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[災害・防災] カテゴリの記事

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  巨大津波、三陸で６千年に６回か…地層に痕跡

  宮城県気仙沼市の海岸で、１０メートル級の巨大津波が過去約６０００年間に６回襲来していたとみられる痕跡を、北海道大の平川一臣・特任教授（地形学）らが発見した。三陸地方の太平洋沖合では、東日本大震災のようなマグニチュード（Ｍ）９級の巨大地震が１０００年に１回の頻度で繰り返し起きていた可能性を示すもので、国や自治体の防災計画の見直しに役立ちそうだ。津波は海砂や大きな石、貝殻などを運び、これらが陸地に堆積する。平川特任教授らは今年４～５月に、気仙沼市大谷海岸の崖で、過去約６０００年分の地層について津波堆積物の有無を調べた。崖は標高約３メートルの位置にあり、数メートルの津波では堆積物は生じないという。その結果、津波堆積物は６層見つかった。約５４００年前に降り積もった火山灰などをもとに年代を推定したところ、古い方から、約５５００～約６０００年前の津波▽約４０００年前▽約３０００年前▽約２０００年前▽８６９年の貞観津波▽１６１１年の慶長津波――の痕跡の可能性があるという。（読売新聞より）--------------------この記事だけで全てを判断はできないが、今年の震災以来盛んに言われてきた貞観地震との関連性をある程度裏付ける材料という評価でいいだろうか。この高さで堆積が生じるのがどの程度の津波なのかはちょっと分からないが、堆積物の年代が特定できたのであればそれは大きな手掛かりとなるだろう。東海・東南海・南海地震はほぼ100年周期で起きているが、貞観を含めた巨大地震が発生したのちの南海トラフの地震実績もきになるところ。3.11以降正断層が動き出しているように、現段階で日本列島の歪みは複雑な状況になっている。活動期に入っていることは確かであり、南海トラフへの連動も当然警戒すべき状況であるはずで、貞観地震との関連がある程度明確になれば尚更その可能性は高まっていると考えられるだろう。西日本も含めて、しっかりとした準備が必要。ハード面はともかく、今年の震災の一連の反省を活かせばソフト面では進化できるはず。もはや「いつかやればいい」という悠長な段階でもないだろう。こうした研究がされているのであれば、その成果は大いに活用しないと意味がない。

  2011.08.22

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• 津波避難ビルの強度基準緩和で指定増へ

  国土交通省は、津波発生時に住民が逃げ込む「津波避難ビル」について、指定する際の強度基準を緩める方針を固めた。東日本大震災の建物被害の調査に基づき、現実にあわせて基準を見直す。全国１８００カ所にとどまる指定ビルを増やして、防災力の向上につなげる。 建築分野の技術基準のあり方を検討する国交省の有識者委員会が１８日開かれ、ビル強度の見直しを進めることで一致。国交省が具体的な基準作りに入る。 津波避難ビルは、一般に鉄筋コンクリート製の建物で、現在の基準では、実際の津波の高さ（浸水深〈しんすいしん〉）の３倍の高さの波が押し寄せても、その時の水圧に耐えられる強度が求められている。東日本大震災でも避難場所として機能し、「倒壊した事例は聞いていない」（国交省）という。 ただ、現在の基準は実験で算出した値で、実際の津波被害に基づいて計算したものではなかった。津波避難ビルは２００５年に制度が始まったが、基準が厳しく、昨年３月時点で１７９０棟にとどまっている。東海地震や南海地震などに備え、東海・四国地域が半数強を占め、東北６県は３．８％（６８棟）だった。 （asahi.comより）--------------------地形に高低差があまりなく、低地が広がっているような自治体においては、津波の脅威から逃れるには避難ビル以外に手立てがない。東日本大震災のような津波の高さであれば尚更で、こうした悩みを自治体は全国でも多い。避難ビルの強度は非常に重要な問題であるし、今回の震災でも見られたように、液状化に伴い基礎がダメージを受けたようなケースでは倒壊もあり得る。ただ、いざとなった時に逃げる場所がないという自体は避けなければならない。避難ビルの少なさは今後予想される大型地震に対して不安の一つであることは間違いない。しっかりと検証して新しい基準を作りつつも、低地における津波避難ビルが増えることを望みたい。

  2011.08.20

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• ９２地点で３５度以上　熱中症による死者続出

  １８日は関東地方など太平洋側の地域に強い日差しが照りつけ、全国９２地点で最高気温３５度以上の猛暑日を記録した。最高気温３０度以上の真夏日も４９２地点を記録。気象庁は２４都府県に「高温注意情報」を出し、熱中症への注意を呼びかけた。 気象庁によると最も暑かったのは群馬県館林市で３８．５度。埼玉県熊谷市の３８．３度、東京都練馬区の３７．９度と続き、上位１０地点はすべて関東。神奈川県小田原市で過去最高の３６．６度となり、多数の観測所で今年一番の暑さとなった。 大阪市や高松市でも３５度を超える猛暑日となった。同庁は、水分や塩分をこまめにとるなど、熱中症の予防を心がけるよう呼びかけている。この暑さで、熱中症で搬送される人が相次ぎ、死亡者も出た。また、水の事故により神奈川県の海岸で３人が亡くなった。 全国２位の暑さだった埼玉県熊谷市では、８１歳の女性が熱中症の疑いで死亡した。市消防本部などによると午後、自宅で意識がもうろうとしていた女性を、帰宅した長男が見つけたが、搬送先の病院で死亡が確認されたという。 川崎市多摩区の住宅の寝室では、うつぶせで動かなくなっていた寝たきり状態の男性（７５）を介護ヘルパー（５２）が発見。救急隊員が駆けつけたが、男性はすでに熱中症で死亡していた。県警多摩署によると、署員が同日午前に男性宅を訪れたとき、室温は３６度だったという。 静岡市清水区の竜爪山（りゅうそうざん）山頂付近でも、区内に住むトラック運転手松山繁継さん（６４）が熱中症のため死亡した。 神奈川県真鶴町では同県伊勢原市上粕屋、塗装工後藤幸輝さん（２０）が深さ約２メートルの海中に沈んでいるのを一緒にいた家族が見つけたが、死亡した。鎌倉市の海岸沖１５メートルでは、妻と一緒に泳ぎに来ていた川崎市川崎区渡田山王町、会社員中村裕司さん（５４）が溺れて死亡。藤沢市の海岸沖約３５メートルでは、同市遠藤、会社員古泉洋さん（４２）がうつぶせで浮いているのを男性サーファー（４１）が発見したが、死亡したという。 （asahi.comより）--------------------列島が史上最も酷暑に見舞われた日かもしれない。暑いのがデフォルトの北関東はともかく、23区内で38度近かったのは驚きだ。実際に外を歩いていると、熱が肌に当たるかのような感覚があった。お年寄りの熱中症は痛ましい。自分も寝ている間になったことがあるが、知らないうちにやられているイメージ。一人暮らしの場合は特に気をつけなければならないだろう。水の事故も多かったのも暑さゆえだろう。前日の天竜川の観光船転覆といい、ここのところ水難が多いように感じる。暑さも明日はひと段落とか。夏らしいのは結構なことだが、もう少し手加減して頂きたい。。。

  2011.08.19

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• 「津波１ｍでも危険」の回答減る　大震災の意識調査

  東海・東南海・南海地震で津波被害の恐れがある西日本などの住民を対象にした意識調査で、昨年のチリ大地震津波直後は「津波は１メートルでも危険」と認識していた人が７１％だったのに、東日本大震災後は４６％と２５ポイント減ったことが１５日、東大地震研究所と同志社大の分析で分かった。地震研の大木聖子助教は、大震災の巨大津波のニュース映像や、高さ約４０メートルの記録的な津波のイメージが強すぎ、それより小さい津波への警戒感が薄れた可能性を指摘。「津波の情報を伝える際は『高さ１メートルでも危ない』など危険性を解説する情報と合わせるべきだ」としている。（共同通信より）--------------------実は大震災以降危惧していたこと。災害に向き合う時、人はどうしても直近の災害の印象に左右されてしまう。東日本大震災の津波はあまりにもインパクトが大きく、それゆえに大切な部分が見えにくくなってしまった。想定を決める際に「最大値」をとるか「確率」を重視するかは常に問題になる。確率ありきで考えれば頻度が高い分狼少年効果は起こりにくいが、今回のように最大級の津波が来た場合「想定外」になってしまう。反面最大値ありきで考えた場合、数百年に一度の確率なので、どうしても人の心に油断が生じる。結局のところ、数字で示すこと自体に無理があるのかも知れない。記事にあるよう「1mでも危ない」ことを周知することは災害学習の一環としては有効だが、逃げる逃げないの判断は理屈抜きで「津波だ、逃げろ！」という単純なメッセージの方が分かりやすい。つまり、逃げなくていい津波はないと考えることが重要なのではないか。狼少年効果も、「今回は無事でよかったね」という考え方を社会全体で共有することで、ある程度歯止めをかけれるはず。悲劇を繰り返さないためにも、徹底した策が望まれる。

  2011.08.16

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• 敦賀原発直下に軟弱な断層

  日本原子力発電敦賀原発１、２号機（福井県敦賀市）の直下にある「破砕帯」と呼ばれる軟弱な断層が、敷地内を通る活断層「浦底断層」の影響を受けて動く危険性がある――。専門家がこんな指摘をしていることが分かった。 日本原電はこの破砕帯に活動性はないとして耐震設計の対象にしてこなかった。東日本大震災を受けた評価のなかで原発への影響を再検討し、８月中に結論を出す方針だ。 危険性を指摘するのは、宇根寛・国土地理院関東地方測量部長。経済産業省原子力安全・保安院で敦賀原発の耐震性の再評価をする作業部会の委員を務める。 敦賀原発の直下にある破砕帯は水平方向に引っ張る力でできた「正断層」とされ、圧縮力でできる「逆断層」とは違い、地震を起こしたり、地震時に動いたりする可能性は低いとされていた。 しかし、４月１１日、福島県浜通り地方でマグニチュード（Ｍ）７．０の地震が起きた際、正断層の井戸沢断層（長さ１９キロ）が動いたことが判明。宇根部長は「日本では正断層は動かないはずだが、東日本大震災でこれまでと違う力が地殻に働くようになった。破砕帯は全国にあるが、敷地内に活断層が通る敦賀原発は特に影響を考えるべきだ」と話している。浦底断層は約４千年前に活動したとみられている。（asahi.comより）--------------------恐れていた事実がまた一つ発覚した、というところだろうか。活断層直上の原発はあまりにもリスクが大きい。というのも、直上の場合、地震の揺れや津波といった2次的な力でなく、断層が動くという地殻変動そのものが原発に直接的な被害をもたらすことになるからだ。こうした事情から、海外では活断層の直上は建物を建てずにグリーンベルトを設けたり、また既に建物が建っていたとしても、公共施設など重要な施設は移転させたケースもあるという。宇根さんは国土地理院きっての地形学の専門家だけに、その発言は無視できない。これまでの状態では影響がなかったかもしれないが、今の列島の状態は明らかに3.11以前とは異なる。内陸で正断層が動いていることも事実だ。（これまで正断層が動くケースはアウターライズなど特殊な例がほとんどだった）福島に見るまでもなく、原発事故は広い範囲に影響を与える。地元の人が退去せざるを得ないような悲劇はもう繰り返せない。万全のリスク管理を行うことは絶対的義務である。

  2011.08.14

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• ゲリラ豪雨対策新システム～山形

  国土交通省山形河川国道事務所は、狭い範囲で急激に強く降る「ゲリラ豪雨」対策として、過去の水害データを基に山形市の河川や下水道、側溝などでの水の流れや浸水経過をコンピューター上に表すシステムを開発した。これまではっきりしなかったゲリラ豪雨を地図上で再現し、浸水の状況が一目でわかるようにした。洪水の再現のほか、新しい排水設備の検証が可能になるといい、効率的な施設整備や防災計画策定への活用が期待される。同事務所は昨年９月、県や山形市、山形地方気象台と、「ゲリラ豪雨山形地域検討会」を結成した。発足時の会議でゲリラ豪雨について、「情報不足で対策が立てにくい」「施設に複数の管理者が存在し、単独での対応が困難」などの課題が浮上。対策の開発に乗り出した。手始めに、県庁と山形道山形北インターチェンジ、須川に挟まれた山形市中心部を２５メートル四方に区分。下水管や側溝、河川などをコンピューター上に配置し、行政が経験したり、住民から寄せられたりした浸水のデータを集積した。また、過去に浸水した場所を中心に、５メートル四方まで細分化したモデルも用意。雨水の流れ方や浸水の原因解明のほか、水路改修の効果などが検証できるという。このモデルに、山形地方気象台がレーダーで観測する雨量データを適用。１キロ・メートル四方の雨量を５分ごとに観測でき、狭い範囲で大量の雨が降るゲリラ豪雨の特徴を捉えられるという。これまで大規模な洪水の際に、どの堤防が危険かといった想定はあったが、「ゲリラ豪雨に特化したものは聞いたことがない」（同事務所）という。既存のデータと機材を活用したため、開発に関して特に予算はかからなかった。モデルを使えば、「雨」を降らせて、市内がどのように浸水するか試すことが可能だ。同事務所が、市内全域に１時間あたり３０ミリの雨を降らせた場合、７０分で道路上の浸水が始まり、１２０分たつと５０センチ以上の浸水が目立ってくるなどの結果が出た。また、新しい排水路などを仮想で設置でき、流水状況の変化を観測することも可能になる。モデルで浸水の状況が正確にわかれば、「区画整理で水路の方向を変えても大丈夫か」「降雨時に重点的にパトロールすべき場所はどこか」など、地域で幅広い活用が可能だ。課題はモデルの精度だ。データは昨年からの４回分しかなく、それまでと違う降雨となった場合、予測と異なる浸水が発生する可能性もある。同事務所調査第１課の武田恒弘課長は「まだ範囲は狭いが、行政や住民から多様な情報を提供してもらい、正確なシステムの構築を目指したい」としている。（読売新聞より）--------------------近年ゲリラ豪雨（都市型の局地的大雨）が増加していることは社会に認識されているが、その対策がなかなか難しい。短時間で局地的に降るため、従来の洪水に備えた治水施設があまり役に立たないケースが多いのだ。局地的なので大河川が増水するわけでもなく、多くの場合は内水氾濫。用水路や側溝、地下排水路などがあふれるケースがほとんどだ。急激の増水するため、逃げ遅れて被災する例も多い。1999年6月の福岡豪雨では地下空間での犠牲があったし、2008年7月には神戸の都賀川の急激な増水で児童たちが犠牲になった。また、同年8月には雑司ヶ谷で下水道工事中の作業員が急激な増水で犠牲になっている。このように突然の災害になりやすいゲリラ豪雨。抜本的な対策がなかなか立てずらいだけに、今回のモデルには期待がかかる。データが4回分しかないため、まだ精度は低いが、今後の蓄積と改良でより確度の高いシステムになっていくだろう。アスファルトジャングルを襲う都市型豪雨は施設の排水量と地形が2大パラメータといっていい。こうした点を踏まえて、一人一人が自分の身の安全を守る術を考えていくことも大事だと思う。

  2011.08.12

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• 放射線量情報、５分ごとに更新　ヤフーが新サービス

  ヤフーは５日、全国で放射線量を計測し、５分ごとに測定値を更新して伝える「放射線情報」のサービスを始めたと発表した。まず仙台市や福島県二本松市など11地点での計測を開始。地図上に各地点での実測値を「毎時マイクロシーベルト」単位で更新していくほか24時間の推移をグラフに示す。今後は直近30日、90日の平均値も確認できるようにする。将来は計測地点を数百カ所にまで拡大する考え。現在、ソフトバンクの店舗を中心に米社製の測定器の設置を進めている。同サービスは慶応義塾大学の地球環境スキャニングプロジェクトと組んで提供。同プロジェクトには、ソフトバンクの孫正義社長が財団を通じ資金支援している。サービスはパソコン、従来型携帯電話、スマートフォン（高機能携帯電話）に対応。東日本大震災に伴う原発事故後、放射線量については測定機器や測定条件が統一されていないといい、定点観測によるデータへの潜在需要は高いとみている。（日本経済新聞より）--------------------確かに定点観測や同じ測定機器による観測は、これまでなかなか実現しなかった。店舗を中心に展開するというのはその意味では安定的。需要が高いだけに、多くの利用者が見込まれる。その一方で放射線が持つ性質への対応は課題か。場所や環境によって線量は異なる。家1軒1軒、あるいは下がアスファルトか土か芝か、さらには雨どいの下が高いなど、場所の個性に左右されることを思えばサンプルは多ければ多いほどいい。また、等距離で広がらずホットスポットを形成しているように拡散の予測が難しいという側面もある。このやり方で密度をどこまで高めていけるか、需要が多いだけに目安以上の値に踏み込めるかどうかは今後のポイントになりそう。

  2011.08.06

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• ダム湖に津波？

  台風６号が１９日に県内で猛威を振るった際、奈半利川の平鍋ダム（安芸郡北川村平鍋）上流に大量の土石流がなだれ込み、その衝撃で生じた津波が５メートル以上に盛り上がって押し寄せて、ダム堤を乗り越えていたことが２８日までに分かった。堤上部の電気制御設備は波をかぶってショートし、ゲート開閉が制御できない状態が１週間以上続いている。現場に向かう国道４９３号は寸断されており、ゲート復旧のめどは立っていない。（高知新聞より）--------------------土石流がダム湖になだれ込んで生じる津波。こんな事例があることは知らなかった。山体崩壊の事例としては江戸時代の「島原大変肥後迷惑」がよく知られている。雲仙普賢岳の爆発により島原の背後にある眉山が山体崩壊を起こし、島原の町を飲みこみ有明海に流れ込んだ。これにより大津波が発生して対岸の熊本に押し寄せた。死者は島原で5千人、熊本側で1万人と言われている。こうした事例は内海でも津波が起こりうることを示唆しているが、まさかダム湖でとはなかなか想像がつなかい。土石流の破壊力に驚くばかりだが、こういうケースがあるという事実はしっかりと押さえておく必要があるだろう。

  2011.08.03

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• 千葉県が津波予測図　東京湾内も作製する方針

  東日本大震災による津波が、東京湾内にも押し寄せたことを受け、千葉県は２８日、これまで浸水予測を行っていなかった同湾内の津波予測図を新たに作製する方針を示した。この日開かれた県議会東日本大震災復旧・復興対策特別委員会で明らかにした。今後発生が予想される関東周辺の海溝型地震などを想定し、外房地域についても、浸水予測図を抜本的に見直す方針だ。県防災危機管理課によると、大震災では、旭市飯岡で最大７・６メートルの津波が到達したが、東京湾内でも、木更津市木更津港で２・８メートル、船橋市葛南港湾で２・４メートルなどの津波を観測した。千葉市中心部の都川では河口から上流４・１キロまで津波の遡上(そじょう)が観測された。１７０３年に起きた「元禄地震」は現在の南房総市付近を震源に、県内だけで津波により死者２０００人以上が出たとされる。また、１６７７年に千葉県沖を震源に発生した「延宝地震」でも、数百人の死者が出たという。これらの地震の記録に基づき、県が２００６年度に行った津波発生シミュレーションでは、いずれもマグニチュード８級の地震で、元禄地震では南房総市で最大８・３メートル、延宝地震では銚子市で最大８・４メートルの津波が発生すると試算。この分析をもとに県は銚子市から富津市までの沿岸の津波浸水予測図は作製したが、東京湾内については、「東京湾の形状から、湾内に大きな津波が入らない」として、君津市から浦安市までの東京湾内の浸水予測は行っていなかった。予測図は東海、東南海、南海の３連動地震も想定して作製する。同課は「過去の津波の記録では想定できなかったが、今回の震災は規模が大きかったため、東京湾に津波が達した。関東近辺での大規模地震と津波に備え、予測図を作製したい」としている。（読売新聞より）--------------------東京湾では津波災害がそれほど身近なものではなかったことは事実だろう。沿岸部でも高潮や液状化への認識はあっても、津波まではなかなか考えが及ばなかった。しかし実際に東日本大震災に際して、東京湾へも数mレベルの津波が押し寄せ、所によっては浸水の被害も出ている。東北沖の地震でこれだけの津波が来たことは衝撃的で、震源によってはさらに津波が高くなる可能性も考えられる以上、それなりの対策も必要であるこおを思い知らされた形だ。千葉市の都川に見られたような遡上への懸念もある。それなりの堤防を抱えた大きな河川はともかく、東京湾に直接そそぐ中小河川には立派な堤防がないものも多い。流域でも通常の大雨による洪水への備えはあったとしても、津波の遡上は想定されていないのが現実だろう。今回の震災で多くの日本人が津波の破壊力や、予想外の遡上高を目の当たりにしており、東京湾であっても対策を望む声は多い。つい今しがたも静岡でM6.1（最大震度5弱）の地震があった。列島は活動期の真っただ中にある。まずは「来る」ことを想定してさまざまな対策を検討することが第一歩か。多くの人が津波への高い意識を持つ今だからこそ、身のある準備が可能なのではないだろうか。

  2011.08.02

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• 新潟・福島豪雨、土砂災害に警戒

  新潟、福島両県に記録的な豪雨をもたらした前線の活動は３０日午後、弱まった。非常に激しい雨が降る恐れはなくなったが、両県ではこれまでに雨量が６００ミリを超えた所があり、土砂災害の危険が高まっている。大雨による死者は２人となり、両県で計４人が行方不明になっている。大気の状態は不安定で、関東甲信越地方では３１日までに１時間に５０ミリの非常に激しい雨が降る恐れがある。気象庁は土砂災害や河川の氾濫に注意を呼び掛けた。新潟県警によると、三条市で２９日夜から行方不明になっていた見附市の会社員若杉正浩さん（２５）が遺体で見つかった。車ごと川に転落したとみられる。県内では他に３人が行方不明。新潟県では３０日午後１１時半現在で、８市町が約７万５０００人に避難を指示・勧告。三条市は市内全域に避難勧告を出していたが、一部を除き解除した。県のまとめでは同日午後３時現在、避難所２９８カ所に７０１７人が避難している。三条市の五十嵐川など６河川の堤防が決壊。十日町市ではＪＲ飯山線の羽根川に架かる橋が流された。一方、福島県によると同日午後７時現在、１市５町で計１０２０人が避難している。土砂崩れが起きた檜枝岐村や只見町などでは住民が孤立していたが解消し、同日夜までに県内の孤立集落はなくなった。只見町では男性１人が行方不明のほか、金山町ではＪＲ只見線の鉄橋が崩落し、流された。（時事ドットコムより）--------------------7年前の水害を上回る雨量を記録した新潟福島豪雨。6か所の堤防決壊や鉄橋の流出などの被害も当時をしのぐが、災害規模に比して人的被害は減少しているのは、多少なりとも7年前の経験値が生きたことを示しているのだろうか。当時大きな課題として浮かび上がったのが避難のタイミング。もちろん早めの避難は大前提だが、7年前は避難途中で被災した事例も多かった。その後危険な状況では無理な避難よりも高い階へ上がることが徹底されたことは一定の効果があったと考えられる。一方で、被災した事例はいずれも屋外でのもの。災害対応作業中の例もあり、こうした活動の安全確保を徹底することは課題か。新潟福島地方の大雨は峠を越えたが、地盤が緩んでいることから引き続き土砂災害への警戒は必要。雨は関東甲信越に移っており、今後の前線の動きが気になる。

  2011.07.31

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• 新潟福島豪雨

  新潟・福島の大雨が非常に気になる。いずれもこの地域としては記録的な雨量となっており、今夜もまだ降り続く見通し。報道では平成16年7月の水害に匹敵するとして警戒を呼び掛けており、実際に新潟県で約18万人、福島県で約4800人に避難勧告が出ている。五十嵐川や信濃川、阿賀野川では氾濫危険水位を越えており、予断を許さない状況。上流域も含めた今後の雨量が気になる。山間部で土砂災害の危険が高くなっていることも心配。累積雨量からすると地盤はだいぶ緩んでいるはず。このあたりの信濃川は自然堤防が発達しており、その背後にある低地が相対的に低い地形になっている。そこに刈谷田川をはじめとした河川や水路が流れているため、どうしても湛水しやすい。それだけにひとたび破堤や越流があると大きな打撃を受ける。三条市をはじめとした周辺自治体は7年前の災害を経験しており、役所も住民も多くの教訓を持っている。この経験値は非常に重要。何とかこれ以上人的被害が広がらないことを信じたい。

  2011.07.30

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• 最大津波想定し警報第一報

  気象庁は、発生した地震がマグニチュード（Ｍ）８を超える可能性があると判断した場合、その海域で想定される最大Ｍに基づいて津波警報を発表する方針を固めた。観測データなどから正確な規模がわかった段階で、適切な水準に切り下げるという。２７日に同庁であった学識者との勉強会で明らかにした。 ３月１１日の東日本大震災では、気象庁は発生から３分後に地震の規模をＭ７．９と推定し、大津波警報を発令。予想される津波の高さを宮城県で６メートル、岩手県と福島県で３メートルとする第一報を出した。しかし、沖合での実際の観測値などを参考に４４分後、３県とも１０メートル以上に引き上げた。 こうした措置で住民の避難の遅れを招いたと指摘されたため、気象庁は津波警報の改善を検討。同庁が発生直後に出すＭは、複数の地震計の最大振幅（揺れ幅）を用いて算出する。３分をめどに発表する迅速さが利点だが、Ｍ８超の巨大地震を小さく見積もってしまうおそれがあった。（asahi.comより）--------------------警報の発令にも東日本大震災の教訓を活かす。過小発表から大きい方へ引き上げるよりは、最大値→適切値というのがセオリーだろう。海外では死傷者の発表なども最大値から入って徐々に減らしながら修正していくやり方が多いという。ただ、警報だけが独り歩きしても意味がない。避難のあり方やハザードマップの中身についても、こうした発表の仕方を踏まえて再検討する必要があるだろう。もちろん、自治体の防災無線の発信にも関連する。こうした横の連携をしっかりと意識して様々な対策が補完し合う関係が重要だと思う。

  2011.07.28

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• 上関原発予定地にも津波被害の可能性

  今後の原子力政策について話し合う内閣府の原子力委員会で２６日、河田恵昭・関西大学教授が東日本大震災の教訓をふまえた津波対策の必要性を訴えた。南海地震で発生する津波が瀬戸内海に入り、中国電力上関原子力発電所（山口県）の建設予定地にも影響が出る可能性などを指摘した。 南海地震は紀伊半島から四国沖の海底を震源として周期的に起きると考えられる大地震。３月の東日本大震災は予想と異なる震源域で起きたことから、南海地震も「震源域を見直さなくてはいけない」と話し、想定震源域を西側に広げる必要性を訴えた。その場合、津波が豊後水道から瀬戸内海に入り、上関原発の予定地に影響が及ぶ可能性もあるという。 津波は通常、海底が震源の場合に発生するが、山崩れなどでも起きる可能性がある。約４００年前の古文書に、内陸を震源域とする地震で福井県・若狭湾に津波が起きた記述があることも指摘。若狭湾には原発が１４基もあり、「最悪のシナリオを前提にした考えが必要だ」と訴えた。（asahi.comより）--------------------我が国の津波研究の第一人者である河田先生の話だけに説得力がある。地震や津波など、大きな自然災害は人々にとって天災。しかし、東日本大震災に見るような自然災害に伴う原発事故はむしろ人災の部類で扱うべき。日本が自然災害の多い環境に立地する（その分多くの恵みがあることも忘れてはいけない）事情を考えれば、原発建設・運用におけるリスクは当然考慮されるべき。そのリスク管理の甘さが図らずも震災で明らかになった。同じ過ちは許されない。最悪のシナリオは常に想定を上回るもの。国民の安全を第一に考えた政策を望みたい。

  2011.07.27

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  横須賀市ＨＰで標高マップ公開

  神奈川県横須賀市は、市内の標高を確認できる「標高マップ」の公開を市のホームページで始めた。東日本大震災で東北地方の沿岸部で甚大な津波の被害が出たことを受けて作成。自宅や職場、学校など普段の生活場所の標高を知ることで、津波警報に対する市民の避難意識を高めてもらうことなどが狙い。マップは標高ごとに色分けされており、標高５メートル以下は緑色、同５～１０メートルは黄緑色、同１０～２５メートルは薄茶色、同２５～５０は茶色、５０メートル以上が濃い茶色－の５段階に分けられている。また、地図上でクリックした地点付近の標高が表示される。マップは市ホームページのトップ画面の「よこすかわが街ガイド（地図検索）」をクリックし、防災カテゴリーの中の「標高マップ」から見ることができる。（MSN産経ニュース）--------------------市の全域の標高マップ。特に低地部の津波時への備えという点では有効。できることなら津波ハザードマップと併せて使用したい。標高の色分けはメッシュデータのようだが、どのように作成したのだろうか。というのは、地図上には1/2500都市計画図の等高線も表示されているため、慣れないユーザーは等高線と色分けが一致しないことに戸惑う可能性がある。このあたりは簡単な説明があってもいい。地図にはクリックした地点の標高が表示される。その際に「表示される標高は、地図の精度上及びデータ作成上の誤差を含んでいます。参考値として利用して下さい。 お調べの地点によっては、隣接地域の情報を表示する場合があります。」との注意喚起が出るのだが、一般ユーザーには『地図の精度上及びデータ作成上の誤差』というのは如何にも分かりにくい。データソースの表示を表示した上で『表示される標高には誤差が含まれていますので参考値として利用して下さい』というシンプルな書き方でいいのでは。『隣接地域の情報を表示する場合があります』という補間して作成したメッシュデータの使用上の注意があるのはいいと思う。ホームページ上でこうした標高地図が閲覧できるのは有効な仕組みだと思う。後は実際に見て、使ってもらうための工夫が必要。そしてワークショップや避難訓練などの際に実際に使用してみるのも効果的かも知れない。

  2011.07.26

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  東松島～石巻

  前日とは変わって好天。気温もやっと夏らしくなり、蝉の声も聞こえた。今日は東松島～石巻と調査。野蒜のような広い低地そして石巻の漁港などの被災は前日見たリアス地域の状況とはまた違う個性があることに気づく。やはり沈下した地域の冠水が深刻だ。これはきっと対策や避難においても同じことがいえるはずで、今後はより地域の特性を考慮したものに変えていかなければならないだろう。

  2011.07.25

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  南三陸～気仙沼

  調査で東北へ来ている。いきなり地震に迎えられたのはさておき（地震時は大崎市にいて震度4）、天気が今一つ。時折降る雨は強いものではなかったが、視界がよくないのはストレスになった。雄勝、北上、戸倉、志津川、歌津、本吉、気仙沼と北上。今回の震災の深刻さはリスタートの難しさであることを実感した。道中は似たような光景が続く。リアス地域では峠を越えて隣の集落に移動するが、標高が下がると凄惨な光景が展開し、峠の頂付近は比較的無事であり、被害は標高に依存している。問題は実際の標高と人が体感している「高さ」に幾分のずれが生じているかも知れないことか。それを示すのは、（この地域では）多くの場合浸水想定と実際の被災範囲はそれほどかけ離れていなかったこと。川や谷での遡上や、面的な広域性は想像を越える。海が見えない谷の奥まで津波は入り込んでいるし、あそこよりここの方が高いから、といった相対的な感覚は通用しない印象で、有効なのは高さの絶対値。人が普段感じているのは、自分の居住地域の中での相対的な高さ。たから体感値と絶対値の「誤差」が問題になる。南三陸と気仙沼の被害状況には違いが見られたが、これは地形はもちろんだが、街の形成が異なることも影響しているかも知れない。それによってあるべき避難の姿も変わってくる可能性もあり、このあたりはもう少し整理してみる必要がありそう。もうひとつ深刻さを感じたのが地盤沈下。こちらもリスタートの難しさの一因になる。

  2011.07.24

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  「５階にも薬があれば…」　志津川病院

  がれきが重なり、車が突っ込んだ正面玄関に「昭和３５年５月２４日　チリ地震津波水位　２．８メートル」と記された碑が倒れていた。宮城県南三陸町の公立志津川病院。碑文が１９６０年の津波で４１人が死亡した惨事を伝える。半世紀後の東日本大震災。志津川病院は、入院患者１０７人のうち７２人の死亡・行方不明者を出した。７４年、海から約３００メートルの市街地に建設された地域の基幹病院だった。１０年後に増築、鉄筋５階建てでベッド数は１２６床。チリ地震津波を基に病床は地上６メートルの３階、９メートルの４階に配置した。毎年５月２４日は訓練を欠かさなかったが、津波想定は「チリ地震の２倍」の５．６メートル。３階以上の患者の避難は念頭になかった。３月１１日。外来診療は午前で終わり、医師３人と看護師など約１００人の職員が、平均年齢８０歳を超える１０７人の入院患者の回診などにあたっていた。午後２時４６分。激しい横揺れが襲ったが、耐震構造の病棟に被害はほとんどなく、院内には安堵（あんど）の空気すら漂った。「６メートル以上の津波が来ます」。緊迫した防災無線が院内にも届いた。それでも、ほとんどの職員は「３階以上に逃げれば大丈夫だろう」と考え、患者らを３階から上へ誘導し始めた。約３０分後。津波が高さ５．５メートルの堤防をはるかに超えるのが見えた。星愛子看護部長（５５）は、５階会議室に誘導するため、会議室の鍵と患者名簿を手に階段を駆け上がった。灰色の濁流は民家をのみながらわずか３分程で到達した。「もっと上がれ！」。院内に叫び声が飛び交った。自家発電機は、旧館１階の電気室、新館は敷地内にあったが、水没した。エレベーターが止まり、がれきが混ざった水が３階の窓ガラスを破った。数十人の患者と看護師３人がのみ込まれた。患者を背負い階段を上る職員の足元にも海水が迫る。５階にいた菅野武内科医（３２）も死を覚悟し、勤務中は外している結婚指輪を身元確認できるよう左手薬指にはめた。津波から１時間後。水が引き始めた。水が達しなかった５階に避難した患者は３２人。マットに横たわった患者が引き波で４階から屋外に流れていくのが見えた。職員１０人が下の階に向かった。４階の周囲の壁には、男性の背丈をはるかに超えた位置に黒い筋で津波の痕跡があった。地上約１１メートルの高さになる。倒れた患者が次々と見つかり、１０人が命を取り留めていた。いずれも床ずれ防止の空気入りマットごと押し上げられ、天井とのわずかな空間で呼吸を続けていた。日没。強い冷気が襲う。会議室に集めた計４２人の患者は、冷たい床の上に敷いた段ボールや紙おむつを布団代わりにした。経管で胃に栄養を注入する脳梗塞（こうそく）の患者、心不全や肺炎、腸閉塞の患者もいた。酸素ボンベは２本しかない。自発呼吸が難しい高齢者は、すぐに一刻を争う事態に陥った。翌１２日午後に救助ヘリが来るまでに、７人が低体温症などで息絶えた。「薬も酸素もない。ただ患者をみとるしかなかった」。星部長は悔いる。薬剤は１階にあり、５階にはなかった。菅野医師は「５階に最低限の薬剤や食料、非常電源があれば、救えた命があったかもしれない」と話す。横山孝明事務長（５８）は「チリ津波の体験が想像しうるすべてだった」と語る。チリ津波後の固定化した想定が、いつしか「安全の保証」にすり替わっていた。エレベーターが動けば、もっと多くの患者が避難できた可能性もある。発電機を地上に設置したのはなぜか。職員からは「津波が来たら大丈夫か」との声もあった。横山事務長も「まずかったと思う」と話す。問題視しながらも、大規模な工事が必要だとして改善は見送られ続けた。４月にはプレハブで診療を再開し、６月に隣接する登米市の旧病院施設を間借りした。再建に向け議論も始まった。星部長は言う。「防災対策に絶対はない。海のそばでの再建はもうあり得ない」（毎日jpより）----------------正直、病院はよくやったと思う。津波の高さ想定については様々な意見があるだろう。高くすることで、それに合わせたハード・ソフト両面の整備が期待できる。しかし発生頻度の少なさがオオカミ少年効果を招くなど、逆効果にもなりかねない。また、人間は身近な事例を基準にした方が危機感が高まることになる。最近の身近な事例のひとつがチリ地震であることは確かで、（想定云々ではなく）地元の人々の基準はそこにあるのだと思う。だからこそ、今回の津波の恐ろしさはきっちりと後世へ語り伝えるべき。頻度は低くとも、事実のひとつとして確かに起こったことなのだから。想定は安全の保証を意味しない。だから常に想定外への対応が生死を分けることになる。早めの高所への避難で助かる命がある。それが津波なのだ。しかし病院のような機関においては、想定が持つ意味は異なる。逃げるに逃げれない人たちを救う道は想定を高めて備えをすることで初めて生まれる。議論されている高所移転についても、病院は最優先の対象となるかも知れない。そんな中でも救われた命があること。それは病院スタッフの頑張りによるところが大きい。その部分も大事なこととして記録に留めるべき。

  2011.07.21

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• 四国地震防災戦略会議：家屋の高台移転促す

  東日本大震災を踏まえ、四国の震災予防や応急・復旧方針の「四国地震防災基本戦略」をまとめる「四国東南海・南海地震対策戦略会議」（座長＝柏谷増男・愛媛大名誉教授）が１５日、高松市内であり、戦略案が示された。高台などへの家屋移転も盛り込んだ内容で、秋ごろの次回会合で策定する予定。会議は、国や４県、四国市長会、学識経験者、経済団体の４７人で構成。今後３０年以内の発生確率が６０～７０％とされる東南海・南海地震などに備え、四国が一体となって地震対策の課題に取り組み、役割分担を明らかにするのが目的。戦略案では、東日本大震災で住宅地が津波にのみ込まれる被害が多かったため、家を建て替える際には、高台や津波浸水想定区域外への移転を促すなど、災害に強いまちづくりを求めた。また、土木施設の耐震化や防波堤などの整備や補強を進めるのと同時に、震災の場合には、人命を最優先に生活や経済への影響を最小限に食い止める減災施策に重点を置いた。（毎日jpより）--------------------南海地震の可能性が逼迫する四国。特に高知県の沿岸部では津波への備えが急務とされる。東日本大震災を見ても、応急的な措置として高台の避難所や津波避難ビルの確保や、大型の避難道路の建設などの施策は有効だが、抜本的に犠牲者を減らす対策としては危険区域の退去以外に方法がないこともまた事実。しかしながら、高台移転は海岸沿いに人が居住することを否定する結果になるため、実現には経費も時間もかかるのが現実。それでも歴史的に見て南海地震がほぼ100年に1度程度の間隔で発生していることを考慮すれば、こうした施策は実はどうしても必要なことなのかも知れない。東海・東南海・南海地震の被害想定範囲はもちろんのこと、その他の地域でも日本で津波のリスクがない海岸はほとんどないわけで、今後こうした抜本的な改善策を施すべきかどうか、東日本大震災を踏まえて本格的な議論が行われるべきだろう。少なくとも、津波被害からみを守るための居住地ガイドラインは必須と考える。

  2011.07.19

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• 浜岡原発真下に活断層

  中部電力浜岡原発（静岡県御前崎市）の真下を通り、室戸岬（高知県）に延びる長さ四百キロの巨大な活断層が存在する可能性があることが、鈴木康弘名古屋大教授（変動地形学）らの研究で分かった。中電は独自の調査結果で活断層の存在を否定しているが、東日本大震災を受け、専門家らは耐震評価の見直しを訴えている。日本列島周辺の海底を調査した海上保安庁のデータを基に、鈴木教授と中田高広島大名誉教授らが二〇〇九年に詳細な海底地形図を作製し、研究を進めている。その結果、浜岡原発周辺の太平洋岸から室戸岬付近まで四百キロにわたり幅十～三十キロ、深さ三百～千メートルの海底のたわみ「撓曲（とうきょく）」を確認。「遠州灘撓曲帯」と名付けた。撓曲は、もとは水平だった地形が、その地下にある活断層の動きでできるとされ、「遠州灘撓曲帯」の地下には、同じ長さの活断層が想定される。鈴木教授は、浜岡原発の北東二キロにあり、段丘状に隆起している「牧之原台地」も、遠州灘撓曲帯を形成した活断層の動きによる地形と推測し、浜岡原発の真下に活断層がある可能性を指摘している。中電は、浜岡原発の半径百キロ圏内の海域に十四の活断層があることは認めているが、音波探査の結果、遠州灘撓曲帯に対応する活断層はないとしている。中電が把握している活断層の中で最も強い揺れを想定する「石花海（せのうみ）海盆西縁断層帯」は長さ三十四キロ。鈴木教授は「可能性のある断層は想定に入れるべきだ」と求めている。（東京新聞より）--------------------日本の地形学の第一人者による非常に重要な指摘。海底の撓曲ということですぐさま活断層と認定することは難しいのかも知れないが、その可能性を否定できる材料もやや弱い。それにしても400キロとは驚くべき大きさだ。そもそもすべての活断層が分かるわけでもない以上、推定されるべき根拠があるものについてはそれなりの警戒をすることが必要だろう。まして福島第一でこれだけ世の中を騒がせている以上、原発の立地とそのリスクについては慎重すぎるくらいのハードルがあってしかるべき。牧之原台地に関する指摘も興味深い。活断層の関与の可能性があるとすれば、周辺地形の成因にも大きく影響していることになる。地域を知る上でも非常に重要な発見といえるだろう。この活断層が今すぐ地震を起こすのかどうかはともかくとして、中電サイドにはリスク管理の観点から今一度きちっとした検証と、納得できる想定をお願いしたい。

  2011.07.18

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  岩盤が被害大小に関連、地震警戒地図の見直しを…岡山

  地震の研究で岡山県南部の干拓地や埋め立て地５８００地点以上を調査した岡山理科大の西村敬一教授（６７）（地震学）が１１日夜、岡山大で「東日本大震災に学び岡山の地震災害を考える」と題して講演した。西村教授は、同一の埋め立て地や干拓地内でも、岩盤の深さや形状によって揺れの大きさが異なることを説明。国や県が策定した地震のハザードマップでは、こうした局地的な揺れの差異が考慮されていないとして、マップの見直しなどを提言した。西村教授によると、１９４６年に起きた「昭和南海地震」では、県内でも死者５０人以上、全壊家屋約１２００棟の被害が出た。この時、岡山市南部の干拓地では、沖新田、興除新田の一部などで特に被害が大きかったことが「岡山県史」に記されているが、同一の干拓地内で被害の差が出る原因はわかっていなかった。昭和南海地震の際の被害状況は、現在のハザードマップには反映されておらず、県が２００２年に作成した「震度階級分布図」や「液状化危険度分布図」では、同一の埋め立て地や干拓地の揺れやすさはほぼ同程度として図示。内閣府が０５年に策定した県内の「ゆれやすさマップ」も同様という。（岡山県倉敷市・高梁川河口付近の「ゆれやすさマップ」）一方、西村教授は、０４年から岡山市南部の干拓地３０５７地点と、倉敷市の高梁川河口付近２７６７地点の岩盤の深さを、重力のわずかな違いから測定する「重力探査法」を使って調査。昭和南海地震の被害状況と照らし合わせた結果、岩盤の深さや形状が同地震被害の大小に密接に関係していることを突き止めた。（倉敷市・高梁川河口付近の「地震波集中度の分布」。揺れやすさの違いが細かく図示されている。＝西村敬一教授提供）　岩盤が、地下約３５０～４００メートルと深い所にある地点では、岩盤の上にある軟らかい土砂や堆積土の層が厚い影響で、地震波が屈折して地表の特定の場所に集中し、揺れを増幅させることが考えられるという。西村教授は、想定される揺れの大きさを等高線のように示したマップ「地震波集中度の分布」を作成した。これによると、埋め立て地に形成された日本有数の工業地帯・水島コンビナートや水島港玉島地区の県営産業団地「玉島ハーバーアイランド」にも、特に大きな揺れが想定される地点があるが、現在のゆれやすさマップでは、大きな範囲で同程度の揺れ（東南海・南海地震が同時発生した場合で震度５強～６弱）しか想定しておらず、実際には局地的に「想定外」の被害が出る可能性があるという。西村教授は「岩盤の深い場所は、阪神大震災でも被害が集中した。今回の調査で地震波が集中すると想定された地域の工場や住宅などは、重点的に耐震補強を行うなどの対策を取ることが望まれる」と指摘。一方で「現在のハザードマップでは、自分の住んでいる地域が、実際にどんな被害を受けるかを想定することは難しい。マップを見直し、きめ細かな防災計画を立てるべきだ」と求めている。これに対し、東日本大震災を受けて、県地震・津波対策専門委員会を設置し、東海・東南海・南海の３地震が同時発生した場合の被害想定や対策などを検討し始めた県危機管理課は「今後、検討課題に挙がるだろう」と関心を寄せている。（読売新聞より）--------------------岡山県でも地震防災は重要な課題。今日岡山県の海岸沿いを回ったのだが、津波避難看板を何度か目にした。瀬戸内海は津波より高潮の方が災害として身近ではあるが、南海地震を想定した津波へのリスクについても思っていた以上に関心が高いようだ。海岸沿いの集落は総じて海沿いギリギリの低い土地に防波堤に守られる形で分布しており、高潮や津波への備えは万全とは言えない。また、干拓地が多いこともこの地域の特徴。こうした低い土地では浸水のリスクが高いことはもちろんだが、記事中に指摘があるような揺れやすさについても十分に検証する必要がありそうだ。西村教授の見解は重力探査法による岩盤調査に基づいており、昭和南海地震の被害実績も反映されていることから、実践的なデータとえるだろう。こうした地域性の高いデータが得られたのであれば、これらを反映する形でハザードマップを見直していくこともこれからは必要になる。全国統一基準は分かりやすいかもしれないが、地域の特性が活かされてこそ防災は意味を持つものではないだろうか。

  2011.07.14

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• 可児市民ら調査のハザードマップ第１号完成

  可児市の住民らが自ら居住地区の危険箇所を調査する「わが家のハザードマップ」の第１号「広見乗里地区」が完成した。８月１日に同地区の約４０世帯に無料配布される。市は既に配布済みの市全体の洪水ハザードマップと併せて活用するよう呼びかける。昨年７月１５日の集中豪雨の被害を受け、市が市内１３５の全自治会とともに共同作製している。地図は、住民が調べた危険箇所のほか、被害のあった場所、河川監視カメラの設置地点、氾濫（はんらん）した場合の水流の動き予測、緊急集合場所などを記載。裏面には大雨や災害の場合に備えて知っておきたい知識や避難の心得なども掲載した。昨年秋に自治連合会から「災害の記録を自分たちの手で残したい」と申し入れがあり、市は「自助・共助の意識高揚につながる」と、ハザードマップとして作製することを決めた。全自治会に先駆けて、浸水被害のあった同地区と久々利丸山地区、下恵土宮瀬地区の３地区で試行版を先行作製。残る２地区も８月中に完成する予定という。既に４２自治会が作製に着手しており、１２年度末までには市内全自治会のマップが完成する見通しという。（毎日jpより）--------------------最終的にはこれがもっとも効果的なハザードマップの作り方なのだろう。市民自らが調べ、知り、体感する。もともと土地勘があることに加えて、土地の特性を知ることは減災への大きなアドバンテージになる。もちろん、専門家が一緒に入って、アドバイスをすることは必要。そこから学ぶこともまた大きな財産になる。自助・共助の意識付けはもちろんのことだが、マップ作成に参加したメンバーが家族や近隣の人など周囲に語り伝えることの効果も大きい。身近な人が語る方が話は伝わりやすいし、コミュニケーションの助けにもなる。伝える側にもおのずと地域の防災リーダーとしての意識が芽生える。減災の好循環が生まれるとしたら、このような仕組みなのかも知れない。

  2011.07.13

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  三浦半島の活断層で地震の可能性高まる

  政府の地震調査委員会（委員長・阿部勝征東大名誉教授）は11日、東日本大震災の影響で、神奈川県の三浦半島にある３つの活断層帯で地震が起きる可能性が高まったと発表した。大震災後の地殻変動で活断層帯に新たな力が加わったため。同調査委は全国にあるほかの活断層帯についても、地震が発生しやすくなったかどうか調査する。地震発生の可能性が高まったのは、三浦半島にある武山（横須賀市）、衣笠・北武（横須賀市・葉山町）、三浦半島断層群南部（三浦市）の３つの活断層帯。大震災後、東日本周辺で揺れを伴わずに断層がゆっくりとずれる「余効すべり」という現象が起きて力が加わり、断層が動きやすくなったと判断した。３つの活断層帯について今後30年以内に地震が発生する確率は、武山が６～11％、衣笠・北武がほぼ０～３％、三浦半島断層群南部は過去の地震の発生周期が正確に分からず、確率は不明としていた。地震調査委はこれらの発生確率自体は据え置くものの、それぞれの地震が発生する可能性が高まったと分析した。地震調査委は６月、立川断層帯（東京都立川市周辺）、双葉断層帯（宮城、福島県）、牛伏寺断層帯（長野県松本市周辺）の３つの活断層帯について、地震が発生する可能性が高まったという見解を示していた。（日本経済新聞より）--------------------（図は地震調査推進研究本部より）先月名前の挙がった立川断層や牛伏寺断層に加えて、新たに三浦半島断層群の危険が指摘された。発生確率そのものは修正されていないが、東日本大震災とその後の余効変動は各地の活断層に多かれ少なかれ影響を与えていることは間違いない。万が一これらの断層でM7クラスの地震が起これば広範囲で震度7程度の揺れになることが予想される。立川断層同様、首都圏で大きな被害は避けられないだろう。もっともこれらは現在分かっている断層の話。実際のところ発見されていない活断層は山ほどあるだろうし、そうした活断層にも同じように歪みはたまっていることが考えられる。活動期に入った日本列島。名前の出た箇所に限らず、警戒は必要だろう。国や自治体はもちろんだが、個人あるいは家庭でもできる対策を施していくことが重要。

  2011.07.12

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  兵庫の津波２倍対策足踏み

  東海、東南海、南海の３連動地震に備え、津波高の想定を暫定的に２倍に引き上げる兵庫県のシミュレーション作業が始まった。神戸・阪神間では、津波の到達想定区域がＪＲ神戸線付近まで広がる恐れが高く、住民の間に不安が広がっているが、結果の公表は今秋になる見込み。避難方法や地下街対策などで大幅な見直しが迫られる沿岸部の各市町は、「早く防災対策の説明をしたいのだが…」と気をもんでいる。２倍想定のシミュレーションは、東日本大震災で想定を上回る津波が襲ったことを受け、井戸敏三知事が表明。浸水想定マップを改定することにした。想定津波高は、平均満潮位を差し引いて試算。南あわじ市では現行の５・８メートルが２倍想定では１０・８５メートルに、神戸市東灘区では２・５メートルが４・２メートルになる＝グラフ参照。大阪府はすでに２倍想定を実施し、大阪市中心部の梅田や難波まで浸水するとの結果を公表した。兵庫県でも海抜だけでみれば、南あわじ市では海抜約１０メートルの高台にある避難所の小学校付近まで浸水。西宮市ではＪＲ神戸線付近、神戸市中央区では三宮センター街付近まで津波が達する。各市町にはすでに「２倍になると、うちの地域はどうなるのか」「避難場所は大丈夫か」などの問い合わせが相次ぎ、神戸市の防災説明会は５、６月の２カ月だけで例年の２年分に達した。ただ、今の段階では「詳細は県のシミュレーション結果を待ってほしい」との回答にとどめている。同市の担当者は「広範囲にわたって避難所が浸水区域内に入るだろう。緊急の待避場所はあるか、高齢者らをどう避難させるのか。住民に早く説明したいのだが…」。芦屋市の担当者は「先走って避難所を見直しても混乱する。県の詳細なシミュレーションを待つしかない」と話す。ただ、「２倍」にとらわれないよう戒める声もある。人と防災未来センター（神戸市）の奥村与志弘主任研究員は「想定を２倍にするのは、絶対に安全な場所はない、という意味合いからだ。地図上の線引きにこだわらず、沿岸から遠くても避難場所があるかチェックする指標として役立てるべき」と指摘している。（神戸新聞より）--------------------何のためのシミュレーションか。東日本大震災で「想定外」という言葉が独り歩きしたことが思わぬ弊害を生んでいるように思う。想定はハード・ソフト対策のための目安に過ぎない。それは災害の絶対値ではないし、いたずらに高くすればいいというものでもない。想定が高くなれば、ハードの建設・維持のためのコストは当然上昇する。住民への意識付けという面では、発生確率の低さが具体性（現実性）の低下を招くリスクもある。国や自治体はハードの整備を進めることはもちろん、住民への防災教育にも力を入れる必要がある。シミュレーションや想定に依存すれば、住民にとっての避難や対策はどうしても人任せになりがちだ。ひとりひとりが適切な判断力を身につけることが犠牲者を減らすことにつながる。想定を上げることの本当の意味をまずは県や自治体がきちんと理解する必要がありそうだ。

  2011.07.11

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  Googleが気仙沼市でデジタルアーカイブプロジェクトを始動

  Googleは2011年7月8日、宮城県気仙沼市で記者会見を開き、Googleマップのストリートビューの技術を活用して、甚大な被害をもたらした東日本大震災の被害状況を記録・保存するための「デジタルアーカイブプロジェクト」を開始したと発表した。対象となるのは青森、岩手、宮城、福島、茨城の5県で、特に被害の大きかった海岸線付近の市町村を重点的に記録する。撮影期間は、7月8日から約3カ月～半年程度を予定している。 ストリートビューは、Googleが2007年に初めて米国で導入した技術で、地図上のある地点を指定すると、その周囲の状況を360度表示の写真で閲覧できる。今回のプロジェクトは、このシステムを利用して、被災地の状況を記録し、防災教育や防災研究、災害実態の伝承などに役立てようというもの。その第一弾として、宮城県気仙沼市の撮影に着手する。 来賓として招かれた気仙沼市の菅原茂市長は「もともと、震災の実態や復興プロセスを記録として後世に残すことの重要性は認識していた。ただ、撮影の際には被災者に対する配慮が欠かせない。Google側からこの提案があって打ち合わせをしたとき、その配慮が十分に感じられたので協力することにした」という。 Googleは、今後ほかの市町村の協力を得ながら撮影エリアを拡大していき、2011年末までにはGoogleマップ上の公開にこぎつける予定。また、復興事業がある程度完成した段階でもう一度撮影し、前後の状況を比較できるようにするという。（日経パソコンより）--------------------人は忘れやすい生き物。災害の記録を残すことの意味は非常に大きい。近年アーカイブの重要性は十分に認識されているが、被災者心理への配慮から難しい部分もあったかとは思う。多くの研究者がモニュメントとしての保存を望んだ、大槌町の屋根の上に打ち上げられた遊覧船「はまゆり」が被災者に与える恐怖感を考慮して撤去されたことでもわかる。しかし、被災状況ばかりでなく復興の過程を記録することであれば復興の励みになる。そして災害そのものの伝承による防災上の効果も大きいだろう。戦争のアーカイブを見るたびに人は平和を願う。同じように震災の悲劇が繰り返されないよう、アーカイブを有効に利用したい。

  2011.07.09

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  観光客の避難を考える　静岡三保地域の津波避難地図

  静岡市の観光業者らでつくる団体「しずおか体験教育旅行」が、マリンスポーツなどで夏場に多くの観光客が訪れる同市清水区三保地域の「津波避難マップ」を作製した。チラシやポスターとして同地区の宿泊・観光施設などに置き、津波発生時の観光客の避難に役立てる。同団体は学校の校外学習や遠足を誘致するため、カヌー乗船や地引き網漁などの体験プログラムを企画している。東日本大震災後に津波への警戒が高まる中、観光客に安心して静岡に来てもらおうと、避難マップの作製を決めた。マップは清水区三保・折戸両地区にある２１カ所のビルの場所を紹介。市指定の津波避難ビルや広域避難所のほか、避難所に指定されていない３階建てほどの建物も掲載し「強い揺れを感じたら一番近い建物に避難」と呼び掛けている。同団体事務局は、避難マップのチラシ１０００枚とポスター５０部を作製。三保地域の旅館やホテル、海の家などに置いたほか、地元自治会にも配布を進めている。担当者は「非常時の、観光客の避難に役立てば」と話している。（中日新聞より）--------------------津波の際の避難の重要性については東日本大震災を目の当たりにしたこともあってか、全国的に認識されるようになった。今後はハード・ソフト両面での対策が進められることになるだろう。特にハザードマップの見直しや防災教育の推進、あるいは地域の自主防災などソフト面の充実は急務だ。もうひとつの隠れた問題が、外来者の避難についてだろう。ハザードマップは住民全体に配られるが、外来者については現地の土地勘がないであろうことも考え合わせれば、常に無防備な状態にあると考えられる。特に観光客が多い地域では深刻な問題となる。今回の三保の津波避難地図は観光客を対象にしているという意味では、この問題に一歩踏み込んでいるといえるだろう。実際の観光客に対する避難方法や避難場所の周知は、こうしたマップと併せて、防災無線の利用や、地域の自主防災への取り込みなど多角的に考えていくことが必要になるだろう。海辺の観光地は全国にたくさんある。今一度この問題を認識して、ソフト面の整備を急がなければならない。

  2011.07.08

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  大阪府が津波の被害予測

  東日本大震災で想定を超す津波が発生したことを踏まえ、大阪府は従来想定の約２倍の高さがある津波が大阪湾を襲った際のシミュレーション結果をまとめた。梅田や難波など大阪市中心部や湾岸の広い範囲で津波による浸水被害を受ける可能性が高いと判明。府は沿岸市町と連携し、住民の避難対策の強化を進める方針を決めた。 府はこれまで、マグニチュード（Ｍ）８．４～８．６クラスの東南海・南海地震が発生した場合、大阪湾岸に到達する津波の高さを最大３メートル程度と想定。沿岸のほぼ全域に高さ３～６メートル程度の防潮堤があるため、水門や堤防の門扉を閉鎖すれば、浸水域は大阪市や堺市の湾岸部の一部などに限られると予想してきた。 しかし、政府の中央防災会議は東日本大震災を受け、東海・東南海・南海の３連動地震が発生した際の地震規模や津波の推定値などを来夏までに検討する方針を決定。これに対し府は、３連動地震への対応を急ぐ必要があると判断。津波の高さを暫定的に２倍に引き上げた際の浸水域を想定し、同会議の検討を待たずに避難対策の準備などを進めることにした。（asahi.comより）--------------------スピードに敬意を表したい。対象は東海・東南海・南海の３連動地震。地震は決して待ってはくれない。多くの自治体が中央防災会議の検討結果を待っている中、いち早く独自の責任と判断のもとで成果を出したこと、そして避難対策等の準備にとりかかっていることは評価すべき。ただし、シミュレーションの性質や根拠等住民への説明はしっかりと行うべきだろう。特に、想定を引き上げた点については、住民に東日本大震災の被害のイメージがある間は有効だが、発生確率が低くなる分、避難行動のマンネリ化やオオカミ少年効果などでマイナス作用が働く可能性があることはしっかりと留意すべき。地図を見ると上町台地以外の大阪市中心部が低地であることがはっきり分かる。こうした土地のイメージが明らかにされることはいいことだと思う。自治体がしっかりと準備をすれば、おのずと住民の意識は上がるもの。今回の大阪府のスピードが住民へ伝搬することを信じたい。

  2011.07.07

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• 中央構造線の地震発生は交通事故死より高確率

  地震に関する調査研究を一元化しようと設置された「文科省地震調査研究推進本部」などは4日、和歌山県庁南別館で、和歌山県北部を東西に走る和泉山脈を含む「中央構造線断層帯」について、見直し調査後の地震の発生確率などを説明した。県内市町村、各消防本部の防災担当課の職員約100人が、今後の対策に生かそうと真剣に耳を傾けた。文科省研究開発局、地震・防災研究課の地震調査研究企画官、山後公二さんは、和歌山でも地震の被害が懸念される2つの活断層、「金剛山地東縁」(奈良、大阪など通る)と「和泉山脈南縁」について解説。両活断層に係る将来の地震活動などを予想した「長期評価」がこのほど見直され、変更された点をイラストや表で説明した。金剛山地東縁は、今後30年以内の地震発生確率が0%から最高5%、和泉山脈南縁は同0・06%から14%と上昇し、日本の主な活断層の中では地震発生の可能性が高いグループに入ると警告。和歌山市では、それぞれ震度5強、震度7の揺れが予測されていると説明した。また、火災で死傷したり、交通事故で死亡するなどの確率より、両断層による地震発生の確率の方が高いことを紹介し、「自然災害など他の事象と比較しても、無視できるレベルではない。地震対策を再考するきっかけにして」と呼び掛けた。（わかやま新報）--------------------結果的にタイムリーな記事になった。5日午後7:18頃、和歌山県で震度5強の地震が発生（M5.5）。幸いにして今のところ大きな被害は出ていないが、この地域での震度5強は戦後初めてとか。地元では東南海・南海地震への意識が強いだけに、来たか、と感じた方も多いのではないだろうか。実際のところ震源は内陸であり、逆断層型であることから、東北地方太平洋沖地震で見られたような海溝型地震の予兆の可能性は低いとのこと。むしろ中央構造線や仏像構造線といった断層帯との関係が注目される。記事にもあるが、中央構造線での地震発生確率はかなり高い。その被害想定もかなり大きく、首都圏・東海・近畿・四国・九州の広域で震度6~7が予想されている。もし本当にこの規模の揺れがあった場合、日本の機能はほぼ停止してしまうかも知れない。今回の地震が、エネルギーを解放したものなのか、あるいは構造線周辺の活動の活発化を意味するものなのか、さらなる解析が待たれるが、とにもかくにも日本周辺の地殻変動が活動期に入っていることだけは確か。様々なケースを想定した対策を急ぎたい。

  2011.07.06

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• 大震災の３日前から地盤移動　国土地理院のデータ解析

  東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震の３日前から岩手県や宮城県の各地で約３～５センチ、地盤が東方寄りに動いていたことが、杉戸真太岐阜大学理事らによる国土地理院のＧＰＳ連続観測システム（ＧＥＯＮＥＴ）データの解析で２日までに分かった。海溝型巨大地震の発生直前に現れる可能性が高いとされる予兆現象はこれまで、東南海地震（１９４４年）発生直前の２～３日前に静岡県掛川市で観測された、延長約８００メートル区間の測量で鉛直方向に数ミリという変異現象が唯一。今回も「予兆現象は無かった」との見方が多い中、同大地震工学研究室のホームページで公開され、注目を集めそう。杉戸理事は「ＧＥＯＮＥＴの志津川基準点（宮城県南三陸町）で地震の数日前から東方に卓越した経度変動がある」との神山眞東北工業大学名誉教授の指摘を受け、今年１月からの東北地方の各基準点の水平、鉛直方向の日別変動量を整理、取りまとめた。データ解析は、岐阜大学流域圏科学研究センターの久世益充助教が行った。この結果、本震後の最大水平変位が３～５メートルを超える岩手、宮城両県の基準点１６地点で、地震の３日前からいずれも東方への漸増的ずれが観測され、総変位量は約３～５センチだった。またこれらのすべての地点で鉛直方向にも１センチ程度の沈降がみられた。杉戸理事は「３月９日に前震に相当するＭ７．３の地震が発生しており、この影響を見極める必要があるが、今回は同様の漸増的変動が見られる観測点も多く、掛川での観測事例より明確な予兆現象のように思われる。この程度の漸増的変動のみで、今後いつ起きるという予知ができるとは言えないが、こうした予兆現象の観測が事前に周知されれば海溝型巨大地震に伴う大津波への備えには役立つのでは」と話した。【ＧＥＯＮＥＴ（ジオネット）】全国１２４０地点に電子基準点を設け、人工衛星を利用して地球上の位置を割り出すＧＰＳを連続観測、地殻変動を即時解析処理し、配信を行う国土地理院の高精度測位システムの総称。兵庫県南部地震（１９９５年）以降に全国に設置された強震観測網（Ｋ―ＮＥＴ）による強震記録の即時配信とともに、防災、気象などさまざまな分野の研究に貢献している。（岐阜新聞より）--------------------これを予兆現象ととらえるのかどうかは判断が分かれるところかもしれない。ただ、変異が見られたことが事実であれば、（3月9日の地震も含めて）何らかの因果関係の可能性を否定せず解析を行う必要はあるだろう。だからと言って、こうした結果がすぐ予知に結びつくかのような解釈は控えたい。あくまでも今回の地震そのものの解析として有用であることが第一で、予知云々はひとつのオプションに過ぎない。地震予知は決して簡単なことではない。しかし、様々な因子から今回の地震のメカニズムが解明されれば、それは防災上必ず役に立つはずである。諸外国では予知研究を軽視する傾向があるが、少なくとも研究プロセスがもたらす成果は無駄にならないと信じたい。

  2011.07.05

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• 「てんでんこ」が抱える矛盾

  国道４５号を挟んで、海岸から山手にかけて民家が建ち並ぶ岩手県釜石市嬉石地区。寝たきりの高齢者を助けようとした男性８人が津波にのまれ、その高齢者を含む４人が死亡・行方不明となった。「津波てんでんこ」の教訓を知っていながら救助に向かった生還者は「『てんでんこ』はやっぱりできない。ならばどうすれば良かったのか」と自問を続けている。３月１１日午後２時４６分。市中心部で軽トラックを運転していた消防団員の佐々木俊介さん（５２）は、激しい揺れに「大津波が来る」と直感した。ヘルメットと法被を身に着け約１５キロ離れた自宅に戻ろうとしたが大渋滞に遭い途中の嬉石地区にある義父宅へ向かった。義父と近所の高齢者を連れて一時避難場所の嬉石地区集会所にたどり着いたころ、時計は午後３時７分を示していた。集会所の人はまばら。ほとんどは、更に山手の市民交流センターへ逃げていた。「年寄りがまだ下にいるっけ、助けて」。そこに女性が駆け込んできた。津波は遅くとも３０分後とみていただけに「今から間に合うか」との思いがよぎったが、不安を振り切るように軽トラックに再び飛び乗った。坂道を約２５０メートル下った民家の前で、知り合いの消防団員（４９）らが待っていた。寝たきりの菊池ミエさん（８２）を義理の娘（５２）が１人で抱えようとしたが持ち上がらず、助けを求めているという。町内会長の成沢幹雄さん（７２）もいったん避難した後に駆けつけ、集まった男性は計８人となった。以前は雑貨店だった民家の正面はシャッターが下りていたため、成沢さんら４～５人が１階裏口から寝室に入ると、オムツ姿のミエさんに娘がズボンをはかせようと手間取っていた。「そんなのいいから」。遮るように布団の四隅を総出で持ち上げた。外で待ちかまえていた男性２人がシャッターを開け、布団ごと軽トラックの荷台に積み、佐々木さんが急発進させた。「津波が来たぞ」。叫び声がしたのは、その瞬間だった。進行方向から白波を立てた山のような水の壁が迫っていた。「こっちさ入れ」。佐々木さんは消防団員の呼び掛けで、家屋の陰になる空き地に車を動かした。だが、あっという間に水にのまれ、車内に閉じこめられた。車体が水に浮いて右に傾いた瞬間、助手席側のドアを開けて脱出できた。必死の思いで浮上し、目の前にあった家の屋根によじ登った。見渡すと家屋や電柱がごう音を立てながら濁流に押し倒され、もう軽トラックもミエさんの姿も見えなかった。一方、成沢さんは消防団員と一緒に山手へ走ったものの、すぐ津波に追いつかれた。しばらく小屋のへりにつかまって耐えたが、横殴りの波に打たれ２人は同時に手が離れた。成沢さんは偶然流れてきた大型の工具箱を盾にして、がれきをよけながら夢中で泳いだ。ミエさんと消防団員は現在も行方不明のまま。救助の際にシャッターを開けた男性２人は死亡した。「人間、助けてけろって頼まれたら絶対行く。『てんでんこ』はできないって今回よく分かった」。佐々木さんはうつむいた。成沢さんによると、町内会は４月１日、自主防災組織を発足させる予定だった。全３６５世帯を五つのブロックに分け、１人で避難できない高齢者を手助けする段取りを詰めていた。それも津波で保留となった。今は避難所となった市民交流センターで運営を取り仕切っている成沢さん。「どう考えても『てんでんこ』と自主防災組織は矛盾する」。毎晩、避難所の運営スタッフと議論になるが、どうすれば犠牲を防げたか、まだ答えが出ない。※津波てんでんこ：津波の時には親子といえども頼りにせず、てんでんばらばらに走って逃げよという意味。度重なる津波に見舞われてきた三陸地方で、家族や集落が全滅することを防ぐために言い伝えられてきた。（毎日jpより）--------------------非常に的を射た問題提起だ。弱者救援か、自分の身を守ることが第一か、その答えを個々に求める難しさについては、静岡大防災総合センターの牛山准教授も指摘している。要援護者を周囲が助けることを前提とした地域防災は、てんでんことは矛盾することになる。津波から助かるにはてんでんこは必須。しかしそれでは弱者を見捨てることになる。きれいごとではすまないその葛藤が津波防災のボトルネックとして横たわっている。一人でも多くの人が助かる可能性を重視するなら、やはりてんでんこの原則は守るべきだろう。しかし、一人の人間の心理として、目の前の人を捨てるという選択肢は耐えがたいものがある。今後の津波防災はこの点をしっかりと考えていかなければならない。この問題は避難以前の要援護者の安全確保（例えば極力危険な場所に居住しない）といった点も含めて、街づくりや福祉政策とも大きく関わってくる。実現できない理想より、目の前にある現実をクリアしていくような方法の確立こそが、真の減災につながる。まずはこの困難な現実をより多くの人が知ることが重要なのではないか。

  2011.07.04

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• ２５年前です…

  ２５年前です。ある自治体が「危険地図」をこっそり作製しました。豪雨になると水没するエリア、山崩れの危険性が高い造成地など。いわゆる「ハザードマップ」です。この地図の存在を取材して紙面に掲載したところ大騒ぎに。建築会社から「家が売れない。補償しろ」。市民は「地価が下がって財産が減る」。悪態の連打です。しかも自治体はオロオロ。しかし、時代は変わりました。今やハザードマップは市民の生命、財産を守ってくれます。（毎日jpより）--------------------このような実態は以前から感じていたこと。ハザードマップを作っても、それを積極的に運用できない事情がこのあたりにあった。結局のところ、安心安全よりも経済活動が優先されるのがこれまでの日本社会。しかし、ここにきて風向きは少しずつ変わってきている。震災を目の当たりにしたことで、市民が自発的にこうしたリスク情報を求めるようになった。実際に埋立地の液状化や谷埋盛土地での被害多発など、土地に対して危機感を抱く要素がたくさんある。市民側がこうした意識を持つことで、リスク情報は公開せざるを得なくなる。もちろん、土地のリスクと地価はそれなりに関係しているので、誰もが条件のいい土地に住めるわけではない。しかし、例え条件のいい土地に住めなかったとしても、そのリスクが分かっているのとそうでないのではいざという時の対応がまったく違ってくる。地震に限らず、水害や火山災害、土砂災害など日本にはたくさんの自然災害の因子がある。そしてそれは自然の恵みと背中合わせ。土地をよく知ることで実は暮らしは向上するのではないか、などと思う。

  2011.07.03

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  糸魚川～静岡断層帯を刺激か　松本の震度５強

  ３０日午前、長野県松本市で震度５強の地震があり、その後も震度４の余震があった。長野県には大規模断層の「糸魚川－静岡構造線断層帯」が走り、この断層帯が震源となった場合、マグニチュード（Ｍ）８級の地震が懸念される。今回の地震で断層帯の活動が活発化すれば危険性は高まるが、中部地方の研究者らは「今回とどう関係し、影響がどうなるのか分からない」と口をそろえる。信州大の塚原弘昭名誉教授（地震学）は「松本でＭ５以上の地震は３０年以上なかったと記憶している。東日本大震災が断層を刺激し、活性化させたとみるのが妥当だ」と説明する。さらに「大きな地震が起きる場合、事前に地震が増える可能性が高い。東日本大震災も前日までに地震が起きていた」と指摘。今回が前兆現象となることを心配する。名古屋大減災連携研究センターの山岡耕春教授も「東日本大震災が誘発した地震であることは間違いない」と話す。震災によって地盤が東へ移動。関東地方や中部地方で断層への圧力のかかり方が変わり、松本市周辺の断層も活動的になっていると分析する。今回の地震で、断層の力のひずみが解消され地震は終息するのか、逆にＭ８級の地震につながるのか。山岡教授は「どちらの可能性もあり、現段階で正確な予測は難しい」とみる。信州大工学部の泉谷恭男教授（同）は「国は、糸魚川－静岡構造線断層帯に含まれる牛伏寺断層などの大地震発生確率を予測しているが、私見では予測、予知は難しい。東北もいきなり大地震が来た。いつ地震が起きるかを気にする前に、防災の見直しを進めるべきだ」と注意を喚起している。（中日新聞より）--------------------言わずと知れたフォッサマグナ上に位置する松本市。この地溝帯は構造線に囲まれた断層の宝庫ともいえる場所。ちょうど先月地震調査委員会が牛伏寺断層の危険性を指摘したばかりのタイミングであり、今回も地震の一報を聞いた時にはこの断層かと思った。今回の地震は牛伏寺断層からやや西側。震源が浅くかなり局地的な揺れになったのが特徴といえるだろう。牛伏寺断層そのものが動いた場合はもっと大きな規模になるはずで、その点では不幸中の幸いといえるが、記事にもあるように今後に予断を許さないことは確かだ。国土地理院が公開している東日本大震災の際の地殻変動ベクトルを見ると、本震・余効変動も含めた移動ベクトルはフォッサマグナを境に東と西では大きく異なっている。このあたりが、日本を大きく分けるフォッサマグナの所以かもしれない。しかし、今回の地震は大震災が誘発したものであることはほぼ間違いなく、糸魚川静岡構造線や中央構造線に何らかの影響を与えることは否めないだろう。今回の地震が予兆なのか、それともこのまま終息するのか、現段階では予想もつかないが、当面は警戒を続けることが必要。。いざという時への備えを、家庭・職場、そして地域として考えるべきだ。日本は間違いなく地震の活動期に入っている。自分の住む土地のリスクを知ること。東日本大震災の教訓を活かすことができれば、被害は軽減できると信じたい。

  2011.07.02

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  新燃岳が噴火、２か月半ぶり１千ｍの噴煙

  鹿児島、宮崎県境の霧島連山・新燃岳で２９日午前１０時２７分、噴火が観測された。２３日に続いて今月３回目。鹿児島地方気象台によると、噴煙の高さは約２か月半ぶりに上空１０００メートルに達した。噴煙は宮崎県えびの市と小林市方向に流れたが、大きな空振や噴石の飛散は確認されていないという。鹿児島大の井村隆介准教授（火山地質学）は「火口の地下へのマグマ供給が続いており、１、２月のような噴火活動が起こりうる状況になりつつある」と警戒を呼びかけている。（読売新聞より）--------------------火山活動が続いていながら、報道が震災に傾いたため忘れられがちな新燃岳。今日の噴火はNHKのライブカメラで見ることができたが、長く続くものだった。南の風が吹いていたため、噴煙・火山灰とも北へ流れたようで、熊本県の五木村でも降灰が観測されたとのこと。幸い大きな被害は出ていないものの、井村先生のコメントにあるように当面は警戒が必要。特に火山災害は時として予想を越える被害をもたらすことがあるので、火山情報には十分注意を傾けたい。ところで、その井村先生も所属する鹿児島大学で、「地域防災教育研究センター」を立ち上げたことを発表した。鹿児島は台風・豪雨などの風水害や火山被害も多く、自然災害のリスクは高い土地柄。地域防災研究センターは調査研究部門、危機管理分野の人材育成を柱にした教育部門、防災に関する自治体などとの地域連携部門の３つの部門で構成され、市民からの防災に関する問い合わせに対応するほか、災害に強い地域づくりの支援も行っていくという。 こうした地域に特化した研究機関が出来るのは防災上非常に重要。住民の意識向上は地域を知ることから始まるだけに、その役割には大きな期待がかかる。

  2011.06.30

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• 「津波対策は２段階で」中央防災会議調査会が中間報告

  東日本大震災を踏まえた地震・津波対策を検討する中央防災会議の専門調査会（座長、河田恵昭・関西大教授）は２６日、今後の国の津波対策の基本的な考え方を示す中間報告をまとめた。対策は、従来の想定レベルと、東日本大震災のような最大クラスの２段階に分けて考える方針を提示。ハード面の対策はほぼ従来レベルとし、最大クラスには住民避難などソフト面の対策も組み合わせて総合的に対応することを求めた。中間報告はまず、東日本大震災を想定できなかったことへの反省を盛り込み、「従来の想定結果と大きくかけ離れていたことを真摯（しんし）に受け止め、想定の考え方を抜本的に見直さなければならない」とした。その上で、対策で考慮すべき地震・津波を巡り、古文書の分析や津波の痕跡、海岸地形の調査など「可能な限り過去にさかのぼって科学的知見に基づく調査を進めることが必要」とした。津波対策については（１）まれだが、発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの津波（２）最大クラスの津波に比べ発生頻度が高く、津波高は低いが、大きな被害をもたらす津波の２段階のレベルを想定することを基本的な考え方とした。最大レベルの津波への対策は、「住民避難を軸に、土地利用、避難施設、防災施設などを組み合わせ」た総合的な対策を確立すべきだと提言。災害時の拠点となる市町村庁舎、警察、消防などについては、被災した場合は影響が甚大なため、対策に万全を期す必要があるとした。防波堤などハード面の設備については、「比較的頻度の高い津波高に対して整備を進める」と、従来想定してきたような（２）レベルへの対応を基本とした。ただし、それを超える津波でも簡単には壊れず、一定の効果を発揮できるよう補強する必要があるとした。原発の津波対策にも言及し、「被災した際に影響が極めて甚大であることから、より詳細な調査分析が必要」と指摘した。河田座長は「日本海側は対岸から来るような地震・津波を全く考慮していない。ロシアの沿海州や北朝鮮の近海で起きる地震についても調査をやらなければいけない」と補足した。専門調査会は今後も検討を進め、今秋に最終報告を公表する。最終報告に向けて議論すべき課題として、住民にどのような避難行動を求めるか、犠牲者を減らすためにまちづくりの中で進める対策などを挙げた。そのために、東日本大震災発生時の住民の避難方法や避難判断の根拠、揺れによる被害の状況などの実態を把握し、津波警報などの情報提供や情報伝達のあり方についても検討する必要があるとした。河田座長は中間報告について「全国で見直しが進められている防災計画の立案を支援し、関係省庁や自治体による被災地の迅速な復興にも役立つと期待している」と話した。（毎日jpより）--------------------非常に現実的対応という感想を持った。想定はまさに最大値と発生確率のせめぎ合いである。確かに今までの想定は発生確率を重視したために、今回のような未曾有の津波に対して脆さを見せた。では考え得る最大値を想定すればそれでいいのか。ハードの部分でいえば、最大値への備えは費用面で大きな負担になる。避難という側面から考えると、頻度が少ない分対策の形骸化やオオカミ少年効果の蔓延というリスクを抱えることになろう。こうした面を考慮するならば、確率重視の従来型の対策との併用は落としどころとしては適切かも知れない。ただし、この方法を運用することで実際に効果をもたらすには、住民一人一人の災害リテラシーを高めることが不可欠になるだろう。地域や自分の住んでいる土地の特性を知ることや、ハザードマップの読図力をつけること、そして避難することの理解すること。こうした内面の備えを高めることで初めて社会全体で災害へ立ち向かう仕組みが出来上がる。ハード、そして教育。心を一つにして災害に備えることができるのか。それがこの国の将来を決めることにもなる。

  2011.06.28

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  富士海岸の防潮堤

  静岡県東部の富士海岸は、約２０キロにわたって海抜が最高１７メートルの防潮堤に守られている。「万里の長城」と呼ばれながら、東日本大震災の津波で破壊された岩手県宮古市田老地区の防潮堤より規模が大きく、国土交通省によると高さは日本一。想定を超える津波を懸念する声もあるが、地元の自治体は「よほどの津波でない限り乗り越えられない」と強気だ。国交省沼津河川国道事務所と県田子の浦港管理事務所によると、富士海岸の防潮堤は富士市五貫島から沼津市千本地区をカバー。構造は、海側から陸に向かい約３０度の上り坂になっている「傾斜型」が大半で、海抜１７メートル区間は８割近くを占める。内部は砂利で固められ、表面は厚さ５０センチのコンクリートで覆われている。「万里の長城」と呼ばれた宮古市田老地区の防潮堤は海抜約１０メートルで総延長約２・４キロ。静岡河川事務所などによると、静岡県中部の防潮堤は最高で１５メートル、県西部が１０メートル程度。富士海岸の防潮堤の規模の大きさが際立っている。建設のきっかけは戦後、台風が相次いでもたらした高潮の被害。１９５９（昭和３４）年の伊勢湾台風では、富士市沿岸で住民が行方不明になり、住宅も流される被害が出たため、県は海抜約１３メートルの防潮堤を築いた。しかし、６６年の台風２６号でも同様の被害が再発。主に国の直轄事業で防潮堤が現在の高さまでかさ上げされた。駿河湾は国内でも有数の、海溝からの傾斜が急な海岸。中でも富士海岸は最も急な箇所で、台風の高潮は減速せずに海岸を襲う。沼津河川国道事務所の犬飼一博副所長は「防潮堤の海抜が日本一になったのは、高潮対策でかさ上げを続けた末の思わぬ成果」と説明する。県の第３次地震被害想定では、東海地震で富士海岸に来る津波は海抜２・６～４・４メートル程度。富士市防災危機管理課は「想定の３倍の津波が来ても大丈夫なはず」と強調する。しかし、東海、東南海、南海の３地震が連動する可能性が指摘される中、沿岸部の住民からは「高潮対策の防潮堤が想定外の津波に耐えられるか」などと不安の声も。また、田子の浦港の入り口には防潮堤がなく、対策が十分とは言い難い。富士市は８月中に、沿岸部で津波避難ビルを新たに指定する予定で、候補に挙がった約１５０棟の耐震性などを調査中。犬飼副所長も「東日本の津波の被害を分析し、必要があれば、管内の防潮堤の改修を検討しなければならない」と慎重だ。阿部郁男・富士常葉大准教授（津波防災情報学）の話　東北地方の津波で各所の防潮堤が残った理由、壊れた理由を検証し、想定を超える津波で何が起こるかを事前に考えておくべきだ。（中日新聞より）--------------------東日本大震災がいわゆる「想定外」であったため、ハードの無力さが露呈される結果となった。だからといって、ハードがまったく役に立っていないわけではなく、実際にハード面がゼロだった場合にどれくらいの被害が出ていたのか、比較検証することも必要だろう。そうした面もふまえた上で、富士の防潮堤についても評価するべきだろう。裏を返せば、ハードだけに頼るのではなく、ハード+ソフトという組み合わせの中でハードのスペックを考えることが重要になる。いたずらに防潮堤の高さを積み上げたところで（もちろんそれだけの効果はあるが）想定を越えれば被害は避けられない。想定はどこまで行っても想定に過ぎないし、そこを突き詰めると海岸沿いの土地には住めなくなる。その意味では住民がハードの意味とその限界もきちんと理解した中で避難などソフト面の推進を図ることで東日本の教訓が活きるのではないだろうか。防潮堤と住民意識の両面で日本一になること、決して不可能なことではないと思う。

  2011.06.27

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• 津波被災の鉄筋建物　浮力で横倒しに

  東日本大震災の大津波をかぶった鉄筋コンクリート（ＲＣ）造の建物が土台ごと浮き上がり、横倒しになるケースが相次いだことが、独立行政法人建築研究所（茨城県つくば市）などの現地調査で分かった。従来、ＲＣ造建築物は津波に強いとされてきたが、このような事例はほとんど知られておらず、浮力に対する意外な弱点が浮かんだ。同研究所は津波に強い構造を考える上で重要な手がかりになるとしている。福山洋上席研究員（耐震構造）らは３月３０日～４月９日、大津波に襲われた岩手、宮城両県沿岸の８市６町で調査を実施した。津波の高さが１４メートルを超えたとされる宮城県女川町では、最大高さ１２メートルの建物などＲＣ造の６棟が、ばらばらの方向に横倒しになっていた。各階の内壁に残っていた津波の跡が、いずれも窓の上端の高さまでだったことから、福山さんらは「窓から津波が入り込んで浸水したが、水面と天井との間に空気がたまり、大きな浮力が生じた」と分析した。窓の上端から天井までの距離が長いほど「空気だまり」の体積が増えるため、浮力も大きくなる。横倒しになっていた６棟はいずれも窓が小さく、空気だまりができやすい構造だった。このうち２階建ての冷凍庫施設（高さ９メートル）は、建っていた場所と横倒しになった場所との間に高さ１．９メートルのコンクリート塀があり、破壊されずに残っていた。推定重量７３０トンの建物全体が浮力によって浮き上がり、塀を乗り越えて移動したと考えられる。別の４階建て旅館は約７０メートル移動して横倒しになったが、地面に引きずられたような痕跡はなかった。福山さんは「木造に比べるとＲＣ造の建物の多くは津波の衝撃に耐えたが、意外な弱点があることも分かった。浮力の作用が明らかになったことで、より津波で倒れにくい建物を設計できるようになる」と話している。（毎日jp）--------------------これは重要な話かもしれない。正直鉄筋コンクリートは津波には強いと思っていた。多くの人がそうだろう。しかし、どんな構造であれそれなりの弱点はあるもの。今回のようなケースがあることは知っておく必要がある。そしてこうした事実が分かったことが何より大きい知ることこそが減災の大きな手掛かりになる。

  2011.06.26

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• 東日本大震災調査報告会へ

  国土地理院東日本大震災調査報告会を聴講。ツイッターでほぼ実況を試みたがなかなか難しい（笑）6月3日の新宿での報告会が立ち見の盛況だったこともあり、今回は定員制。数日前には定員に達していて、満員という状況。6月の報告会はどちらかと言えば業界向け（その分技術的に突っ込んだ話もあったが）だったのに対して、今回は一般の方や他業種からの参加も多かったのは注目すべきことかもしれない。干渉SARやGPS連続観測網による地殻変動の視覚化の成果、そして震災後の地理空間情報流通などが注目を集めたことも大きいが、これだけ関心が高いということは今後の地理院のアイデンティティにも繋がるだろう。むろん、その分責任も果たしてもらわなければ困るが。発表はどれもおおむね分かりやすかったが、測量人以外の参加が多いことが分かっているのであれば、もう少し噛み砕いてもよかったと思う。用語についてもそうだし、質問でもあったように、GPSについて干渉ありきで考える測量業界と、GPS＝単独測位と理解されている一般社会との齟齬もあった。そのあたりも含めて、会場からの質問に対する回答はもう少し頑張ってもらいたいというのが正直なところ。公の立場として答え難いテーマもあったかも知れないが、質問者の発言の本質をとらえていないような回答も散見されたのは残念。聴衆の関心を集めていたのが、今後のデータ提供について。注目の災害復興計画基図について、少し具体的な姿が見せたのも良かった。ただ、提供のあり方はまだまだ検討が必要だ。国土地理院の配信は電子国土で行われることが多い。ところがこの電子国土、本来なら使いやすいのかも知れないが、実用面を考えると重すぎる。こちらの環境が非力なこともあるが、固まってしまうことも頻繁にある。背景データとしての電子国土基本図はそれなりの需要がある。だけど電子国土上で作業をしたくない、という声は良く聞く。ならばWMS配信を考えてもいいのではないか（基盤地図情報25000のWMS配信はあるが、地理院ではない）。最近の地理空間情報を扱う主流はweb上でのマッシュアップ。あるいはQGISのような汎用（と言っていいのだろうか？）ツールに取り込むパターンも多いだろう。データの公開や流通のあり方はJPGISなどの標準にとらわれず（作る時はしっかり標準通りにやるべき）もう少し柔らかく砕いてもいいように思う。あと、最後に質問として投げさせてもらったが、航空レーザによるDEMの公開について、できることならDSMの公開もお願いしたい。今回の津波を見ても、建物や構造物の影響は色々な意味で無視できない。DSMをそのまま使う、という安易や意味ではなくと、様々な調査や解析のベースとして役立つことが期待できるからだ。復興、そしてこれからの減災に向けての取り組みの中で、地理空間情報は必要不可欠なもの。作成についても提供についても、今のままを良しとするのでなく、少しでも使いやすいように改善していって欲しい。

  2011.06.24

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  三六災50年

  １９６１（昭和３６）年に伊那谷を襲った三六災害から５０年の節目を迎えたことを記念し、大災害の記憶を継承し地域の防災力の向上につなげようと、三六災害５０年シンポジウムが１９日、飯田市高羽町の飯田文化会館で開催した。同シンポは国、県、市町村などでつくる実行委員会の主催で開催。会場には約１３００人が訪れた。会場、展示室では、飯田長姫高生徒のロゴマーク作品をはじめ、災害パネル展示や技術展示、災害対策車両が公開された。式典では、阿部守一県知事や牧野光朗飯田市長らがあいさつ。サイドイベントとして「演劇宿」による「演劇的記録三六災害五十年」も上演。大鹿村民約４０人も出演し、災害の記憶を振り返った。 基調講演では高森町在住の理学博士、松島信幸さんが、地形・地質との関連から三六災害を振り返った。伊那谷の地形を▽天竜川氾濫源▽土石流扇状地▽深層風化帯▽急峻山地―の４つに分け、各所の水害、土砂災害のタイプを指摘。「自然のサイクルは１日が１０００年。人がいるから災害になる。主人公は自然」とし自然から生かされる生き方を訴えた。パネルディスカッションでは北澤秋司信大名誉教授をコーディネーターに５氏が討論。伊那市の災害ボランティアコーディネーター、米窪砂男氏は災害時の住民の助け合いが必要としながらも「近所付き合いが減り、助けてくれと言いづらい人がいる。一方、助けたいが何をしていいか分からない人がいる」と問題点を指摘した。 草野愼一天竜川上流河川事務所長は、三六災害以降、治水・砂防事業が進んだ結果、同規模の豪雨があっても災害を防ぐことが可能だと強調。さらに水位で三六災の１・５倍、土砂で２～３倍を防ぐよう事業を展開していくとした。また、柳島貞康大鹿村長は、三六災害時に北川地区で住民の集団キャンプの様子などを説明。「ハード面での防災は進んだ一方で高齢化が進行し、住民相互の助け合いの力は三六災当時より弱まっている」と懸念した。このほか、松下寿雄飯島町議長が中川村で被災した経験を語り、木下隆由飯田商工会議所副会頭が三六災復旧や東海地震の備えを語った。質疑では、各界責任者が発言の中で「三六災」を「さぶろくさい」と名言したことについて地域の有識者から「正しくはサンロク。サブロクと読むのは俗称的発言呼称で、適切ではない」とする意見があった。（南信州新聞より）--------------------三六災。正式には昭和36年梅雨前線豪雨災害といわれる。1961年に伊那地方を襲った豪雨は河川の氾濫を招いた他、6月29日は大鹿村にある大西山（1741m）が山体崩壊を起こし、集落を飲み込むことで42名の死者を出した。自分は学生時代に山村地理学を専攻しており、卒論のフィールドが大鹿村だった。どこへ聞き取りに行っても三六災の話が出た。村を中央構造線が横切る大鹿村は、常に土砂災害に悩まされてきた。今を持っても、村の主要な仕事の一つが災害復旧事業。自分たちがダメージを受けて初めて仕事になるという矛盾だらけの現実に衝撃を受けたことを覚えている。中央構造線の東側は地すべり地形が多いことから、山の斜面の地すべり堆積面に集落が展開する。そして構造線の西側は大西山を筆頭にどちらかといえば急峻な山が連なる。崩壊した大西山の麓は今では公園になっていたと思う。対岸には中央構造線博物館がある。是非多くの人に訪れて欲しい施設であるが、今のところそれほど観光客が多いとは言えない村なので。こうした歴史があることから、村民の土砂災害への意識は高い。砂防工事が進むことでハードは当時とは比べ物にならないくらい充実したが、自然の力が時として人の想定を超えることを我々は学んだばかりだ。今、この中央構造線をリニアが横切ろうとしている。工事は万全を喫する形で進むだろが、土砂災害が頻発する場所であることのリスクを忘れないようにしたい。

  2011.06.22

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• 九州の大雨

  九州地方は１９日にかけ、停滞した梅雨前線の影響で熊本県を中心に大雨が降り、各地で土砂災害が発生、鹿児島県ではお年寄り１人が行方不明になった。２０日も前線が接近し激しい雨が降る見込みで、気象庁は土砂災害への注意を呼びかけている。 鹿児島県出水市では１８日午後７時半ごろ、女性（７５）が行方不明になっていると家族から県警に届け出があった。増水した用水路に転落した可能性もある。 大分市では１９日午前１１時半ごろ、墓地東側の崖が高さ３０メートル、幅１０メートルにわたって崩れ、鉄骨平屋建て倉庫の一部が壊れた。福岡県大牟田市の県道大牟田―高田線では同日午後１時２０分ごろ、道路脇の斜面が高さ１０メートル、幅１０メートルほど崩れ、通行止めになった。（asahi.com）--------------------非常に心配な状況だ。九州では10日以来の累積雨量が900ミリを超え、水俣市では19日午前4時半までの24時間雨量が6月としては過去最高の314.5ミリを記録している。地盤が緩んでいる地域も多く、土砂災害には十分な警戒が必要。特に新燃岳周辺ではこれまでの噴火の噴出物の堆積があるため、土石流発生の可能性も高い。土砂災害は全ての地区で一様に起こるわけではないことから、避難勧告が出しにくい災害のひとつ。少しでも異常を感じたら早目の避難を心がけたい。逃げて損は絶対にないので。また、土石流は上流部の降雨が影響するため、予告もなく突然やってくることがある。谷口に位置する集落では特に注意が必要だ。20日にかけてさらに激しい雨が予想される。どうか十分な警戒を。

  2011.06.20

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  広島でも震災報道写真展

  「３・11東日本大震災　報道写真展」（中国新聞社など主催）が16日、広島市南区の福屋広島駅前店の６階特設会場で始まった。甚大な被害や津波の恐ろしさを伝える写真68点や新聞紙面などを展示している。21日まで。宮城県南三陸町に津波が押し寄せる連続写真や、避難した夫婦が再会できた場面、避難所の様子を切り取った写真をパネルにして展示している。被害状況を伝える河北新報社（仙台市）の紙面や被災地の地図も並ぶ。（中國新聞より）--------------------被災地や首都圏でもこうした展示は行われているが、西日本での開催には意義がある。こうした災害による犠牲を減らすためには、多くの人が実際に被災地の光景をその目で見ておくことが最も効果がある。自分の目で見たことを周りに、そして子孫に伝え続けることこそが将来の災害への備えになる。だけど現実的に被災地を訪れることは簡単ではない。西日本からは距離も離れている。だからこそ、せめてこうした写真展、それも一般の人が目にすることができるような場所で開催することが望ましい。震災後、あまりの悲惨さに多くの人がテレビから目をそむけた。人の気持ちは弱いもの。凄惨な映像を見続ければ怖くもなるし、気分も滅入る。それでも我々は後世へ伝える義務がある。次の犠牲が一人でも減ることを祈って。

  2011.06.17

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• 土地白書を閣議決定

  政府は１４日、東日本大震災の復興に向け、被災地の土地境界確定を含む土地資産の再評価の必要性や、国の支援方針などを盛り込んだ平成２２年度の土地白書を閣議決定した。東日本大震災では、多くの土地所有者が不明となったことに加え、震源に向かって水平方向に最大５メートル以上の地殻変動が生じ、測量の基準点がずれるといった技術的な問題も発生した。土地境界などを詳細に示す「地籍」の修正作業が不可欠で、白書では測量の基準点整備を含め、国主導で迅速に対応すべきと指摘している。また、被災地で高台の地価の急騰や、土地買い占めが起こらないかなど、取引の動向に留意する必要があるとの意見も盛り込んだ。土地の評価では、被災地が都市部から漁村部まで広範囲で、これまでの取引事例も少ないため、不動産鑑定の評価指針の策定支援や、地価公示の特例的な評価手法も検討する。そのほか白書では、不動産市場の全体的な動向について、２３年地価公示で、２０年９月のリーマン・ショック以来初めて東京圏、大阪圏、名古屋圏、地方圏の下落率がそろって縮小し、下落基調からの転換が見られると分析。一方で、海外からの不動産投資額では、中国や香港、シンガポールなど、他のアジア諸国に比べ、日本は回復が遅れているとの見方も示し、市場の透明性向上や不動産証券化の活性化などが必要との認識を示した。（SankeiBizより）--------------------土地をめぐる動向にも東日本大震災の影響が強く影響している。一つには物理的な問題があるだろう。基準点が大きく動いていることからも分かるように、東日本を中心に地殻変動は広い範囲で観測されている。地籍測量用の四等三角点や、DID地区を中心とした街区基準点なども今後成果が改定されることになる。また、土地境界そのものにも少なからず影響があるかも知れない。こうした地殻変動を考慮した場合、従来のように境界杭で判断するのか、はたまた座標で管理するのか、なかなか難しい問題だ。いずれにせよ、ある程度の修正作業が必要になることは間違いない。また、震災（特に液状化）の影響で土地の価値そのものにも変化が出てくるだろう。以前であれば立地の利便性を重視していた土地購入者も、震災を機に土地のリスクへの関心が高まっている。こうした傾向は今後地価へも影響を与えるかもしれない。当面は動向を見守る必要があるだろうが、土地というものへの価値観が曲がり角に来ていることは確か。こうした心理面の作用も含めて、安全な街づくりへとベクトルが向くのであれば歓迎だが。

  2011.06.15

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• 久しぶりのつくばにて

  久々につくばを訪れた。以前はよく国土地理院に出向いていたのでこの地に来る機会は多かったが、最近はすっかりご無沙汰になっていた。研究学園駅前の変貌には本当に驚いた。自分の知っている姿は見渡す限り一面の空地で、わずかに分譲住宅の案内所があるだけの街だったのだが。。。今では分譲住宅に高層マンション、ホテルや大型ショッピング施設まであって、さながら未来都市。開発のパワーというのは本当に凄いものだ。なるほど、都心までの時間を考えると悪くない立地ではあるが。今日訪れたのは、某研究所。貴重な情報交換の時間を頂く。話題の中心はどうしても震災のこと。発災以降の現地での対応、現行の仕組みの機能した部分としていない部分、今後への課題など主として道路防災での事例を教示頂いた。中でも興味深かったのは現地での地図利用についての話。現場では「徹底したリアリズムが重視される」ため、一覧性があり見て分かりやすいことから紙地図での作業が基本であったとのこと。これまで話を聞いた機関でも同様の答えを得ているので予想の範囲内であったが、ここでは調査の（現地での）取りまとめもアナログ手法で紙地図から紙地図へ転記するやり方が修だったという。作業は複数の人数で手分けして行われるため、全員の目が入りやすい点でも紙が優位だったのだ。もちろん最終的な記録や各種解析はGISが使われるが、現場での紙媒体の活用との棲み分けは災害時の地図利用のひとつのカギになりそう。このあたりは他の事例も含めて、一度整理する必要がありそうだ。色々と貴重な話を聞けた今回の訪問。久々に乗車したTXは相変わらず速くて、新幹線に乗っているかのようだった。

  2011.06.14

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• ブームで終わらせるな

  東日本大震災で県内に液状化被害が広がった影響で、自宅の建つ地盤のリスクを確認しようと、明治時代などの古地図までさかのぼり、土地の来歴を調べる人が増えている。図書館の資料室では、閲覧希望者が震災後に急増し、販売業者も古地図の取扱量を増やすことを検討するなど、関心が高まっている。県立中央図書館（千葉市中央区）の資料室は、県内の古地図を多数所蔵している。明治政府が作製した縮尺２万分の１の「迅速測図」や、大正時代に国土地理院が発行した縮尺２万５０００分の１の地図などはかつての土地の姿を確認できる。高度経済成長期の１９６５（昭和４０）年ごろから現在までは、住宅地図も取りそろえており、建物ごとの入居者名やテナント名のほか、沿岸部の埋め立ての進捗（しんちょく）状況など土地利用の移り変わりまで、より細かく調べることが可能だ。資料室担当の司書、山田浩子さんは、閲覧希望者が「震災前の２倍ぐらいに増えている感触です」と話す。液状化被害の目立った千葉、船橋、習志野各市など湾岸部の住民が以前より多く訪れており、浦安市の住民が「買ったマンションの場所に昔何があったか知りたい」と相談してきたケースもあったという。船橋市習志野台から、地元の郷土史研究で来館し、１８８２（明治１５）年から現在までの地図をコピーしていた無職の男性（７８）は「４０年ほど前に建てた自宅は内陸部の高台にあり、近くに河川もなく、液状化の心配は少なそうだが、側溝などの細かく目立たない埋め立てまでは、古い地図でも見なければなかなかわからない。地元に持ち帰って、子供たちや地域の人に地図を見せながら、地域の歴史を考えたい」と話していた。地図を専門に販売するインターネットサイト「ＭＡＰＳＨＯＰ」を運営する札幌市北区のサービス業「データクラフト」にも、震災後、千葉など日本全国の沿岸部から地図の在庫を問い合わせる電話が相次いでいる。担当者は「液状化被害を巡る混乱が一段落すれば、被災地でさらに古地図の需要が増えるかもしれない」と話していた。（毎日jpより）--------------------震災以来全国で古地図や古い空中写真が注目されるようになった。東京でも住宅購入の際低地よりも揺れにくい武蔵野の台地が人気になるなど、土地のリスクに対する市民の関心は高くなっている。こうした意識変革は歓迎すべき傾向だ。防災面の問題だけでなく、土地や地域を知ることで地理リテラシーが高まることが期待されるからだ。一方で、こうしたブームが一過性のもので終わってしまうことも十分に考えられる。旧版地図や古い空中写真の購入や読図は、好きな人には苦もないだろうが、そうでない人にはなかなか難しい作業だ。また、土地のリスクを知るには土地条件図や治水地形分類図、都市圏活断層図、火山土地条件図なども有効だが、内容はやや専門的になる。（ちなみに土地条件図は国土地理院のホームページで閲覧可能）つまるところ、正しい情報を得るためにはそれなりの予備知識や読図力は必須であるし、図によってはさらに専門的な知識も要求される。ところが実際のところ、現状そこまでのリテラシーを得るための教育は行われていないと見るべきだろう（特に地形分類と災害の関係などについては顕著か）。せめて入門用の解説書やこうしたことを気軽に相談できるサービスが必要になる。特に書物はどうしても学術的内容になりがちだが、もう少しやわらかい内容のものがあるといいと常に思っているのだが。このように世の中には防災上有効な資料がたくさんあるが、往々にして敷居が高い。こうした素材を多くの人に利用してもらえるような仕組みづくり（解説等も含む）も現状の課題ではないだろうか。せっかく高まった関心が一過性のブームで消えてしまうのはあまりにももったいない。

  2011.06.13

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• ３ヶ月

  3.11の東日本大震災から3ヶ月。もう3ヶ月だろうか、それともまだ3ヶ月なのか。一つ確かなことは、その後の歩みの遅さだ。そしていまだに多くの人が苦しみの中にいるということ。政局の混乱は目に余る。ここまでの様々な経緯は理解しても、被災者置き去りの国会運営は政治家という商売の本質を疑わざるを得ない。人としてあまりにも愚かだ。福島第一原発はどうだ。収拾どころか、事態はむしろ悪化の途をたどっているではないか。放射能は人を汚し、土や海を汚し、水を汚した。野菜や魚、いや、すべての食物の安全を確保することが難しくなっている。外部被ばくと内部被ばく、その両方が国民に襲いかかっているのだ。それなのに、原発容認論がいまだにのさばっていることの理不尽。大多数の国民の声は明白。これまで反核や反原発運動はどうしてもイデオロギーと切り離せなかった。だから多くの潜在的な反対論があっても、左翼と一線を画す国民は静観するしかなかった。しかし今は違う。誰もが反原発を明示的に表現しているではないか。確かに、本質的には地方切り捨てで進んできた高度成長の流れがある。だから苦しい地方は原発を黙認せざるを得なかった。しかしもうそれは許されないこと。全てを変える以外に生き残る道はない。世界中に迷惑を撒き散らしておいて、原発容認という結論になったら、もう日本は犯罪国歌のレッテルを貼られることになる。津波の被災地はどうだ。いまだに瓦礫の山がそこにあるという現実。3ヶ月たった今、9万人がまだ避難生活を余儀なくされており、それ以外でも全てを無くして無一文で途方に暮れている被災者がだくさんいる。国はいまだに救いの手を出せないでいるではないか。いったい何をやっているのだろう。たくさんのボランティアが現地を訪れている。機能する部分、しない部分があるのは仕方がない。その多くが瓦礫の撤去に駆り出されているのが現状だ。大の大人が6人7人かかって、1日汗水流して1部屋も片付かない現実。本来これはボランティアの仕事ではない。お金を出して、プロがやらない限りいつまでたっても終わらない。現時点での行方不明者の死亡が認定されたという。保険のからみ等での措置だが、被災者の心情は複雑だろう。少しでも被災者の暮らしがいい方向へ向かってくれればいいのだが。復興へ向けて自主的に動き出している地域の力がある。それが唯一の光明だ。彼らこそが日本を変えていく救世主になるだろう。

  2011.06.12

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• 福島県全域の土壌汚染図作成へ

  放射性物質による土壌汚染の状況を地図化するため文部科学省は６日、県内全域を対象とした土壌調査を始めた。県内を２～１０キロ四方の区域に分け、計２２００区域で土を採取して土壌の汚染地図を作る。６月末をめどに採取を終え、結果は８月ごろに公表する。調査には、大阪大や日本原子力研究開発機構など全国３５施設の専門家が参加。福島第一原発から８０キロ圏内は２キロ四方、８０キロ圏外は１０キロ四方の区域で５カ所ずつ土を採取する。分析には大阪大など１９施設が協力し、ヨウ素やセシウムなどの放射性物質を調べて区域ごとの濃度を地図に落とす。文科省ではこれまで、上空からの測定による放射性物質の蓄積量や原発周辺で採取した土は分析してきたが、全域の土を対象に汚染地図を作るのは初めて。梅雨で土壌が洗い流される６月末までに調査を終えるため、１日あたり約２００区域の採取を続ける。（asahi.comより）--------------------遅きに失した感はあるが、やっと網羅的な土壌調査が始まる。ただ、8月公開はいかにも遅い。調査、とりまとめと時間と手数がかかるのは理解するが、現状が緊急事態であることを考慮して欲しいものだ。身体への影響、食の安全、すべての意味で急がなければならない。予定は予定として、少しでも前倒して作業を進め、一日も早い公開を望みたい。

  2011.06.08

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• 雲仙普賢岳火砕流災害から20年

  1991年6月3日の雲仙普賢岳火砕流災害から20年。時間は現実を風化させる一方、問題の本質を熟成させる猶予を与えてくれる。NHKで放送されたドキュメンタリードラマ「１９９１雲仙・普賢岳　避難勧告を継続せよ」を見て、改めてこの災害が我々に残した多くのものを知った。特に、避難の継続と報道のあり方についてはこの災害が大きな経験値になっていることが分かる。災害に直面した当事者はともかく、テレビの画面で事実を見届けた我々はあの瞬間の衝撃を忘れつつあった。そして20年後の東日本大震災に多くの共通項を感じずにはいられない。溶岩ドームの成長により、火砕流の発生の確率は高かった。だけど当時その本当の恐ろしさを知る者はおそらく少なかっただろう。そのことが多くの犠牲者を出すことになる。「こんな恐ろしいことになるとは思わなかった」多くの人がそう感じたことだろう。それは今年の震災の津波とどこか似ている。身に迫る危険と避難行動。リスク判断はどうしても経験値依存することになる。「大丈夫だろう」という感覚はオオカミ少年効果で加速する。そしていつか訪れる現実は残酷なものだ。昨年、災害現場である深江町の上木場地区を訪れる機会があった。火砕流によって破壊された旧大野木場小学校の校舎は当時の姿で保存されている。記憶の風化を防ぐ意味でも、こうして生々しい被害の爪痕を残していくことは大切だと思う。今年の震災についても後世のために絶対にモニュメントを残すべきだ。ドキュメンタリードラマの中で、当時対策に奔走した鐘ヶ江元市長の「避難勧告は解除することが最も難しい」という言葉は、まさに災害の背景に横たわる心理面の因子を言い表してはいまいか。

  2011.06.05

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  豪雨に備えて宮城沿岸リスク地図

  東北地方整備局は３０日、農林水産省や宮城県、仙台市と連携して製作した同県沿岸域の浸水リスクマップを公表した。震災に伴う地盤沈下や被災した排水ポンプの稼働状況を踏まえ、大雨が降った場合の浸水範囲をシミュレーションした。震災後、仙台湾沿岸は広範囲で地盤沈下し、浸水しやすくなっている。マップは新旧の北上川や定川、鳴瀬川、名取川、砂押川、阿武隈川など、仙台湾に注ぐ各河川の河口付近を対象に策定。２４時間雨量１００ミリと２００ミリが降った場合の浸水域を想定した。シミュレーションには、排水ポンプ場の最新の復旧状況を反映させた。浸水の深さは５段階で示し、高潮の影響は考慮していない。石巻市の定川から旧北上川の河口付近で、２００ミリの雨が降った場合のリスクマップは地図上の通り。広範囲で地盤沈下した石巻市渡波はおおむね５０センチ以下の浸水、湊町や南浜町では５０～１００センチの浸水を予想した。名取川から砂押川にかけた河口付近（仙台、多賀城両市、七ケ浜町）で雨量２００ミリが降った場合＝地図下＝は、沿岸５カ所の排水ポンプ場が稼働を停止し、仙台東部道路東側の広い範囲で浸水すると予想。深い場所で水深１００～１５０センチに達するとみられる。マップは同整備局のホームページからアクセス、閲覧できる。一方、整備局は３０日、梅雨や台風シーズンを前にした浸水対策として農水省、宮城県、仙台市と協力し、沿岸被災地に浸水センサーを設置する方針も明らかにした。センサーは石巻、東松島、仙台、名取、岩沼、亘理、山元の７市町の計１５カ所に設置。７月に運用を開始し、１０分ごとにデータを電子メールで配信する。メールは関係機関のほか、一般市民も登録できる。（河北新報より）--------------------復旧が進まないまま本格的な雨期を迎える被災地。浸水や土砂災害への警戒が呼びかけられている。特に注意すべきは、全てにおいて今までとリスクが異なる点だ。度重なる地震で斜面が緩んでいれば、想定よりも少ない雨量でも崩壊の可能性がある。特に谷埋盛土部は陥没や地滑りに警戒したい。低地は地盤沈下により、浸水リスクが高まっている。浸水災害を決める要因は、標高や周囲との比高、排水ポンプのポテンシャルや水路・地下排水管の容量に依存する。地盤沈下は土地の標高を下げているばかりでなく、周囲との相対的な高さの関係も変化している可能性があり、水の流れはこれまでとは違ったものになる可能性がある。排水ポンプはまだ全てが復旧しているわけではないので、処理能力は通常より割り引いて考える必要があるだろう。震災で変わってしまった土地は、水害に対する防御力を弱体させている。避難や対策についても今までとは違う感覚を求められる。リスクマップはあくまでもシミュレーションの結果であって固定値ではない。非常に有益なマップであると思うので、しっかりと読図して有効な使い方がされることを祈りたい。また、高潮の影響はこのマップに反映されていないので、その点にも注意が必要だ。

  2011.06.01

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  梅雨入りと台風

  気象庁は関東地方が梅雨入りしたと見られることを発表した。「したと見られる」という表現がいかにも自信なさげでアレだが、週間予報を見てもしばらく雨が続くタイミングなのでまあアリかなと思う。それにしても5月中の梅雨入りとは。例年より12日、昨年よりは17日早い。そしてこのタイミングで台風2号が北上中。気象庁の予報円では週明けに関東にも接近する見込み。この時期に関東付近まで北上する台風は珍しい。3月の地震以来どうも災害の当たり年のような気がしてちょっと怖い。梅雨入りに加えて台風が来ていることで今後まとまった雨が予想される。被災地を中心に地震で地盤が緩んでいる箇所も多いことから土砂災害のリスクは例年以上に高まっていると考えていい。地盤沈下した地域の浸水も含めて警戒が必要だ。また、福島第一原発では事故で損傷した建屋に雨で増えた地下水が流れ込み、建屋内のたまり水が増える恐れがあるという。たまり水は高濃度の放射性物質を含んでいることから、水量が増加することで復旧作業はさらに困難を増すになる。もちろん新燃岳周辺や先週豪雨に見舞われた中国地方も不安だ。全国で不幸が続いている今年、震災のダメージで対応する体制も万全とは言い難い。行政にまかせっきりでなく、一人一人がくれぐれも警戒を怠らないように留意することが必要だろう。

  2011.05.28

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• 天正地震の謎

  天正13年（西暦1586年）の「天正地震」で若狭湾に津波が押し寄せて家が流され、多くの人が死亡したという記録があることが分かったとNHKが報道した。これは敦賀短期大学の外岡慎一郎教授が明らかにしたもので、京都の神社に伝わる『兼見卿記』に記述がある他、ルイス・フロイスの『日本史』にも天正地震に際して若狭湾の津波で被害が出た記述があるという。これまで関西電力では原発が集中する福井の若狭湾沿岸において、これらの文献の内容を把握していたものの、信ぴょう性がないと社内で判断し、住民や自治体には津波による大きな被害の記録はないと説明してきたという。しかし東日本大震災での想定外の津波や福島第一原発事故を受けて、あらためて調査を行うという。一般的に天正地震は飛騨を震源とする内陸地震であったという認識が強い。琵琶湖周辺で液状化や地盤沈下で集落が沈むなどの被害が知られており、秀吉が坂本城から大坂へ逃げ帰ったとする記録もある。内陸地震とされていることから津波についてはあまり語られていなかったが、今回複数の文献から津波の記録が明らかになったところで（特にフロイスの『日本史』は時の権力者のバイアスがかかっておらず、自分の知る限り非常に信憑性の高い史料である）、関西電力をはじめとした調査が進むことに期待がかかる。また、調べてみると鳥羽市のHPに天正地震に際して伊勢湾岸で大きな被害が出たとの記載がある（震源は飛騨ではなく伊勢湾であると解釈されている）。また、愛知県HPでは津波の被害も甚大であったと記載されている。これらの被害状況を結びつけると、内陸、伊勢湾、若狭湾という広域が一つの地震でこれだけ被害にあうとも考えにくく、天正地震は複数の地震により被害が出たという見方も出来る。天正地震のメカニズムや被害の様子が解明されれば今後に向けて大きなヒントになるかも知れない。

  2011.05.27

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• 送電鉄塔倒壊 盛り土の崩落が原因

  東京電力福島第一原子力発電所の事故で原子炉を冷却するのに必要な外部電源を送る送電線の鉄塔が倒壊したことについて、東京電力は鉄塔そのものは地震の揺れに耐えることができたものの、付近の盛り土が大規模に崩落したのが倒壊した原因だとする調査結果を公表しました。福島第一原発の事故では地震と津波によって外部電源と非常用ディーゼル発電機の電源がともに失われ、原子炉を冷却できなくなったことが事態を悪化させました。このうち５号機と６号機につながる外部電源は、敷地内の送電鉄塔が倒壊したために供給できなくなりましたが、倒壊について東京電力は付近の盛り土が大規模に崩落したのが原因だとする調査結果を公表しました。その根拠について、東京電力は今回の地震の揺れの強さを示す最大加速度は鉄塔付近で６９９ガルで、この鉄塔は、それを上回る阪神・淡路大震災の際の８１８ガルに耐えられる強度があったとしています。しかし、倒れた鉄塔の下の部分は土砂や倒れた木に埋もれていることから、東京電力は鉄塔そのものは揺れに耐えられたものの、大規模に崩落した近くの盛り土がなだれ込み、その圧力で倒壊したとみられると説明しています。鉄塔の倒壊を受けて、経済産業省の原子力安全・保安院は、原子力発電所を運転する電力各社に対して、送電鉄塔の耐震性を再評価するよう指示していますが、今回の鉄塔の倒壊は鉄塔そのものの耐震性を満たしただけでは十分とはいえないことを示したことになり、今後、電力各社は周辺の土砂崩れや地滑りへの対策も迫られることになります。（NHKより）--------------------もしこの報道の通りであれば、鉄塔を設置する場所選び、あるいは工法の初歩的なミスということになるのだろうか。盛土の危険性は様々な機会で指摘されているが、よりによってこの事故の背景にその問題があったとは何とも皮肉なことだ。とすれば他の原発についても同様なケースがあることは容易に想像できる。今後早急に全数点検という流れになるだろうが、場合によっては鉄塔の移転や建て直しも考えなければならないだろう。原発のリスクがこれだけ露呈されている今、まずは直近の安全確保のために急いで欲しい。

  2011.05.25

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• 浦安液状化被害、復興へ住民連帯

  東日本大震災で液状化被害が激しかった浦安市で、復旧・復興に向け、住民によるプロジェクトチームが相次いで設立されている。学者や弁護士など専門家が住民の相談に応じたり、若手の市民が家屋被害のアンケートに取り組んだりと活動はさまざまだが、復興計画策定への市民参加を求めるなど、行政に積極的にかかわる姿勢も見せている。県内有数の高級住宅街である舞浜３丁目。約５４０世帯が暮らす同地域は、砂や水が道路や住宅にあふれ、震災直後は自治会役員らが土砂の除去や配水状況の連絡に明け暮れた。しかしライフライン復旧後、住民の関心は住宅や道路の修復、行政からの支援などに移っていった。そこで４月、「震災復興特別プロジェクト　チームＭ３」が活動を始めた。学者や弁護士、税理士など地域に住む多様な分野の専門家が２０人以上参加している。生活再建には再び液状化しないよう、地盤の強化が欠かせない。そのため、道路や住宅を測量して被害を検証するほか、融資制度や支援制度について相談したり、情報提供をして、住民と一緒に解決策を模索する。リーダーの伊能隆男さん（４９）は「失ったものは大きいが、住民の連帯で安全な街にしたい」と話す。同様に被害の大きかった同市今川地区でも「今川復興プロジェクト　チーム今川」が４月に始動。以前は地域活動に参加する機会の少なかった３０、４０代が中心だ。傾いた住宅を直すにも工法や費用はさまざま。「何が適当なのか、誰に相談すればいいか」という住民の声を受け、これまでに住宅セミナーを開催。また、道路や公園で土砂を取り除く作業をしたり、住宅の被害状況のアンケート調査を進めている。リーダーの曽根弘信さん（７１）は「チームとして市に要望することで、経過説明も受けられるようになった。埋め立て地に住む以上、みんなで同じ船に乗っているようなもの。協力しないと進まない」と話す。いずれのチームも復興計画を策定する際には、市民参加などを求める姿勢だ。松崎秀樹市長は、市民主体のプロジェクトチームが相次いでいることについて「浦安の市民力が発揮されると期待している」と話している。（毎日jpより）--------------------今回の震災の中でも、震源から離れた首都圏で最も広域かつ深刻な被害をもたらしているのが液状化だろう。復旧が長期化しているばかりでなく、財産としての価値の急落や再発への不安など、たとえ直接被災していなくても該当地域に住む多くの人が渦中にあるといっていい。ハザードマップの被害予想との相違から自治体相手に訴訟という動きもあるが、ハザードマップ以前から住んでいる住民も多く、今一つ説得力に欠ける。そういう意味では住宅購入に際して古地図などで土地のルーツを調べる人が増えているのは好ましい傾向だと思う。住宅購入に価格や便利さが優先するのは当然のこととしても、土地のリスクは認識しておくべきものである。液状化の被災地は当面の復旧ばかりでなく、長期的な対策に乗り出さなければならない。自治体、開発業者、そして住民のそれぞれの役割分担も含め、国からの支援や義援金の配分など、決めていくべきことは山ほどある。

  2011.05.23

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