栃谷戸公園
この代掻きが終わったばかりの棚田がどこだか分かる人は多摩地域にかなり詳しい人で、しかもこれが造成された公園の中につくられた棚田だということを知っている人は相当の通ということになります。俄かには信じられないと思いますが、ここは、元々あった谷戸が深く、盛土して人間が扱いやすいように造成された公園です。棚田の向こうに見えている緑も、元々そこにあった雑木林のように見えますが、実は半分は造成法面に後で植えられたクヌギやコナラを主とする雑木林なんですね。さて場所ですが、八王子市の東南部にある「みなみ野シティ」というニュータウン内。環境共生へのさまざまな取り組みで知られている街でもありますが、住民による緑の維持管理が活発に行われている街という点でも良く知られています。その代表的な団体が「みなみ野自然塾」で、その主な活動フィールドがこの写真の栃谷戸公園というわけです。ここには水田のほかにも段々畑があり、住民の皆さんで「里山グループ」「田んぼグループ」「畑グループ」に分かれて公園全体を維持管理されています。ちなみにこの団体は八王子市の公園アドプト制度適用の第1号だそうです。段々畑にしろ、棚田にしろ、かつて人間が造成してつくったものですが、それが美しい理由は、地域のたたずまいと一体化していることにあると言われています。産業構造の変化によって衰退した里山が、大地に敬意を払ったランドスケープと、現代に生きる都市住民の関与によって再び生かされている風景がここにあります。