これも。叙述系やね。
354 名無しのオプ :2006/12/30(土) 09:26:16 ID:qFHrh6yn「おい、まだかよ?」俺は、女房の背中に向かって言った。どうして女という奴は支度に時間が掛かるのだろう。「もうすぐ済むわ。そんなに急ぐことないでしょ。…ほら翔ちゃん、バタバタしないの!」確かに女房の言うとおりだが、せっかちは俺の性分だから仕方がない。今年もあとわずか。世間は慌しさに包まれていた。俺は背広のポケットからタバコを取り出し、火をつけた。「いきなりでお義父さんとお義母さんビックリしないかしら?」「なあに、孫の顔を見た途端ニコニコ顔になるさ」俺は傍らで横になっている息子を眺めて言った。「お待たせ。いいわよ。…あら?」「ん、どうした?」「あなた、ここ、ここ」女房が俺の首元を指差すので、触ってみた。「あっ、忘れてた」「あなたったら、せっかちな上にそそっかしいんだから。こっち向いて」「あなた…愛してるわ」女房は俺の首周りを整えながら、独り言のように言った。「何だよ、いきなり」「いいじゃない、夫婦なんだから」女房は下を向いたままだったが、照れているようだ。「そうか…、俺も愛してるよ」こんなにはっきり言ったのは何年ぶりだろう。少し気恥ずかしかったが、気分は悪くない。俺は、女房の手を握った。「じゃ、行くか」「ええ」俺は、足下の台を蹴った。