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2019年09月16日
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​瀬戸内寂聴は、井上荒野の父、井上光晴の何十年来かの愛人だったらしい。
読売新聞の芦屋サロンで、井上荒野さんの講演を聴いて知ったことだった。

あの日、大人になるまで知らなかったということや、お母さんが何一つ変わらず接してくれたことも聴いた。
けれども、作家として作品を描き続けることで、家族の心境に答えを求めていることを知ったとき、彼女の本心が聴きたくて質問してしまった。
結局、本心は言えなかったのだろうと、私自身は答えを聴いて結論付けた。

けれども、この本を読み始めて、彼女の本心が伝わってくるように思われた。
表現のどこかに憎しみも感じてしまう。
それが自然だと思うから、読み始めてすっきりした気がする。

そして、本の題名「あちらにいる鬼」がずばり心境を言い当てているのでは・・と思う。

結婚によって、互いに成長し合うのが夫婦だとしたら、
今の夫を作り上げているものは、妻の存在を抜きにしては考えられない。

ならば、愛人もまた、その向こうに妻の恩恵を感じることなく生き続けることはできない。

彼女が仏門に入った理由ははっきりわからないけれど、そういう人の心の複雑さに限界を感じたのかもしれないと思う。

不倫への憧れは、妻という別の人物が作り上げた作品への憧れであって、そこにあるのは、自分の結婚を継続することへの自信の無さなのかもしれない。

仏門に入ることで初めて、この人は自分の人生を切り開く自信が持てたのかもしれない。




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最終更新日  2019年09月16日 11時47分26秒
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