シンデレラ(仮題)2
「お姉ちゃんゴメンね足怪我してゴメンね、入院なんかしてゴメンね」包帯でぐるぐる巻きになった足を涙目で見ながら少年は病室のベッドの上から懸命にゴメンねを繰り返す。そんな弟の言葉に少女は明るく笑顔で答えた。「なーに言ってんのよ、あんな階段のてっぺんから落ちて足一本ですんだんだからラッキーよ!今年のラッキー大賞とったんだからあんたはおっきな顔してここでおいしいもん食べてなってエアコンもきいてるし、ご飯もきちんと食べられるしよかったね~」「で、でもお姉ちゃんは?」「そんな泣きそうな顔しない!私は大丈夫だよっ」「だって、アパートで一人になってもし父さんが帰ってきたら・・・」とうとう弟の目から涙が溢れ出すその涙を見て少女は貼り付けた笑顔を引きつらせ言う。「ふん、そんな心配しなくってもあんのバカ親父は当分もどりゃしないよどこにいったんだかもわからない・・・来月の生活費ぶん取ってったんだからきっとどっかで飲んだくれてるよ」そういった少女は、うつろな瞳で今日の午後に起こったことを思い返していた。土曜日の今日は補習のため登校しなければならなかったので前日に引き出しておいた家賃と光熱費を昼ごろには大家さんに渡すようにと弟に預けたのだが弟が大家さんのところへ行くため部屋を出たところはちあわせした父親が手にした封筒に目を留めたそこにまとまった金額が入っていることに気づいた父親ともみ合ううちに弟はアパートの階段から転げ落ち病院に運ばれたのだった。連絡を受け病院にかけつけた彼女は足の骨を折ったものの、弟の命に別状は無いとわかるとあまりの腹立ちに救急治療室で叫んでいた「あんのっどグサレ親父!どこまで腐りきった根性してるんだよっ!!お、お、お金のためにあんたに怪我させてしかも救急車を呼んでくれたのは大家さんだってっ?冗談じゃないよっ!あんなの父親でもなんでもない今度こそ、今度こそ、息の根を止めてやるっ!!」痛みと恐怖に引きつった顔をした弟は懸命に涙をこらえながら興奮する姉をなだめる。「お、お姉ちゃん!そんなことしたらおまわりさんにつかまるよ?お姉ちゃんが捕まっちゃったら僕、僕・・・」そのおびえた声に我に返ったのか「ん、ごめん・・・驚かせちゃったよね。大丈夫だよ、あんな親父のために犯罪者になるなんてそこまで私も馬鹿じゃない。・・・あんたが病室に落ち着いたら家に必要なものをとりに行ってくるね」そうして弟が落ち着くのを見守ってから病院を後にし父親のいそうなところを数箇所まわった後河原で自分自身の気持ちをなだめたのだった。