青い文学 第10回 『走れメロス 後編』 感想
『青い文学』シリーズの中で、今のところ『走れメロス』が一番良かったです。あらすじは公式HPから。メロスは言った。「セリネンティウスよ…私は走ったのだ…君を欺くつもりは微塵もなかった…信じてくれ」。だが……嘘だ! そう叫んだのはセリネンティウス、いや、高田だった。一緒に東京に行こうと約束したあの日。城島は来なかった。嘘を書き続けることはできない。筆を折りそうになる彼のもとに、城島の幻が現れる。「最後まで書き続けろ、俺は、待っているから…」そんな中、突然の一報が届く。それは城島の妻からだった。原稿を書く高田、そして劇中劇の“走れメロス”。虚と実入り混じって、高田が友に裏切られたと言う思いから解き放たれるまでを描いてました。何といっても、木内・高田が素晴らしかったですよ。けれんみのない語りで、高田の思いを見事に演じていました。やっぱり良いなぁ、木内さんの声と語りって。約束の時刻、場所に城島は来なかった。裏切りの思い出によって、人は所詮1人と思う高田。劇ではメロスが走る。しかし王が雇った野盗に襲われる。この戦いのシーンの動きが凄く良くって、楽しんじゃいました。激流に身を投げ、何とか岸についたメロスは疲れ果て、もう走れないと思う。しかし決して友を裏切ったわけではない、とメロス。高田はそれを「嘘」だと言う。友に裏切られた自分には、メロスが走り続ける物語は書けない思う。すると城島の幻が現れる。生霊みたいなものですかね。かつて学生の時に高田に言ったように、城島は「最後まで書き続けろ、俺は、待っているから…。」と言う。そして城島の妻からもたらされた報せ。心臓の弱い城島は余命いくばくもなく、高田に会いたがっている。立ち上がったメロスは走る。そして高田は汽車に乗り、城島の元へと急ぐ。日没が近づき急ぐメロスと、高田の焦りがリンクして、良い感じです。セリヌンティウスは今まさに処刑されてようとしている。しかしその場に駆けつけるメロス。城島の病室に駆けつけた高田。城島ったら、年齢を重ねて老けて、病気でやつれていても美形。特に城島が言い訳するわけでもなく、高田もただ「待っていたんだ」と伝えただけなんですけど、高田の執着が溶けて消えていくような、二人のやりとりが良かったです。会ったことで、かつてお互いが抱いていた友情が戻ってきたようなシーンでした。グチグチと城島が言い訳しなくて、良かったと思いました。古き善き時代の男の友情って感じ。高田は、城島の妻から、遺品として懐中時計を渡される。あの約束の時にもらい、高田が投げ捨てた時計。そこで時が止まっている。それを城島は「高田のもの」と言っていたんですね。高田は友の為に走りきったメロスを書き上げる。そして新たにまた、物語を書こうとしている。とても丁寧で美しい作画で、楽しめました。やっぱり上出来な作画のアニメって良いですよね。『魍魎の匣』の音楽を使ってましたよねぇ?。でも妙にこの物語に合っていた気がする。この『走れメロス』はとても良かったと思いました。面白かったです。で、次回は12月26日に一時間の放送で、『蜘蛛の糸』と『地獄編』をやるようです。久保先生のキャラデザインですね。次回予告見たら、何だかまた『桜の森の満開の下』風味って感じで・・・。芥川龍之介は小説も、ご本人も(笑)、大好きなので、勘弁して欲しいと思ったりする...orz...