「ミステック・リバー」
「父親達の星条旗」「硫黄島からの手紙」と、話題作を監督し続けているクリント・イーストウッド。この監督ここ数年はもうすっかり俳優イーストウッドではなくなってしまいました。それにしても監督としての腕も優れて素晴らしい。「ミリオンダラー・ベイビー」の前年の作品がこの「ミステック・リバー」です。舞台となるのはアメリカ・ボストン。いつものように路上で遊んでいた少年達、その中でひとりだけが大人に車で連れ去られてしまいます。拉致誘拐されて心に傷を持ってしまい生きなくてはならなくなってしまった少年=デイブと、ふたりの友人。それから25年後、その中のジミー=ショーン・ペンの最愛の娘ケィティが殺される事件が起こる。被害者の父、容疑者として疑われるデイブ=ティム・ロビンス、捜査する刑事=ケビン・ベーコンの3人が再会するのです。事件の夜にけがをしていることから妻=マーシャ・ゲイ・ハーデンに疑われて、そのことが発端となり自らの手で娘の復讐を果たそうとするジミーに呼び出されてしまいます。追いつめられたデイブは犯人でもないのに、自分が殺したと自白をしてミステック・リバーに沈められます。この時のデイブの弱さ、弱いものはどうしてここまで弱いものなのか。少年期の誘拐が元となって多重人格障害を起こし混乱していたとはいえ、すでに生きていくことに疲れてしまったのでしょうか。本当の犯人はケィテイのボーイフレンドの弟と友達であることで、事件は解決します。しかし過去にそのボーイフレンドの父親を抹殺したのがジミーであり、ジミー自身が被害者の父であったはずが、再度重い十字架を背負ってしまいます。そんなジミーを慰める、したたかさとプライドと持つ妻=ローラ・リニー。殺人事件の謎解きを超えて、人生の不条理、人の哀しみと怒りの連鎖は続いていくものか・・・と考えさせられラストを迎えます。全体的に暗く重い、非情なストーリーでした。この作品の演技により、ショーン・ペン、ティム・ロビンスはオスカーを受賞しました。ケビン・ベーコン、ローレンスフィッシュバーンのふたり(ふたり共、私のお気に入りの俳優です)の刑事役も悪くなかったと思います。作品中、十字架と星条旗が象徴的に使われていたのは、イーストウッド監督の意図的なものを感じます。。