タオル
私は10年ぐらい独り暮らしをしていて、転職を機に実家へ戻ることになった。10年も暮らしていると家財道具は一通りある。鍋とか食器とかはダブるので大半はしまったままだが、タオルは数が増えた方が便利なので私のものもあわせて使っている。風呂に入ろうとしてタオルを選ぶときにふと気付いた。なぜか、もともと実家にあるタオルは選ばず、自分が前から使っているタオルばかりを選ぶのである。タオルぐらいと思うかもしれないが、習慣というのは面白い。棚の下のほうにあっても、わざわざ引っ張り出してくる。体を拭いているうちにタオルにも愛着が出てくるのだろう。家族の者は逆らしい。以前、私がお気に入りで使っていたタオルを「ぞうきん」へリストラされたことがあった。彼らにとっては私のタオルは棚に数多く並んでいるタオルの中でも最もなじみが薄く、かつボロく(そんなにボロくはなかったのだが)、真っ先にリストラ対象となったのだろう。そんな弟だが、赤ちゃんの頃から使っている30年物のタオルを愛用している。30年も使っていると、穴だらけなのだが、弟にとってこのタオルは欠かせないものらしい。さながらスヌーピーのライナスの毛布といったところだろうか。物を大切にすると、物に愛着がわく。やがて自分の好きな物で囲まれるようになる。お金も貯まるし、落ち着くし、いい事尽くめである。