第十八富士山丸、紅粉(べにこ)船長の北朝鮮抑留の真実 単行本写真付
この本は、1983年、あらぬ嫌疑で北朝鮮に逮捕抑留され、強制労働刑を科せられ、7年後の1990年10月ようやく日本帰還を果たした、紅粉勇(べにこ・いさむ)船長の克明な記録である。この時のきちんとした日本政府の対応があれば、今の拉致事件も既に解決しているのではないかとさえ思う内容である。● 門司入国管理局所長らは紅粉氏らが北朝鮮へ向かえば逮捕されることを承知で「富士山丸へ北朝鮮から侵入した密入国者」の送還業務に当たらせた、故意と無責任。● 1990年9月の、金丸、田辺、訪朝団が書かされた「戦後四十五年間の謝罪と償い」の合意。● 同年10月、自民党幹事長小沢一郎氏と土井社会党委員長が、一方的に紅粉氏が「有罪」と認めた上で、「北朝鮮の返還措置に感謝する」礼状を書かされ、全日空機で紅粉氏と機関長をピョンヤン空港まで迎えに行ったこと。●「北朝鮮での扱いを帰国後、他言したら家族に危害が及ぶ」という北朝鮮の脅しを恐れ、紅粉氏は最近まで口を閉ざしていた。金丸氏も黙っているように言い、日本国からの助言もなかった。●帰国後17年、紅粉氏から抑留中の事実を聞きに来た役人は一人もいなかった。(注・日本人を危難から守れなかった国の責任を同氏に謝罪すべきことは勿論、今の拉致事件解決の手掛りになることが山ほどあったはずである。)●この件を機に倒産した船主、富士汽船が起こした「国家賠償請求訴訟」には、外務省、法務省は事実を曲げ、一方的に紅粉氏らが自分の独断で再度、北朝鮮へ行き逮捕されたと言い、裁判所がそれを認め、敗訴となった。この本を読んで、北朝鮮のことでなく、日本は法治国家なのか。平凡な市民が安心して暮らせる国なのか、改めて心配になる。役人も政治家も間違っていることを勇気を持って「違う」ということはどうしてできないのか。この本は本年8月1日発行。(有)ベラカ出版 「人生の嵐を越えて」副題―北朝鮮抑留七年間の真実定価 1,300円