ジャズの神様の思し召しのままに

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  Dave Pell Octet / Love Story (Atlantic)

  三連休だというのに風邪を引いてしまい、すっかりジャズ・ヒッキー（引きこもり）となってしまった。おかげでブログを毎日更新できるのだが、せっかくの機会なので普段なら書かないようなネタを引っ張り出してみたのが今日の作品。デイヴ・ペルなんて聴いてる人はどうやら少ないらしい。さもありなん、と思うのは簡単な理由だ。聴いても感動のない音楽なのである。「ジャズ」というよりも「イージーリスニング」に分類すべき音楽なのだろう。こう書くと「イージーリスニング」は感動のない音楽か、とお叱りを受けそうだが、「感動のない音楽」＝「悪い音楽」とは言っていないのでお許しを。耳に心地よい音楽は必ずしも「感動」を求められないが、「上質さ」は求められるのだ。（これでイージーリスニング派へのフォローになったかな？）デイヴ・ペルの音楽は、まさに1950年代までのアメリカジャズの「上質さ」の結晶とも言える。アメリカの上流社会ではジャズがまだ"Hot"と"Sweet"という二極で考えられいた時代であり、ジャズを"Hot"と"Cool"で捉えることさえも一部のイカレポンチ団の戯言とされていた時代なのである。"Sweet"の代表格のレス・ブラウン楽団のピックアップメンバーで始まったデイヴ・ペル・オクテットは、まさに"Sweet"の王道。ウェスト・コーストの腕利きアレンジャーが、毒にも薬にもならない三文曲、もとい、心地よいスタンダードナンバーを見事に編曲し、それを腕利きミュージシャン達が演奏するのである。なんとゴージャスなんでしょう！かくして誕生した「上質」な音楽、猫麻呂のような下衆なジャズファンが聴くと何とも言えないユルユルで退屈な音楽に聞こえる訳だ。しかし、これ程の「上質な」音楽なのだから、この味が解らない人間の品性に問題があるのに違いない。そう自分に言い聞かせて聴くと、あら不思議、なんとなくノーブルな気分になるではないか。麻呂はもうフリージャズなんてお下品な音曲なぞ、聞かぬよぞ！しかし、不思議なのは、こんなおハイソな音楽がアトランティック・レーベルから出された事実である。キャピトルやＲＣＡが出しそうなものを、よりによってソウルや黒っぽいジャズのイメージが強いアトランティックが出しているところが何とも可笑しいのだ。そんなことも考えながら聴くと、この作品が妙に可愛くなってくるのである。また、ウェスト・コーストの職人派トランペッターのドン・ファガーキストが参加していることもあり、猫麻呂はそれだけでも嬉しい。それに、ジャケット写真が何ともキュートなのだ。この作品はＣＤで聴いても味気ないが、ＬＰでジャケットを眺めながら聴くと、何とも言えない味わいがある。こういう作品にハマり出すということは、猫麻呂もヤキが回ったのかなぁ･･･。猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Dave Pell / Love Story (Atlantic)

  2007年10月07日

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  Phil Woods / Greek Cooking (impulse!)

  フィル・ウッズのヨーロピアン・リズムマシーンでの目の覚めるような演奏が好きで、この時代の前後の作品まで集めて聞き始めているのだが、そんな中でこの異色作に出会ってしまった。異色作と言えば聞こえが良いが、ようは「ゲテモノ」である。猫麻呂はギリシャ音楽というものは聴いたことがないのだが、どうやら当作品は「ギリシャ音楽４０％、ジャズ３０％、その他音楽３０％」配合（猫麻呂推定）のワールドミュージック系作品らしいのだ。ブズーキーというオリエントな響きの弦楽器が入ることで、気分はすっかりシルクロード、アレクサンドロス大王のラグタイムバンドなのである。（意味不明）しかし、フィル・ウッズというサックス奏者は凄い人だと思う。相手がクインシー・ジョーンズだろうがミシェル・ルグランであろうがギリシャ音楽であろうが、全くお構いなしで自分の音楽を奏でてしまう。ブリリアントな音色で歌い上げてしまうのである。特にこの作品ではワールドミュージックを楽しんでいるように思える。コルトレーンのように異文明の音楽と同化しようとするのではなく、西洋と東方世界の違いを強調しながらも違和感なく共存してしまう。ＮＨＫの新シルクロードでのヨー・ヨー・マの演奏もある意味こんな感じだったのだが、フィル・ウッズの場合は西洋音楽といっても「ジャズ」や「パーカー」に絞り込んでいるところが面白いのだ。そうは言っても、ジャズ的には食い足りなさ感の強い作品で、フィルにはガツンとスイングしてもらいたいところである。ＣＤが入手困難になっているが、別に無理してかうほどのものではない。しかし、手に入らなくなると聴きたくなる、という悲しいマニアの性癖を持っている人は、今のうちに血眼になって入手した方が良い。こんな作品は簡単には再発されないのだから･･･。猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Phil Woods / Greek Cooking (impulse!)

  2007年05月26日

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  Chet Baker Plays the best of Lerner and Loewe (Riverside)

  いきなりですが、チェット・ベイカーのラーナー＆ロウをＯＪＣ盤中古ＬＰで買ってみました。とにかくジャケット・デザインが良いではありませんか。シェリー・マンのラーナー＆ロウと並べて飾りたくもなる美しいジャケ。これがＣＤでは味わえない醍醐味なのだ。この作品の価値の半分はジャケ写にあると言っても過言ではない。別に中身なんか聴かなくてもいいんですが、ジャケ裏を見ると、そうも言ってられない大変なことになっているではありませんか。ズートにパッパー・アダムスにハービー・マン･･･なんとビル・エヴァンスまで参加しているではないですか！これは期待してしまいますよね。しかも録音の良さで定評のあるリバーサイドですから、中身も凄いと思いますよね。ねぇ･･･。ところがところが、針を落としてみると、お風呂の中でオナラしているようなチェットのトランペットが「もわぁぁぁ」としているではありませんか。ズートとペッパー・アダムスがブイブイやっているはずだったのに･･･一応ソロは吹いているものの、短いソロスペースしか与えられず、延々とチェットのオナラが続くのであった。しかも、ズートもペパ・アダもお風呂の中。リバーサイドのはずなのに、トンデモない録音をしてくれたものだ。聴くところによると、この時代（1959年です）のチェットはヤクでラリルレロ状態だったため、プロヂューサーのオリン・キープニューズがコンセプトの企画からサイドマン召集まで全てお膳立てしたらしい。そもそもチェットの本籍はパシフィック所属である。ジャケ裏にも"CHET BAKER appears through the courtesy of WORLD PACIFFIC RECORDS"と書いてあるではないか。主役が借り物のレコードセッションというのも珍しいわなー。つまりは、所属レコード会社に見捨てられていたチェットをキープニューズが拾ってきたということだろう。そんな状態なので、チェットの演奏はキレがなく、メロディーをなぞっている程度。チェットの本領は今も昔も「綱渡りプレイ」に尽きると思う猫麻呂としては、本作品のチェットはぬるま湯的で面白くないのだ。下手でもいいから、チェットにはもっとギリギリを攻めて欲しいのね。（B-4の"Show Me"では激しく攻めてロストしかけているようだが。）だから、キープニューズのコンセプトに問題ありと言える。普段はいい仕事する名プロデューサーなのにねぇ･･･。そうは言っても、ＬＰのジャケ写がいいから許してしまおう。ジャケだけの問題ではなく、何故か不思議とＬＰだと寛容になれるのだ。良くも悪くもディスクとの一期一会は大切ですからね･･･。猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Chet Baker Plays the best of Lerner and Loewe (Riverside)

  2007年01月07日

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  Stan Getz / Imported From Europe (Verve)

  ゲッツと言えばスウェーデン好きのジャズマンというイメージが強いが、２番目の奥さんがスウェーデン人だったらしい。要するにパツキンが･･･。さて、ヴァーヴには"Stan Getz in Stoclholm"というワンホーン・アルバムがあるが、今日のＣＤはスウェーデン人ジャズメンと大型編成で録音された1958年の作品。しかし、やはり大型コンボでの作品はゲッツの天才的ソロを堪能するにはもの足りない。ゲッツのソロだけを聴きたいのに、ベニー・ベイリーのうるさいトランペット・ソロなんぞを聴かされるのはうんざりである。このオッサンさえいなければ。まだマシなセッションとなっただろう。選曲もイマイチ。"Topsy"なんてつまらない曲をやらせるくらいなら、"Body and Soul"でもやって欲しかった。とにかくゲッツにスイング時代の手垢のついた曲をやらせるのは好きではない。縦のりのゲッツなんてゲッツの魅力が半減なのだ。このＣＤ、一番落ち着いてきけるのは、バリトンサックスのラース・グリンの作曲した"Stockholm Street"。ゲッツのクール・サウンドとホーン陣のクールなアンサンブルの絶妙な組合せが絶品なのである。他の曲はこの曲の前座としてＢＧＭとして楽しむ程度で良いだろう。Stan Getz / Imported From Europe (Verve)

  2005年12月14日

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  Thelonious Monk / Monk's Blues (Columbia)

  モンクの音楽を大編成で演奏しようという試みは何度か行なわれている。今回は、モンクのカルテットにオリヴァー・ネルソンのアレンジのオーケストラをくっつけてみた企画もの。この時期のモンク・カルテットは脂がのってウマーだし、ネルソンのアレンジもバッチリかっこいいのだが、この２つが合わさると、何故か足し算通りにはいかないようである。端的に言えば「エグ味が薄まっている」。どうせやるんだったら、マントヴァーニ楽団のようなのトロトロ系ストリングスに"Reflection"のような美しい曲を思いっ切り歌わせておいて、その上でモンク・カルテットによるスラップスティックな音楽をかぶせる･･･という過激なのが良かったかな。そして、最後はジョン・ヘンドリクスのスキャットが乱入し、ピー・ウィー・マーケットのＭＣで終わる･･･なんていう強烈なギャグ作品を作って欲しかった。この作品で一番痛快なのが、他のモンク作品では聴いたこともない"Consecutive Seconds"というダサダサの曲がテオ・マセロの曲だったということ。モンクやラウズのソロのバックで演奏されるリフの恥ずかしさは突き抜けたものがある。本作品での一番の笑いどころ。その他、"Brilliant Corners"や"Monk's Point"のような面白いテーマをオーケストラで恥ずかしげもなく演奏してしまっている点もお楽しみである。（"Monk's Point"はマジメに聴いても面白い。）猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Thelonious Monk / Monk's Blues (Columbia)

  2005年12月11日

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  Don Wilkerson / Preach Brother! (BlueNote)

  この作品、本当にロンドンのクラブシーンで一世を風靡した、あの「幻の名盤」なんですかねぇ･･･。昔から不思議で仕方がない。ソニー・クラークにグラント・グリーン、ブッチ・ウォレン、ビリー・ヒギンスというＢＮ屈指のハードバッパーを投入しておいてＢ級ブローセッションをさせるなんて、アルフレッド・ライオンのセンスを疑いたくもなる。しかし、ここでよーく考えてみると、この豪華メンバーで、こーんなアフォ・セッションを残してくれたのは素晴らしいことなのである。恐らく２１世紀になってブログというものが流行ることを見越して、ブログネタを提供しようという、海の底よりもふかーい深い考えがあってのことに違いない。ジャズの神様、恐るべし･･･。確かに、アフォ・セッションとしてはズバ抜けた凄みがある。３曲目の"Dem Tambourines"のノリの良さ。タンバリンをバックにテナーサックスが登場するなんて、天才ソニー・ロリンズでも思いつかなかったこと。よく恥ずかしげもなくやってると感心するが、でも面白い。４曲目の"Camp Meetin'"も、既にジャズのノリではない。宴会の余興でこういうセッションをやったら、さぞかし盛り上がるだろうなァ。サックスは床に寝そべって吹かねばならないなァ。次はブルースで、即興で歌詞を作ってボーカル・ソロ回し（というのが正しいかどうか･･･？）というゲームも楽しそうだなァ。最後は、ラッパのベルからビールを入れて、マウスピースから飲む「早飲み大会」するんだろうなァ。楽器の中をキレイに掃除しておかないと、ヘドロ入りは辛いよなァ･･･。（妄想は続く）ソニ・クラである必要は全くないが、それでもやっぱりソニ・クラと分るところが嬉しい。とりあえずは、これだけで十分。1500円だからこそ許される内容である。しかし、やっぱりお耳見直しが必要かも･･･（アーネット・コブあたりでガツンとね！）。猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Don Wilkerson / Preach Brother! (BlueNote)

  2005年11月15日

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  Tony Fruscella (Atlantic)

  「トランペットの詩人」という日本語サブタイトルのついたフラｯセラ唯一の正式リーダー作品。この作品を名盤だと称する人もいるようだが、そんな立派なものではないと思う。かなりマニアックな聴き方をする人にだけウケる典型的な重箱の隅型作品だと思うのだが、どうだろうか。それではどのような人にウケるのかを考えてみよう。まずはフラｯセラのトランペットが好きなタイプ。いわゆるラッパもの好きには絶対ウケが悪いのがフラｯセラである。ハイノートは一切使わない（出せない？）し、演奏に派手さがない。いつも下向いてショボくれたような演奏しかしない。晩年のチェット・ベイカーに通じるところはあるが、枯れた味わいというものではない。一般的なジャズ・トランペットの魅力を全て否定したような、ある意味アナーキーなトランペッターなのである。それならフラｯセラの魅力は何か、ということになるのだが、中低音へのこだわりと金管楽器のクールさ＋暖かさではないだろうか。もっと簡単にいうと、管（くだ）へのこだわりということだろうか。上手くは説明できないが、こういう世界もあるんだなぁ、と思うようになった。この世界、リード楽器や他の金管楽器では真似出来ない世界ではある。（誰も真似したいとは思わないだろうが･･･）次に、よりジャズオタなタイプとしてはアレン・イーガー・マニアのケース。アレン・イーガー（ts）は録音が少ないので、とにかく録音があれば見つけ次第全部購入してしまうタイプである。私もこんな人の気持ちはよく分るが、イーガーに対してそこまでの思い入れは持てなかった。それでも、やっぱりイーガーはいいがー！(-Д-)ｻﾑｲﾈｪその他、ジャケ買い派やダニー・バンク・ファンクラブ（あったら怖い）等の少数民族もいるとは思うが、善良な市民として社会生活を営む人の大半はこのようなマニアックな作品を生涯耳にすることないだろう。そんな人生では淋しすぎる、と思う奇特な人は試しに買ってみると面白いだろう。恐らく最初はガッカリすると思うが、そのうち何故か聴きたくなる日が来るに違いない。ちなみに、私は２～３年に１回くらいの頻度でこの作品が聴きたくなるようである。猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Tony Fruscella (Atlantic)

  2005年09月27日

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  Count Basie / Basie Meets Bond (Capitol)

  まずはジャケット写真をご覧ください。何ともいえないこのチープさが堪りません。カウント・ベイシーが映画００７の音楽をカバーした、とってもコマーシャルな1965年の作品。あまり目くじらを立てて聴いては面白くない。ベイシーの演奏する００７というだけでも笑える･･･という人には案外楽しめるだろう。そうは言ってもこのＣＤ、マイケル・カスクーナ大先生が再発を進めている訳だし、ロン・マクマスターの24bitリマスタリングという気合の入れようはダタモノではない。ベイシー・ファンとしては、あのソニー・ペインが参加していること、ロックジョー・デイヴィスを始め、アル・アローンズやアル・グレイ、エリック・ディクソンのソロも（ちょとだけですが）聴ける、という面白さがある。この音楽を演奏するためにはベイシー・オーケストラである必要はないが、ソロで登場するのが個性的ないつもの面々であり、いつものフレーズが出たときにニンマリできる人にはオススメなのである。しかも、リズムがやっぱりベイシーなところが何とも微笑ましい作品なのだ。００７マニアのお友達がウチに来たときにこのＣＤをかけて反応を見るのが楽しみである。猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Count Basie / Basie Meets Bond (Capitol)

  2005年09月24日

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  Dizzy Reece / Blowin' Away (Interplay)

  今日のＣＤはディジー・リースが妙中プロデュースで録音したマニアックな１枚。このＣＤ、今では中古でしか入手できなためブログで紹介すべきかどうか迷ったが、この洋ピン（表現が古かった？）みたいなジャケット写真を掲載したいがために取り上げてしまった。（皆さん、スミマセン！）このＣＤ、ディジー・リースのリーダー作なのに、何故かテッド・カーソン(tp)も参加している。そればかりか、２曲目"All The Things You Are"ではリース抜きのカーソン・カルテットだし、"Moose The Mooche"ではピアノトリオなのだ。リースとカーソンのバトルものというだけでも奇妙なのに、全く不思議な作品である。ハッキリ言って、リースもカーソンもダメ・トランペットぶりを披露してしまっている３流作品なのだが、実はリズムセクションが素晴らしい。クロード・ウィリアムソン(p)＋サム・ジョーンズ(b)＋ロイ・ヘインズ(ds)なのだ。こんなに美味しいリズムセクションをバックにリース＆カーソンのバトルを録音するなんて、妙中さんのセンスは凄すぎる！ダメ・トランペットと評している理由は、リースもカーソンも熱くなり過ぎだからなのだ。どうもラッパ吹きが２人以上集まるとロクなことにならない。普段は２人ともバカ吹きするタイプではないのに、急に闘争本能に火が付いたのかもしれない。そんな中でも比較的冷静に演奏しているのが５曲目のバラード"Marjo"。本音としてはウィルソンのピアノだけを聴いていたいのだが、リースもカーソンも神妙に演奏しているので聴きやすい。一番おバカ度が高いのが"Walkin'"。この二人、ガチンコでこんなにバップフレーズを吹いてしまって、普段の仕事に影響しないのか、老婆心ながらも心配してしまう。それにしても、リースとカーソンという音抜けの悪いトランペットを２人並べたこの企画の意図は、一体何だったのだろう？（ジャケットとの関係も知りたい。）猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Dizzy Reece / Blowin' Away (Interplay)

  2005年08月08日

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  Arnet Cobb / Blue and Sentimental (Prestige)

  このＣＤは、"Sizzlin' (Prestige)"と"Ballads by Cobb (Moodsville)"の２枚のＬＰを１枚のＣＤにまとめたものであるらしい。しかし、このジャケット写真、コブの精悍な顔つきがとてもいい。この作品の特徴は、コブがレッド・ガーランド・トリオをバックに、アップテンポの曲はマッタリと、バラードはテンポを速めにマッタリと、どんな曲でもマッタリと吹いているところだろう。コブの音色はジーン・アモンズやロックジョー・デイヴィスの湿系ではなく、乾いた感じのする乾系である。アップテンポの曲でのバトルでは乾系の方が有利だが、バラードは湿系の方が圧倒的に優位にある。バラードでテンポを速めにしているのはこの理由だと思うが、アップテンポの曲で爆発するコブを期待していただけに、やや不満が残る。猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Arnet Cobb / Blue and Sentimental (Prestige)

  2005年06月11日

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  Pier Paolo Pozzi / Greeting From... (A-Records)

  イタリア人の名前があったのでとりあえず手にとって見たら、なんとパオロ・フレス(Paolo Fresu)の名前があったので、まずはゲット。中古で金８００円也。この作品、ドラマーがリーダーで、ギターとベースのトリオにトランペットが入ったり抜けたり、という構成。全体の雰囲気を作っているのはギターのファビオ・ツェッペテッラ(Fabio Zeppetella)のようだ。私はギターはあまり得意ではないのでコメントのしようがないが、マイルスがガムを噛みながら出てきそうな雰囲気のエレキギターが気に入った。しかし、私の場合はどうしてもトランペットに耳が行ってしまうので、フレス中心にコメントしよう。１曲目はミディアムの優しい曲。フレスの優しいミュートプレイが楽しめる。やっぱりこの人は、マイルスよりファーマーだ、と思った。２曲目が電気マイルスを髣髴とさせる演奏。フレスもそれっぽい吹き方をして楽しそうに演っている･･･が、マイルス・バンドのような緊張感はやっぱりない。フレスのマイルスはなかなか良く出来ているのだが、マイルスのような危なっかしさが出て来ない。フレスは品行方正な人なんだろうか･･･。３曲目はフレスがお休みなので、トイレ休憩。（ギター・トリオでそんな感じの演奏だったし･･･。）４曲目もトリオ演奏につき、タバコ休憩。何だか楽しそうなギター・トリオをやってるらしい･･･。（悪くないです。）５曲目もトリオ演奏。何だかゆったりした音楽をやっているようだが、テレビをつけたらニュースで中国の反日デモをやっていた。音楽と映像のミスマッチを楽しむ。６曲目でようやくフレスが昼寝から帰ってきたようだ。まるで寝起きのような演奏。７曲目はルバートがそのまま続いたようなつかみどころのない曲。フレスの夢見るようなトランペットは、こうやって女性ファンの心をくすぐるのだろう。全国の男性トランペッターの皆さん、これですよ、コレ！（って、やっぱり容姿だったりして？）最後にマジメにコメントすると、一部とても面白いところがあるものの、全体的には緊張感のないタレ流し風演奏のように思える。ＢＧＭとして製作されたのなら頷けるのだが、マジメに聴くには物足りない。フレスについてはもう１枚ゲットして来たので、近日中にコメント予定。猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Paolo Fresu (tp,flh)･･･1, 2, 6, 7 曲目のみFabio Zeppetella (g)Jean-Jacques Avenel (b)Pier Paolo Pozzi (ds) 1. Song For Giulia 2. Sei In Sei 3. Rosmarino 4. Il Cane Giallo 5. Up And Down 6. Banlieue Nord 7. Saluti Da PozzuoliRecorded on April 1997【予告】ＧＷ明けより内容をリニューアルします。「名盤探検隊（仮称）」という特集も始めようと思っていますので、ご期待下さい。

  2005年04月14日

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  Randy Sandke / Cliffhanger (NagelHeyer)

  この作品は、いわゆるモダン・スイングという範疇になるのだろうか。しかし、「スイング」と聴いて、白髪頭のオッサンがインチキ笑顔で手垢まみれのスタンダードを演奏しているのを想像したのであれば大間違い。Randy Sandke（ランディ・サンキって読むんでしたっけ？）というオッサンは、スイング派のはずなのにクリフォード・ブラウン一派のフレーズを使ったり、そのくせ語尾は必ずビブラートをかけたり、何故かマイケル・ブレッカーとの共演盤があったり･･･と支離滅裂な面白いトランペッターなのだ。しかも、無類の猫好きらしく、ジャケ写真に猫が登場するものが多いとか･･･。猫麻呂なんだからちょっとはヨイショしておこう。このオッサン、楽器の扱いはメチャクチャ上手い。ビッグバンドやスタジオでの活動がメインな人なのだろうか。あとは、誰かが首に鈴をつけておとなしくさせておけば、なかなか良い演奏をするのだが、暴れ始めるとかなり品の無い音楽になってしまう。ランディを始めて聴いたのは、ハリー・アレンのNagelHeyer盤"A Night at Birdland"での共演者としてだった。ハリー・アレンとのコンビは、両者のコンセプトが近いせいもあって大変良い。このＣＤでもアレンとの２ホーンとなっているのが最大の魅力だ。ただし、今日のＣＤでのランディーは自己名義で張り切っているためかちょっとウルサい。最初に聴くならハリー・アレン名義の"A Night at Birdland"の方をお薦めする。このＣＤはリズム隊が超豪華でマルグリュー・ミラー(p)、ピーター・ワシントン(b)、ケニー・ワシントン(ds)なのである。こんな豪華なリズム隊をバックをカラオケのようにして吹きまくるなんてことは、ランディくらいの胡散臭いオヤジでなければできないだろう。ちなみに、オリジナル曲（７曲目と８曲目）ではランディも神妙に演奏しており、非常に良くできている。何でも出来るオッサンだという証拠か。ルイ・アームストロングやビックス・バイダーベックへのトリュビュート作品ですっかり面白みのない「おバカ・トランペット」に成り下がっていたランディが、このような形でまともなジャズに戻ってきたのは嬉しい。あとは、チェット・ベイカーの爪の垢でも煎じて飲ませ、前歯を１～２本へし折っておけば、もっと良い作品が出来るのではないか、と思う。（私、一応ランディ・ファンですから、誤解しないで下さいね。）猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Randy Sandke / Cliffhanger (NagelHeyer)

  2005年04月09日

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  Sean Jones / Eternal Journey (MackAvenue)

  アメリカのジャズシーンも次から次へと新しいタレントをよくも見つけてくるものだ。Sean Jones（以下、"シアン君"と勝手に呼びます）というトランペッターの初リーダー作を買ってみた。シアン君に関してはサイドマンとしても聴いたことがない。一体何ものなんだろう･･･？一言でいえば「今時のトランペッター」となるだろうか。まぁ、とにかく楽器の扱いが上手い。シアン君はどちらかというと美音系なのだろう。音量はでかそうではないが、甘い音から鋭い音まで使い分けている辺りは流石である。尾びれ背びれのついたモー・モー・トランペット（モネットのラジャ等）ではなく、あっさりした音色で、しかもギラギラしないところがいい。特に"You Are My Everything"では、有名なフレディー・ハバードの"Hub Tone"での同曲に匹敵するくらいセクシーな音色だ。多分、フレディーを意識しているのだろう。しかし、何かが足りないのである。やりたいことがたくさんあって、絞りきれていないのではないだろうか。フレディーは「カッコよく吹くためなら何でもやる」という邪まながらも確固たる信念に基づいて吹いた結果が、あのセクシーさだった。まだまだ青いな、シアン君。まぁ、これに懲りずに修行に励んで呉れ給え･･･。（ついでに言うと、Ｒ．ピーターソンのような煩いドラムとは付き合わない方がいいよ！）シアン君のこのＣＤ、聴き所はスタンダードの"You Are My Everything"と"God Bless The Child"、そして"The Very Thought of You"だろう。"You Are ..."のような甘い曲は、あの甘い音色が最大の武器になるだろう。フレディーのことなんか忘れてしまえば、もっと良い演奏になったかもしれないなー。"God Bless..."はミュートで素直に吹いている。これで十分。"The Very Thought..."については音色一発で惚れ込んでしまう程、美しい。猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Sean Jones / Eternal Journey (MackAvenue)

  2005年04月06日

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  The Gigi Gryce-Donald Byrd Jazz Laboratory & The Cecil Taylor Quartet at The Newport (Verve)

  今日は山下洋輔と茂木大輔のトークショーを見てきた。山下洋輔作のオーボエ・ソナタは、スティーブ・レイシーの音をイメージして書かれた話、山下洋輔がヨーロッパで「日本のセシル・テイラー」と紹介されていた話を聴いて、レイシーとテイラーの共演盤が無性に聴きたくなった。とり合えず引っ張り出して来たのがこのＣＤという訳だ。しかし、これには実は裏がある。フリーだけのＣＤでブログを書くのはとても辛いのだ･･･。だから、ニューポート・ジャズフェス（1957年）でのジジ・グライス－ドナルド・バードとのカップリング盤を持ってきたのである。セシル・テイラー・カルテットの演奏は２曲だけだが、１曲目の空中分解気味の"Johnny Come Lately"よりも２曲目の"Noma's Blues"の方が好きだ。１曲目のテイラーの暴れ方は好きだが、レイシーがやや上滑りしてしまっている。２曲目はレイシー・ワールドとなっており、テイラー先生も抑えた演奏となっている。この何とも言えないひねり方が私は好きだ。次のグライス－バードであるが、リズムセクションが渋い。Hank Jones(p), Wendell Marshall(b), Osie Johnson(ds)という手堅いリズム隊に、どうも胡散臭いフロントが２人。ジャズ・フェスにもかかわらず、今ひとつリズムセクションが燃えない。こうなると、グライスもバードも空回り状態となり、折角いいソロを吹いているのに浮き上がっている。ピアノがボビー・ティモンズだったら、さぞや盛り上がったろうに･･･。それにしても、この２つのグループはほとんど共通点がないように思うのだが、何故カップリングされているのか、いまだに謎である。猫麻呂ポイント：★★★（3.0）The Gigi Gryce-Donald Byrd Jazz Laboratory & The Cecil Taylor Quartet at The Newport (Verve)

  2005年03月25日

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  Kenny Dorham / 2horns/2rhythm (Riverside)

  今日のＣＤはドーハムの超Ｂ級盤だ。このＣＤの紹介では「幻のアルト・サックス奏者アーニー・ヘンリーとの共演盤」などという、おざなりなキャッチコピーしかない。もっとドーハムをまじめに聴いてくれよー、と評論家先生方にお願いしたいが、ここで吼えても仕方ないか･･･。一応、お約束としてアーニー・ヘンリーについても触れておこう。地味な芸風、流れないフレーズ、お世辞にも綺麗とは言えない音･･･褒めようがない。でも、この人、ブルーノートのタッド・ダメロン・セクステット（つまりファビュラス・ファッツ・ナバロに収録されている最初のセッション）では素晴らしいドライブ感があったのだ。このＣＤでは、そんな様子はあまり感じることもなく、単に目立たないアルトサックス奏者となっている。でも、妙に土臭いところがあって、憎めないアルトではある。決して嫌いではない。話をドーハムに戻そう。このＣＤでの私のお気に入りは、とにかく"I'll Seeing You"なのだ。明るい曲のようで、そのくせなんとも言えない哀しさに胸を締めつけられるところがドーハムの真骨頂だと思う。１曲目の"Lotus Blossom"は確かにいい演奏だが、この曲なら"Quiet Kenny"を聴いた方が10倍以上は楽しめる。２曲目の"S'posin'"に至っては、ドーハムなんか聴くよりマイルスを聴いたほうが20倍楽しめる。そもそも、この曲はマイルスが拾ってくるまでは誰もが忘れていた駄曲ではないか。（Louis Armstorngの1930年代の録音は聞いたことがあるが、聴くほどのものではなかった。）でも、この曲のドーハムはファンには堪らないドーハム臭さがあるので、ファンには見逃せないトラックではある。４曲目の"Is It True What They Say About Dixie?"は曲名通りデキシーランドジャズで演奏される曲。なんでこんな曲を･･･と思いながらも、実はこれもドーハム臭ムンムンだったりする。ちょっとデキシー風ではあるけれど。ちなみに。この曲のアーニー・ヘンリーはキレのあるソロを吹いている。５曲目の"The End of Love Affairs"はbebopなドーハム炸裂である。これもドーハムファンには魅力のひとつ。ただし、ピアノレスでここまで頑張られると、聴くほうにもそれなりの覚悟が必要となるであろう。このＣＤ、ドーハムファンが他に買うものがなくなった挙句に購入するＣＤではないか、と思う。ドーハムファン以外は、もっと世の中聴くべきＣＤがあるはずだ。でも、ドーハムファンが最後辿り着く境地としては悪くないだろう。猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Kenny Dorham / 2horns/2rhythm (Riverside)

  2005年03月22日

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  The Bobby Shew Quintet / Playing With Fire (Mama)

  ボビー・シューのＣＤを購入したのはこれが始めて。ボビー・シューの名前は、ヤマハのフリューゲルホーンの「ボビー・シュー・モデル」で知っていたが、どんな演奏するのかは全く知らない。激ウマとは聞いているが･･･。しかし、お目当てはシュー先生のバトル相手のトム・ハレル。この人、楽器持つと人格変わるとは聞いているが、対人恐怖症（でしたっけ？）の人がトランペット・バトルというのも凄い話だ。１曲目"Prelude and Blues"はアップテンポの曲。先発のシューがテクの限りを尽くしたような、一部はブラウニーから拝借したようなフレーズで圧倒する。おかげでトムさんはやや腰砕け。２曲目はトムさんのミディアム曲"Cloude Dance"。ちょっとモコモコしたトムの音色に説得力がある。しかも、曲が良い。３曲目はケイ赤木の"Spiral Dreams"。この曲もカッコイイ。トムさん、ドーハムの魂が乗り移ったかのような燃えようで、４バースでついにシューを喰ってしまった。４曲目の闘牛士のようなシュー・オリジナル曲"Playing With Fire"はスルーして、５曲目"April Mist"はトムのオリジナル。先発はシューで大人風の明るいソロだ。続いてトムのモコモコなソロは徐々に熱を帯びて行くのが分かる。トムの後に続くケイ赤木のレトロなエレピが「夏のペンション風」なのが、何とも言えない風情だ。最後の曲もケイ赤木の曲で"Broadway Manor Mayhem"。マイルスが登場しそうな曲だが、この曲でもシュー対トムの大マジメバトルとなっている。まぁ、このＣＤも一部のトランペット・マニアのためにあるようなものなのだろう。二人とも確かに上手い。しかしバトルはうるさい割には盛り上がりが少ないような気がする。また、シューのソロは上手いだけで面白さを感じない。結局「バカさ加減」が足りないと、ジャズは面白くないのではないか？猫麻呂ポイント：★★★（3.0）The Bobby Shew Quintet / Playing With Fire (Mama)

  2005年03月15日

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  Eric Alexander / New York Calling (CrissCross)

  エリック・アレキサンダーの初期リーダー作を聴いてみようと思った。エリックのリーダー作とも言えるワン・フォー・オールの諸作品は、完成度が高いとは思うのだが３管が好みでないのだ。また、エリックがブリブリ吹いていた初期の演奏を聴いてみたくなったのだ。しかも、以前から気になっていたトランペットのジョン・スワナも聴けるということで、このＣＤを選んだ。１曲目の"One For M"は「いかにも･･･」という感じの今時の曲（いい加減な表現で申し訳ないです）。個人的な好みで言えば、正直この手の曲にはもう飽きた。２曲目はスタンダードで"Here's That Rainy Day"。どちらかと言えば陽だまりで昼寝をしているような平和な演奏。エリックのソロはズート・シムズのような平和な雰囲気から始まり、徐々に盛り上がってくる。しかし、この曲って、こんなにのんびりした雰囲気でいいのだろうか･･･。３曲目の特徴のないブルースはパスし、４曲目"Then I'll Be Tired of You"でのエリックのバラード演奏は心地よい。ジャズ・テナーの王道を行く太い音。リチャード・ワイアンズの短いソロも音数を抑えながらツボにはまっている。５曲目はチャーリー・パーカーでお馴染の"Swedish Schnapps"。エリックは軽々と難しいフレーズを吹きこなしているが、あまり簡単に吹かれてしまうと聴いても印象に残らない。６曲目"Wives and Lovers"は曲名からして「何だ？？？」という感じだが、このＣＤの中では最も好きな曲だ。全体的に何となく醒めた感じのするバンド全体が、この曲では大いに盛り上がっている。こういう音楽を６曲目まで待ち望んでいたのだ。７曲目"Skylark"は、テーマの歌い方にこぶしが回り、まるで「演歌」だ。臭いテーマを飛ばして一気に最後のカデンツァを聴いて終わりにしても良いだろう。８曲目"In The Thrill if The Night"はバカっ早いテンポで演奏している。まるでスカイラークのマッタリ演奏のウサ晴らしのようだ。聴いて胸がスカっとする。このＣＤは、４曲、６曲目、８曲目の３曲だけあれば私には十分。しかし、８曲中５曲が不要というのは、ちょっとあんまりではないか･･･？スワナのトランペットもこのＣＤには不要だろう。猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Eric Alexander / New York Calling (CrissCross)

  2005年02月26日

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  Terence Blanchard / Ｔｈｅ Billie Holioday Song Book (Columbia)

  今日は仕事でさんざんな目にあった。こんな日のために買っておいたＣＤがある。テレンス・ブランチャードのビリー・ホリデイ・ソングブックだ。いきなり１曲目からストリングス入りのあまーい雰囲気。いつもだったら一刀両断にするところだが、流石に今日はそんな元気もない。ちょっと甘い顔していたらボーカルのオネーさん（Jeanie Bryson）まで出てきたぞ。舐められたもんだな･･･。そうか、ビリー・ホリデイ・トリビュートなんだから、これくらいは許そう。しかし、なんだかローズマリー・クルーニーみたいな歌い方だなー、この人。ビリー・ホリデイ・ソング・ブックなんて聴くと、選曲が「奇妙な果実」とか「ストレンジ・フルーツ」とかの薄気味悪い曲ばかりだと思っていたら、実はスタンダード中心の聞きやすい選曲。"What A Little Moonlight Can Do"なんて小粋な曲もやってくれている。この演奏は心地よい。ボーカルのオネーさんとピアノ・トリオの掛け合いもいいね。でも、よく聴くとトランペットの音が聞こえるぞ。はて、このトランペットはどなた様でしたっけ･･･？実はこのＣＤ、トランペットの存在を感じないのだ。ブランチャードはそこかしこでフィーチャーされて（一応リーダーだから）いるのだが、オーケストラの音の中に溶けてしまっているのかもしれない。「テレンス・ブランチャード様に無礼ではないか！」などと考える気力もない時は、こういうＣＤを「ただ流れているだけ」の状態にするのも悪くないだろう。たまにマジメに聴いてみると、ブランチャードが結構凄いフレーズを吹いてたりして、これがまた楽しい。たまには、こんな高級なＢＧＭで癒されてみるのも悪くはない･･･とは思うが、所詮はイロモノ企画。あまり期待せずに聴き流すと楽しめるかも･･･。猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Terence Blanchard / Ｔｈｅ Billie Holioday Song Book (Columbia)

  2005年02月18日

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  Jam Session #4 (Norgran)

  ノーマン・グランツ・ジャムセッション＃４を中古紙ジャケで購入した。このＣＤは発売された時から購入を検討していたが、曲数が少ない（たったの２曲）割りに値段が高い（￥2,345）ことから断念していたものだ。このＣＤの売りは、スタン・ゲッツとワーデル・グレイの両方が聴けることだ。両者ともレスター・ヤング派の筆頭格であるが、吹き方にはかなりの違いがある。ワーデル・グレイの方がフレーズが歌っており、メロディーの横の流れが自然だ。ゲッツもフレーズが歌っている人なのだが、グレイと比較すると訥々感がある。しかし、その訥々感がゲッツフレーズの天まで駆け上る躍動感につながっている。グレイのフレーズは盛り上がっても天上の音楽になることは決してない。ある意味「手堅い」音楽である。どっちが良いかは好みの問題だが、本作のピアニストであるベイシーは、グレイのバックの方が嬉しそうに聴こえる。ゲッツはベイシーのフラットなスイングビートでは閃きが少ないのかもしれない。とにかく１曲目の "Oh, Lady Be Good"ではゲッツ→グレイの順で登場するところが聴きどころである。その他バディ・デフランコのソロも聴きどころではあるが、デフランコの手数の少なさから数コーラスで飽きてくるかもしれない。泥酔状態のようなウィリー・スミスのアルトサックスはマニアにはお宝だが、一般人には狂気の沙汰に聴こえるかもしれない。２曲目はミディアムのブルースで、ベイシーはオルガンを演奏している。ここでも泥酔アルトのウィリー・スミスが強烈なインパクトを放出している。こういうゲテモノ系はこんなジャムセッションやデューク・エリントン・オーケストラでもない限り聴く機会がないので有難く拝聴させて頂いた。話をテナーの２人に戻そう。ミディアム・テンポの２曲目ではグレイの横のりフレーズがやや間延びしている一方で、ゲッツが自分のペースに持ち込んでしまった。この勝負はゲッツの勝ちのようである。このＣＤは、スイング時代の名人劇場的な聴き方をするのが正しい鑑賞方法だとは思うが、ゲッツvsグレイとして聴いたり、ウィリー・スミスの泥酔プレイを楽しんだりするのも良いだろう。ただし、個人的にはバディー・リッチのドラムのセンスの無さが耳に付くのであまり好きなＣＤではない。ドラムがオジー・ジョンソンかシャドウ・ウィルソンだったら文句なしに大好きなＣＤとなるのだが･･･。ちなみに、音質はかなり良いです。モノラルで中身の詰まった音がします。猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Harry Edison(tp), Buddy Defranco(cl), Beny carter(as), Wilie Smith(as), Wardel Gray(ts), Stan Getz(ts), Arnold Ross(p), Freddie Green(g), John Simons(b), Buddy Rich(ds)1953年8月3日,LA録音1. Oh, Lady Be Good2. Blues For The Count

  2005年02月17日

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  Hans Koller / Relax With My Horns (MPS)

  トンデモナイＣＤを取り上げてしまった。ハンス・コラーのＣＤを購入したのはこれが２枚目だが、最初に買ったZoller-Koller-Solalが聴きやすかっただけに、このＣＤも･･･と思ったのが大間違い。オーストリアの前衛ジャズ界を引っ張ってきた男を甘く見過ぎていた。といっても、このＣＤはまだ「前衛」までは行っていない。それどころか、サックス３管の美しいハーモニーが施された、一聴すると普通のジャズなのだ。しかし、ジャケットには　Hans Koller - soprano & tenor saxophone　Hans Rettenbacher - bass, piano　Rati Luederitz - drumsの３人の名前しかない。実はこのＣＤ、コラーが多重録音でハーモニーを作っていたのだった。やられた･･･。このＣＤでのコラーはほとんどアウトしていない。（多少はやっているが。）しかし、飄々としたプレイが逆にシニカルに聴こえるのだ。スティーブ・レイシーの性格を悪くしたような感じである。考えれば考えるほど、挑戦的な演奏に思えてくる。しかも面白いことに、そんなフレーズを多重録音で重ねて絡ませているのだ。オーストリア人の芸の細かさには参った。さっきから曲の話を全く書いていないが、これは私には書けない。完全に白旗である。しかし、好きか嫌いかとなると、実は案外こういうのも好きなのだ（やっぱり私は性格悪いんだなー）。とは言え、やっぱりこのＣＤを買う前に他に買うべきＣＤは山のようにある、と言わざるを得ない。内容は下のジャケ写真からあなたが想像する通りのものでほぼ間違いない。自称「へそ曲がり」な人には超オススメ！猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Hans Koller / Relax With My Horns (MPS)

  2005年02月16日

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  Art Farmer / New York Jazz Sextet (LoneHillJazz)

  実はこのＣＤのことがよく解っていない。どうやら以前に"Scepter"というレーベルで出ていたものを復刻したらしいのだが、曲を提供しているDavid SandoleとAlphone Sandoleが何者であるのか、何故トミー・フラナガンにリチャード・デイヴィス、ジェームス・ムーディーという妙な取り合わせでレコーディングをしたのか、などという私には不思議で仕方がないことだらけのＣＤである。それ以上の謎がある。このＣＤには同じ曲でステレオ・バージョンとモノラル・バージョンの両方が収録されているのだ。１９５０年代であればこのようなケースもあったが、１９６０年代後半録音で如何なる理由があったのか、これも疑問である。A.Sandoleの"Dim After Day"が気に入った。一聴すると、おどろおどろしいフリージャズが始まりそうな雰囲気にもかかわらず、ソロになると耽美的な世界に突入するという「大どんでん返し」が面白い。そして極め付けが"Giant Steps"。かの有名なストイック曲が、こともあろうにブラジリアンにお化粧され、コーラス隊のお姉さま方をバックにムーディー（名前からしてシャレになる）のフルート演奏なのだ。だから、牛乳を飲みながらこのＣＤを聴くことだけは避けたほうがよいだろう。結局、このＣＤは褒めるところが見つからないのだ。アート・ファーマー自身はいつもより約３０％増量の好調さにつき、ファーマー・コレクターには嬉しい再発であろうが、これはあまりにマニア向けＣＤではないか、と思う。ファーマーの演奏はホーンが少ない方が面白い。猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Art Farmer / New York Jazz Sextet (LoneHillJazz)

  2005年02月08日

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  Oliver Nelson / Meet Oliver Nelson (Prestige)

  "Stolen Moment"はつくづくイイ曲だなー、と思う。しかし、残念ながら今日のＣＤには入っていないので悪しからず。オリバー・ネルソンはサックス・プレイヤーというより作曲家・アレンジャーとしての評価が高いのだが、このＣＤを聴いて「全くその通りだ！」と思わずキーボードに力が入ってしまった。なんたるイモ・サックス･･･。ジーン・アモンズから酒とヤクを取り上げて３日間日干しにしてからお湯で戻したようなテナー、という事で想像できるだろうか。（出来ませんよね。）当のご本人はスイング時代の名サックス奏者のように吹きたかったらしいのだが、スイング時代の名サックス奏者のセクシーさはかけらもない。まさに悲劇的。従って、このＣＤではオリバー・ネルソンの作曲と一流のサイドマンを楽しむことになる。本作はネルソン名義の初録音ということで、凄いメンバーを集めている。ケニー・ドーハム(tp)、レイ・ブライアント(p)、ウェンデル・マーシャル(b)、アート・テイラー(ds)と聴けば、好きな人にはヨダレものである。ここまで「くすんだ色」のジャズマンを集めたセッションも少ない。まさにＢ級マニア向けセッション。１曲目はジーン・アモンズが出てきそうなブルース。2曲目はビリー・ストレイホーンの"Passion Flower"。耽美的な曲調と無骨なテナーとの違和感が何とも言えないが、どうせやるならチャーリー・ラウズくらいにシュールにやって欲しい。ドーハムのソロが光っている。３曲目はネルソン曲の真骨頂。テーマがホレスシルバーの"Room 608"のような舌を噛みそうな曲だが、コード進行はシンプル。４曲目の"Ostinato"もよく出来たテーマであるが、コード進行はやはりシンプル。５曲目"What's New?"ではネルソンのベタなソロはスルーしてドーハムの燻し銀プレイに涙。ドーハムはやっぱり素晴らしい。最後はネルソンオリジナルのブルース。ブルースに始まりブルースに終わる趣向はプロデューサーのエズモンド・エドワーズによるものなのかもしれないが、１曲目のブルースより断然良い。こちらのブルースでのネルソンの吹っ切れたソロはなかなか面白い。結論としては、このＣＤはＢ級度がかなり高いと言える。このＣＤの正しい楽しみ方は次のようになるのではないだろうか。◆オリバー・ネルソンの曲でセッションする◆ケニー・ドーハムの燻し銀プレイを密かに溺愛する猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Oliver Nelson / Meet Oliver Nelson (Prestige)

  2005年01月31日

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  Tina Brooks / The Wainting Game (BlueNote)

  ティナ・ブルックス･･･トップクラスのＢ級ジャズマン。存在がＢ級。容貌もＢ級。録音した音源はオクラ入りだらけ。同じＢ級でもハンク・モブレーのようにＢ級の王様になることもなく、人知れずＢ級生活。そんなＢ級テナーマンだからこそ、Ｂ級オタクにとっては神様のような存在となった。今日のＣＤもカスクーナ探検隊がオクラから発掘した遺品である。聴いてみると、これが身も蓋もないハードバップ。独特の臭みと陰のある、もう散々聴き飽きたあの音である。ティナ・ブルックスと言えばフレディー・ハバードとのコンビが思い浮かぶが、今回のお相手のジョニー・コールズのトランペットは比較にならないほどショボい。バックのケニー・ドリューも何となく空周り状態。致命的なのが選曲。ティナ・ブルックスのオリジナル４曲は全く印象に残らないような駄作だらけ。唯一印象的なのが、ボロディン作曲のダッタン人の踊り。あの有名な美しいメロディーに助けられ、ようやくティナ・ブルックスもノッてきたと思いきや、これでおしまい。なるほど、オクラ入りしたのも納得である。しかし、ティナ・ブルックスの駄作オリジナル４曲は、いかにもハードバップという雰囲気の演奏で、こういった雰囲気の中でマッタリと読書したりするには最高の１枚かもしれない。Ｂ級オタクには、こういう他愛もない演奏がお宝だったりする。まぁ、良くも悪くも超一級のＢ級盤であることには間違いない。猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Tina Brooks / The Wainting Game (BlueNote)

  2005年01月24日

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  Chet Baker / When Sunny Gets Blue (SteepleChase)

  最近、チェットベーカーの晩年の演奏が面白く思えるようになってきた。正直、あまり上手い演奏ではない。しかし、テクニックを超えた「ジャズ魂」のようなものが晩年のチェットには後光のように浮かび上がる事がある。失った前歯の替わりに魂を授けるなんて、ジャズの神様も酷いことをするもんだと思う。今回のディスクは１９８６年のピアノ入りカルテットでの演奏。一度聴いた限りでは、リズム隊は可もなく不可もなく、というところ。安心してチェットが聴ける点では良いかもしれない。当のチェット大先生は、全体的にやや酩酊気味で前後不覚の直前であり、演奏はかなりヒドイ。チェット信者用のディスクだったのかもしれないが、まぁ仕方が無いなー。このディスクを褒めるとすれば選曲とジャケ写真だろう。タイトル曲の"When The Sunny Gets Blue"はさりげなく泣ける曲。他の曲も、ほとんどが私の大好きな曲ばかり。でも、４曲目の"I Should Care"はメロディーが壊れすぎで何の曲か良く分らない。吹いている本人もテーマを忘れていたんじゃないか、と思う。猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Chet Baker / When Sunny Gets Blue (SteepleChase)

  2005年01月15日

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  Jackie Mclean / Action (BlueNote)

  最初の１曲目"Action"を聴いたときは「キターっ！」という感動があった。そう、「ガツン!」と来るフリージャズなんです、１曲目は。グラチャン・モンカーIII世（名前の仰々しさからしてフリージャズだ！）とのコンビを彷彿とさせる。チャールズ・トリバーをこれまでマジメに聞いたことがなかったが、かなり良さげなフレーズだ。ちゃんとストーリーを作っているではないですか。グラちゃんほどの破壊力はないが、かなりイケてるトランペットです。ただし、新主流派的演奏はフレディー・ハバードと比較して悪いけど、ちょっと２流かな。主役のマクリーン先生は、いつものように「我が道を外す」路線。曲が変わって新主流派的ムードになっても、先生は関係なくバップ＆アウトで攻撃の手を緩めません。この人、本当にキャラで得してるよなー。評価としては、猫麻呂ポイント3.0（満点で5.0）というところ。今ひとつ盛り上がりにかける。猫麻呂ポイント：★★★（3.0）Jackie Mclean / Action (BlueNote)

  2005年01月13日

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