"珍しいキワメツケの体験への最上級の褒め言葉"だったことを思い出した。そうだったよね、ありがとう!　とにんまり。こうしてふるさと九州を遠く離れた東京で、またひとつ「戦友関係」が復活、と相成った。いやあー、不思議な晩。映画って本当に・・・イイもんですね!※締めは、関連作品(←SHIBAKOさんの手法、拝借!)をご紹介※「ザ・フライ」、「裸のランチ」「戦慄の絆」・・もろもろで有名なあのホラーなお方、デビッド・クローネンバーグ監督の「クラッシュ」。出演は、ジェームズ・スペイダー、ホリー・ハンター、ロザンナ・アークエット！これは、８年ぶりの偶然の再会を果たした私たちの記念すべき作品。在籍していた編集部で内々に開かれた"映画を見る会"の会合に選ばれた栄えある作品。部員一同、横一列で並んで鑑賞しました。ええ、居心地、悪かったです。。一人でみるならまだしも、普通、「クラッシュ」はグループで見ませんね・・。

  2005.09.04

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  1997･98年の韓国映画にまつわる思い出・・・

  1998年9月に開かれたアジアフォーカス福岡映画祭で、私は2本の韓国映画に出会った。「ザ・コンタクト」と「八月のクリスマス」。この映画祭で見てきた韓国映画は、それはそれは固くてまじめな政治色あるものか、あるいは強力なエロスを発散させている愛の映画たちだった。私にしてみれば、それらは見ている時は「すごいなー」とびっくりしたり、感動しても、それ以上なにも仕様がない・・というタイプの映画。しかしこの2本を見た時、私は韓国映画、そして韓国という国をものすごく身近に感じた。まさに韓国にトレンディドラマあり! 韓国に純愛ドラマあり! で、これはなにか日本にはないもの、そして他の国の映画にもないものを感じさせるなにかが、映画の中にほとばしっていた。この2本のどちらの映画にも、眼鏡の似合うハン・ソッキュが主演していた。その時すでに「旬の俳優」というオーラをまといながらも、眼鏡が似合う内向的とも言える青年を繊細に演じる彼に好感を持たない人はいないのではないか・・・そう思うくらい、特に「八月のクリスマス」のはまりようは群を抜いていたと思う。「ザ・コンタクト」に特別に夢中になった。映画館を出てくるところから始まるファーストシーンからいって一目ぼれだったし、この映画の中の小道具(パソコン、たばこ、車、着ている洋服、レコード、雨・・)が大好きだった。そして小道具を鮮やかに使いこなしながらも、不器用で、ずっとすれちがっている、最後にやっとこさ出会う男と女が愛しくてたまらなかった。NHKのアジア映画劇場で放映された「ザ・コンタクト」を私は録画して、もう何回みたことだろう。「ザ・コンタクト」を見て私は韓国に行ってみたい、旅したいと思った。当時は福岡に住んでいて、韓国は目と鼻の先だったこともあり、98年～99年の間、私は何度か韓国を訪ねた。折しも97年からのアジア通貨危機、IMF(国際通貨基金)が韓国に支援をしていた。雰囲気は、まさに冬の時代だった。日本からたくさんの旅行客を呼び込もうとしていて、実際福岡などでは格安ツアーがたくさんあった。が、私が良く通っていた頃は、まだまだメジャーな観光地とはいえなかった。焼肉・あかすりエステ・・が目玉といったところだった。私は、旅の友を得て、ソウル、釜山、慶州、そして農村や漁村といった地域にまで足を運んだ。言葉、ハングルがよめなかったので、旅行ガイドブックに載っていたフレーズでそのままはなした。それでも、ものを買うとか、食べる、泊まる、そういうことでは通じた。しかし、旅の途中で、今日も一日知らない言葉と格闘し、知らない異国のシステムにのっかってみるのか・・と思うと、ひどく疲れた思いをしたこともあった。私が見ていた韓国は、まだひどく寂しくて、どこか薄暗くて、街が自信をなくしていた。対照的に人懐っこい韓国人のおおらかさはとても印象に残った。いってみて、「ザ・コンタクト」はトレンディードラマだったのね、ということを確認した。「ありそうでない」「ちょっとおしゃれ」「都会的孤独」それは街(ソウルなど)が生み出したものではなく、ドラマがつくったイメージだったと・・。※今はどうだか…それはすみませんが、わかりません。あれからもう8年がたつ。多くの新人映画監督がすばらしい作品をたくさん撮っている。いつみても、韓国の映画のその不思議な虚構力に私は感嘆する。そしてまた、韓国に行きたいと思う。そんな映画が1年に1本の割合でなく、ほとんど1、2か月に1本という頻度で出会ってしまう。今はもう福岡在住でないので思い立ったらすぐいけないのが残念。。最後になってしまった・・。なぜいきなり韓国映画の話って感じでしょうが、実は見たのですふたたび。「八月のクリスマス」・・。もう何度か見ているのですが、この日にみた「八月のクリスマス」は格別でした。どこが・・というと、この映画、素っ気無いくらい演出しない、説明もない。ただ淡々と生活をする男の日常・・。しかし彼はあることと戦っている。静かに戦っている。そのことを何度もみていてはじめから知っているから、その静けさや憤りやさまざまな彼の感情との戦いが、すごく胸にしみてきた。しかし、結末がわかってるからしみじみする映画ってどうなんでしょうね?隣では、見知らぬおばさんが、映画開始30分くらいからところどころ泣き始め、ラスト30分はなき通しでした。「四月の雪」関連のイベントだったのか? 韓国映画がすきそうな観客の人たちに囲まれて、しみじみとこの映画を見ることができたのがなにより幸せでした。※写真は、映画の後に食した「豚モダン焼き」！　まあまあンマかったのですがこれをパクつきながらの　えみちさんとの会話の方がもっとンマい内容でした。

  2005.09.01

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  「シービスケット」に涙・・・

  偶然、スカパー!でみかけた映画「シービスケット」いやはや、つい引き込まれて最後まで。涙・涙で感情移入し、やっぱ人生投げたらいかんなあ、と深く共感にいたる。物語は1929年アメリカ、大恐慌の直前に始まる。人生で挫折を味わった男がいる、三人。フロンティア時代にいきた年老いたカウボーイ。自動車販売で成功したが息子を交通事故で亡くし妻とも別れた男。幸せに暮らしていた家族と離されて草競馬のジョッキーとなり辛酸をなめた青年。一頭の不運なサラブレッド　シービスケットが、一度は深い絶望の中に落ちたこの三人の運命を結び付ける。シービスケットが、脳天気でやたら元気のいい馬ではないところがまた泣かせる。この馬は、いくつかの不運と見捨てられた過去が重なってすっかり気性の荒い「怒れる馬」になっていた。その怒れる馬の「勝負心」を見抜き、本来の馬の姿に再生していこうとする調教師の静かな手管。馬に乗るジョッキーもまた、辛い貧しい失敗だらけの過去を引きずっている。それをあたたかく支えるオーナーの風情、たたずまい。このオーナーをジェフ・ブリッジスが演じていて、枯れているようなでも暖かさのある表情、それはそれはすばらしい。この映画はベストセラーとなったノンフィクションの映画化されたもの。アメリカの民衆が、大恐慌時代を凌ぎ繁栄への道を模索しながらも歩めたのは、「政府の政策主導でなく、人々の希望と再起を求める心こその原動力だった、それらの人々の支えとなったのがこのシービスケットだ! 」というメッセージが映画の中で直球で訴求される。思えば、たくさんの映画が、この大恐慌時代を背景に描かれてきた。映画が始まって三十分もしないうちに思い出したのが、ロバート・レッドフォード氏がプロデュースし演出もやった「バガー・ヴァンスの伝説」だった。あの映画も、アメリカ南部に壮大でバブリーなゴルフ場をつくろうとした富豪一家の主人が大恐慌のあおりで自殺。その娘が意志をつぐ。ゴルフ場を売却しなさいとすすめる周囲のいうことはきかず、必死の思いで富豪の娘はアメリカを代表する花形ゴルファーを招待する試合を考え付く。元恋人で戦争から戻ってきてすっかりふぬけになってしまったゴルファーにも招待し参加をとりつける。元恋人はこのマッチの中で兵士となる前のゴルファーの心を取り戻していく。題名のバガー・バンスとは、元恋人のキャディーとなる正体不明の人の名前である。ウィル・スミスが演じている。しかしつい気になるのが、富豪の娘の元恋人・美形ゴルフファーを演じたマット・デイモンと、富豪の娘・シャーリーズ・セロンなのだ。とにかくこのふたりが、20～30年代の衣装をつけて出てくると麗しくてしょうがない・・・。(シャーリーズなんてこの数年後ど根性で「モンスター」を演じるなんて、予想だにしない華麗さである)話を「シービスケット」に戻すと、一度も二度も激しい挫折を味わうと、立ち直るのは至難の技。障害や試練を乗り越え偉業を達成することをアメリカン・ドリームというのなら、この映画はまさにそれについて語った映画なのだろう。アメリカン・ドリームというものは体感としてよくわからないので日本人的マインドからいえば、苦難の末ようやくある域に達成する、そこにたどりつくまで我慢しろ、前に進み続けろ、諦めるなというメッセージは、非常に共感できた。実際のところ、実人生に当てはめられるかというと、それはどうかと思うのだが。たくさん泣いて、共感しました・・。

  2005.08.28

• 久々の平和で幸せな週末かも・・・

  土曜の夜から日曜午後にかけてずっと映画ばかり観てました。それも昔(1940～50年代)の日本映画を。木下恵介監督の「女の園」ではほとんど人権無視の厳しい女子大学にかつての母校を重ねてみたり、阪東妻三郎が演じる暴君型のお父さんとその家族との悲喜こもごもを描いた「破れ太鼓」につっこみをいれたり、詐欺師が純朴?な島民を騙そうとするが島民は詐欺師に騙されながらも自らの夢のビジネスを実現させていく「花咲く港」での不思議な南方の方言に首をかしげたり。黒澤明監督の「野良犬」の汗の描写、三船敏郎の逆三角形の背広の背中や、そして全編において隙のない演出に唸ったり。特に木下監督の作品は、最近の映画と全然テンポも展開も異なるので、どうしても「このシーン長いよー」「展開がたるいよー」「なんでそういう最後になるのさ」とちょっとつっこみぎみでした。その一方、時代背景、役者の細やかな動作や表情、わりとあっさりとしたカット割りや編集が独特の魅力があってどこかユーモラスで面白くて、ついつい引き込まれてみてました。掃除・洗濯など家事で汗をかき、リラックスする料理をつくって、観たいだけ映画を観る。平凡そのものだけどこれって、私にとっては幸せな週末。。

  2005.08.21

• 魔法とお鼻

  毎朝聞いているFM「ブームタウン」の試写会が見事あたって(１３倍の倍率だったらしいです)、映画「奥様は魔女」を霞ヶ関で見ました。率直にいって、「お金を払ってみなくてよかった・・・」と思いました。帰りはやけ酒に走り、銀座で生ビール、新橋でおでんや・・。帰りつく頃には、あの映画がいったいなんだったのか、もうすべて忘れてしまいました。それは魔法のようでした。

  2005.08.09

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  かなり遅刻しました「Musical Baton」。

  しばこさんから回ってきました。その前も後も・・いろいろめぐっているらしい!?よく事情はしらないけど・・とりあえず企画ものなら乗った!ということで。音楽好きだしね。それにしてもUP、かなり遅刻しました～。すみません。今回のお題は以下だそうです～。----------------------------------------------■PC内音楽ファイルの容量 ■今聴いてる曲■最後に買ったCD■よく聞く、または特別な思い入れのある5曲----------------------------------------------それではえーと、■PC内音楽ファイルの容量 iTunes使ってるけど、把握してない・・。数曲しかないはず。いまだに、ソニーのCDウォークマン(FM/AM付き)を愛用してて、会社ではもっぱらUSENで80年代ポピュラーヒッツを聞いてます。これってアナログ!?■今聴いてる曲今、この瞬間にはなにも聞いていません。しかしDVDからは「セックス・アンド・ザ・シティ」のメインテーマが流れています。■最後に買ったCDスタバで販売していた「ナット・キング・コール」のCDを近々買うつもりです! (…といいながら、いつのまにかカウンターからなくなっていた)ギタリスト・福田信一さんの「19世紀ギター・デビュー!」というのが、一番最近買ったCDです。私が買ったのは最近ですが、このCDが出たのは10年前らしいです。なぜに??って感じかもしれませんが、私は中学生から大学生までギタリストでして・・。今でも集中したい時や気持ちをリラックスさせたい時にはギターの名曲をききます。さて、このCDのよいところ。まずジャケットのギターを凝視してみてください。ちょっと小さめな感じがしませんか?この１９世紀ギターを再現して出した音色が柔らかでいいんです～。それにしても、ギターを持った美男が気になりません?　もちろん、演奏者ご本人です!! 最近のCDでは、こんなのもあるらしいです。ギタリスト・福田進一さんはギターを、癖のない素直なきれいな音色で奏でられます。「スペイン名曲集」の名にし負う名曲ぞろいです。福田進一／アランブラの思い出～スペイン名曲集III～はっ! しばこさんに「映画サントラ」を期待されているのに、なんかはずしまくりですまんです。■よく聞く、または特別な思い入れのある5曲●私のお気に入りその一は、「カクテル」のサントラ!!「宇宙戦争」でまたまた話題のトム・クルーズ様主演、映画「カクテル」のサントラです。旅行に行く時は、(特に海辺にいく時は)、このCDかならず持参します。●お気に入りその二は、「ビギナーズ」のサントラ!ビギナーズ?って? と思いました?イギリス映画「ビキナーズ」ですよ！この映画は1958年のイギリス・ソーホーを舞台にしたミュージカルでして、デビッド・ボウイが主題歌の「アブソリュート・ビキナーズ」を歌っています。あやしげな役柄で出演もしています。シャーデーとか、エースワンダーのボーカリストも出演しています。アマゾンで探してみたけど、見当たらなかったです。私サントラCD持ってるんだけど?これって廃盤なのかなー。そんな映画あるのか、と思われるとなんなんで、DVDの画像を載せときます。　ちなみに私は、高校生の頃、デビット・ボウイのファンでした。最近でも、USENの80年代ポピュラーヒッツのチャンネルからボウイの「レッツ・ダンス」とか「ブルージーン」とか「トゥナイト」・・などなどふいに流れてくると、泣きだし&走りだし&リズムとっておどりそうになります。今聞いても私にとってはいい曲だなーと思う。80年代のボウイ、最高! 万歳!ちなみにこれだけじゃなく、「ラビリンス」(ジェニファー・コネリーと共演)のサントラにもＷではまってました。私が持っているのは、LPですけど。もう毎日聞いてました。擦り切れぎみ。この８月にコレクターズDVDが出るらしいです! さてさて、ボウイの曲「アイム・ディレンジュド」が使われている「ロスト・ハイウェイ」のサントラも思い入れがありまくり。しかし、これも私CD持ってんだけど～楽天では売ってない。で、DVDを入れときます。そろそろボウイ関係の話題から離れます。ふーーッ●お気に入りその三は、映画サントラからはずれちゃいますが、、　ショパンの「ピアノ協奏曲第二番」！！　もう大好きで、初夏はこれを聞かずには始まりません。ピアニストに特にこだわりはないほうです。アルゲリッチ、フジ子・ヘミング、ホロビッツ、アシュケナージ、、それぞれいいなーって思います。最近聞いてきにいったのが、この方たちのです。シンプルでよい演奏でした。演奏： ピリス(マリア=ジョアオ), モンテ・カルロ国立歌劇場管弦楽団　ショパンのこの曲は、いろんな映画で使われているのないかと・・。邦画で、石田ひかり主演・大林宣彦監督の「はるか、ノスタルジィ」でも使われていたような。ちなみにこの映画の音楽は久石譲さん、もりあげてます。※あー、語った・・ちょっと休憩しますー。お気に入り４と５は、続編で！>

  2005.07.15

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  「今のこの暖かさは永遠だった」---「天使の涙」に涙する

  原題は「堕落天使」、ウォン・カーウァイ監督作品、1995年製作。日本公開はその翌年だったのだろうか。そうすると、この映画を見てもう9年になるというのに、たしか2度みたこの映画の1シーン、1カットのどれもが記憶に焼き付いている---。DVDを見て驚いたのは、まずそのことだった。つまりどのカットも「はっとする」なにかに溢れていたからこそ、見たものすべてを覚えていられたのだろう。この映画はほとんど全シーンが夜だ。夜なのに、蛍光灯や白熱灯の光、街のネオンや街灯、車やバイクのライトの光までもが、柔らかく温かく明るいのだ。この夜の1カット、1カットが、見るたび紋きり型でなく、新鮮でかつユニークだ。まるで本当の夜のように、映画の中に息づいて存在している。この街には、登場人物以外の誰もいないかのよう。地下鉄、トンネル、球技場、静かなバー、そしてホテル、閉店した店。時折、話には関わりのない部外者が偶然のように行き来する以外は、まるで登場人物の「孤独」をあらわすかのようにがらんどうになっている。この映画の俳優たちの表情が好きだ。広角レンズを使っているらしいが、その歪んだ顔は、まるで、玄関の覗き窓から見るようだったり、また水槽の中の魚を見るようだったりする。歪んでいたり、伸びたり、細くなったりする輪郭に、孤独と不安と愛、憎しみ、様々な感情が写し出される。まるで遊園地の「鏡の部屋」で、たくさん映った自分の顔を覗いてるかのようだ。その輪郭や目や口が、人を不安にさせたり、懐かしくさせたり、寂しがらせる。なによりラストシーンが好きだ。金城武演じる「口のきけない青年」とミシェル・リー演じる「殺し屋のエージェント」がついにある夜「何度もすれ違っていたのに、この日は互いを身近に感じ」、バイクに二人乗りして疾走するシーン。トンネルに入っていくこのバイクの走りがたまらなく優しい。「殺し屋のエージェント」の最後に吐く台詞も最高だ。また、この時だけ一瞬、夜の世界に朝の空の光がのぞく、これがまた泣かせる。ウォン・カーウァイのつくる映画では、登場人物の誰もが思う人からは思われず、あるいは思いあっているからこそすれ違ってしまう。恋愛を「失恋」「孤独」の面からだけ描く人は少ないと思う。たいていの映画は「失恋したら次は得恋する」し「孤独な人は愛すべきなにかを見つける」から。でも、ウォン・カーウァイの映画では、失恋したら自分で自分の傷を癒すしかないし(現実もそうだろう)、孤独な人は基本的にずっと孤独のまま生きていき、誰か相手を求める人は次の相手をまた見つけ・・・になる。その法則がわかった時、私は安心して、ウォン・カーウァイの映画を見ることができるようになった。それまでは、似ても似つかないが、男にさんざん翻弄される女の登場人物たちに同情し、痛い思いでいっぱいだったのだが。。人は弱いもので、特定の相手への思いや思い出や孤独感や嫉妬に振り回され、傷だらけで泣いている。その姿に、観客としてスクリーンを通して寄り添えばいいーー。寄り添えるようになった分だけ今、観客として前より少しは大人になったかも、という気がしている。

  2005.04.24

• 映画「オペラ座の怪人」に感激<ネタばれ注意>

  ハッチちゃんのblogを読んで心ひかれて以来、「観に行こう」と決めていた「オペラ座の怪人」、ついに観ました! パリの19世紀のお話、なのに映画自体はすごく現代的なつくりでおどろき。CGというよりSFXの使いまくりなんだって。そういえば、画面に現れる質感が違ったような。特にとにかく導入がめちゃくちゃかっこいーい。音楽もすばらしいし、破損したシャンデリアを使ったあたりもすごーい。いっきにひきこまれてしまいます。さらにキャラ造詣が多面的でいい。まあぶっちゃけると、三角関係の話なんだろうけど、人生の愛や憎しみ、哀しみ、不遇、孤独、いろんな要素がちゃんとその「三角関係」の背景をいろどっていることが、ただ映像を観ているだけで伝わってくる。歌のおかげもあるのかなあ。あの三人の関係の展開が痛ましい・・・と同時にそうなることにものすごく納得。きづくといつのまにかファントムに感情移入しちゃってました。(たぶん「見世物」のエピソードに同情しちゃったんだ)そしてクライマックスの地下室でも・・・「ウワッ」と泣いてしまいました。自室に戻ってきてからも私の中にまだ「ファントム」がいました。。(これって「誰も知らない」を昨年の夏観た時以来の「心にキャラが棲みつく」感じ)なんともしようがなく、「ファントムは愛に触れることができたんだもの。追われながらにしろ地下室を自力で出て行ったのだもの、最後は"かわいそうな生き物"でなくなったんだと思う」といいきかせて、そして、心の中で合掌したのでした。

  2005.04.03

• 待ってました! ブリジット・ジョーンズ2

  「ブリジョン2」を丸の内にみにいく。混んでいるのではと思っていたが、席は十分にあった。大きなスクリーンで前の人の頭が全然気にならない快適な映画環境で、ブリジョンを堪能できた。原作本がとうに出ているとはいえ公開直後なので、展開についてはまた後日こってりblogで語る(語り合う)ことにして、、。まずは第一印象を。■ブリジットは、「英国版サザエさん」化するのか?■ 今回は、家族・友だち(酒も)の出番も活躍も少なかった。それがなんだか少し残念。それに反してますます冴え渡るのが、ブリジットのドジぶりと太りっぷり。前作以上に脂肪ユニットを貯えたブリジット。普通ドラマのヒロインというのは、相手ができるとやせてきれいになるという法則を見事に破る。いわゆる「幸せぶとり」を見事に体現。またマーク・ダーシーのお仕事姿が、何度もお目見えする。その整った姿とブリジットのドジが大体セットになっている。1と違って単体のドジではなく、2では太りもドジもマーク・ダーシーとカップリングされている。笑えるシーン数は多し。その笑いの質がなんとなく「サザエさん」を思わせるのだ。一種の健全な笑い。1にあった、ちょっとセクシーなシチュエーションだったり、ブリジョンの妄想ががからみにからんだ末におこる「やっちゃったよ!!」的爆笑ではなく(私はこれを「赤毛のアン」的笑い?と同質とみた)、「その状況でこう来られると笑うしかないなー」というあきらかな共感を誘う笑いがちりばめられている。メジャーになった・・というのはこういうことをいうのだろうか? ■なぜ私は劇場にむかってしまったのか? 激しく、本質をよくついたプロモーションの技にシビレる■先週土曜日のblogにどういういきさつで「ブリジョン2」の前売りを買ったかは既に書いたが、前売りには、英国製入浴剤(LUSHブライダルブーケ)がついていた。そして、初日先着プレゼントとなっていたのが、バーバリーの香水のサンプル。幸いに劇場がすいていたので、私ももらった。別にそれらがもらいたくて・・劇場に行くようにしたのではない。ただ、劇場窓口で前売りを買うきっかけをつくってくれたり、当日いってみたらなんか余計にもらえた・・という、そのちょっとした「おトク感」を演出するのがうまいと思った。それらはあきらかにブリジョン同世代の同性をねらったものだ、と映画をみるまで信じていた。見渡すと、ひとりで「なんとなくブリジョンなファッション」の装い(私も今日こそはとブリジョン・ファッションに挑戦したよ)で劇場の椅子にちんまり座っている婦女子が結構いた。しかしその婦女子以上に多かったのが、カップルだった。それも大人のカップル。大学生以下ではない社会人のだ。また、外国人率もそこそこ高いようす。ここで私はプロモの描いたカップルの会話を夢想する。男「今度の週末どこいく?」女「花粉ひどいからあんまり遠くいきたいなくない?」男「じゃあ、屋内ってことで。。映画にしようか」女「私、ラブストーリーみたい」男「またあ。。どれにするー? うーん、ロング・エンゲージメント? (あこれって悲劇なのかな?それにエンゲージなんて・・ヤメトコ)　 あ、この映画はなんかもらえるって」女「あ、みたいかも。あれっておもしろいのよ」ひとりで映画をみにくる女性は、ほっといてもブリジヨンをみにくる。ねらいは「みたいかも」という一般層。彼女らはひとりでは映画をみない。ではその性癖を利用して、カップルを誘いこもう・・。それが、前売りやサンプルプレゼントの本当のねらいだったのか? その戦略は、「ラッキー・チューズデー割引※」にも現れているのかも。。※火曜日(おそらく劇場に人の入りがもっとも遠のく日)に男女ペアで来た人はふたりで2400円になるというもの。実際、ブリジヨンは女ひとりでみにいくのは実は別の意味の勇気がいる映画。映画館にひとりでいく、さらにその中身がブリジョン。それって、「負け犬×2(負け犬二乗)」くらいのプレッシャーがかかる。でも、デートでなら。「勝ち犬×3(勝ち犬三乗)」の気持ちが味わえるかも。カップルの群れをみながらゆっくりステップをおりる。前方の席に向いながら、私は胸元のあいたパステルカラーのブリジョンファッションでひとり意気揚々と乗り込んできたことをちょっと後悔していたりした。そんな戦略、読みとりたくなかったデス!! ■まとめ■ソフト面での毒気は薄まった。友だちと誘いあってはもちろんのこと、家族によし、恋人とのデートによし、笑って観れる映画です!! ブリジットには共感できるし、マーク・ダーシーはキュートだし。しかし、ハード面では前作以上に、毒のあるプロモだと私は思います～。(あんまし好きじゃない)※それにしても、午前中の福岡の地震!!!! 電話でなんとか連絡がとれ家族の安否は確認できたが、めったに地震が来ない地域ゆえ、交通機関や電話や街が地震対策できていないと思われるから余計心配だ。津波が来る! 液状化現象か!? と言われている海辺に、私の家族は不動産を持っている。これからのことを思うと、安全もさることながら地価がさがらなきゃいいけど・・。

  2005.03.20

• あまりに"負け犬"なソフトの群れ

  　先週、新宿のビデオ屋で「セックス・アンド・ザ・シティ」セカンドシーズンの中古ビデオをどーんと購入(レジに並んでる列がかなり長くて持っているの恥ずかしかったけど)。さて見ようとばりばりあけていくと、なーんと「2-1」が入っているはずのところに「1-3」が入っており、、、。「ビデオの品質に問題があれば、レシート持参で一週間以内に持ってくれば交換します」と説明されていたので持っていったらば・・交換できる「2ー1」がなく、全額お金を返します、となった。これって得なんだろうか、損なんだろうか。いろいろと考えると面倒くさい、ばっさり使って忘れることにしよう、と決めた。　ふたつの選択肢があった。私の大好きな「誰も知らない」のDVD発売直後だったからそれを一本買って忘れるか--これならかなり潔いと思う。それとも、小刻みに消費して忘れるか--。私は後者を選んだ。たまには無目的にぶらぶら買い物するのも悪くないし。　まず同じ店の1990円で2本購入できるというDVDコーナーで、「ブルー・ベルベット特別編～オリジナル無修正版～」を発見。私はもともとデビッド・リンチ作品の隠れファンである、「イレイザー・ヘッド」「ツイン・ピークス」「ロスト・ハイウェイ」・・。「特別」で「無修正版」、そしてたくさんの特典映像・・こうくるなら即決しかない。さて、あともう1本はどうしよう。。「フォー・ウェディング」、「セックスと嘘とビデオテープ」、「アタメ!」。この三作の中でどれにしようと迷いまくり、売り場をうろうろすること30分、「フォー・ウェディング」に決める。他の２本だと、レジに出すのがあんまり恥ずかしかったからかも。さらにレジでは、「ポイントがたまっています」と教えられた。たまったポイントも使ってしまえと、おなじ店で中古ビデオの「ジミー」(リバー・フェニックス初主演作、パッケージは日焼けしていてなんと400円で売り飛ばされていた) を購入。それでも、まだ「SATC」で返金されたお金が残っていた。ふらふらと「東京タワー」お立ち見で騒然となっている三丁目の映画館へ。いえ、「東京タワー」は残念ながら見なかった・・そのかわり、「ブリジット・ジョーンズの日記2」の"英国生まれの入浴剤つきの前売り券"を購入。なんだか出発点(SATC)に相応しく、"負け犬ソフト"購入づくしの１日。いいのか私…!? これって「SATC」を一週間毎夜みていた影響?あんまりあからさまな趣味。ほおっておくと「イヤ汁」が醗酵しそうなので、みずから開陳します。ペコリ

  2005.03.13

• 受け入れること、と「トニー・滝谷」

  前日の日記に、会社で起きた2週間の出来事についてあくまで私の感じたことをつらつら書いたけれど、時間がたつにつれて「環境を受け入れる気持ち」が勝ってきた。まわりの社員がどうであれ、私がその会社の一員であり仕事をして給料もらっていることは変わらないのだから、まわりを責めるより、自分がいまこの状態からどれだけ変われるか、それが肝心なんだと悟る。今日は、飯田橋の名画座に「2046」と「春夏秋冬そして春」がかかっていると知り、でかけていったが、満員立ち見と言われたので、きびすを返し、「トニー・滝谷」を新宿で観た。これらも土曜日だというのに、成人男女でにぎわっていた。まあ、村上春樹・原作、市川準・監督、坂本龍一・音楽、宮沢りえ・出演・・となれば、ふつーに考えれば、お客が来ないはずないというわけかしら。宮沢りえの演技が、10数年前、まだアイドルだった頃にくらべて格段に「まとも」になっていることに驚く。(二役やるには十分でないかもしれないが) それに、そのオーラがきれいではかなげで、この映画のヒロインにぴったりだった。しかし、ヒロインの設定がちょっと、だ。これは原作にある設定なのだろうか?、「編集者、ブランド洋服ショッピング中毒、スタイリッシュなモデル系美人」というのは、なんだか、男性作家の妄想で作られたヒロインのような気がした。非現実的な存在を美しく演じてしまう宮沢りえ、なかなかすごいと思った。

  2005.03.05

• 次のタイトルはまだ秘密

  　いま、3月下旬のオンラインにむかって、映画専用の個人ブログの準備をしている。　前からつけているこのブログは決まりなどもうけず、ひたすら「気まま」「思うまま」「いきあたりばったり」を信条としていた。このブログもテーマをきめこんで並行して書いていくつもり。 しかし新しい方のブログは、ちょっとしたルールを設けて、テーマと訴求することをはっきりさせようとしている。端的にいうと、映画好きに向けて、おなじく映画好きである私による、映画好きのためのサイトにしたい。 さてそのルールとは。1.映画の批評だけ書く。感想文は書かない。2.800字で書く。3.作品について書く時は「構造主義」に徹する。作家について言及する時も同様の姿勢。4.作品に対する「構造主義」とともにその表現については「イニシャル主義」でいく。ブログに登場する人の実名は書かない。劇場や興業、販売について書く時も固有の名前は出さない。映画に出演する俳優・監督名もおなじ。映画タイトルはこの制約を受けない。5.悪口、否定的意見、批判は書かない。ただし、と前置きすればよい。と決めてみた。このとおりいくかはわからない。やってみる、という感じだ。　私は以前に、ある映画をある場所で観て「よかった」と思ったこと、「映画を観た感想」を雑誌に書いてきたり、編集していたことがあるが、感想文は書き手にとっても、気分的にマンネリ化しあきることがあった。　今回は趣向を変え、なぜどこかすばらしいのか映像となっていることを批評し述べることを自分に課し、制約することで批評としての「おもしろさ」に挑戦してみたいと思う。　　なぜイニシャル主義なのか。ブログでは俳優の名前や劇場名を書き込むことで記録になったり、検索しやすかったりすることもわかっている。私はそのwebの特性をとてもすばらしいと思っている。が、今回はあえて使わない。　情報がとにかくたくさんのっていて、なにかとひっかかってきて、アクセス数があがる。それがwebサイトの評価となる一面がある一方で、ブログに情報を詳細に載せることで、個人として大切にしたい情報や想像力までもが、読み手にとっても発信者にとっても破られることがある。本来伝えたいからオンラインしてきたのに、それは皮肉なことだと思う。あらわに表現するのでなく、想像することや探すことの楽しさをかもしだしていけたらいいな。　私は「構造主義」＋「イニシャル主義」のスタイルが、ブログコミュニケーションに新しいおもしろさを提供できるような気がしている。ちなみにブログタイトルはまだ秘密♪ってことで・・。

  2005.01.30

• 東宝セントラル、閉館・・・

  長野県松本市の映画館「東宝セントラル」が10月24日に閉館するという記事をインターネットで読んだ。http://www.nagano-np.co.jp/cgi-bin/kijihyouji.cgi?ida=200409&idb=701東宝セントラルは、私の知る限りでも、とても古い映画館だった。もっというと、椅子が壊れている席や、スクリーンも汚れていてクリアーでなかった。記事によると、1927年に芝居小屋として開業、現在の建物は築80年ほどたっていたらしい。母を連れて東宝セントラルで「サイン」を観たことがあった。50代後半の母は「私が子供の頃行っていた映画館みたい。懐かしい」と言っていた。つまり昭和30年代風ということか。。松本市内には、東宝セントラルの他にも、エンギザ、テアトル銀映、上土シネマ、メトロシアターがあり、なかでも私が好きだったのは松本中劇だった。改装されたエンギザ以外はどの映画館もものすごく古く、今日、お気に入りだった中劇も既に閉館していたことを知り、http://mytown.asahi.com/nagano/news01.asp?c=35&kiji=27もはや呆然・・。かつて松本に住んでいた頃、毎月1日の映画の日や金曜日のレディースディに、仕事のあと映画をみに通っていた。そしてそんなに大好きでもないハリウッド系の映画を観ては、帰り道、映画の内容についてよく憤慨し、ぷんぷん怒りながらも、松本の終電時間は早いので、寒い夜道を走って1時間に1本の電車に飛び乗らなくてはいけなかった。中劇の400人は入りそうな2階立ての館内にたったひとりの観客! として「アメリ」を観たのはいまでもよい思い出だった。おなじく中劇の2階にあった小さな映画館で「アザーズ」を観た時は、「ここで地震にあったら助からないだろう」というくらいのその狭さ・閉塞感で、いっそう恐さがつのった。松本で観た映画で印象に残っているのは、他にエンギザで観た「ロード・オブ・ザ・リング1&2」、上土シネマで観た「8mile」、東宝セントラル2で観た「猿の惑星」、、他にもたくさん観た。でも、松本の独特の古い映画館の建物や上映中の観客の雰囲気、それらが手伝って映画だけでなく、私に感動の思い出を残してくれていたのだ。松本市はとても美しい城下町。戦前の家並みはこうだったのだろう、と思わせるような小さな路地に、白壁の蔵がたっていて、商店街も残っている。中心部を歩くといつも楽しかった。松本の映画館に通っていて感じたのは、松本市民は映画好きだということ。映画を観る雰囲気が非常に良かった。また映画の話を日常の話題に語れる人たちもかなりいたように思う。しかし映画館は古くて汚くもあり、上映プログラムはぱっとせず、あまりお客の方を向いていなかったように思う。東宝セントラル、中劇がなくなってしまったのは、非常に寂しいことだが、でもそれは映画館だけのことでなく、かつてお城を中心として完成し機能していた松本の街が、郊外の街に押され、だんだん古びて機能しなくなっているということもあらわしているのかもしれない。松本に住んでいた間、これらの映画館が楽しい思い出と映画を提供し続けてくれていたことを、あらためて振り返り感謝している。ありがとう! 東宝セントラル、そして松本中劇!!

  2004.10.17

• 英語学校と「家族の肖像」

  東京に来て1年、昨年12月にTOIECを受けて以降は日々の暮らしに追われてなんの勉強もしていない。そろそろ生活も落ち着いてきたので、英語や知的財産権関係の勉強を再開したいと、まずは南青山にこの10月新しくできた英語学校でレベルチェックを受けた。ホームページではイメージ写真ばかりで、ほとんど内容がつかめなかった。そのためとコースカウンセラーの勧誘が積極的だったので来校してみることにしたのだ。以下、私がコースカウンセラーから聞いたところの話をかいつまんでまとめてみた。ひとことでいうと、この英語学校の学習システムは自動車学校に似ている。入学前にレベルチェックをして、目標値を決める。そして、学校の自習室と自宅学習でトレーニングしてある程度の習熟度をクリアしてから同じレベルランクの人が参加する少人数レッスンへ。これまで散々自習した内容を、ネイティブスピーカーの講師にチェックしてもらう。講師がOKを出せば次の段階に進める。だめならもう一度、自習をし、少人数レッスンにのぞむ。このくり返しで(ある人は半年間、3コース)で目標レベルに到達させる。ある一定の自習時間をかけ、習熟度も十分だったたにも関わらず、決めた期間に目標レベルに到達しなければ全額返金するらしい。かなり本気の英語学校とみた。総じていい印象の学校だった。雰囲気も目につくものもイメージが統一され、ちゃんと管理されている。必要なことにはちゃんと答えてくれる。問題は、始める時期を迷っている(これから入学すると12月、1月は仕事が忙しい時期に入るので十分な回数通えなくなる)こと。それと、価格。期間/価格からいうと"デジハリ級"だ。 他にも、看板をみたかぎりでも歩いていける英語学校が3、4校あるので、この機会にいろいろ試してみたい。レベルチェックのあとは青山で買い物をして有楽町へ。「ヴィスコンティ映画祭」で「家族の肖像」を観る。「家族の肖像」は15年前から大好きな、特別の映画だ。この映画に出演していたコンラット役ヘルムート・バーガーにはほとんど恋していた。これまではビデオで観ていた。フィルムは初めてだったが多くの発見があった。ビデオで始めてみた時、私にとってコンラット役は、なにをして暮らしているかはしらないいかがわしい外見の奥に純粋な魂と審美眼を持った美青年だった。10年がたち、いまフィルムで観たコンラット役は、蜘蛛の巣に捕われて少しずつ死んでいく蛾のように見えた。あくまで私の好みでしかないが、ビデオでみた方がコンラット役が本来もっていた(と思われる) 「秘密めいていて猥褻で下品な感じ」が現れていたように思う。フィルムで大きなスクリーンに映し出されると、ヘルムート・バーガーよりも、ビアンカを演じた大女優シルバーナ・マンガーノのアップや挙動に目がひきつけられてしまうのだ。シルバーナ・マンガーノの方が、「秘密めいて、上品な中に下品さがあって、混乱した哀しい」存在感の表現においては上手であった。「ベニスに死す」と「家族の肖像」の相似点の多さと大きな違いも見えてきた。「家族の肖像」にはあるものが欠けてている。それはヴィスコンティの映画にある「緊張・緊迫」だ。美しい、隅々まで計算された背景の中で、ぎりぎりまで追い詰められ、爆発する人間ドラマが観るものを圧倒する。「家族の肖像」ではこの緊迫がやや欠けている。たとえば、コンラットに同情するだけで、焦がれようとはしないバート・ランカスターが演じた「教授」役のスタンス。彼なりのエレガントな孤独が、映画自体を弱くしている。「カンバセーション・ピース」のコレクターである教授は、このおかしな家族(母親と娘、娘の婚約者、母親の愛人という構成)の距離感、噛み合わなさをフレームの外から楽しみ、時にいらだちながらも、味わっている。教授にとってみればいわばこの家族は、生きた絵画。登場人物はみな美しく個性的で、申し分ない。教授役のコレクター気質をかぎとりつつも私は、「教授役は所詮コレクター。ビアンカ役のような切迫した気持ちにはなりえない。彼の人生の傍観者的なところをなぜもっともっとえぐらないのか!」と思った。「やっぱりそれ(以上)は可哀想」というものか。それでも、この作品が好きだ。この欠如がおそらく好きなのだろう。コンラットのあきらかに似合っていないジーパン姿も。これから先、何度この作品をビデオで観ることだろう。今日みたフィルムにまた会うことはあるだろうか。そんなことを思いながら「ヴィスコンティ映画祭」をあとにした。

  2004.10.16

• 放送とフィルム上映の違いについて思ったこと

  昨日、スカパー!ぺーパービューで「誰も知らない」を放送していた。喜んで即、「予約」した。ところが、、この「予約」という行為がNGだったのか、番組が始まったとたんに「購入しますか」というメッセージ。「購入する」は予約の時に押していた。なんで?と思いつつ、あわてて、「購入する」を押そうとするが「予約」を押すとリモコンにロックがかかっていて・・。すわとロック解除すると、画面はもうすでに真っ暗。購入しますか、ともきいてきてくれない。操作方法をカスタマサービスに電話できく。(カスタマサービスはなにか有益なことを言ってくれたはずもなく、、逆に「機器の故障ではないですか」とこっちのせい扱い。哀しいことにカスタマサービスの対応はぐんぐん悪くなるように思う。)全部こっちのせいなのかア!?　確かに私がドジだった。「予約」なんか押しちゃいけなかったのだ。これでも、スカパー!ユーザー歴8年。。。なのに。15分、オペレーターの凡庸な説明につきあって、ようやく観ることができた。ちなみに1作品(視聴一回につき)1575円也!スカパー!への苦情はここまで。さて本題。こんなどたばたがあってもなくても、くつろぎのホームシアターを持っていようがいまいが、「誰も知らない」は、劇場にいけるのなら、劇場で観ることをおすすめします!!　「CSデジタル」はたしかに画像がきれい。音もいい。けれどフィルムにはアナログならではの良さがある。聞こえない音が聞こえてき、見えないものが見えてくる、ような良さ。例えば、「ゆきちゃん」の小さなつぶやき。「明くん」のせっぱつまったぴんとはりつめたような気持ちがからだを動かすとはじけていく、動作に伴う空気を切る感じ。あの家族の持っていた生活の音。撮影された東京の四季の姿。フィルムでは手に触れるように存在していたのに、、。「衛星デジタル放送」されちゃうと、(特に私の貧弱なテレビ環境では)、もうなんかドキュメンタリー風テレビ映画、にしか見えませんでした・・。フィルムの持つアナログの良さがいかされているのが「誰も知らない」の魅力のひとつだということを、私はスカパー!視聴で改めて思い知って、その発見に呆然としていました。なんでこんなに早くスカパー!なんかで公開しようって思ったんだろう。パッケージ(DVD)に「映画、フィルムならではの良さ」が残っているといいなあ。期待したいところ!!

  2004.10.12

• ヴィスコンティ映画祭

  「ヴィスコンティ映画祭」が8日から開催されてます～。http://www.asahi.com/event/visconti/index.html有楽町に行きたい～!!でも台風がッ。。10月9日(土)午後現在、外を見ると雨風はおさまっており、静かな様子。きっと嵐の前の静けさなのね。これから来るんでしょう。今日は我慢するにしても、来週にかけて「家族の肖像」「ルートヴィヒ」「異邦人」は見られるか・・も。ちゃんと見にいけるように、がんばって仕事を終わらせよう!!

  2004.10.08

• 「バレエ・カンパニー」を観る

  ロバート・アルトマン監督最新作「バレエ・カンパニー」をｂｕｎｋａｍｕｒａで鑑賞。まさに「鑑賞」という言葉がふさわしいこの映画。ダンサーの鍛えられた体がとても美しい。「スパイダーマン」のジェームズ・フランコも出演。踊ってくれるのと期待したが、なし。ヒロインの恋人の料理人の役でオムレツを作る姿が素敵でした。

  2004.10.01

• TSUTAYA南青山店、閉店!?・・いまさらデスが・・

  TSUTAYA南青山店がとっくに閉店していたことに、10月になってから気付いた私・・。あれー、週末ともなるとかなりのカップルでにぎわっていたのに、ひそかに営業不振だったのか?私はもともとTSUTAYAの品揃えはあんまし好きじゃないので別になんの執着もないけれど、駅からも近く便利のいい場所にあり朝5時まであいていた南青山店がなくなるというのは痛手・・・。近場のレンタルビデオ、DVD屋を開拓せねば。 1920年頃の映画もあって、特に1940～70年代のヨーロッパ、アメリカ映画の品揃えが良くて、その上最近のアジア映画もおいている、という気のきくビデオ屋はないかしら。

  2004.09.20

• 「LOVERS」を観る

  スクリーンに写し出させる色と映像、役者、美しすぎる!

  2004.09.16

• 「誰も知らない」を観た。

  公開されて一週間、毎日「みたい」と思い続けていた「誰も知らない」をとうとう観ることができた!とにかく、思っていたよりずっとすごい作品だった。邦画で二十年に一本あるかないかの傑作。日本社会の抱える問題の最もコアな部分をぐっとつかんだ作品。。映画を観終わって3～4時間、私はこの映画のことをしゃべりっぱなしになってしまった。しかも、視聴後24時間経過した今も、この映画の残像が私の脳裏から離れない。いったいなににそんなに感動したのか? それは感動というより発見という表現の方が近い、ある種の「遭遇体験」だったと思う。■「明」を演じた少年の変貌に驚く。出だしではとっぽい台詞を棒読みしているようなぎこちない演技。やがて、母親に見捨てられお金も底をつき、電気・ガス・水道が止まり、、ホームレスさながらの暮らしぶりのなか、彼はあたり前のように、自然のままに変貌していく。いつのまにか、生きることだけに嗅覚を研ぎすましたような「無」を見つめた表情をしている。演技、なんかではない。まさに驚くべき変貌だ。二時間強の映画時間の中で、こんなに変わっていく俳優を私は知らない。■親に捨てられた子供たちだけの日々を淡々と織り上げていく、確かで繊細で優れた演出・編集力に驚く。誰かが声高に泣き叫ぶのにつられてもらい泣きするような、そんな甘さはこの映画にはない。映画と向かい合っているのに、とにかく役柄に気持ちがよりそってしまう、ひっついてしまう。悲劇の前に手をぎゅっと握りしめることしかできない子供たちの、互いを思いあい「一緒にいたい」と暮らす子供たちの、そんな小さなたよりない姿に、目が心が、離れられなくなる。この日本にこんなことがあっていいのだろうか…絶対こんなことがあってはいけない、くり返されてはいけないと、強く思わずにはいられなくなる。たとえようもない悲劇を、こんなに静かに・語りかけるように伝える、確かな演出力と編集力を感じさせる日本映画を私は知らない。■10代から80代まで!? 幅広い観客層に驚く。どういうことか、私が観た東京・下町の映画館では、上はおじいちゃん・おばあちゃんから下は中学生くらいまでの幅広い年令層の観客が30分も前から階段でじっと上映時間を待っており、上映時間になると300人強の客席は８割がた埋まっていた。観ている間中、観客は一度もさわがなかった。まさに水を打ったような静けさ。アメリカ映画ではこうはいかない(いつものこの劇場では)。いつ「誰も知らない」は世代を越えて熱心に真剣に見られる日本映画となったのだろう。幅広い観客層を持つ、こんな幸せな日本映画を私は知らない。すごくおすすめ!!

  2004.08.15

• 「脚本で感動させる映画」

  ■「娘道成寺　蛇炎の恋」・・かなり毒々しげなタイトルの映画。この映画の脚本を某シナリオ誌で読みました。邦画。映画自体は東京では８月最終土曜日に公開されます。一読の後、私は思いました。「この映画はまた、劇場で見てしまうと意外におもしろくない映画、なのかも…」。■この映画を演出した高山由紀子さんが脚本を書かれた映画「上方苦界草紙」を見て以来かれこれ10年、高山さんの作品のファンで、映画を見る前にかならずといっていいほど、脚本はもちろんのこと原作まで読むいれあげよう。。しかし、この映画の見方ももうやめた方がいいのかもしれないです。なぜなら私のなかで、高山さんの脚本を読んだ時の感動が100パーセントであるとすると、実際みた映画は作品にもよるのだけれど、だいたい7～80パーセントの感動に減じてしまうんです。イメージが実際の俳優によってさまざまな背景の前で演じられると、「わあー」とその演出に素直に感動する一方-あえて不敵にいい方をさせてもらうと-想像するだけでよかった、その想像の余地を奪われてしまったような寂しさがあったり。。■それほど「映像にするのがもったいないような作品」ぶり。こんなにも脚本の持つ「イメージをわかせる力」が強い作家はめずらしいのでは。。韓国では映画の脚本も「読み物」として小説のように独立した形で文芸作品として読まれているときいたことがありますが、日本にそのような文化が育っていくとしたらその時、もっと多くの人が高山さんの作品の希有さに気付くのでは。。■でまだ映画は公開されてないのですが、脚本はどうだったかというと、読んで想像するだけで鮮烈で美しい映像が見えてくる出来映え。ストーリーはなんか摩訶不思議な話。「むくわれない恋」を「蛇」、そして「踊り」で映像化? 一般的に多くの人の共感を呼ぶような「恋」話ではないけれど、好きなのに自分の気持ちを通すことができない、応えられないふたり(なのかな?キャラ丁寧に数えると５人くらい・・)の、ある種の純愛を描いています。ちなみに牧瀬里穂さん主演です。またマイナス感動になるのかもしれないけど、それでも構わない、映画の公開が楽しみです!

  2004.08.13

• お休みの終わりは「日曜洋画劇場」

  学生の頃、日曜日にテレビで「日曜洋画劇場」が始まると、ウキウキする反面、終わりに近付くにつれて「あ…お休みが終わってしまう」と切ない気持ちになったものでした。今週末、"夏休みのビックイベント二つが終わった"私はひさしぶりにそんな気分になって「日曜洋画劇場」で放映中の「ザ・ハリケーン」を観ています。出だしのボクサー姿がシャープでかっこよかった主演俳優・デンゼル・ワシントン。その後、裁判で闘うやせた、でも力強い姿も静かな迫力がありますね～。他の脇を固める俳優もしぶくて、かっこいい人たちばかり! 原作者のひとりルービン・"ハリケーン"・カーターについてはこの映画で初めて知りました。原作が読んでみたくなる映画です!

  2004.08.08

• 「お友達になりたい」を観る

  夜、下北沢へ映画「お友達になりたい」を見にいく。学生の頃はシモキタにさんざん通ってたのに、夜に雨が降ると方向音痴になる不思議な体質が災いして映画館にたどりつけない。線路のそばで途方にくれていたら、おまわりさん、みっけ!! 教えてもらった。無事到着。シネマアートン下北沢は、初めて入った映画館だが"映画館好きの穴場中の穴場" という雰囲気。随所に80年代頃のミニシアターがもっていたエッセンスが感じられた。"古い感じ"を新しく出しているところがいい。おすすめポイントは、・この映画は福岡県でロケしているので"いまどきの福岡"でない、"どこかなつかしい福岡""しっとりした福岡"が映されている点。ある意味、"忘れられたエリア"というか。観光客の知らない福岡の良さが出ている点。・冒頭から中盤までは原案の設定がいかされているらしくドラマ的緊張感があってストーリー展開(編集)がおもしろい点。つっこんだ映画の感想はヒミツにしたい。この映画に関わっていた人たちのことを客観的に評価することなんかできない近しい間柄だったからということもある。ただ見ている間、私はとても幸せだった。そしてこの人たちとあの時出会えたことはよかった、と思えた。映画館に入場する時にもぎり嬢からビニール袋を渡された。がさがさ音のするビニール袋、なんだろう、といぶかしく思っていたが、帰りになかを見ると、筑豊の誰でもしってるポビュラーなお菓子屋さん・さかえ屋のお菓子『南蛮往来(なんばんおうらい)』が入っていた。映画館に来た人に配っているのだ。東京では接することが少なくなったおいしいさかえ屋のお菓子をほうばってしばし故郷・福岡から吹く風を感じていた。

  2004.07.29

• 「深夜特急」第一便　熱風アジア編

  暑い時はもっと暑い土地を映した映像を見るとなかなかの納涼効果になるかも！タイトルは知ってたけれど一度も読んだことも見たこともなかった「深夜特急」をＣＳで見ました。主人公が旅の中で顔つきも体形も変わっていくところが、映像ならではで、リアル感・ルポ感出てました。飛行機ならひとっ飛びで行けるところを電車や車や船で行く旅、自分が透明になるほど知らない土地に溶け込む旅。エスケープのつもりがはからずも自分への挑戦となる旅。この作品よりあきらかにハードル低いですが私なりにそんな旅が大好きで、時々試みます。見た後は血が騒ぎ、暑さもあっていっそう眠れませんでした!

  2004.07.21

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