ジョッキー/松樹剛史 著
僕自身、競馬に親しんでいる為か、最初から最後まで非常に興味深く読むことが出来た。もちろん、競馬に関心が薄い人でも充分に楽しめる魅力をもこの作品は兼ね備えていると思う。 その魅力の根本は、おそらくキャラクター描写にあるのではないか?「人物」ではなく敢えて「キャラクター」と表現したのは、人物だけではなく、この作品に登場する競走馬そのものが実に魅力的に描かれているからだ。『オウショウサンデー』の純真無垢さ,『オウショウエスケプ』の繊細さ・・・。そして、これらのサラブレッド達を取り巻く登場人物の人間臭さ。 物語そのものは長編というかたちをとっているが、内実は連作短編に近い。しかもそのひとつひとつの完成度が素晴らしく、全体のバランスもちゃんと取れている。本作は「小説すばる新人賞」受賞作であるが、新人レベルとしては読ませるという意味合いにおいて、群を抜いていると思う。 ・・・お薦めです!