受贈図書紹介:船坂圭之介第三歌集「憧憬遍歴」 画像付
船坂圭之介氏の第三歌集である。昨年七月に第一歌集「風韻無限」を出され、続いて第二歌集「孤唱傷心」、そして今回第三歌集「憧憬遍歴」を出版された。僅か半年の間に、こんなに精力的に歌集出版をされ、人工透析をされているお体に差し障りがないかと大変心配している。しかし、氏は不動の決意のもと、歌集発刊に命の炎を燃やし続けているように見える。一作から三作まで、すべて発行所は、(株)美研インターナショナル、発売元は(株)星雲社(03-3947-1021)。また、私のブログにて、既出、紹介済みであるが、同氏は、岐阜県生まれ、岐阜医科大学助教授を経て、NTT松山病院眼科部長を歴任。旧制中学より短歌を初めて、歌歴70年。氷原同人、ナイル短歌工房同人である。今回は、昭和59年~平成元年までの歌が収載されている。* 白雪にあらはとなりぬ思惟ひとつ持ちて夕べをひややかに居る* かなしみをひとつ捨てばや風舌のおよぶ窓辺に紫陽花の顕つ* 逝く夏の光(かげ)細りたりなかぞらの雲よ隠すな孤の身 孤の死を* おのづから傾斜して行く夜の闇にもたれつつ読む聖ヨハネ伝* すずやかに冬の水そが伝へ来るささやきを掌に浸しつつ聴く* 冬よさらば風にひとしほ思ひあり例へば死して後のわが位置以上、私の好みで拾わせていただいた。氏の短歌の美しさはどこから来るのだろうか、帯には前衛的と書かれているが、定型は全く崩れていない。むしろ現代語による和歌的表現と韻律への回帰による美しさであろうと私は思う。