ついに福岡で「豚骨系」が少数派へ
とんこつラーメン発祥の地、福岡で塩や醬油などの「非豚骨系」ラーメン店が増加しています。西日本新聞によると、2022年の福岡県内のラーメン新規出店は豚骨が4割、非豚骨が6割で、2017年から非豚骨系が増え、2019年以降は豚骨を上回るようになったそうです。 豚骨ラーメン発祥の地である福岡では、すでに多くのラーメン店が豚骨ラーメンを売りにしており、豚骨文化の中で育ってきた福岡の人々には「自分の好きな豚骨ラーメン店」が存在しており、新規開拓はしないとのことです。新規出店者にとっては、豚骨ラーメンの競争で自店に引き込むのは難易度が高いと考えているようです。 また、豚骨ラーメンの製造コストが一般的に非豚骨ラーメンより高いことも理由として挙げられます。鶏ガラは弱火かつ短時間、少量の骨で出汁がとれますが、豚骨は強火かつ長時間、大量の骨を煮立てないと出汁がとれません。光熱費や人件費、材料費、事業系ごみ袋代などのコストを考えると豚骨のほうが大きいのです。 価格付けの上で豚骨ラーメンは500-600円程度という安価なイメージが定着しているため、価格を上げると高く感じられるため、客離れにつながりやすいこともあります。物価上昇でラーメン店は、1杯1.000円を超えるラーメン店も多くなってきています。福岡の豚骨ラーメンは、飲みにいった後の締めに食べるもの、または小腹がすいたときの「おやつ」として認識されてきたので、安く食べられるものといったイメージが根付いています。 福岡の豚骨ラーメンでは一般的に1杯につき100gの細麺が使われています。東京や大阪などの非豚骨ラーメンは1杯につき麺は130-140gで、麺は細麺とは限りません。福岡の非豚骨ラーメンで存在感を示しているのが「一風堂」です。世界展開する豚骨ラーメンのチェーン店ですが、創業時から醬油ラーメンも提供しています。 2012年に開業した「志那蕎麦 月や本店」の影響も大きく、「九州極上醤油ラーメン」のキャッチコピーで福岡・店屋町にオープンしました。当時、福岡ではまだ珍しかった醬油ラーメンを展開し、注目を集めました。この頃から福岡市内に非豚骨ラーメン店が増え始めました。スマホやSNSの普及もあり、非豚骨ラーメンの情報を得て、受け入れ始めました。 豚骨ラーメンに慣れ親しんできた福岡の人々のベースには豚骨への愛、大事にしている豚骨ラーメン体験があります。良くも悪くも保守的で、総じて郷土愛や地元意識が強く、もつ鍋、明太子に並ぶ福岡の名物として、豚骨ラーメンがあることを誇りに思っています。福岡のラーメンは豚骨がベースにあり、ラーメンと言えば豚骨ラーメンという感性は、観光資源として大事にしたいという共通認識は持っているようです。 福岡の人たちはそれゆえ、非豚骨は、今日はラーメンを食べようかと考えたとき、豚骨と並ぶ選択肢のひとつになっている印象です。非豚骨には華やかなものが多く、まったくの同列というより少しハレの気があるかもしれません。 福岡で非豚骨ラーメン店が増えていますが、豚骨ラーメン店も変わらず存在しています。豚骨をベーシックなラーメンと捉える福岡の人々にとって、非豚骨はベーシックとは異なるラーメンの一カテゴリであると考えているようです。非豚骨・豚骨は「共存」という形で、福岡に存在し続けるのでしょう。