The Many Faces of Art Farmer (Scepter→Gambit)
アート・ファーマーの作品は、見つけ次第取りあえずゲットすることにしているが、それにしても今回の作品は「秘境」とでも言うべき作品かもしれない。とにかく録音状態が悪すぎるし、"Scepter"なんていう怪しげなレーベルが出ていたというのも運が悪かった。そんな不幸な作品でもCD化してくれる人がいるのが嬉しいではないか。この作品、内容的にはArgoの"Perception"のような渋さと深みのある好演なのである。まず、参加しているメンバーが良い。ピアノにトミー・フラナガン、ベースにスティーヴ・スワロウとロン・カーター、アルトサックスには、チャールズ・マクファーソンという意外な組み合わせ。マクファーソンを除けば、メンツだけでサウンドが想像できそうな感じがするが、まさにその通り。マクファーソンも渋い演奏に徹しており、ゴルソンとのジャズテットなんかよりも数段面白い「燻し銀」の演奏が堪能できる。更に、この作品に魅力を加えているのが曲の良さだろう。トム・マッキントシュ作品の"Happy Feet"、"Ally"、"Minuet in G"はどれも絶品。ランディ・ウェストンの"Saucer Eyes"もファーマーにはピッタリの曲風。その他、"Hyacinth"や"All about Art""People"という曲も、何となくファーマーのために書かれた曲のように思えるほど、選曲が良い。聴けば聴くほど味わい深くなるではないか!惜しむらくは、録音の悪さである。(録音が良ければ猫麻呂ポイント4.5としたいところ。)Gambitの復刻CDでは、上記セッションにマンデル・ロウ・セプテットのポギ・ベス・セッションをカップリングしている。こちらのセッションにもファーマーが参加しているので、無理やりくっつけてみたのだろうが、これが嬉しいボーナス盤となっている。普通に考えたら、ファーマーにベン・ウェブスター、トニー・スコットなんて組み合わせはありえないが、こんな不可思議なセッションが実存したのが可笑しい。ベン・ウェブの異常なまでの存在感に萌え萌えな超オタクセッションと言ってよいだろう。猫麻呂ポイント:★★★☆(3.5)The Many Faces of Art Farmer (Scepter) 1. Happy Feet 2. Hyacinth 3. Ally 4. All About Art 5. People 6. Saucer EyesArt Farmer (flh), Charles McPherson (as), Tommy Flanagan (p)Steve Swallow (b on 1,3,5,6), Ron Carter (b on 2,4,7)Bobby Thomas (ds)New York, 1964Bonus tracks;Mundell Lowe Septet / Pogy & Bess (Camden) 7. Summertime 8. Bess, You Is My Woman Now 9. I Loves You, Porgy10. I Got Plenty O' Nuttin'11. Oh Bess, Oh Where's My Bess?12. Red Headed Woman13. My Man's Gone Now14. It Takes a Long Pull to Get There15. It Ain't Necessarily So16. There's a Boat Dat's Leavin' Soon for New YorkArt Farmer (tp), Don Elliot(mellophone, vib), Tony Scott(cl,bs)Ben Webster (ts) , Mundell Lowe (g), George Duvivier (b)Osie Johnson (d)New York, July 16 &17, 1958ボーナストラックのオリジナルジャケはこんな感じらしい。