『蜜のあはれ』 室生犀星。
老紳士「をぢさま」と金魚「あたい」の恋のお話。レトロタッチな語り口がたまりません。すっかり擬人化された金魚(歯医者に行ったり、買い物をしたりする)の小悪魔っぷりにヤラレます(´Д`) をぢさまは金魚の「あたい」に翻弄されっぱなしです。晩年の犀星が「女のひと」の結晶として生み出した変幻自在の金魚。かわゆく挑発をするその言動は、お手本にしたいくらい。例えばをぢさまが描いた金魚の絵の収入をふんだくるあたい。「だって、あれ、ほんたうは、あたいのお金ぢやないこと、あたいをお画きになつたんだもん、あたいにくださるとばかり、さうおもつてゐたわ。」そのほかにもいろんなモノをねだったりする。お家(っていうか池)、噴水、お洋服に首飾(ネックレス)。お小遣いまで当然のように要求します。金額も半端ぢゃない・・・もし自分が死んだら、別の金魚を飼うのではないかと、をぢさまに問いかけるあたい。「もう飼はないね、金魚は一生、君だけにして置かう。」とをぢさま。「嬉しい、それ聞いてたすかつた、あたい、それではればれして来たわ。何処にも、あたいのやうな良い金魚はゐないわよ、お判りになる、をぢさま。」・・・高飛車だわ。この擬人化っぷりは人形にも共通するものがあるわね。だってずきんが言うんですもの。「あたい、新しいお洋服が欲しいわ。ずっと同じのばかりでは、飽き飽きしてよ。」 台湾で有名な「華泰茶荘」ののんびり金魚シリーズ。確か台湾で買ったとき、お茶入れの缶がお魚柄だったような・・・