「超訳百人一首 うた恋い。」…
君がため をしからざりし 命さへながくもがなと 思ひけるかな僕は古典の中で特に「伊勢物語」が好きなのですが、その魅力と言いますとやはり物語の面白さだけでなく、作中で詠まれる歌が素晴らしいところです。意外に和歌好きな僕なのですが、どういうわけか百人一首にはまったくときめかず、古典の中の和歌ばかりに目が行くというのは自分のことながら不思議でしたが、この夏のアニメで本作「超訳百人一首うた恋い。」を見て、その理由がようやくわかりました。このアニメの素晴らしいところは、百人一首といえば百首詠まれた歌だけのイメージがあるのですが、その詠まれたシチュエーションだけでなく詠んだ人やそれに纏わる人物たちを紹介してくれるところです。どうにも僕にとって、これまで百人一首というのはただ歌がそこにあるだけで、それを読むだけではそこには何の感情も湧いてこなかったのですが、このアニメを通して改めて歌を詠みますと詠み人の人生が刻まれた証のように浮かび上がって見えるから不思議なものです。また、平安中期から末期にかけて文学史だけでなく歴史的にも有名な人物もかなり登場したり、その当時の風俗などもわかりやすく紹介してくれているので、いろいろと参考になること間違いなしです。残念ながらアニメのほうは終了してしまいましたが、ぜひとも百首すべてのエピソードを紹介していただき、和歌だけでなく当時の貴族の人たちも僕らと同じように悩んでいたんだと、もっと身近なものに感じたいです。