イエス/GOING FOR THE ONE
僕がプログレッシヴ・ロックというジャンルにのめり込む契機となった作品は、イエスの4thリリース「FRAGILE」だ。コンセプト・アルバムというアイデアは、当時の僕にとってひどく斬新に思えたし、何よりもドラマティックかつダイナミックな構成が衝撃的だった。しばらくは、イエスの作品を買い集めては聴きまくっていたものだ。 さすがに以前ほど聴くことはなくなったけれど、今でもお気に入りのグループであることに変わりはない。そんな僕のお薦めの一品が、これ。「究極~GOING FOR THE ONE~」。ビル・ブラッフォード(Dr)がいないのは寂しいけれど、リック・ウェイクマン(Key)が復帰してくれたのが嬉しい。 リック・ウェイクマンは、復帰当初からスティーヴ・ハウ(G)との不仲が噂されていた。それは純粋に指向する音楽性の相違に起因するもので、この作品においてもサウンド面のイニシアティヴを巡って、熾烈なまでのテクニックの応酬が繰り広げられている。この喧嘩ファイトが絶妙なバランスを保ったまま結実した作品が《パラレルは宝》だと思う。それはともかくとしても、冒頭のチャーチ・オルガンの早弾きだけでも一聴に値する。 作品のラストを飾るのは大作《悟りの境地》である。ここでは曲の前半部分でスティーヴ・ハウのギターをフューチャーし、後半部分でリック・ウェイクマンのプレイを前面に押し出すスタイルでバランスを取っている,つまり、目立ちたがり屋の二人を曲の中で調和させること自体は失敗しているのだが、曲構成が非常にしっかりしているために、実に完成度が高い見事な作品に仕上がっていると思う。 後に日本のノヴェラというグループが、《悟りの境地》をヒントに《青の肖像》という名曲を完成ています。もし、イエスのファンの方で、まだ聴いたことがないという方がいらしたら、是非一度聴いてみて欲しい一品です。