古事記 3
宇宙の初めにあらわれた三柱の天神は、男神のイザナギと、女神のイザナミに言葉を与えた。「地上の有様を見ると、ただ脂のようなものが漂っているだけだ、お前たちはあの地を、人間が住めるように造り上げなさい」こう命令すると、美しい玉飾りを施した天沼矛をイザナギ・イザナミに授けた。国造りという重い責任を負った二神は、天と地の間に架けられた天浮橋に立ち、天沼矛を漂う脂のようなものの中へ突き刺し、ぐるぐると掻き混ぜた。すると、次第に固まっていった。天沼矛を引き上げると、潮が滴り落ちて、積もり積もって島になった。その島をオノゴロ島という。イザナギ・イザナミは天浮橋からオノゴロ島に天降り、立派な柱を立て、巨大な邸を建てた。新婚生活を始めた夫のイザナギが、妻のイザナミに言った。「そなたの身体はどのようにできているのか?」「私の身体は美しく完璧にできていますが、ただ一箇所だけ欠けているところがあります」「私の身体も美しく完璧だが、一箇所だけ余分なところがある、そなたの欠けているところへ、私の余分なところを合わせ、塞いで国を生もうと思う」と話し合った。「そなたは柱の右側から回りなさい、私は左側から回りましょう」と、左右に分かれて回り始めた。出合ったところで、イザナミが、「なんと、見目麗しい男神でしょう」と感嘆し、イザナギも、「なんと、見目麗しい乙女だろう」と感激した。しかし、イザナギは、「女神が先にものを言ったのは、良くない徴だ」と言った。やがて生まれてきた子は骨のない子だったので、葦の舟に入れて流してしまった。次に淡島を生んだが、これも同様だったので、子の数には入らない。