日本書紀の虚構と史実/遠山美都男・著
1/10(木)のTBSラジオ、「たまむすび」のゲストで法政大学社会学部教授の大崎雄二さんという方が登場しました。元NHKの記者でもあり、中国事情に精通された方です。その話の中で、中国のコピー商品問題に触れ、”印刷技術”や”火薬”や”紙”など古代中国で発明されたものに西洋人は著作権料を支払っていないだろうと開き直っている話を紹介されました。中国人の考えって面白いな~、と思いますし、我々の感覚では理不尽で憤りを感じるレベルでもあります。中国4000年の歴史と言いますが、確かに歴史だけは古い。秦の始皇帝あるいはそれ以前からの歴史の中で、本来は国家、民族も入れ替わっているのに、それすらも多民族国家の多様性と言い放ってしまう中国。一方で、チベット問題など多様性をきちんと受け入れているわけではないところに大きな矛盾があります。日本はと言えば”万世一系”と言われた天皇家の歴史。学問的にはその成立期において何度か入れ替わっているのではないか?という見方があります。中国の歴史観と比べれば、国家成立から1800年、同一民族単一王朝と言い切っても良いのではないかと思うほどです。「日本書紀」は神話の時代から持統天皇の時代までの国の成り立ちから国家建設の歴史を伝えた書です。一方、「古事記」も同時代に成立した史書です。「古事記」それまでの伝承や記憶をまとめ、国内向けに「国体」がいかがなものかを示すのが目的であったと言われます。これに対して、「日本書紀」は対外的、とくに中国に日本国家の「格」を示す目的が強かったようです。その意味でかなりの脚色が施されているようです。特に壬申の乱で大友皇子から武力で政権を奪ったが天武天皇ですが、その天武天皇を正当化するための意図が強い。実際はどうだったのか?ということで、様々な史実やその当時の当事者心理などを加えて、事実はこうだったのではないかと仮説を立てているのがこの本です。【送料無料】日本書紀の虚構と史実 [ 遠山美都男 ]価格:935円(税込、送料別)これによると有名な「大化の改新」も蘇我氏の悪政を改めるのが目的ではなく、天皇の後継者争いの結果ということになります。それはそうで、蘇我馬子暗殺がなければ、朝鮮平定(白村江の戦い)に挑んで、歴史的な大敗をするという惨劇はなかったかもしれません。時の政権をめぐる人たちの色々な策略や欲が見えてきて、幻滅する部分もありますが、それも踏まえて日本国家の成立を担った古代人たちのロマンを感じるのが、正しい読み方かもしれません。