地方で、北京から来たってすごいことらしい。
7月半ばに以前世話になっていた会社に予想外の事態が発生し、結局私はそこの会社と手を切ることにした。そのとき、それまで仕事を手伝ってくれていた中国人のLさんもその会社を離れたのだが、決まった時間に出勤して退勤するのが性に合わないとかで、しばらく私の仕事を手伝いながらアルバイトでもするつもりらしかった。ただし彼女とはしょっちゅう会えなくなった。そのLさんが、ある企業の研修を3日残した8月のある日、電話してきた。「実はアルバイトで、突然杭州に出張することになりました。9月の末まで帰れないかも。8月の企業研修のお手伝いできなくてごめんなさい」。バイトで出張???1ヶ月もか?なんでも、とあるチェーン店が杭州に進出する手伝いの仕事らしい。彼女が北京にいない状態で研修をやるのは不安だったものの、おかげさまでどうにかなった。そして、久々に彼女に会う。まだ一時帰国のときのお土産と、研修のお手伝いのお駄賃を渡す。ランチをしながら、杭州はどうだったか聞いてみる。「あのねえ、すっごいおもしろかった!」何がおもしろかったの?とまたたずねる。「実は私、従業員教育してきたんですよ。実は予測外のことだったんだけど、私、先生やったんですよ~!」何っ!?先生をぉぉ?????「そうそう、それで、以前にxiaomiさんがやってた研修あるでしょ?お辞儀の仕方とか、座り方とか、客の案内の仕方とか。あれを思い出して、私、先生やりました!」・・・予想外である。営業はいろいろできそうな雰囲気の子ではあるけれど、まさか講師がやれるとは思わなかった。さらに。「北京から来たって行ったら、それだけで珍しがられて。やっぱり地方から見たら、北京ってすごい影響力あるんだって解かりました~」おまけに。「北京に戻るときになったら、こっちに残って従業員教育の仕事をやるつもりはないのかと言われたんです!なんだかこんなに歓迎されるなんて思ってもみなかったです~!」相当、Lさんの杭州出張は彼女にとって印象深かったようである。それにしても、ちょいと私の真似してそんなに慰留されるなんて、中国の地方はまだまだ未開の荒野だな。Lさんが私のメソッドを私の関係のないところで教材として使ったことに関して、別にとやかく言うつもりは一切ない。こうした情報を中国人が素直に受け入れる土壌ができるのであれば、多少流用されることはむしろ歓迎なのではないかと思う。注目すべきなのは、「北京から来た」というのが中国の地方では大きなブランドになりえるということ。「日本から来た」でも「上海から来た」でもいいのかもしれない。私の耳には、日本か上海から来た方が聞こえがいいような気がしなくもない。中国人にとって所詮日本は外国で、上海は中国の中の別世界で、という感覚があるのだとしたら、北京の名前は充分に価値がある。これは以前、ある人が話していた。「一定のお金を稼ぎたいなら上海が一番いい。でも上海圏を越えて中国全土を相手にしようと思ったら、名目上でも軸足は北京に置いておいた方がいい」。“北京”と付くことは、地方の中国人を承服させるだけの説得力があるらしいのである。おまけに私は日本人。それだけで価値があるらしい。にしても、現実はまだまだ明日をも知れぬ状態である。実際に体を使って働いているより、あれこれ考えている時間の方が長い。=実際の収入に結びついていない。ということで、誰か、代わりに営業して下さーい。当然報酬は出しますから~。