カテゴリ:タイを知る!
昔は岩波新書、中公新書といったあたりは親の蔵書から拝借して「本棚の飾り」にしてはアタマのいいフリをするのに利用したものです。でも実際に完読したものは両手の指で足りる(もしかしたら片手かも!?)ぐらいか・・・。そんなサブカルチャーなわたしが、久々にちゃんとした本を買って読みました。
タイフリークのゲストの皆さんは既に書店で発見されていることと思いますが、タイの歴史書としてお手頃価格で入手できる(恐らく)初めての本が「中公新書」から刊行されました。 「物語タイの歴史~微笑みの国の真実」中公新書:柿崎一郎著 『「世渡り上手」な東南アジアの優等生』という帯タタキがなかなか購買欲をそそりますね。こうやって本の内容を実に簡潔に説明しながら購買に結びつけるテクは見習うべきものがあります。 この本は年末年始休暇の楽しみにとっておくつもりだったのが、意外におもしろくてこの土日に一気に読んでしまいました。今までタイの歴史については「地球の歩き方」の記述数ページと断片的に得た知識で「知ったかぶり」してきたのですが、これでさらにパワーアップした「知ったかぶり」が展開できることと自負します! 日本人のわれわれは基本的に単一民族で海に囲まれて国境が一意に定まるので、タイのような国の歴史は理解しづらいことと思います。タイの歴史を通観するには民族・王朝・国家および国境(支配領域)の関係を把握していく作業が必要になります。そこを本書は国家を仏教の曼荼羅図になぞらえて「大マンダラ」「中マンダラ」「小マンダラ」の支配関係で語っているところが実にユニークかつわかりやすいです。 特に興味の中心になるのは、よくタイの説明で語られる「タイは欧米列強の植民地支配を免れた国」となった背景ですね。帯タタキにある「世渡り上手」だけでは説明できないドラマが隠されていることがわかります。 日本でいうと「筒井順慶の洞ヶ峠」的な日和見姿勢が基本ポリシー(特に近代において)といえますが、それだけでなく、近接地域における英仏の植民地支配のパワーバランス、連合国と枢軸国との駆け引き、東西冷戦の狭間で、まさに薄氷を踏む状況を越えて「独立」を維持してきたことが読み取れます。特に第二次世界大戦の「敗戦国」から免れて復興するあたりのクダリは「世渡り」だけでなく「幸運」にも恵まれているとしかいえません。戦後の動乱の中心でもあった「ピブーン」あたりを主人公として映画化すれば、なかなか壮大なドラマに仕上がると思いますね。映画会社には日タイ合作での歴史大作の制作をお願いしたいもんです。 タイは今月23日に総選挙を控え、クーデター政権から民政にどう移管するかが注目されます。結果によっては歴史が大きく動く可能性もあります。本書を読むと改めてタイは文民による民主国家としては未成熟であることがわかりますから、ここ数ヶ月のタイの動向には注意が必要でしょう。 現在進行中のドラマ「タイランド」の副読本として本書を読んでみてはいかが? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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